高速道路ナンバリング – Wikipedia

高速道路ナンバリング(こうそくどうろナンバリング)とは、高速道路に路線番号を付与し、道案内を行うシステムおよび路線番号案内標識の総称である。

高速道路ナンバリング対象路線(未開通区間含む)

日本においては、訪日外国人観光客の増加などに伴い利用者に分かりやすい道案内のため、高規格幹線道路や地域高規格道路の一部などの高速道路に番号を付与している。ナンバリングは未成区間、自動車専用ではない区間も含まれる。

概要[編集]

日本では2017年(平成29年)から高規格幹線道路(高速自動車国道など)やその他の重要な高速道路ネットワークを担う道路(地域高規格道路の一部の路線)や環状道路に、利用者への分かりやすい案内のためにナンバリングが実施されている[1][2]

国内の高速道路の案内標識は基本的なシステムが名神高速道路の開通によって確立され、その後東名高速道路や中央自動車道の開通で改訂されているが、この時すでに高速道路のネットワーク化を見据えて路線番号を導入する必要性が提唱されている。2016年(平成28年)3月に国土交通省は、高速道路に対して既存の路線名に加え、路線番号を導入すると発表[5]。訪日外国人が増加している中、外国人のドライバーからは「日本の高速道は分かりにくい」という声があったためで、2021年に開催された東京オリンピック・パラリンピックを見据えたものであった[5][6]。2016年4月8日から合計6回にわたり実施された「高速道路ナンバリング検討委員会[7]」で高速道路ナンバリングの導入の具体的な内容が議論された[8]。その後議論を積み重ねたのちの同年10月24日の「高速道路ナンバリングの実現に向けた提言 (PDF) 」を基に2017年(平成29年)2月14日に、一部改正し施行された「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令」でナンバリングの標識が新設され[9]、運用されている。

「高速道路ナンバリング検討委員会」は高速道路ナンバリングの導入に向けた具体の検討を行うために設置され[8]、全6回の委員会では「高速道路ナンバリングを取り巻く状況」や「ナンバリングルールの検討」、「意見交換」などが行われた[8]。2016年(平成28年)10月24日に公開された同委員会のとりまとめ「高速道路ナンバリングの実現に向けた提言」やそれを要約した「高速道路ナンバリングの実現に向けた提言のポイント」によるとこのような提言がされている[1][10]

  • ドイツ、フランス、イタリア、イギリス、アメリカなどの国では既に高速道路ナンバリングが実施されていることから、日本にも高速道路ナンバリングが必要
  • 高規格幹線道路に加え「高規格幹線道路網を補完して地域のネットワークを形成している路線」や「高規格幹線道路から主要な空港・港湾、観光地へのアクセス」で利用者にシームレスに案内されるべき道路が対象
  • その地固有の言語に依存しない「ナンバリング」
  • 国土の根幹的な路線の既存の2桁以内の国道番号(旧一級国道)を活用
    • それに合わせ数字は原則2桁以内
  • 同一起終点など、機能が似ている路線をグループ化しアルファベットで区別
  • 首都圏、名古屋圏の環状道路はアルファベットで区別
  • それらの国道に並行しないものなどは自治体コード順に59番以降を付与
  • 既にナンバリングが実施されている都市高速道路は対象としない

以上のような提言を基に、2017年(平成29年)2月14日に改正された「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令」で高速道路番号(118の3)として標識が新設され[9]、運用が開始された。その後2017年(平成29年)2月26日の首都圏中央連絡自動車道 境古河IC – つくば中央ICの開通時に、日本で初めて高速道路ナンバリングの標識が設置された[11]

ナンバリングのルール[編集]

ナンバリングの対象は高速自動車国道などで構成される「高規格幹線道路」と、地域高規格道路などの「高規格幹線道路などを補完し地域の道路ネットワークを担う道路」、「高規格幹線道路から主要な空港・港湾、観光地へのアクセス道路となる路線」に加えて、首都圏と名古屋圏の環状道路も含まれる[12]。都市高速道路(首都高速や阪神高速など)には既にナンバリングが実施されているため、対象にはならない[1][12]

基本的な付番方法は以下の例に基づくが、例外もある。また同じ路線でも区間ごとに番号が異なったり、逆に複数の路線へ同じ番号が割り当てられている場合もある。

(出典:[1][17][18][19]

また、国土交通省が、読み方の違いなどによる混乱を避けるために読み方のガイドラインを制定している。「E1」の場合、日本語で「いーいち」、英語で「イーワン」や、「E56」の場合「いーごじゅうろく」「イーフィフティシックス」であることなどが決められている[20][21]

ナンバリングの活用[編集]

高速道路ナンバリングの標識は、主に利用者に向けての案内が必要なJCTやICなどの案内標識に路線名と路線番号が併せて表示される。また、カーナビや地図での案内にも使用することが想定されている[2]。高速道路ナンバリング標識の設置は東京オリンピック・東京パラリンピックが開催される2020年までに効果が発揮できるようコストも考慮し計画的に標識の整備を行い、JCT周辺などの経路選択や東京オリンピック・パラリンピック競技会場へのアクセスを考え効果的に標識を配置するとしている[10]

道路標識においては、2017年3月11日の南九州西回り自動車道の高尾野北IC – 野田IC開通時[22] や同月18日の京奈和自動車道の岩出根来IC – 和歌山JCT開通時[23]、同年4月30日の新名神高速道路 城陽JCT – 八幡京田辺JCT開通時[24] に設置されるなど、新規開通区間を中心に高速道路ナンバリングの設置が進み、2018年4月より全都道府県で高速道路ナンバリングを使用した案内が開始されている[25]

