日本における特許取得手続 – Wikipedia

本項では日本における特許取得手続を説明する。以下本項では特に断りがない限り、条数は特許法(平成28年12月16日最終更新)のものを表すものとする。

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{{displaystyle left{{begin{array}{l}\\\\\end{array}}right.}

却下理由通知

18条の2 2項

弁明書提出

18条の2 1項

{{displaystyle {Bigg {}}

出願却下 :弁明書が認められない or 弁明書を提出しなかった場合
実体審査へ:弁明書が認められた場合
特許出願 方式審査
↓{displaystyle leftdownarrow {begin{array}{l}\\\\\\\end{array}}right.}

補正指令、補完指令

17条、38条の2、

38条 の4

手続補正書、

手続補完書、

明細書等補完書の提出

{{displaystyle {Bigg {}}

出願却下:書類が認められない or 書類を提出しない
実体審査へ:書類が認められた
{{displaystyle left{{begin{array}{l}\\\\\\\end{array}}right.}

最初の拒絶理由通知

50条

意見書(50条)、

手続補正書(17条)

の提出

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拒絶査定:拒絶理由解消せず or 書類提出せず
実体審査へ:拒絶理由は解消したが新たな拒絶理由を発見
拒絶理由あり

→                {displaystyle {xrightarrow[{}]{ }}}

特許査定:拒絶理由を解消し、他に拒絶理由がない
審査請求

48 条の3

実体審査
↓{displaystyle leftdownarrow {begin{array}{l}\\\\\end{array}}right.}

最後の拒絶理由通知

(17条の2第5項)

意見書(50条)、

手続補正書(17条)

の提出

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拒絶査定:拒絶理由解消せず or 書類提出せず
拒絶

理由

なし

特許査定:拒絶理由を解消し
特許査定

出願ルート[編集]

日本において特許を取得する方法として、以下のものがある。以下で2,3は日本国外にも出願した/する予定の場合の出願方法で、4,5は実用新案若しくは意匠として一旦出願した後、考えを変えて特許出願に切り替える場合の出願方法である。実用新案の場合は、登録された後であっても6に記載したように特許出願に切り替えられる。なお、4,5を行った場合は実用新案・意匠の出願は取り下げたものと見なされるし(特28年四十六条4項)、6を行う場合は実用新案権の放棄が必要である(特28年四十六条の二1項)。

出願方法 根拠条文
1 最初から日本に特許出願
2 パリ条約の同盟国又は世界貿易機関の加盟国に出願後、12ヶ月以内に日本の特許庁に出願(パリルート中山3版(p205)若しくは(国際)優先権出願という) パリ条約4条C、特28年四十三条の一~三
3 PCT(特許協力条約)に従って国際出願した後、30ヶ月以内に日本に国内移行する(PCTルート中山3版(p207)若しくはPCT出願という) 特28年第百八十四条の三~二十特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律、特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律施行規則
4 日本で実用新案登録出願し、出願後所定の期間(通常3年)が経過する前に特許出願に変更する 特28年四十六条1項
5 日本で意匠登録出願し、出願後所定の期間(通常3年)が経過する前で、しかもて最初拒絶査定の謄本の送達日から3ヶ月が経過する前に特許出願に変更する 特28年四十六条2項
6 日本で実用新案登録された考案を、所定の期間(通常3年)で所定の条件を満たす場合に特許出願する 特28年四十六条の二

パリルートで最初に行った出願を優先権主張の基礎となる出願中山3版(p206)という。後述するように、パリルートで国際優先権出願した場合は、発明の新規性が基礎となる出願を行ったときを基準に判断するなどの特典が与えられる。

最初から日本に特許出願する場合の特殊ケースとして、以下のものがある:

名称 説明 根拠条文
国内優先権出願 出願するときに日本でそれ以前に行った出願を「基礎となる出願」として指定する。これによりパリルートの場合に類似した特典が得られる。 特28年四十一条1項柱書
分割出願 特許審査の過程で、発明の単一性が認められないなどの理由で元々出願していた「親出願」から「子出願」を分割する。 特28年四十四条1項柱書。パリ条約四条G⑴⑵にも同趣旨の規定がある

これらの詳細は後述する。

出願日・新規性の判断[編集]

日本において特許権の存続期間は特許出願の日から20年なので(特28年六十七条)、六十七条でいう「出願の日」がいつだとみなされるのかが重要となる。前述した1~6の方法で日本に出願した場合の「出願の日」は以下のとおりである。

出願の日 新規性の判断基準 出願の日の根拠条文
1(国内優先を除く) 願書を提出した日(書類不備の場合を除く。特28年三十八条の二1項)。 出願日と同一(特28年二十九条)。
2 日本に願書を提出した日中山3版(p206) 第一国出願時刻となる(パリ条約4条B)高橋5版(p49)
3 国際出願をした日 出願日と同一(特28年二十九条) 特28年百八十四条の三、PCT11条(3)
4 実用新案を出願した時 特28年四十六条6項
5 意匠登録出願した時 特28年四十六条6項
6 原則として実用新案を出願した時 特28年四十六条の二2項

