|
この記事は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。出典を追加して記事の信頼性向上にご協力ください。 出典検索?: “フィッシャー情報量” – ニュース · 書籍 · スカラー · CiNii · J-STAGE · NDL · dlib.jp · ジャパンサーチ · TWL(2016年10月)
|
フィッシャー情報量(フィッシャーじょうほうりょう、英: Fisher information
)
は、統計学や情報理論で登場する量で、確率変数
が母数
に関して持つ「情報」の量を表す。統計学者のロナルド・フィッシャーに因んで名付けられた。
を母数とし、
を確率密度関数が
で表される確率変数とする。
このとき、
の尤度関数
は
-
で定義され、スコア関数は対数尤度関数の微分
-
により定義される。このとき、フィッシャー情報量
はスコア関数の2次のモーメント
-
により定義される。紛れがなければ添え字の
を省略し、
とも表記する。なお、
に関しては期待値が取られている為、フィッシャー情報量は
の従う確率密度関数
のみに依存して決まる。よって
と
が同じ確率密度関数を持てば、それらのフィッシャー情報量は同一である。
スコア関数は
-
を満たす事が知られているので、
-
が成立する。ここで
は分散を表す。
また
が二回微分可能で以下の標準化条件
-
を満たすなら、フィッシャー情報量は以下のように書き換えることができる。
-
このとき、フィッシャー情報量は、
の対数の
についての2次の導関数にマイナスを付けたものになる。フィッシャー情報量は、
についての最尤推定量付近のサポート曲線の「鋭さ」としてもとらえることができる。例えば、「鈍い」(つまり、浅い最大値を持つ)サポート曲線は、2次の導関数として小さな値を持つため、フィッシャー情報量としても小さな値を持つことになるし、鋭いサポート曲線は、2次導関数として大きな値を持つため、フィッシャー情報量も大きな値になる。
フィッシャー情報行列[編集]
パラメータがN個の場合、つまり、
がN次のベクトル
であるとき、フィッシャー情報量は、以下で定義されるNxN 行列に拡張される。
-
これを、フィッシャー情報行列(FIM, Fisher information matrix)と呼ぶ。成分表示すれば、以下のようになる。
-
フィッシャー情報行列は、NxN の正定値対称行列であり、その成分は、N次のパラメータ空間からなるフィッシャー情報距離を定義する。
個のパラメータによる尤度があるとき、フィッシャー情報行列のi番目の行と、j番目の列の要素がゼロであるなら、2つのパラメータ、
と
は直交である。パラメータが直交であるとき、最尤推定量が独立になり、別々に計算することができるため、扱いやすくなる。このため、研究者が何らかの研究上の問題を扱うとき、その問題に関わる確率密度が直交になるようにパラメーター化する方法を探すのに一定の時間を費やすのが普通である。
基本的性質[編集]
フィッシャー情報量は
-
を満たす。
また
,
が独立な確率変数であれば、
-
(フィッシャー情報量の加算性)
が成立する。すなわち、「
が
に関して持つ情報の量」は
「
が
に関して持つ情報の量」と
「
が
に関して持つ情報の量」の和である。
よって特に、無作為に取られたn個の標本が持つフィッシャー情報量は、1つの標本が持つフィッシャー情報量のn倍である(観察が独立である場合)。
Cramér–Raoの不等式[編集]
の任意の不偏推定量
は以下のCramér–Rao(クラメール-ラオ)の不等式を満たす:
-
この不等式の直観的意味を説明する為、両辺の逆数を取った上で確率変数
への依存関係を明示すると、
-
となる。一般に推定量はその分散が小さいほど(よって分散の逆数が大きいほど)母数
に近い値を出しやすいので、「よい」推定量であると言える。
を「推定する」という行為は、「よい」推定量
を使って
を可能な限り復元する行為に他ならないが、上の不等式は
から算出されたどんな不偏推定量であっても
が元々持っている「情報」以上に「よい」推定量にはなりえない事を意味する。
十分統計量との関係[編集]
一般に
が統計量であるならば、
-
が成立する。すなわち、「
から計算される値
が持っている
の情報」は「
自身が持っている
の情報」よりも大きくない。
上式で等号成立する必要十分条件は
が十分統計量であること。
これは
が
に対して十分統計量であるならば、ある関数
および
が存在して
-
が成り立つ(ネイマン分解基準)事を使って証明できる。
カルバック・ライブラー情報量との関係[編集]
を母数
を持つ確率変数とすると、カルバック・ライブラー情報量
とフィッシャー情報行列は以下の関係が成り立つ。
-
すなわちフィッシャー情報行列はカルバック・ライブラー情報量をテイラー展開したときの2次の項として登場する。(0次、1次の項は0)。
ベルヌーイ分布[編集]
ベルヌーイ分布は、確率θ でもたらされる「成功」と、それ以外の場合に起きる「失敗」という2つの結果をもたらす確率変数が従う分布である(ベルヌーイ試行)。例えば、表が出る確率がθ、裏が出る確率が1 – θであるような、コインの投げ上げを考えれば良い。
n回の独立なベルヌーイ試行が含むフィッシャー情報量は、以下のようにして求められる。なお、以下の式中で、A は成功の回数、B は失敗の回数、n =A +B は試行の合計回数を示している。対数尤度関数の2階導関数は、
-
であるから、
-
となる。但し、Aの期待値はn θ、B の期待値はn (1-θ )であることを用いた 。
つまり、最終的な結果は、
-
である。これは、n回のベルヌーイ試行の成功数の平均の分散の逆数に等しい。
ガンマ分布[編集]
形状パラメータα、尺度パラメータβのガンマ分布において、フィッシャー情報行列は
-
で与えられる。但し、ψ(α)はディガンマ関数を表す。
正規分布[編集]
平均μ、分散σ2の正規分布N(μ, σ2)において、フィッシャー情報行列は
-
で与えられる。
多変量正規分布[編集]
N個の変数の多変量正規分布についてのフィッシャー情報行列は、特別な形式を持つ。
-
であるとし、
が
の共分散行列であるとするなら、
~
のフィッシャー情報行列、
の成分は以下の式で与えられる。
-
ここで、
はベクトルの転置を示す記号であり、
は、平方行列のトレースを表す記号である。また、微分は以下のように定義される。
-
-
関連項目[編集]
Recent Comments