京阪10000系電車 – Wikipedia

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京阪10000系電車(けいはん10000けいでんしゃ)は、2002年(平成14年)4月15日に営業運転を開始した京阪電気鉄道(京阪)の通勤形電車。

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老朽化した1900系や2600系0番台の置き換えおよび将来の支線(宇治線・交野線)でのワンマン運転の実施を目的として、2002年3月から4月にかけて4両編成3本が製造された。その後、2006年4月16日のダイヤ改定に合わせて3編成が追加が投入された。

後継車種は当系列をベースに3000系の意匠も取り込んだ13000系に移行しており、6000系から続いた大型非常扉を採用した車両は当系列が最後となっている。

登場当時のターコイズグリーン塗装の10001F

アルミ製で7200系をベースにしているが、バリアフリー化を進めるため床面を20mm下げている。この際台枠を20mm薄くすることで対応したため、台枠の強度確保のため車体裾部の絞り込みを廃止した。一方で、屋根高さを10mm上げたため出入り口高さは7200系と比較して30mm高い1850mmとなっている。先頭車の前面形状は7200系や9000系と同一である。

外板塗色は、従来の緑の濃淡のツートンカラーから45年振りに変更され、ターコイズグリーン一色となった。運転台次位の窓上にメタリックシルバーで「KEIHAN」のロゴを入れた。この塗装は本形式のみで他形式には波及せず、その後、2009年7月27日に出場した10004Fを皮切りに他車と同様の新塗装化が進められ、2010年の10006Fの新塗装化を最後に[2]、ターコイズグリーン一色の塗色は登場から8年で消滅した。

2次車の10004F以降は、側面窓枠が黒色になった[3]

2015年度以降、一部の編成でヘッドライトのLED化が施工された。

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走行機器[編集]

1次車では、1900系のや2600系のPT-4805A-Mパンタグラフ、汎用品のヒューズ箱、棒連結器からタイフォンに至るまで、廃車車両からの流用品や予備パーツの見直しによる余剰分を流用してコストダウンを図ったが、2次車はほぼすべて新造品となっている。ただし、2次車のコンプレッサーに2600系のものが使われている編成もある。

制御装置は東洋電機製造製の「ATR-H4200-RG678A」でIGBT素子によるVVVFインバータ制御が採用された。IGBT素子は京津線用としては800系で採用実績があるが、京阪線用としては初採用となった。なお、800系は全電動車方式で1C8M(8個のモーターを一つのコントローラーで制御)に対して10000系では1C2M2バンク(2モーターを一つのコントローラーで制御する回路を二つを一まとめしたもの)方式が取られている。これは編成中の電動車と付随車の両数(MT比)は2M2T(Mc-T-T-Mc)であるため、一つの制御回路が故障しても勾配区間で立ち往生することがないようにと考えられた。ブレーキは6000系2次車以降標準の「回生ブレーキ優先全電気指令式電磁直通ブレーキ(HRDA-1)」が採用され、2200系の発電ブレーキ車に比較すると45%の電力削減となり、省電力化が図られている。10004F – 10006Fには京阪で初めてタイヤフラット防止装置を試験的に導入した。

台車は1次車は動力車は川崎重工製のKW-77D・付随車は住友金属工業(現・新日鐵住金→日本製鉄)製のFS-517E、2次車は川崎重工製のKW-77Dに統一された。車輪はすべて防音車輪を採用して騒音低減を図っている。

空調装置は6000系以来、連続形のクーラーカバー内に3台のユニットクーラーを搭載していたが、これに代わってそれぞれ独立したクーラーカバー内にクーラーを設置している。これにはコストと保守の削減のほかに、混雑する出入り口部を避けてクーラーの吸気口を配置できるというメリットがある。エアコンは、代替フロンR407Cを使用したフルオートエアコンを採用して車内環境の快適化を図った。

編成中に異なる電源方式のコンプレッサー(空気圧縮機)を搭載している点も本系列の特徴の一つである。これは編成中に三相交流電源となるSIV(静止形インバータ補助電源装置)が1台のみの搭載で、編成中に2基あるコンプレッサーの双方とも三相交流式にするとSIVが故障した際にドアエンジンや空気ブレーキ用の圧縮空気が供給されなくなるため、編成に2基搭載するうち1基を直流式のHB1500B形コンプレッサー[注 1]とした。