特許の新規性の判断基準は特許出願時であると規定されているので(特28年二十九条)、1の国内優先の場合と2の場合とを除き、出願日と同一である。ただし新規性は日単位の基準ではなく時刻単位の基準なので、出願と同一日の早い時刻に公知となった場合も新規性を失う高橋5版(p49)。1の国内優先の場合と2の場合とが例外となるのは、それぞれ特28年四十一条2項、パリ条約4条Bにこれらを例外とする旨の規定があるからで、これらの場合の新規性の判断基準は以下の時刻になる:

出願の日 新規性の判断基準 出願の日の根拠条文
国内優先出願 後の出願の日中山3版(p213) 優先権の基礎となる出願の内容を拡大することなく、基礎となる出願の補正が許される限度内では、基礎となる出願の出願時刻を基準として新規性を判断し、それ以外は後の出願の出願時刻を基準として新規性を判断する高橋5版(p228)
分割出願の子出願 親出願の出願の日 親出願の出願の日 特28年四十四条2項

特許出願[編集]

特許出願は書面主義を採用しており、発明品の現物を提出したり、口頭で出願したりする事はできない中山3版(p175)

提出書類[編集]

特許を受けるには、以下のものを特許庁長官に提出しなければならない(特28年三十六条1、2項)。

  • 次に掲げる事項を記載した願書
    • 特許出願人の氏名又は名称及び住所又は居所
    • 発明者の氏名及び住所又は居所
  • 必要な図面
  • 明細書
  • 特許請求の範囲
  • 要約書

これらの書き方の詳細は特28年施行規則に定められている。

明細書には、次に掲げる事項を記載しなければならない(特28年三十六条3項)。

  • 発明の名称
  • 図面の簡単な説明
  • 発明の詳細な説明

また文献公知発明で特許を受けようとするものが知っているものがあればその文献に関する情報の所在を「発明の詳細な説明」の箇所に記載しなければならない(特28年三十六条4項2号)。

特許請求の範囲は請求項に区分して書く(特許法三十六条5項)。審査は各請求項毎に行われ、出願が特許された場合には、認められた請求項に記載された範囲に対して特許権が及ぶ。

要約書は明細書の内容の把握の助けとするに過ぎず、特許発明の技術的範囲の確定には考慮できない(特28年七十条)。

備考[編集]

  • 特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者と共同でなければ、特許出願をすることができない(特28年三十八条)。
  • 特許出願を放棄し、又は取り下げるには、仮専用実施権者(もしいれば)の承諾を得る必要がある(特28年三十八条の五) 

外国語書面出願[編集]

明細書、特許請求の範囲、及び図面に含まれる説明を日本語で記載したものの代わりに経済産業省令で定める外国語で記載したもの(外国語書面)と、要約書の代わりにそれを外国語で記載した書面(外国語要約書面)を願書に添付して出願する事もできる(特28年三十六条の二1項)。これを外国語書面出願という(同条2項)。

翻訳文の提出[編集]

外国語書面出願の出願人は、その出願日から一年4ヶ月の期限Xに外国語書面及び外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない(特28年三十六条の二2項)。外国語書面ではなくこの翻訳文が、出願書類・要約書とみなされる(特28年三十六条の二8項)

なお、

  • ここでいう「出願日」は国内優先権出願、パリ条約(第四条C(4)若しくは同条A(2))による国際優先権出願の場合にはそれぞれ、原出願の日、パリ条約(第四条C(4)若しくは同条A(2))の規定により最初の出願とみなされた出願を指す(特28年三十六条の二2項)。さらに2つ以上の優先権の主張を伴う特許出願の場合は、それらのうち最初の出願日と認められたものを指す(特28年三十六条の二2項)。
  • 外国語書面出願が出願の分割による子出願(特28年四十四条第一項、詳細後述)、実用新案登録や意匠登録からの出願の変更(特28年四十六条)、又は実用新案登録に基づく特許出願(特28年四十六条の二第一項)の場合は、上述の期間が経過した後であっても、分割等による出願を行った日から二ヶ月以内なら、外国語書面及び外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出できる(特28年三十六条の二2項)。

上述の期間内に外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文が提出されなかった場合は、特許庁長官は出願人にその旨を通知しなければならない(特28年三十六条の二3項)。この通知を受けた者は、経済産業省令で定める期限Yまでに、外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文を特許庁長官に提出することができる(特28年三十六条の二4項)。期限Yまでに提出された翻訳文は、期限Xに特許庁長官に提出されたものとみなす(特28年三十六条の二7項)。期限Yが過ぎた後も外国語書面(図面を除く。)の翻訳文が提出されなかった場合は、その出願は期間Xの経過の時に取り下げられたものとみなす(特28年三十六条の二5項)。

