モスラ3 キングギドラ来襲 – Wikipedia

モスラ3 キングギドラ来襲』(モスラ スリー キングギドラらいしゅう)は、1998年(平成10年)12月12日に公開された日本映画[3]。製作は東宝映画[2]。配給は東宝[2]。カラー、ビスタビジョン、ドルビーステレオ[2][4]

『モスラ2 海底の大決戦』の続編であり、平成モスラ3部作の最終作[出典 1]。監督は第1作を手掛けた米田興弘が担当[5]。配給収入は8.5億円を記録。

物語の特性として、前作よりは色濃くはないがジュブナイル性は保持しており、その一方で男児向けの色合いが強くなっている[8]

本作品では出現したキングギドラをモスラが迎え撃つも敗北し、タイムトラベルし過去に地球へ襲来した時のキングギドラ幼体を倒すという戦い方を行った。従来のキングギドラに相当する成体(現代型)に対して、本作品で初登場したキングギドラ幼体は「白亜紀型キングギドラ」と呼ばれる[注釈 2]。成虫のモスラとキングギドラの戦いが描かれるのは本作品が初めてである[1]。中生代のシーンではティラノサウルス、トリケラトプス、プテラノドン、ブロントサウルスが登場している[11]

元々は火をテーマにし[12]、火の新怪獣を倒すためにモスラが江戸時代へ旅立つプロットであったが、新怪獣からラドン、さらにキングギドラと既存の人気怪獣の使用へと企画が変更された。また、エリアスのトライアングルや原始モスラが作るピラミッド型の繭など、「3」がキーワードとなっている[11]

前2作でロラを演じた山口紗弥加がスケジュールの都合により出演できず、代役に建みさとが起用された[7][13]。そのこともあってか本作品はモルとベルベラの2人に焦点が当たった展開となっている。山口は本作品では冒頭のナレーションを担当した[7]

音響面ではドルビーデジタル方式が標準使用され、東宝映画としては初めて日本国内のみでデジタル化作業が行われた[12]

ストーリー[編集]

インファント島の宝物殿から黒い妖精ベルベラがエリアスのトライアングルの一つである「愛」を示すメタルを奪っていった。彼女は地球の危機を察知していたのだ。それは1億3千万年前に恐竜を滅ぼした宇宙超怪獣キングギドラの脅威であった。キングギドラは地球へ飛来し、市街地から子どもたちを青木ヶ原樹海に出現させたドームへさらってしまった。それは数万人の子供たちを一度に捕食し、自分のエネルギーにするためであった。キングギドラは地球の生態系の上位の生物を捕食し、滅ぼす魔獣であり、1億3千万年前は恐竜を、現代の地球では個体数が多い人類の子供をその餌食に定めたのだ。それを阻止するため、エリアスはモスラを呼んだ。モスラはキングギドラに戦いを挑むが、攻撃は全く効かず、恐竜エキスで強大に成長したその圧倒的な力の前に敗北してしまう。その上、エリアス姉妹の妹ロラがキングギドラにマインドコントロールされ、敵になってしまった。

この最大の危機に、モスラは過去の1億3千万前の恐竜のいたころに行って、まだ若い幼体のキングギドラを倒すと言う。しかし、エリアス姉妹の姉モルはこの作戦に猛反対した。なぜなら一度過去に行けば、もう現代に戻れなくなってしまうからである。必死で考えなおすよう説得するモル。しかしモスラは何があろうと絶対に行くという決意でいたため、モルは後のことを翔太に託し、モスラをタイムスリップさせるための歌で命を落とす。翔太はギドラに捕らわれた脩平と珠子を救うために、残されたフェアリーとともに地下の風穴を通ってドームに侵入するが、ギドラの手に落ちたロラが立ちふさがる。それを助けたのは、一足先に来てドームに捕らわれたベルベラであった。ベルベラはエリアス姉妹の長女であり、翔太と協力してロラを救い出す。