基本的に7200系に準じたロングシートとなっている。座席は7200系・9000系および5000系更新車は背面が緑、座面が青の2色シートであったが、本系列では紺色に近い青色一色となった。これはシートモケットに耐久性があり価格も安くリサイクル可能なポリエステルを採用されたためである(5000系・7200系も、10000系のモケットに順次交換されたが、後に再度交換されている)。扉部分のつり革ははね上げ機構を省略した短いタイプとなる。はね上げ機構がないのは7000系以来である。窓ガラスはUVカットガラス(カット率90%)とされ、ドアガラスも複層ガラスとしている。側窓は、コスト低減と利用客の使用頻度が低かったことを理由に、7200系・9000系で採用されていたパワーウィンドウを廃止するとともに、扉間の側窓は固定窓とされた。

LED案内表示器は中之島線開業への対応のため、マップ式表示ではなくスクロール表示のみとした。

2次車の10004F以降は、難燃性基準の改正により蛍光灯カバーが省略されたほか、側面扉の引手が片側だけになった[3]

ワンマン運転への対応[編集]

ワンマン運転を実施することを見据えて自動車内放送装置を準備工事としていたが、これについては2007年夏以降で本工事を実施した。実施済み列車は開扉予告放送のフレーズが「左(右)側のドアが開きます」から「左(右)側のとびらを開けます」に変更されている。ワンマン表示は日本では希少である英文表示「Conductorless」を併記したものである。この表示は跳ね上げが可能であり、他の路線で使用される場合や、交野線でも早朝のツーマン運転の場合、および回送の際にはワンマン表示は跳ね上げられる。10001F・10002Fは後述の7両編成化の際にワンマン運転装置が撤去された。

2002年の営業運転開始直後にワンマン運転時の使用を想定した「中書島⇔宇治」「枚方市⇔私市」の行先幕を表示して運行したが、誤乗が相次いだことにより、数日で通常の表示に戻された。しかし、交野線については2007年9月22日からワンマン運転を行うにあたり、同年8月1日から「枚方市⇔私市」[注 2]の表示を復活させた。宇治線でも2013年6月1日以降のワンマン運用の際は「中書島⇔宇治」を表示している。

7200系・9000系からの編入[編集]

2016年に7200系の7301が10101に、9000系の9601・9602がそれぞれ10701・10751に改番されたうえで10001Fに編入、2017年に7200系の7302が10102に、9000系の9603・9604がそれぞれ10702・10752に改番されたうえで10002Fに編入され、7両化された[4][5]。同時に10651は10551に、10652は10552に改番された。従来の10000系と7200系・9000系からの編入車との間では車体やクーラーの形状が異なっている。7200系7301・7302の制御装置はGTO素子のVVVF装置であったが、10000系への改造に合わせてIGBT素子のVVVF装置にASSY交換されている。なお、10001F・10002Fでは7両化の際にワンマン運転機器を撤去している。

10000系(カッコ内は旧車番)
 
形式 10000
10500
10700
10100
10750
10550
10050
区分 Mc T T M T T Mc
車両番号 10001 10501 10701
(9601)
10101
(7301)
10751
(9602)
10551
(10651)
10051
10002 10502 10702
(9603)
10102
(7302)
10752
(9604)
10552
(10652)
10052

当初から主に宇治線と交野線で運用された。2008年10月の運用改定後は基本的に交野線専用となったが、2013年6月1日から宇治線でもワンマン運転が開始されたため、これ以降は13000系の4両編成と共通運用となり、13000系の交野線運用が増え、本系列は宇治線でも定期運用されるようになった。当系列の本線での営業列車は、平日朝に設定されていた1往復の運用が2006年4月16日のダイヤ改定でなくなったことで、イベント時を除きなくなった(回送列車のみの設定)が、2009年9月12日のダイヤ改定で平日深夜に1往復のみ復活した。当系列が使用されるのは、中之島発の快速急行「ひこぼし」の1本と、その前の運用の区間急行1本であった。しかし、2011年5月28日のダイヤ改定で当系列による本線での定期営業列車は再び消滅した[注 3]

