世界三大レース – Wikipedia
世界三大レース(せかいさんだいレース、Triple Crown of Motorsport)とは、モナコグランプリ、インディ500、ル・マン24時間レースという3つの自動車レースに対する伝統的な呼称である。
今日世界三大レースに数えられるレースは、いずれもモータースポーツの歴史とほぼ等しい長い歴史と高い人気を持つ。現在では
の看板レースを担っている。
これらのレースは、それぞれが大きく異なる特徴を持つ。
モナコグランプリ[編集]
- 開催地 – モンテカルロ市街地コース(3.34 km)/モナコ公国・モンテカルロ
- 初開催 – 1929年
- 市街地レースの元祖にして、F1ドライバーたちが揃って「選手権で最も重要なレース」と称するレース。シケインやタイトコーナーが連続するテクニカルコースでは、F1においてすら決勝レースの平均速度が150 km/h程度である。また、道幅が狭くエスケープゾーンも少ないため些細なミスも許されない。ゆえにセーフティーカーの出動率が52%にも達する。ドライバーの技量も大きく問われる難しいレースであり、「モナコでの一勝は、他のレースでの三勝に匹敵する」と言われる。さらにF1のサーキット中最もオーバーテイクが難しいと言われ、予選での速さが重要になる。
インディ500[編集]
- 開催地 – インディアナポリス・モーター・スピードウェイ(2.5 miles)/アメリカ合衆国・インディアナポリス
- 初開催 – 1911年
- 観客動員数40万人を誇るアメリカ最大のモータースポーツイベント。決められた距離を走るスプリントレースながら総走行距離が500マイル(約806 km)と非常に長く、ドライバーはその中を350 km/hを超える速さで走り続ける。クラッシュが度々起こるため何度もレースがリスタートされることや、フルコースコーション中の一斉ピットワーク、ストレート、ターンを問わずに続くサイド・バイ・サイド、ドラフティング(スリップストリーム)を駆使したオーバーテイクなどによって頻繁に順位が入れ替わる。そのため最終周の残り数メートルまで誰が勝つか分からないエンターテイメント性に富んだレースが展開される。
ル・マン24時間レース[編集]
- 開催地 – サルト・サーキット(13.629 km)/フランス・ル・マン
- 初開催 – 1923年
- 耐久レースのなかでは最も長い歴史をもち、「世界最高の草レース」と呼ばれることもある。世界各国で行われる耐久レースのほとんどはル・マンのフォーマットに準じている。サルト・サーキットは長距離の高速サーキットで、かつコースのほとんどに公道を利用しているため路面はバンプが険しく、シャシとエンジンへの負担が大きい。さらに夕方、夜間、日中と移り変わるコンディションの中で走らなければならない。そのためマシンには高い速度と優れた信頼性、ドライバーには集中力はもちろん、環境の変化に対応する力と相互のチームワークが求められる。
各レースの比較[編集]
モナコGP | インディ500 | ル・マン24時間 | |
---|---|---|---|
主催団体 | 国際自動車連盟(FIA) | IndyCar | フランス西部自動車クラブ(ACO) |
決勝レースの 開催時期 |
5月中旬から下旬 (決勝は日曜日) |
戦没者追悼記念週間 (メモリアルウィーク)の日曜日 (5月最終月曜日の前日) |
1年で日照時間が 最も長い土曜日から日曜日 (例年は6月中旬) |
出走台数 | コンストラクター数×2台 | 33台 | 最大55台 |
スポット参戦 | 不可 (リザーブドライバーの代走は可) |
可 | 可 |
スタート方式 | 2列スタンディングスタート | 3列ローリングスタート | ル・マン式スタート(1969年まで) 2列ローリングスタート(1971年から) |
使用するマシン | 各チームが選手権向けに 開発したフォーミュラ1カー |
インディカー・シリーズで使用される ものと同じフォーミュラカー |
シャシーメーカーや乗用車メーカーが開発、購入した プロトタイプレーシングカーまたはGTレーシングカー |
レース距離/周回数 | 260km/78周 | 500マイル/200周 | – |
レース時間 | 1時間40分-2時間 | 3時間前後 | 24時間 (土曜日の現地時間16時~翌日16時) |
周回平均速度:最高速度 (およその値) |
160km/h:280km/h | 220mph(354km/h):230mph(370km/h) | 240km/h:330km/h |
車両一台あたりの ドライバー人数 |
1人 | 1人 | 3人 |
主な記録[編集]
2019年時点の主な記録。
複数レース勝者[編集]