一方、中生代(白亜紀)の地球では、幼体のキングギドラが恐竜を丸のみにして捕食しようとしていたが、そこへモスラが登場し、戦いを挑んだ。モスラの攻撃が効いているのか、もがき苦しむ現代のキングギドラ。その後、ギドラからの反撃を受けてモスラは倒れるも、現代で正気を取り戻したロラの祈りの歌が届き、復活。ギドラを火山の噴火口の中の溶岩に落とし、自身も力尽き再び動かなくなる。無数の蛍に導かれその場に現れた中生代に生息する三体の原始モスラは自分たちの繭で保護するように現代のモスラを包んだ。

再び現代。中生代でのギドラの死と引き換えにドームが消滅し、子供たちは逃走、翔太は脩平と珠子を助け出すが、歴史が変わったなら自分たちがそもそもここにいないだろうというベルベラの懸念は現実のものとなった。キングギドラは幼体の時の戦闘中にちぎれた尻尾から蘇生し、再び姿を現した。ロラとベルベラは姉妹の絆を取り戻す。アイテムはエリアス三姉妹の知恵と勇気と愛を示す剣であった、2人の姉妹は次女モルの遺志を継いでフェアリーに乗り、キングギドラに立ち向かうが苦戦する。その時、恐竜時代の地層から出現した繭から、1億年3千万年もの眠りを経て最強の鎧モスラに変化したモスラが帰還。キングギドラとモスラの最後の戦いが始まった。

鎧モスラはキングギドラの光線をものともせず、体格では上回るキングギドラを圧倒するパワーで押しかえし、激戦の末に必殺技のエクセル・ダッシュ・バスターを繰り出して倒した。そして子供たちを解放。鎧モスラ・エターナルに変身し、モルを生き返らせた。親や先生と再会する子供たちを見守りながら、モスラはインファント島へと羽ばたき帰っていくのだった。

登場キャラクター[編集]

モスラ
レインボーモスラ→アクアモスラ→モスラ光速モード→鎧モスラ、原始モスラ、フェアリーが登場。
キングギドラ
エリアス

ガルガルIII[編集]

ガルガルIIがベルベラによりさらに改良され、よりロボット的な外観となっている。右目に生物などを分析するスコープが取り付けられた[14][15]。性能は向上したが改造しすぎて故障することも多く、胸部には非常用エンジンスターターも装備されている[14][15]。武器は口から吐かれる紫色の光線シュビビンビーム’[18][14]

  • デザインは酉澤安施が担当[15][19]。ベルベラが自分の手で改造したという想定で、リコイルスターターなどレトロ感を表現している[19]。当初は前作の造形物が使用できないという予定であったため、デザインを一新したロボット型や乗り物として描かれていた[19]
  • 造形物は、1作目から引き続き使用している大型モデルを改修している[15][19]

登場アイテム[編集]

エリアスのトライアングル
インファント島の宝物殿に眠るエリアス族の伝説の道具。ベルベラ用の紫の「勇気」、モル用のピンクの「知恵」、ロラ用の水色の「愛」の3つのメダルで構成される。それぞれの剣にはめて使うと奇跡が起こると言い伝えが残っている。

キャスト[編集]

スタッフ[編集]

本編[編集]

特殊技術[編集]

特殊視察効果[編集]

エンディングテーマ
Future
歌:小林恵、作詞・作曲・編曲:RYUZI
挿入歌
モスラの歌
ハオラ・モスラ
モルVersionとロラVersionが存在。

特撮・エピソード[編集]

この作品ではそれまでの川北紘一に代わり、鈴木健二が特技監督として参加して、全て新たなシフトで行われた[出典 5]。また、メインのモスラを弾着用もあわせて4体、普通の怪獣2体分の予算がかかるといわれるキングギドラを2体も新規造型した上に、恐竜と原始モスラまで製作したために、ミニチュアによるビルを造る予算がなく、都市破壊シーンは石膏板を爆破する映像に実景を合成するデジタル合成がメインであった[12][5]

