南海10000系電車 – Wikipedia

南海10000系電車(なんかい10000けいでんしゃ)は、南海電気鉄道が1985年(昭和60年)から1992年(平成4年)にかけて製造した特急形電車である。

南海本線でそれまで運行されていた特急「四国号」に代わる特急「サザン」の運行開始に合わせ、専用車として製造された。

この形式から従来の欧風書体の車番表示からゴシック書体の車番表示に変わった。

1985年から1989年(平成元年)にかけて2両編成10本(20両)が製造されたが[1]、1992年(平成4年)に中間車が8両製造されるとともに先頭車6両の中間車化改造が実施され、4両編成7本(28両)に組み替えられた。

登場の経緯[編集]

南海本線では旧1000系による一部指定席の特急「四国号」が運行されていた。しかし、1000系は車体が製造後25年前後経過し老朽化が進み、また指定席車も座席は転換クロスシート・ロングシートであったため、1983年(昭和58年)に高野線の特急「こうや」に投入された全席リクライニングシートの30000系に比べると車内設備が見劣りするようになっていた。

1000系は1973年(昭和48年)の昇圧時に、機器を7000系・7100系と同一のものに交換されていた。このため自由席車には7000系・7100系を使用し、指定席車には1000系の機器を流用することで7000系・7100系との併結運転を可能としつつ30000系と同等の車内設備を持つ指定席専用車を使用し、「四国号」に代わる新たな一部指定席の特急列車を運行することとなった。これにより必要となる指定席専用車として製造されたのが本形式である。

車体[編集]

旧塗装時の10000系
※写真は、7000・7100系に「サザン」の列車名入り方向幕が用意されるまで自由席特急の方向幕で代用していた時のもの

普通鋼製の20 m車体である。7000系・7100系と、あるいは10000系同士の併結運転を行うため、先頭車の前面は貫通形で、前面窓は大型曲面ガラスを使用している。

先頭車は運転台後方と連結面側車端部の両端2か所に出入台を設けており、側面に2か所の折戸を設置しているが、中間車は出入台が1か所のみに設けられており側面1扉である。中間車化改造された車両は運転台とともに出入台も1か所が撤去されている。側面窓は1985年に製造された車両は30000系と同形の窓で、1992年に製造された中間車は11000系と同じ連続窓風の窓である。

製造当時の車体塗装はオーシャングリーンにダークグリーンの帯で、30000系とは色が異なるが塗り分けは類似する塗装であった。のちにメタリックシルバー地にオレンジと青の帯の塗装に塗り替えられている。

機器[編集]

主電動機・制御装置・ブレーキなどの機器類は1000系から流用しており、抵抗制御・電磁直通空気ブレーキである。7000系・7100系と同一品であり両系列との併結運転が可能であるが、10000系とほぼ同時期に造られた9000系とは併結運転できない(幌枠の形状も異なる)。

台車は1000系から流用せず、空気ばね台車のFS-528(電動車)/FS-028(制御車・付随車)を新製している。また、歯車比は将来、最高速度を120 km/hへ引き上げることを考慮して、85:16 (5.31) から83:18 (4.61) に変更されている[2]

車内設備[編集]

座席の違い(上が1次車、下が2次車)

座席は全席フリーストップ式(好みの角度で固定可能)リクライニングシートとなっている。1985年に製造された車両はセンターアームレスト(中肘掛)がなくテーブルも窓側にしかないが、カップホルダが設置されている。1992年に製造された車両は11000系と同じ座席で、センターアームレストやインアームテーブル(肘掛内蔵テーブル)が装備されている。また跳ね上げ式のフットレストもある。

モハ10101形には車椅子スペースおよびサービスコーナーを設置している。過去には「サザン」での車内販売が朝ラッシュ時のみ行われていた。

2両固定編成で運用開始された当初は1000系と同様に便所・洗面所はなかったが、4両編成化で組み込まれたサハ10801形では洋式男女共用・男子用・女子用トイレと洗面所を設置している。