先述のとおり、2016年に10001Fは7両化され、同編成は2016年3月16日から本線での定期営業列車に再び使用されるようになった。10002Fも7両化され、本線で運用されている。本線用は7両編成のため原則特急運用に充当されることはないが、8000系が2016年から2017年にかけてプレミアムカー改造のため7両編成で運用されていた時期には、8000系の運用の状況によって7両編成が定期運用の特急運用に入ることがあった[6]

2018年4月1日現在[7]

7両編成

← (京都)三条・出町柳

(大阪)淀屋橋・中之島 →

形式 10000形 10500形 10700形 10100形 10750形 10550形 10050形 備考
区分 Mc T T M T T Mc
車両番号 10001 10501 10701 10101 10751 10551 10051 2016年2月7両編成化[7]
10002 10502 10702 10102 10752 10552 10052 2017年4月7両編成化[7]
4両編成

← 私市・宇治(京都方)

枚方市・中書島(大阪方) →

形式 10000形 10500形 10650形 10050形 備考
区分 Mc T T Mc
車両番号 10003 10503 10653 10053
10004 10504 10654 10054
10005 10505 10655 10055
10006 10506 10656 10056

特別塗色・ラッピングなど[編集]

  • 2002年7月には立命館宇治高等学校の校舎移転による小型の広告が10001Fに貼り付けられ、ヘッドマークも装着されていた。
  • 2002年11月にはGOGO! トレインの発売をPRをするヘッドマークが10001Fに装着された。
  • 2003年8月から9月まで10001Fはダイヤ改正の告知の広告が貼付されていた。
  • 2004年7月28日から2005年3月1日まで、10001Fはe-kenet PiTaPaのラッピングが施された「e-kenet PiTaPa train」として運行されていた。
  • 2006年7月29日から2007年1月25日まで、10003Fは「きかんしゃトーマスとなかまたち」のラッピングが施され、「きかんしゃトーマス号2006」となった。初日には特別に運用変更で本線区間急行で運用した(一部時間帯のみ)。
  • 2011年3月19日から2012年3月31日まで、10001Fは「きかんしゃトーマスとなかまたち」ラッピングが施され、「きかんしゃトーマス号2011」となった。[8][9][10]
  • 2013年3月2日から2014年3月23日まで、10006Fは「きかんしゃトーマスとなかまたち」ラッピングが施され、「きかんしゃトーマス号2013」となった。さらに夏頃にはキャラクターの投票により1位となったキャラクターのラッピングが登場する予定となっている。車内装飾がされ、10時から16時に運用される列車では、トーマスの声優を務める比嘉久美子の録音による車内自動放送に変更される[11][12][13]
  • 2014年4月3日から2015年3月31日まで、10005Fは宇治・伏見観光キャンペーン「宇治・伏見、水と歴史の、まちめぐり。」の一環として、特別ヘッドマークと宇治・伏見の名所旧跡をデザインしたイラストステッカーを装飾して運転した。昼間時(始発駅を10時から15時59分までに発車する列車)の車内アナウンスを朝日放送アナウンサーの三代澤康司が自動放送にて担当し、沿線の名所旧跡などを案内した。
  • 2016年7月2日から10月30日まで、10006Fは「リトルツインスターズ」と枚方市産業振興キャラクターである「ひこぼしくん」と交野市産業PRキャラクターである「おりひめちゃん」がラッピングされた車両による「星のまち 枚方・交野 キキ&ララトレイン」の運行が行われている[14]
  • 2017年3月25日から2018年10月25日まで、10004Fは「きかんしゃトーマスとなかまたち」ラッピングが施され、「きかんしゃトーマス号2017」となった[15][16]
  • 2020年3月28日から2021年12月25日まで、10003Fは「きかんしゃトーマスとなかまたち」ラッピングが施され、「きかんしゃトーマス号2020」となった[17][18]

臨時列車等[編集]

  • 2006年1月4日には車両故障によるダイヤ乱れにより、10001FがK特急「おりひめ」の1本に充当された。4両のK特急運用はこれが初めてである。
  • 2006年8月10日には宇治川花火開催に伴う運用変更で準急「ひこぼし」の運用に2本入った(10002F・10005Fが充当)。そのうち1本は「ひこぼし」での折り返し前に本線区間急行に充当されている。
  • 2006年10月22日には、天満橋駅で開催された鉄道の日イベント開催に伴うアクセス列車として10003Fを使用した臨時K特急「おりひめ」が私市 → 天満橋間で運転された。土曜・休日のK特急運用はこれが初めてである。「おりひめ」のヘッドマークとともに「鉄道の日」のキャラクター「テッピー」副標識を付けての運転となった。天満橋到着後は同じく「きかんしゃトーマスとなかまたち」ラッピングとなった7203Fとともに展示され、展示後は特別に運用変更で本線区間急行で運用された。
  • 2006年11月19日にも10003Fによりファミリーレールフェア直通臨時列車で天満橋から寝屋川車庫まで運行し、約1か月ぶりに本線を走行した。