造型は若狭新一が全てを監修した。成虫モスラはそれまでの生物感のなさを改善するためにジム・ヘンソンの工房でも使われているボアを海外まで若狭自らおもむいて取り寄せ、『ゴジラvsモスラ』以降続いたぬいぐるみ的な質感のモスラから脱却した。後の『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』でのモスラはこの作品のモスラと材料、造型ともほぼ同様であるという。

登場時間は長くないが、ティラノサウルスとトリケラトプスがパペットで操演された(他の恐竜はすべてCG)。

キングギドラとの空中戦が見どころの一つとなっている。

劇中に、主人公の祖父の肖像として田中友幸の写真が飾られている[注釈 5]

映像ソフト[編集]

  • DVD
    • 2006年3月24日発売。鈴木健二(特技監督)のオーディオコメンタリー付き。
    • 2013年11月8日に期間限定プライス版として再発売された。
    • 2015年8月19日に東宝DVD名作セレクションとして再発売された。
  • Blu-ray
    TBR27294D、2017年11月3日発売。
    モスラ3部作(モスラ、モスラ2、モスラ3)を収録したBOX。

注釈[編集]

  1. ^ 書籍『ゴジラ画報』では、「1時間39分」と記述している[1]
  2. ^ スタッフの間では現代型が「グランドギドラ」、白亜紀型が「ヤングギドラ[4]」とも呼ばれていた。
  3. ^ 資料によっては、メカニカルドラゴンと記述している。
  4. ^ 書籍『東宝特撮映画大全集』では、不明と記述している[11]
  5. ^ 監督の米田によれば、ロケ先の民家の遺影を映画のために外すのは失礼と考え、主人公の家族を見守ってほしいという願いを込めて田中の写真を並べて飾ったとのことである。

出典[編集]

  1. ^ a b c ゴジラ画報 1999, pp. 226–227, 「モスラ3 キングギドラ来襲」
  2. ^ a b c d e 東宝特撮映画大全集 2012, p. 260, 「『モスラ3 キングギドラ来襲』」
  3. ^ a b c d 日本特撮映画図鑑 1999, pp. 132–135, 「モスラ3 キングギドラ来襲」
  4. ^ a b c d e f g h 超常識 2016, pp. 302–305, 「恐怖の大魔王が世紀末の地球に来襲! モスラ3 キングギドラ来襲」
  5. ^ a b c d e f g h 東宝特撮全怪獣図鑑 2014, pp. 103–105, 「モスラ3 キングギドラ来襲」
  6. ^ 大高宏雄「付録 日本映画1990-1999配収ベスト10」『日本映画逆転のシナリオ』WAVE出版、2000年4月24日、251頁。ISBN 978-4-87290-073-6。
  7. ^ a b c d e 東宝特撮映画大全集 2012, p. 261, 「『モスラ3 キングギドラ来襲』作品解説/俳優名鑑」
  8. ^ 特撮全史 2020, p. 124, 「モスラ3 キングギドラ来襲」
  9. ^ a b c d e 東宝特撮映画大全集 2012, p. 262, 「『モスラ3 キングギドラ来襲』怪獣図鑑/資料館」
  10. ^ a b c 東宝特撮映画大全集 2012, p. 263, 「『モスラ3 キングギドラ来襲』撮影秘話/川北監督に訊く」
  11. ^ 東宝特撮女優大全集 2014, p. 156, 文・モルモット吉田「平成モスラ三部作」
  12. ^ a b c d e f g ゴジラ画報 1999, p. 35, 「東宝怪獣紳士録」
  13. ^ a b c d e f g h オール東宝怪獣大図鑑 2014, p. 272, 「『モスラ3 キングギドラ来襲』ガルガルIII」
  14. ^ a b c 超全集 1999, p. 18, 「モスラ3 キングギドラ来襲 キャラクター図鑑 ガルガルIII」
  15. ^ a b c d 酉澤安施 2014, p. 96, 「酉澤安施東宝映画デザインワークス モスラ3 キングギドラ来襲」

出典(リンク)[編集]

参考文献[編集]

外部リンク[編集]