シリア正教会 – Wikipedia
シリア正教会が正式名称であるが、ヤコブ教会またはヤコブ派とも呼ばれる[1]。
キリスト単性論派と見なされることがあるが[1][4]、シリア正教会自身はそう見なされることを拒否し、自らの教理を合性論であると主張している。451年のカルケドン公会議の決議を不服としてカルケドン派と分立した教会である[3]から、非カルケドン派正教会と呼ぶほうが中立的である。
シリア正教会はヤコブ教会またはヤコブ派とも呼ばれる[1]。この名称は6世紀のエデッサの主教ヤコボス・バラダイオスに由来し[5]、第2ニカイア公会議で最初に公式に用いられて[1]以来、カルケドン派キリスト教を国教とする東ローマ帝国内で用いられるようになった。しかしヤコブ派という呼称は、「シリア正教会の教説はヤコボス・バラダイオスがはじめた説であり、シリア正教会は正統教会からみた異端派」という意味合いをもつため、シリア正教会はヤコボス・バラダイオスの果たした役割を高く評価する一方、彼を創始者とする見方を拒否し、キリスト教の正統である初代教会からの連続性を主張するため、この名称を不当であるとしている。
ニカイア信条、ニカイア・コンスタンティノポリス信条を告白する。
古代アンティオキア教会からの連続性を自認するシリア正教会の名目上の総主教座はアンティオキアにあるが、現在の実際の所在地はダマスカスである。しかし総主教庁の名義はアンティオキア総主教庁であり、カルケドン派である東方正教会(ギリシャ正教)のアンティオキア総主教庁と現代に至るまで並立する状態になっている。他に、シリア正教会から分かれたシリア典礼カトリック教会、ギリシャ正教系のアンティオキア総主教庁から分かれたメルキト・ギリシャ典礼カトリック教会、そして単意論派を原点とするマロン典礼カトリック教会が、それぞれアンティオキア総大司教[注 2][注 3]を名乗っている。
典礼言語には古代アラム語の一種である古典シリア語を用いる[注 4]。アラム語はイエス・キリストや使徒たちも日常語として用いていた言語とも言われる。
教義を共有する同じく非カルケドン派正教会であるコプト正教会・アルメニア使徒教会・エチオピア正教会などとはフル・コミュニオンの関係にある。現在は、東方正教会のアンティオキア総主教庁やカトリック教会ともエキュメニズムに基づく対話を進めている。
注釈[編集]
- ^ 「メルキト」は「皇帝派」という意味。この皇帝とはカルケドン信条を擁護した東ローマ帝国皇帝のことで、「メルキト」は元々非カルケドン派による蔑称である[6]。
- ^ 東方教会の総主教もカトリック教会の総大司教も、英語では同じ”Patriarch”であるが、その地位や位置付けは大きく異なる。
- ^ マロン典礼カトリック教会のアンティオキア総大司教のみレバノンに所在。他はダマスカスに所在する。
- ^ 他には、シリア典礼カトリック教会やアッシリア東方教会なども古典シリア語を用いる。
出典[編集]
- ^ a b c d e f 「シリア正教会」(「ヤコブ教会」への「見よ項目」 )、久松英二「ヤコブ教会」『新カトリック大事典』研究社Online Dictionary、KOD、2020年3月23日閲覧。
- ^ Syrian Orthodox Church, The Oxford Dictionary of the Christian Church, Oxford University Press, 2005, 2020年3月23日閲覧。
- ^ a b 「シリア正教会」『オックスフォードキリスト教辞典』E. A. リヴィングストン編、木寺廉太訳、教文館、2017年、414-415頁、ISBN 978-4764240414。
- ^ 大森正樹「シリア正教会」『岩波キリスト教辞典』岩波書店、2002年、576頁、ISBN 9784000802024。
- ^ ヤコブ・バラダイオス – 世界大百科事典 第2版、平凡社、コトバンク、2020年3月23日閲覧。
- ^ 石井祥裕「メルキト教会」、久松英二「ヤコブ教会」『新カトリック大事典』研究社Online Dictionary、KOD、2020年3月24日閲覧
関連項目[編集]
- 東方諸教会
- シリアのキリスト教
- アフラハト
外部リンク[編集]
- Syriac Orthodox – シリア正教会を日本語で紹介するサイト
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