トウゴクサバノオ – Wikipedia

トウゴクサバノオ(東国鯖の尾、学名:Dichocarpum trachyspermum)は、キンポウゲ科シロカネソウ属の二年草[5][6]。別名、オオヤマシロカネソウ[1]

植物体全体に無毛で繊細である。ほとんど発達しない短い根茎があり、根はひげ状になる。茎は高さ5-30cmになり、1株から3-4本が出て斜めに立ち上がり、上部は多少とも分枝する。基部から数個の長い葉柄のある根出葉をだして、3-5小葉からなる鳥足状複葉になり、頂小葉は扇形から広卵形になって、長さ幅は0.5-2cmになる。根出葉の葉柄の基部は、卵形の鞘状になって大きく広がる。茎につく葉は対生し、頂小葉は扇形から広卵形で、長さ幅ともに0.5-2cm、縁はあらい鋸歯縁、基部は円形からくさび形となり、短い葉柄の基部の鞘は合着する[4][6][7]

花期は4-5月。茎先に径5-10mmの黄白色から黄緑色の花が1-2個、やや垂れ下がって咲く。花柄は細く、長さ0.5-3cmになる。花弁状の萼片は5個で、楕円形で長さ4-8mm、幅2-4mmになり、全開はしない。萼片の内側に小さな花弁が5個あり、花弁の舷部はオレンジ色で幅の広い軍配形、蜜腺があって蜜を分泌し、直立するか内曲し、その柄は黄白色になる。雄蕊は15個ほどあり、長さ3-5mm、葯は白色。雌蕊は2個。果実は袋果で長さ0.9cmになり、基部で2個が合着して広がり魚の尾のように見える。種子は径1mmの球形で、小さな突起があり光沢がない[4][6][7]

茎の基部の鱗片に閉鎖花をつける[4][6][7]

分布と生育環境[編集]

日本固有種。本州の岩手県以南、四国、九州に分布し、温帯林の沢沿いなどやや湿った林床に生育する[4][6]

名前の由来[編集]

和名のトウゴクサバノオは「東国鯖の尾」の意で、関東地方に生えるサバノオの意味である[4]が、分布は関東地方より西の本州、四国、九州まで分布している[5]。また、サバノオは、花後の果実がT字状になるのを、鯖の尾に見立てたもの[8]

種小名 trachyspermum は「ざらざらした種子の」の意味[4]

ギャラリー[編集]

下位分類[編集]

  • フクリンアズマシロカネソウ Dichocarpum trachyspermum (Maxim.) W.T.Wang et P.K.Hsiao f. didymocalyx (H.Ohba) H.Ohba[9] – 9-10個の花弁状萼片が重弁状に配置された、トウゴクサバノオの品種[10][11]
2000年に東京大学総合研究博物館教授の大場秀章によって、アズマシロカネソウの重弁品種として、学名:Dichocarpum [12] W.T.Wang et P.K.Hsiao f. didymocalyx H.Ohba と命名記載され、和名は「フクリンアズマシロカネソウ」とされた[10]。その後2003年に、この重弁品種の基本種はアズマシロカネソウではなく、トウゴクサバノオであるとして現在の品種学名に訂正されたが、和名は「フクリントウゴクサバノオ」とは訂正されず、「フクリンアズマシロカネソウ」のままになった[11]。そのためか、2016年に改訂版が出版された『改訂新版 日本の野生植物 2』において、アズマシロカネソウの「八重咲品種をフクリンアズマシロカネソウ f. didymocalyx H.Ohba という」と記載されている[6]
  1. ^ a b トウゴクサバノオ「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  2. ^ トウゴクサバノオ「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  3. ^ 『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』pp.224-225
  4. ^ a b c d e f g 『新牧野日本植物圖鑑』p.132, p.1317
  5. ^ a b 『日本の固有植物』p.54, p.296
  6. ^ a b c d e f 『改訂新版 日本の野生植物2』pp.149-151
  7. ^ a b c 『日本の野生植物 草本II 離弁花類』p.81
  8. ^ 『山溪名前図鑑 野草の名前 夏』p.225
  9. ^ フクリンアズマシロカネソウ「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  10. ^ a b 「アズマシロカネソウの重弁花(大場秀章)」, The Journal of Japanese Botany, 『植物研究雑誌』Vol.75, No.6, pp.369-370, (2000).
  11. ^ a b 「シロカネソウ属(キンポウゲ科)品種学名の訂正(大場秀章)」, The Journal of Japanese Botany, 『植物研究雑誌』Vol.78, No.2, p.115, (2003).
  12. ^ 下線強調は投稿者による。

参考文献[編集]