4号車の乗務員室内の車内放送用マイクには、編成別放送機能があり、自由席車両として7000系・7100系を併結して運転する際に、指定席車両向け、または自由席車両向けの放送をそれぞれ行うことができるようになっている。具体的には、扉の位置・開き方および携帯電話の使用法などが両者で異なるため、これらに関する注意事項が放送される。マイク端子箱上に放送切り替えレバーが付いている。

編成・形式[編集]

当初は難波方先頭車が制御電動車のモハ10001形、和歌山方先頭車が制御車のクハ10901形の2両固定編成であったが、1992年に中間電動車のモハ10101形と付随車のサハ10801形を組み込み、難波方からモハ10001形(4号車) – サハ10801形(3号車) – モハ10101形(2号車) – クハ10901形(1号車)の4両固定編成となった。モハ10101形・サハ10801形は新製車 (10007F – 10010F) とモハ10001形・クハ10901形からの改造車 (10004F – 10006F) がある。このため、1992年に中間車化改造を受けた10001F – 10003Fは編成としては抹消された(よってモハ10101 – 10103番車と、サハ10801 – 10803番車は存在しない)。

現在は難波寄りに一般車両を4両繋げて運行するため、モハ10001形は営業運転で先頭に立つことがない。

編成表[編集]

2両固定編成時代
 

← 難波

和歌山市 →

   
形式 モハ10001

(Mc)

クハ10901

(Tc)

竣工日[3] 備考
車両番号 10001 10901 1985年10月1日 1992年中間車改造
10002 10902 1985年10月1日
10003 10903 1985年10月1日
10004 10904 1985年10月1日
10005 10905 1986年10月21日
10006 10906 1987年3月10日
10007 10907 1987年3月10日
10008 10908 1989年1月30日
10009 10909 1989年1月30日
10010 10910 1989年1月30日
4両固定編成化後
 

← 難波

和歌山市 →

   
形式 モハ10001

(Mc)

サハ10801

(T)

モハ10101

(M)

クハ10901

(Tc)

中間車の竣工(改造)日[3] 廃車
車両番号 10004 10804

(10901)

10104

(10001)

10904 (1992年9月4日)
10005 10805

(10902)

10105

(10002)

10905 (1992年7月3日) 2013年5月7日
10006 10806

(10903)

10106

(10003)

10906 (1992年7月3日) 2012年12月25日
10007 10807 10107 10907 1992年3月23日
10008 10808 10108 10908 1992年3月23日
10009 10809 10109 10909 1992年3月23日
10010 10810 10110 10910 1992年3月23日

特殊な塗装[編集]

  • 2014年10月5日からは、みさき公園におけるイベント「スーパー戦隊フェスティバルin みさき公園」の開催記念として、10004Fの和歌山方先頭車(10904)に「烈車戦隊トッキュウジャー」をデザインしたラッピングが施され、2015年1月7日まで運行された[4][5]
  • 2015年4月29日からは、10009F全車に「妖怪ウォッチ」のキャラクターをデザインしたラッピングが施され、6月28日まで運行された[6]。外装の他に、座席ヘッドカバーを特別デザインに変更するなど内装にも反映されている。
  • 2015年6月には、南海電鉄が創業130周年を迎え、7000系が同年9月末までに運行を終了することを記念して、10004Fが製造当時のオーシャングリーンにダークグリーンの帯の旧塗装に変更され、同じく緑のツートンカラーの旧塗装に変更された7000系と連結して、創業130周年記念のヘッドマークを掲出した「なつかしの緑色」の特急サザンとして2016年3月まで運用された[7]
  • 2019年12月23日からは、10004F全車に同年1月から「和歌山市ふるさと観光大使」に就任したHYDEとコラボレートした「HYDE サザン」を運行開始した[8][9]

南海本線の特急「サザン」にのみ使用される。基本的に4両編成で、全列車が7100系との併結運転である。2015年9月までは7000系との併結運転も行っていた。運用開始時から2009年10月3日までは10000系同士の併結運転による全車指定席の「サザン」も運行されていた。なお、空港線には一切乗り入れない。また高野線への入線は、千代田工場への出入場の場合以外はない。

