おおかみ座 – Wikipedia

おおかみ座(おおかみざ、狼座、Lupus)は、南天の星座でトレミーの48星座の1つ。日本の多くの地域では高く昇らないので目立たず、また九州以南でなければ全体を見られない。

主な天体[編集]

恒星[編集]

固有名のある恒星はない[1]。2等星のα星以外にも3等星が6つある。

また、西暦1006年におおかみ座領域に超新星 (SN 1006) が出現したことが記録されている。

星団・星雲・銀河[編集]

  • NGC 5822:散開星団。星座南部にある。
  • NGC 5749:散開星団。星座南部にある。
  • NGC 5824:球状星団。星座北部にある。
  • NGC 5986:球状星団。星座北部にある。
  • IC 4406:惑星状星雲。西部の境界線上にあり、2つの渦巻銀河と、ウォルフ・ライエ星を含む。この星雲の中心星は知られている中で最も高温の星の1つである。
  • NGC 5882:惑星状星雲。星座の中心にある。
  • B 228:暗黒星雲。星座北部にある。

由来と歴史[編集]

おおかみ座の原型は古代メソポタミアに遡る[3]。紀元前6世紀頃の粘土板文書ムル・アピン英語版 (MUL.APIN) では「エアの道」の65番目に「野生の犬」「神話上の獣」等を意味するとされる「ウル・イディム」MULUr-Idimという名のアステリズムとして記されている[3]。このアステリズムはエジプトにも伝わり、古代エジプトプトレマイオス朝のクレオパトラ7世統治時代に建設されたデンデラのハトホル神殿に遺る天体図には、現在「狂犬」 (the Mad Dog) または「カバ男」と呼ばれる人頭獣身の姿で「バイソンマン(現在のケンタウルス座)」の隣に描かれている[3]

古代ギリシアでは、この部分は「野獣」 (Θηρίον, Therion[4]) という不特定の野生動物を指す言葉で呼ばれていた[4][5]。古代ローマ時代、紀元前1世紀頃の詩人ガイウス・ユリウス・ヒュギーヌスは「犠牲者」 (Hostia) と呼んでいた。いずれもケンタウルス座の一部という認識であったが[3]、クラウディオス・プトレマイオス(トレミー)によって独立した星座として扱われるようになった[3][4]。この星座を狼とみなすようになったのはルネサンス期以降のこととされる[4]。18 – 19世紀のドイツの天文学者ヨハン・ボーデの星図『ウラノグラフィア』では、ケンタウルスに槍で突かれる狼の姿で描かれている。

この星座の由来を伝えるギリシャ神話はない。19世紀末のアメリカのアマチュア博物学者リチャード・ヒンクリー・アレンは、神との宴に人肉を供したアルカディア王リュカーオーンが大神ゼウスにより狼に変えられた姿だとする説を紹介している[1][5]が、上述の経緯から後世の後付けとされる[4]

  1. ^ a b 原恵『星座の神話 – 星座史と星名の意味』恒星社厚生閣、2007年2月28日、新装改訂版第4刷、124-125頁。

    ISBN 978-4-7699-0825-8。

  2. ^ a b * alf Lup — Variable Star of beta Cep type”. SIMBAD Astronomical Database. CDS. 2020年4月20日閲覧。
  3. ^ a b c d e 近藤二郎『わかってきた星座神話の起源 – 古代メソポタミアの星座』誠文堂新光社、2010年12月30日、111-112頁。ISBN 978-4-416-21024-6。
  4. ^ a b c d e Ridpath, Ian. “Lupus”. Star Tales. 2020年4月20日閲覧。
  5. ^ a b Allen, Richard Hinckley (2013-02-28). Star Names: Their Lore and Meaning (再販 ed.). Courier Corporation. pp. 278-279. ISBN 9780486137667. https://play.google.com/books/reader?id=vWDsybJzz7IC&hl=ja&printsec=frontcover&pg=GBS.PA278 

座標: 15h 18m 00s, −45° 00′ 00″