この「世界三大レース」を語る上で最もよく取り上げられるのは、複数のレースを勝利したドライバーについての記録である。これが重んじられるのは、前述の通り3レースがそれぞれ異なる性質であり、ドライバーに要求される技術も変わってくるためである。
ドライバー[編集]
この3レース全てを制覇したドライバーはグラハム・ヒルのみで、他、3レース中2レースを制したドライバーが7名いる。この内、ヒルがモナコで挙げた5勝、A・J・フォイトがインディ500で挙げた4勝は、それぞれのレースで当時の史上最多勝記録となるものであった。
三大レース中の複数のレースにおいて優勝を同年中に達成した例としては、1967年にフォイトがインディ500とル・マンの両方で優勝した例があるのみである。
2019年現在、この8名のドライバーの内、現役のレースドライバーはモントーヤとアロンソのみである(モントーヤ、アロンソ、フォイトを除く5名は故人)。
コンストラクター[編集]
この3レース全てを制覇したコンストラクター(車体製造者)はマクラーレンのみである。合併など存続をした組織を含めるとメルセデスである。
最多勝・連勝[編集]
モナコGPの最多勝記録はアイルトン・セナ(6勝)が持ち、これに5勝のグラハム・ヒル、ミハエル・シューマッハ、4勝のアラン・プロストが続き、彼らを含め、2勝以上を挙げたドライバーの数は計15名に上る。連勝記録については、セナが持つ5連勝という記録に対して続くのはグラハム・ヒル(1963年-1965年)、プロスト(1984年-1986年)、ニコ・ロズベルグ(2013年-2015年)が持つ3連勝という記録であり、セナの記録がやや突出したものとなっている。
インディ500の最多勝記録は4勝で3人が並び、3勝を挙げたドライバーも7人に及ぶ(現役のドライバーはエリオ・カストロネベスのみ)。2勝以上を挙げたドライバーは19名であり、三大レース中、最多である。連勝記録は少なく、2連勝を達成した5名のみであり、3連勝以上を達成したドライバーは存在しない。
ル・マン24時間レースにおける最多勝記録はトム・クリステンセンが持つ9勝であり、クリステンセンが2005年に7勝目を挙げる以前はジャッキー・イクスが1982年までに樹立した通算6勝が最多勝記録であった。現在ではこれに5勝のデレック・ベルが続き、4勝のドライバーは5名を数える。連勝記録としてはクリステンセンが2000年-2005年に達成した6連勝が突出したものとなっており、2番手以下は3連勝で6名(ウルフ・バーナート、オリビエ・ジャンドビアン、アンリ・ペスカロロ、エマニュエル・ピロ、フランク・ビエラ、マルコ・ヴェルナー)が並ぶ。
日本勢の成績[編集]
ドライバー[編集]
日本人ドライバーで世界三大レース優勝者はこれまで5名(ル・マン4名、インディ1名)となっている。
日本人ドライバーでモナコGPを優勝した者はなく、2011年に小林可夢偉が記録した5位が決勝レースの最高成績となっている。また、世界三大レースの3つ全てに出走経験がある日本人ドライバーは中野信治のみである。
-
日本人で(アジア人としても)初めてインディ500を制した佐藤琢磨
-
日本人で初めて日本のコンストラクター(トヨタ)でル・マン24時間耐久レースを制した中嶋一貴
-
日本人で2人目の日本のコントラクター(トヨタ)でル・マン24時間レースを制した。小林可夢偉
コンストラクター[編集]
日本のコンストラクター(車体製造者)としては、これまでル・マンで2メーカーが優勝している。
モナコGPにおいては2006年にホンダ・レーシング・F1チームが記録した4位が最高位である(ドライバーはルーベンス・バリチェロ)。インディ500にはコンストラクターとして参戦した例がない。
エンジンサプライヤー[編集]
エンジンサプライヤー(エンジン製造者)としては以下の通り。なお、ル・マン24時間はコンストラクターでの優勝と同じ場合は割愛する。
モナコGP | インディ500 |
---|---|
ホンダ(1987年-1992年、2021年) 無限ホンダ(1996年) |
トヨタ(2003年) ホンダ(2004年-2012年、2014年、2016年-2017年、2020年-2021年)[注釈 6] |
- ^ メルセデスの前身の一つであるダイムラーによって達成
- ^ 1989年について、車体は「ザウバー」が製造した。
- ^ モナコGP、インディ500における優勝はいずれもチーム・ロータスによる。
- ^ 「ルノー・アルピーヌ」としてエントリー。
- ^ a b 2012年以降(実質的には2009年以降)はダラーラのワンメイク
- ^ ただし2006年から2011年までホンダのワンメイクであるため、連勝記録として扱わないものとされる。
参考文献[編集]
Recent Comments