チャンプルー – Wikipedia

チャンプルーは、野菜や豆腐などを炒めた沖縄料理。

チャンプルーとは沖縄方言で「混ぜこぜにしたもの」というような意味であり、野菜や豆腐に限らず、さまざまな材料を一緒にして炒め合わせる。「ゴーヤーチャンプルー」「タマナーチャンプルー」などのように主な材料の名を冠して呼ばれることが多い。

元々はありあわせの野菜に、安価で毎日手に入る豆腐、保存食である塩漬けの豚肉などを加えた沖縄の家庭料理であるが、近年ではテレビ番組で紹介されるなどして、沖縄県以外の日本各地でも食べられるようになった。

沖縄の方言でチャンプルーは「ごちゃまぜ」を意味するが、その語源についてははっきりとしない[1]。「ちゃんぽん」の沖縄方言読みである「チャンプン」からの変化と考えられるが、外国語に由来するという説もある。

インドネシア語・マレー語のcampur(ナシチャンプル、en:Air_batu_campur、チャンプールまたはチャンポール:音声は[1][2]は、日本語のちゃんぽんと同様「混ぜる」「混ぜたもの」という意味を持つ[1]。かつてインドネシアはオランダの植民地であり、長崎・出島に出入りしていたオランダからもたらされた「campur」が変化した「ちゃんぽん」由来であるとの説があるが、この長崎のちゃんぽんは中国料理の「湯肉絲麺」が元であるとの説もある[1]。郷土研究家の東恩納寛惇は、チャンプルーは中国語の「炒腐児(チャオ・フー・アル)」に由来し、豆腐を炒める料理を指すとしている[1]。ただし中国にそのような名称の料理が存在したという記録は確認されていない。

豆腐なしの、ソーミンタシヤー

一般の野菜炒めとの大きな差違は、炒めても崩れにくく、独特の風味を持った島豆腐を使用する点であるが、「野菜炒め」というメニューに豆腐が入っていることも沖縄では珍しくない。逆にソーミンチャンプルーのように、豆腐を使用しなくともチャンプルーと呼ばれる例もある。
チャンプルーを「豆腐を炒めた料理」の意味とする立場からは、豆腐を用いないものはチャンプルーとは呼ばないのが慣習であって、麩や素麺などの炒め物は別の呼称(麩なら「フーイリチー」、素麺なら「ソーミンプットゥルー」や「ソーミンタシヤー」)を用いるべきであると主張される。また、チャンプルーという用語は炒め物の中でも強い火力で短時間に調理される場合に限って用いられ、昆布や中身(豚の臓物)、根菜類のように比較的時間をかけて炒め煮にされる料理は「イリチー」(炒り付け)と呼んで区別されるのが通例である。

素材・調理法[編集]

安価な食材、家庭菜園で獲れる野菜、ありあわせの素材など、材料は多彩である。ニガウリ・キャベツ・タマネギ・ニンジン・モヤシといった野菜や、島豆腐、豚肉(またはポーク・コンビーフハッシュ・トゥーナなどの缶詰類)・卵などが多く使われる。戦前にはスーチカーと呼ばれる豚の塩漬け肉や、アンダカシーなども使われた。戦後は、沖縄では流通経路の違いから本土に比べ安価に流通しているポーク缶などが広く素材として普及するなど素材も変遷する。

豆腐は固い島豆腐が使われるが、沖縄県外では水切りをした木綿豆腐や厚揚げなどで代用される。

平鍋に豚脂を溶かし、素材を順々に炒める。現在ではフライパンや中華鍋にサラダ油を引いて炒める場合が多い。豆腐・ポーク缶などの味に加えて塩・醤油・かつおだしまたは化学調味料などで味付けをする。砂糖を入れて少し甘くしたり、風味付けに鰹節やピーナッツバターなどを用いることもある。溶き卵を加える場合は、最後に混ぜ合わせて仕上げる。

チャンプルーのバリエーション[編集]

チャンプルーは、主な材料の名を冠して「○○チャンプルー」と呼ばれることが多い。以下には、代表的なチャンプルーの名称と、それに使われる材料を記した。

ゴーヤーチャンプルー
最も有名なチャンプルー。この料理が広く知られるようになったことで、ゴーヤーが全国に普及した。
タマナーチャンプルー
タマナー(玉菜)とはキャベツのことで、キャベツ中心のチャンプルーを指す。
マーミナーチャンプルー
マーミナー(豆菜)とはモヤシのことで、モヤシ中心のチャンプルーを指す。
パパヤーチャンプルー
完熟して甘みの出る前の青いパパイヤを千切りにして、ポークやにんじんなどと炒める。豆腐は入れずにイリチーにすることが多い。
チキナーチャンプルー
チキナー(漬菜)とは塩漬けにしたシマナー(島菜=カラシナ)のことで、これを中心に用いたチャンプルーを指す。
ナーベーラーチャンプルー
ナーベーラーとはヘチマのことで、固くなる前の若いヘチマを豆腐やポークなどと炒める。水分が多く、蒸し煮状になるので、チャンプルーと呼ばずナーベーラーンブシーと呼ぶのが一般的である。
豆腐チャンプルー
非常に曖昧で重言とも取れる表現だが、「豆腐入り野菜炒め=チャンプルー」という認識が定着する前の沖縄では、豆腐の入った炒め物全般を総称してこう呼んでいた。現在の飲食店においては、豆腐を主役として野菜や肉類が少なめのもの、あるいはさまざまな材料を用いて主となる野菜が判然としないものを指すことが多い。多種類の野菜を用いるものは野菜チャンプルーとも呼ばれる。
フーチャンプルー
フーとは麩のことで、沖縄県で常用される車麩を水で戻し卵液に浸したものを、野菜などとともに炒める。豆腐は使用しないため、フーイリチーと呼ばれることもある。
ソーミンチャンプルー
ソーミンとは素麺のことで、固めに茹でた素麺をニラやネギなどの香味野菜、ポークやベーコン、トゥーナなどと一緒に油で炒めたものを言う。本来の名称はソーミンタシヤー、仕上がりの状態によってはソーミンプットゥルーとも呼ばれる。安価で保存性の高い乾麺類は前述の麩と同様に冷蔵庫のない時代の沖縄では大変重宝され、乾燥中華麺を用いた支那そばチャンプルーといったバリエーションもみられる。他地域における類似料理として、鹿児島県奄美群島の油そうめんがある。また、日本本土においても江戸時代の料理書『豆腐百珍』に「豆腐麺」という名前で豆腐と小松菜を具にしたものが紹介されている。

参考文献[編集]

  • 嘉数 啓「島嶼学ことはじめ(六)―島嶼における文化と観光,バリ島と竹富島のケースを中心に―」『島嶼研究』第18巻第2号、日本島嶼学会、2017年、 155-183頁、 doi:10.5995/jis.18.2.155

関連項目[編集]