期限Yまでに翻訳文が提出できなくとも、正当な理由があるときは、経済産業省令で定める期間内に限り翻訳文を特許庁長官に提出することができる(特28年三十六条の二6項)。この場合も、翻訳文は期限Xに特許庁長官に提出されたものとみなす(特28年三十六条の二7項)。

以降の流れ[編集]

特許出願を行った当初は出願内容の秘密が担保されるが、出願から1年6ヶ月が経つと出願内容が公開する出願公開がある。

また特許庁における審査は、出願が法令で定めた形式に合致している事を確認するもの方式審査と、特許の中身を審査する実体審査(あるいは単に「審査」出願29年度(p2)とに分かれ、前者は出願後に自動的に審査が始まるのに対し、後者は審査請求という、実体審査の実施を請求する行為によって開始される出願29年度(p2)。こうした審査の結果として、若しくは出願人の自発的な意思により、出願書類を補正する行為を手続の補正(特28年十七条)という。手続の補正は行える時期と種類が詳細に決まっている。

以上で概説した事項を次節以降で順に説明していく。

方式審査[編集]

特許出願があると、出願書類に対して特許庁の側で以下の二種類の確認が行われる。1つ目は特28年十七条3項に規定されている、手続き上の不備の有無のチェック(詳細後述)であり、このチェックに引っかかった場合、特許庁長官は、相当の期間を指定して、手続の補正をすべきことを命ずる補正指令出願29年度(p2)を出願人に対して出すことができる(特28年十七条3項)。

また提出すべき書類が欠けていたり、提出されていても不明瞭であったりする場合(詳細後述)、特許庁長官は、その書類を保管するよう命ずる補完指令出願29年度(p2)を通知しなければならない(特28年三十八条の二2項、特28年第三十八条の四1項)。

ただし補正や補完ができないと判断された場合、特許庁長官はこれらの指令は送らずに、出願手続を却下する(特28年十八条の二1項)。その際却下する理由を通知し、相当の期間を指定して、弁明を記載した書面(弁明書)を提出する機会を与えなければならない(特28年三十八条の二2項)。

補正指令[編集]

補正指令を出す事ができるのは、特28年十七条3項の一号から二号のいずれかに該当したときである。

  • 一号 手続が第七条第一項から第三項まで又は第九条の規定に違反しているとき
    • 七条1項違反 独立して法律行為をできない未成年が法定代理人によらず手続をしたり、成年被後見人が法定代理人によらず手続をした
    • 七条2項違反  保佐人の同意を得ず、被保佐人が手続した
    • 七条3項違反  後見監督人がいるにもかかわらず、その同意を得ずに法定代理人が手続した
    • 九条違反 不利益行為を代理するための特別の授権を得ない代理人が手続をした
  • 二号  手続が特許法又は特許法に基づく命令で定める方式に違反しているとき
  • 三号  手続に必要な規定の手数料が納付されないとき

三号以外の手続の補正をするには、手続補正書を提出しなければならない(特28年十七条4項)。ただし外国語書面出願の出願人が、誤訳の訂正を目的として、前項の規定により明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をする場合は、手続補正書ではなく誤訳訂正書を提出する(特28年十七条4項、特28年十七条の二2項、詳細後述)。

補完指令[編集]

補完指令を出さねばならないのは、以下のいずれかに該当したときである。

根拠条文 内容
特28年三十八条の二1項 一号 特許を受けようとする旨の表示が明確でないと認められるとき
二号 特許出願人の氏名若しくは名称の記載がなく、又はその記載が特許出願人を特定できる程度に明確でないと認められるとき
三号 明細書(外国語書面出願にあっては、明細書に記載すべきものとされる事項を第三十六条の二第一項の経済産業省令で定める外国語で記載した書面)が添付されていないとき(先願参照出願を除く)
特28年第三十八条の四1項 願書に添付されている明細書又は図面(外国語書面出願にあつては、明細書に記載すべきものとされる事項を第三十六条の二第一項の経済産業省令で定める外国語で記載した書面又は必要な図面でこれに含まれる説明を同項の経済産業省令で定める外国語で記載したもの)について、その一部の記載が欠けていることを発見したとき

三十八条の二の補完指令には手続補完書を、三十八条の四の補完指令には明細書等補完書を提出する方式審査便覧29年度:04.09主要期間一覧

出願公開[編集]

制度概要[編集]