「トーマスラッピングラストラン 臨時特急おりひめ」(2007年1月21日 野江駅にて)
  • 2007年1月21日には「きかんしゃトーマス」ラッピング電車ラストランとして10003Fを使用した臨時列車が運転された。特に、宇治始発の天満橋行は宇治快速以来のことであり、特急が新停車駅になってからは初めてのこと、宇治線での特急設定は臨時ながらも初であったため、多くのファンが撮影などに押しかけた。ただし、停車駅は宇治快速時代と異なり、宇治線内は各駅に停車していた。
  • 2007年8月10日には宇治川花火開催に伴う運用変更で準急「ひこぼし」の運用に1本入った(10001Fが充当)。
  • 2008年7月7日には「七夕伝説」イベントに伴う「おりひめ」「ひこぼし」の出逢いとして、10001Fに「おりひめ」のヘッドマークを取り付け、準急「ひこぼし」に充当された1929Fと共に、私市駅で19:04 – 19:07の3分間「おりひめ」「ひこぼし」の並びが演出された。この「おりひめ」ヘッドマークは、通常のK特急としては運転されなかった代わりに、交野線内の普通列車1往復に取り付けたため、通常の「直通K特急 私市 → 淀屋橋」の表記を、「七夕伝説 枚方市⇔私市」と差し替えた、7月7日限定の特別のものであった。
  • 2011年3月19日には「きかんしゃトーマス」ラッピング電車運行開始記念として10001Fを使用した臨時快速急行が中之島 → 私市間で、臨時普通が私市 → 枚方市間でそれぞれ運転された。土曜・休日の交野線直通快速急行運用はこれが初めてである。
  • 2011年5月5日には「きかんしゃトーマス」ラッピング電車の10001Fを使用した臨時快速急行「私市ハイキング号」が中之島 → 私市間で、臨時普通が私市 → 枚方市間でそれぞれ運転された。
  • 2011年7月8〜12日には「きかんしゃトーマス」ラッピング電車の10001Fが宇治線で運用された[19]
  • 2013年6月15〜17日には宇治線開業100周年記念イベントに併せて「きかんしゃトーマス」ラッピング電車の10006Fが宇治線で運用された[20]

履歴[編集]

予算区分 編成番号 竣工日 運用開始日 ワンマン化改造 ABS取付 粘着剤噴射装置取付 新塗色化
2001年度分 10001F 2002年3月18日 2002年4月15日 2007年7月31日 2009年9月9日
2002年度分 10002F 2002年4月19日 2002年4月24日 2007年7月27日 2009年12月2日
2002年度分 10003F 2002年4月25日 2002年4月27日 2007年7月24日 2010年2月26日
2005年度分 10004F 2006年3月27日 2006年4月15日 2007年7月23日 2006年3月27日 2009年7月27日
2006年度分 10005F 2006年4月28日 2006年5月3日 2007年7月25日 2007年3月5日 2010年1月25日
2006年度分 10006F 2006年5月19日 2006年5月23日 2007年7月26日 2007年3月15日 2007年3月15日 2010年4月23日

注釈[編集]

  1. ^ 1900系の廃車流用品。昇圧工事時に交換されており経年が浅かった。
  2. ^ ただし2008年の幕交換以降は行先幕の様式が異なっている。
  3. ^ 再び回送列車のみとなったが、2009年以前と異なり、土曜・休日深夜に中書島駅 – 三条駅 – 淀駅という経路の変則的な回送列車が設定された。

出典[編集]

参考文献[編集]

  • 福島温也「京阪電気鉄道 現有車両プロフィール 2009」、『鉄道ピクトリアル2009年8月臨時増刊号』第822巻、電気車研究会、2009年8月 266 – 268頁。

外部リンク[編集]

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