地図においては、2017年10月より国土地理院の地理院地図にて高速道路ナンバリングを表示しているほか[26]、昭文社のツーリングマップル2019年版に路線番号を掲載している[27]

一覧[編集]

一覧の注意

1・2桁国道に平行(E1-E58)[編集]

(出典:[18][19]

その他の高規格幹線道路(E59-E78)[編集]

(出典:[18][19]

高規格幹線道路でない路線(E80-E98)[編集]

(出典:[18][19]

環状道路[編集]

  • 「C3」は首都圏と名古屋圏で重複して使用されている。

(出典:[18][19]

自動車専用ではない区間[編集]

当面活用区間などでは自動車専用ではない区間を有し、125cc以下の小型自動二輪車などの通行が許される。

高速道路ナンバリング検討委員会[編集]

高速道路ナンバリング検討委員会 (こうそくどうろなんばりんぐけんとういいんかい)は高速道路ナンバリングの導入に際し付番方法やデザイン、活用などの詳細を議論するために設置された[7][8]。政策研究大学院大学教授の家田仁を委員長に構成される[28]

自動車道ナンバリング[編集]

一部の一般自動車道の路線ではナンバリングによる案内が導入されている。「Driveway」の「D」を頭につけた路線番号が国土交通省から付与されている[29][30]。ナンバリングについての国土交通省からの発表等は行われていない。

日本以外の各国と地域[編集]

欧州自動車道路のナンバリング標識

日本を除いた各国での高速道路ナンバリングは、ヨーロッパの国では比較的文字を囲んだような簡単なデザインが多いがそれ以外の国では象徴的なデザインが多い傾向にある[6]。また、欧州自動車道路(ヨーロッパハイウェイ)のナンバリングは「E30」の形で、日本におけるナンバリング標識と非常に類似している。

ドイツ[編集]

ドイツのナンバリング標識

ドイツにおけるナンバリングでは、路線名は数字のみで、南北に通る道路には奇数を、東西に通る道路には偶数を付番しているのが特徴。幹線となる道路には1桁、それを補完する道路には2桁・3桁の番号が付番される[6]。標識には表示しないが口頭ではアウトバーン(Autobahn)の頭文字からA3などと表現し、一般国道(Bundesstraße)をB5などと表現し判りやすく区別している(標識はアウトバーン:青地に白文字、国道は黄色地に黒文字で一目瞭然である)。標識の表示では数字を特徴的な形で囲んだデザインが使用されている(画像参照)[6]。同様の方法がアメリカ(後述)や韓国で採用されている[1]

イギリス[編集]

イギリスのおけるナンバリングでは、国道に平行する高速道路には、その国道番号とMをつけて「M4」のようにする。二桁番号は一桁路線の枝線扱いされ、「M42」などとされる。標識は文字をくくっただけのデザインとなっている[6]。フランスにおける高速道路でも、同様の方式が使われている[1]

アメリカ[編集]

アメリカにおけるナンバリングでは、南北に走る幹線には西から東へ「5・15…95」と奇数を付与。東西に走る幹線には「10・20…90」と偶数を付与。幹線のバイパスとなるルートなどは接続する幹線に偶数を付けて3桁に、支線は接続する幹線に奇数を付けて3桁とする[6]。標識には象徴的なデザインが用いられている[6]。これは先述のドイツの高速道路などと同様の方法である[1]

台湾[編集]

台湾における国が管理する高速道路は、国道と省道に分かれる。行政上の管理の名称は、国道が「高速公路」、省道が「快速公路」である。2者の違いについては台湾の国道の項を参照のこと。

高速公路(国道)と快速公路(省道)の違いは標識の形を見れば一目瞭然だが、国道のマークであっても3号甲(台北連絡線)と8号(台南支線・台南環線)は、法律上「快速公路(省道)」である。これは道路交通法上の違いである。

中華人民共和国[編集]

中国におけるナンバリングでは、一般道路と高速道路にも適用されている。一般道路はふつう三桁である。

高速道路の場合は、道路の管理機関により「国家高速道路」「省級高速道路」に分けられ、ナンバーの先頭には「G」「S」(ピンインの頭文字)が付けられる。

すべての線路は、「幹線」「並行線路」「連絡線路」「都市環状線」に分けられる。標識はヨーロッパと日本のデザインに似ている。

幹線の場合、首都放射線路は一桁(G4)、他の線路は二桁(G15)である。南北に走る幹線には東から西へ奇数(G45)を付与し、東西に走る幹線には北から南へ偶数(G30)を付与する。地区環状線は、二桁で「G9x」になる(G91)。

幹線の並行線路がある場合、幹線番号、並行線路の識別番号「2」と「x」で、四桁を付与する。xのところは、並行線路の数で一桁の数字「1」から入れる。幹線は首都放射線路の場合、幹線番号の前に「0」を入れて四桁になる(G0425)。連絡線路が10線路を超える場合、識別番号が「4」になることは許される。

連絡線路は、幹線につながる高速道路であり、ナンバーリングの規則は平行線路と同様であるが、識別番号だけ「1」に変える(G7211)。10線路を超えた場合、並行線路の識別番号が「4」になることができる。

都市環状線は、同じく四桁である。だが、識別番号は必ず「0」になる。幹線番号は先に一番小さな二桁の幹線番号を使い(G1501、G1503、G4202(中国語簡体字))、同じ番号が出ることは禁じられる。首都放射線路だけにつながる場合、その首都放射線路の番号を使う(G0401(中国語簡体字))。

省級高速道路はだいたい同じ規則を使うようである。

韓国[編集]

注釈[編集]

出典[編集]

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]