親衛隊階級 – Wikipedia

親衛隊階級では、ナチス・ドイツの親衛隊(SS)の隊員が使用していた階級及び階級章について記述する。

SS階級の由来[編集]

親衛隊の階級は、その母体である一般親衛隊の初期の部隊編成が由来である。もともと一般親衛隊は上位組織の突撃隊に倣って

  • 親衛隊集団(SS-Gruppe)
  • 親衛隊旅団(SS-Brigade)
  • 親衛隊徒歩連隊(SS-Fuß-Standarte)
  • 親衛隊大隊(SS-Sturmbann)
  • 親衛隊中隊(SS-Sturm)
  • 親衛隊小隊(SS-Schar)
  • 親衛隊分隊(SS-Rotte)

という部隊編成をとっており、それぞれの司令官は「指導者(führer)」と呼ばれた。親衛隊集団なら「親衛隊集団指導者(SS-Gruppenführer、親衛隊中将)」となる。

これらがやがて部隊編成上の呼称ではなくなり階級とされたものが親衛隊の階級制度である。親衛隊集団と親衛隊旅団はそれぞれ親衛隊上級地区(SS-Oberabschnitt)と親衛隊地区(SS-Abschnitt)に置き換えられて部隊編成としては廃止されたが、親衛隊集団指導者(親衛隊中将)と親衛隊旅団指導者(親衛隊少将)は階級名として残った。

なお「親衛隊上級集団指導者(SS-Obergruppenführer、親衛隊大将)」の階級が生まれたのは1934年の長いナイフの夜の後、ヒムラーの親衛隊全国指導者が突撃隊幕僚長と同格になった後である[1]

親衛隊の階級は襟章と肩章によって見分けられた。襟章の導入は1929年8月、肩章の導入は1933年5月である[2]

もともと親衛隊の肩章は下士官および兵卒、下級将校(尉官)、上級将校(佐官)、将官という大雑把な区別をする物で、デザインは突撃隊の肩章が原型で黒と銀色の配色からなった。(なお、一部の一般SS高官を除いて一般SS隊員では最後まで用いられていた)[3]。ところが1938年3月にはSS特務部隊(武装SS)においては陸軍型の肩章が導入され、肩章での階級が細分化されて示されるようになり、後に一般SSでも用いられるようになった[4]

1934年の長いナイフの夜事件の後に階級章にやや変更が加えられ、さらに1942年4月には親衛隊上級大将(SS-Oberstgruppenführer)の階級が追加されたので将官の襟章の階級章に大きな変化が生じた[5]

一般SSと武装SSの階級の違い[編集]

親衛隊二等兵と親衛隊一等兵と親衛隊少将以上の将官階級において一般SSと武装SSで違いがあった。また武装SSには一般SSには存在しない親衛隊特務曹長(SS-Sturmscharführer)の階級が存在した。

親衛隊二等兵は武装SSでは「SS-Schütze(SS狙撃手)」、一般SSでは「SS-Mann(SS隊員)」となる。親衛隊一等兵は両方ともそれに「ober(上級)」が付く。将官の階級は武装SSではドイツ国防軍陸軍と同じ階級を用いていた。武装SSの大将は「General der Waffen-SS」となり、これは武装SSが陸軍と連携する上での関係からである。なお、武装SSの将官は常に一般SSの将官も兼ねており[6]、武装SS大将の場合、階級は「親衛隊上級集団指導者および武装親衛隊大将(SS-Obergruppenführer und General der Waffen-SS)」となる。さらにナチス・ドイツにおいて、警察はSSとほぼ一体だったので警察の将官の階級は一般SSと武装SSと警察の3つの階級の肩書きをもっていることが多かった。例えば「親衛隊上級集団指導者ならびに武装親衛隊および警察大将(SS-Obergruppenführer und General der Waffen-SS und Polizei)」といった具合である。

階級一覧[編集]

1934年–1945年[編集]

1932–1934[編集]

1930–1932[編集]

1925–1929[編集]

階級識別の為、初期の親衛隊が採用した初期型の政治指導者腕章

腕章のストライプで階級を区分した。

  • 全国指導者 (Reichsführer) ストライプ3個

全国指導者相当 (Reichsleiter)

  • 上級指導者 (Oberführer) ストライプ2個

大管区指導者相当 (Gauleiter)

  • 大隊指導者(Staffelführer) ストライプ1個

管区指導者相当 (Kreisleiter)

  • 兵卒(Mann)  ストライプなし

参考文献[編集]

出典[編集]

  1. ^ 山下、p.48
  2. ^ 山下、p.306
  3. ^ ラムスデン、p.69
  4. ^ ラムスデン、p.179
  5. ^ フォステン、p.113
  6. ^ 山下、p.486
  7. ^ 武装SSの防寒着(迷彩スモックなど)に用いられた。防寒着の着用によって徽章類が隠れ、階級の判別が付かなかったので、新たに袖章が防寒着専用の階級章として採用された。なお、肩章の見える通常の野戦服やオーバーコートには用いられていない。
  8. ^ 但し、海軍の代将(こちらは佐官である上、袖章が将官と同様であるものの、大佐と同じ肩章が使用される)に相当するとも言われている。
  9. ^ SS伍長、SS特務曹長、SS士官候補生を除く古参のSS下士官が着任した。専用の袖章は2本の下士官用リッツェを服の両袖口に用いた。

関連項目[編集]