生き甲斐 – Wikipedia

生き甲斐(いきがい)とは、生きる甲斐、すなわち「生きることの喜び・張り合い」「生きる価値」を意味する日本語の語彙[2]

長寿地域を意味する「ブルーゾーン」の概念を広めたアメリカの研究者・作家であるダン・ベットナー英語版が、日本・沖縄の長寿の理由の1つとして「生き甲斐」(ikigai)に言及したことで、2000年代以降の欧米でも広く知られる概念となった。

多くの場合、「ikigai」概念は右図のようなベン図としてまとめられ、紹介されている。

井上勝也らによれば、生き甲斐とは「生きることに価値や意味をもたらす源泉や対象としての事物(生きがいの源泉・対象)」と「その源泉や対象が存在することにより自らの生に価値や意味があると感じられる感情(生きがい感)」の2つの側面から構成される概念とされている[3]

井上は社会的な次元から、生き甲斐を社会的生き甲斐、非社会的生き甲斐、反社会的生き甲斐の3つの方向性に分類している[3]。社会的生き甲斐とは、ボランティア活動やサークル活動など、社会に参加し、受け入れられる生き甲斐である。非社会的生き甲斐とは、信仰や自己鍛錬など、直接的に社会とは関わりない生き甲斐である。反社会的生き甲斐とは、誰かや何かを憎んだり、復讐する願望を持ち続けるといった、暗い情念が生きていく上での基本的動機となっている生き甲斐である。

生き甲斐と老年期[編集]

生き甲斐の学究的研究は老年学など、人の老年期に関する研究において盛んに行われている[3]。一般的な人生観では、老年期は人生の盛りを過ぎ、健康や社会的役割など多くのものを喪失する期間とイメージされる事が多い[3]。しかし、現実には若さを失った高齢者の多くが、自己否定感に苛まれる事なく日々を過ごしている。高齢者が穏やかに老いを受容できるのは、それぞれの持つ生き甲斐が、老いや喪失感への拮抗因子として働いていると考えられている[3]

高齢者の生き甲斐の特徴のひとつに「失われやすさ」がある[3]。例えば、孫の成長が生き甲斐だった場合、孫が大人に近づくにつれて自分の役割は減少していく。初老の頃に始めたスポーツが生き甲斐となっても、老いとともに継続が難しくなる。高齢者にとって、社会的生き甲斐は常に喪失と隣り合わせである[3]

最近の研究では、生き甲斐を見つけることで、認知機能や全体的な幸福などの健康状態を改善できると述べている[4]

  • 『Ikigai: The Japanese secret to a long and happy life』 Héctor García, Francesc Miralles 2016
    • 『外国人が見つけた長寿ニッポン幸せの秘密』 エクトル・ガルシア, フランセスク・ミラージェス 2017 エクスナレッジ社
  • 『IKIGAI: 日本人だけの長く幸せな人生を送る秘訣』 茂木健一郎 2018 新潮社

関連項目[編集]

外部リンク[編集]