また、和歌山で行われるみなと祭りでは、急行列車として運転されたことがある。急行として運転される際には、急行幕は入っていないため「-急行-(春木停車の急行)」で運転される。2002年(平成14年)4月28日には水軒駅廃止前のイベントで臨時列車として和歌山港線水軒駅まで乗り入れたこともある。

さらに10005Fが引退する事が発表され、これに伴うイベント列車として先頭車両2両の編成で加太線に入線することが発表された。加太線への入線はこれが初めてである[10]

置き換え[編集]

本系列は製造から20 – 25年以上が経過し、車体更新が行われておらず、走行機器も旧1000系の流用品であり老朽化が進んでいることから、2011年秋より導入される新型車両の12000系に順次置き換えられる事となった[11]

2012年12月25日付で10006Fが廃車・解体された[12]。また2013年4月にはホームページ上で10005Fの4両が引退する事が発表され[10]、その4両も同年5月7日付で廃車・解体された[13]。残りの編成については、サザン向け12000系の増備や、自由席車で使用される7100系の代替がストップしていることもあり、2021年現在も今後の処遇に関する公式発表はない。

みさき公園(2020年3月31日閉園)内にある、2014年9月27日にオープンした「わくわく電車らんど」にて、10005Fの和歌山方先頭車(10905)のカットボディが保存されている[14]。現在は、施設を含め閉鎖されたため非公開となっている。

  1. ^ 藤井信夫 『車両発達史シリーズ 6 南海電気鉄道 下巻』 関西鉄道研究会、1998年12月、110頁。 
  2. ^ 飯島巌、藤井信夫、井上広和 『復刻版私鉄の車両23 南海電気鉄道』9ページ
  3. ^ a b 「南海電気鉄道 車両履歴表」『鉄道ピクトリアル』2008年8月臨時増刊号 南海電気鉄道、電気車研究会、2008年、 286頁。
  4. ^ “「烈車戦隊トッキュウジャー」をデザインした特急サザンを運行” (PDF) (プレスリリース), 南海電気鉄道, (2014年9月18日), http://www.nankai.co.jp/library/company/news/pdf/140918.pdf 
  5. ^ 南海10000系に「烈車戦隊トッキュウジャー」ラッピング railf.jp(交友社) 2014年10月6日
  6. ^ “「特急サザン 妖怪ウォッチ号」を運行します” (PDF) (プレスリリース), 南海電気鉄道, (2015年4月7日), http://www.nankai.co.jp/library/company/news/pdf/150407.pdf 
  7. ^ “【南海】創業130周年&さようなら7000系記念企画 「懐かしの緑色」の特急サザンを運行します” (PDF) (プレスリリース), 南海電気鉄道, (2015年5月11日), http://www.nankai.co.jp/library/company/news/pdf/150511.pdf 
  8. ^ “「HYDE サザン」 12月23日(月) 運行開始!” (プレスリリース), 南海電気鉄道, (2019年12月24日), http://www.nankai.co.jp/traffic/info/hyde_train.html#:~:text=%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%90%E3%83%B3%E3%83%89%E3%80%8CL%27Arc%E3%80%9C,%E3%81%8B%E3%82%89%E9%81%8B%E8%A1%8C%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82 
  9. ^ 南海で「HYDEサザン」の運転開始 railf.jp(交友社) 2019年12月24日
  10. ^ a b “ありがとう「10005編成」特急サザンが加太線を初運行” (PDF) (プレスリリース), 南海電気鉄道, (2013年4月5日), http://www.nankai.co.jp/library/company/news/pdf/130405.pdf 
  11. ^ “新型特急「サザン」12000系を導入します” (PDF) (プレスリリース), 南海電気鉄道, (2011年1月17日), http://www.nankai.co.jp/library/company/news/pdf/110117.pdf 
  12. ^ 「車両データバンク」、『鉄道ファン』2013年8月号特別付録、交友社、2013年。
  13. ^ 「車両データバンク」、『鉄道ファン』2014年8月号特別付録、交友社、2014年。
  14. ^ 【南海】みさき公園に「わくわく電車らんど」が開館 – 鉄道投稿情報局 鉄道ホビダス 2014年9月29日

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]