特許出願を行った当初は出願内容の秘密が担保されるが、出願日から1年6ヶ月後経過すると出願内容が公開される(特28年六十四条1項)。公開方法は、特許公報に掲載されるというものである(特28年六十四条2項)。外国語書面出願の場合は、外国語のものも公開される(特28年六十四条2項1号)出願人が請求すれば、1年6ヶ月経過する前に公開することも可能である(特28年六十四条の二1項)。なお一度提出した公開請求は、取り下げることができない(特28年六十四条の二2項)。

必要書類が揃っていない場合は公開請求は却下される(第六十四条の二1項2、3号。外国語書面で出願した後その翻訳文を提出していない等)。また、出願内容が公序良俗に反すると特許庁長官が認めるときは、出願公開番号や発明者の氏名等の最低限の情報のみを公開し、明細書本文等は公開しない。さらに、請求があった若しくは1年6ヶ月後経過した事により、すでに特許公報に載ったことのある特許出願は、その後請求があるか若しくは1年6ヶ月後経過しても、再び特許公報に載せる事はない(特28年六十四条1項、同法六十四条の二1項1号)。

要約書の内容に不足があると判断された場合は、特許庁の側で書いた要約書が公開される(特28年六十四条3項)。なお、要約書は特許発明の技術的範囲の確定には考慮できないので(特28年七十条)、これにより出願人が有利・不利になる事はない。

なお、公開を1年6ヶ月後としたのは、優先権出願とそれ以外を平等に扱うため、優先権証明書の提出期間(1年4ヶ月)+出願公開の準備期間(2ヶ月)として算出したものである逐条20版(p233)。同様の早期公開制度を採用しる諸外国がいずれも1年6ヶ月である事も理由である逐条20版(p233)

公開は、出願が特許庁に係属している限り、審査を行うか否かによらず強制的に行われる中山3版(p214)。しかし公開前に出願の取下げ、放棄、却下、若しくは拒絶査定が確定したときは、すでに特許庁に係属していないので、公開されない逐条20版(p234)。ただし、出願人の側から公開請求がなされた場合は、これらの場合でも必ず公開される逐条20版(p234)。また、すでに特許掲載公報(後述)に載ったものを、改めて公開公報に載せる事はない(特28年六十四条1項柱書)。

また外国語でされた国際特許出願に関しても、翻訳文が提出された後、遅滞なく、国内公表している(特28年百八十四条の九)。

公報の種類[編集]

発行元 名称 内容 根拠条文
特許庁 公開特許公報 国内出願のものを載せる 特28年第六十四条
公表特許公報 国際出願のうち外国語でされたものを載せる 特28年第百八十四条の九
再公表特許公報 国際出願のうち日本語でされたものを載せる 法律上の規定はないが、行政サービスとして発行している公報FAQ
特許掲載公報 特許されたものを載せる
世界知的所有権機構(WIPO)の国際事務局(IB) 国際広報 PCT出願の国際公開

なお、分割出願や変更出願がなされた場合、公開特許公報、公表特許公報、再公表特許公報の「出願日」の欄には分割出願又は変更出願をした日を、「原出願日」分割出願又は変更出願をした日を、「原出願日」には遡及日を掲載している公報FAQ。さらに特許庁は、以上のものの他に登録実用新案公報、意匠公報、公開商標公報、商標公報も発行している公報FAQ

保証金制度[編集]

出願が公開された後、特許権の設定の登録前までの間、業としてその発明を実施した者に対して出願人は補償金の支払を請求できる(特28年六十五条1項)。補償金の支払を請求するには、事前に特許出願に係る発明の内容を記載した書面を提示して警告する必要がある(同項)。ただし請求相手が出願公開がされた特許出願に係る発明であること知った上で業としてその発明を実施していた場合は、警告は必要ない(同項)。なお、仮専用実施権者又は仮通常実施権者がその設定行為の範囲内で発明を実施する場合は、この者達に補償金の支払を請求できない(特28年六十五条3項)。また先使用権者や職務発明の場合の使用者等も補償金支払い義務を追わない逐条20版(p240)

請求権を行使するのは特許権の設定の登録後でなければならず(特28年六十五条2項)、時効は登録の日から3年である(特28年六十五条6項)。出願公開後に特許出願の放棄、取り下げ、却下、拒絶査定の確定、拒絶審決の確定等のときは、初めから生じなかつたものとみなす(特28年六十五条5項)。また、一度出願人が警告を出したとしても審査中に特許請求の範囲を補正した場合は、補正後に再度警告が必要になる中山3版(p218)

請求権はあくまで特許登録前の実施に対するものなので、請求権の行使は特許登録後の特許権の行使を妨げない(特28年六十五条4項)。すなわち、保証金を支払うという事は特許登録までの期間に出願人からライセンスを受けていたのと同じ扱いであり中山3版(p218)、特許登録後のライセンス料は別扱いである。また保証金はライセンスと同じ扱いになる事から、保証金を支払っての登録前実施中に作った物を、特許登録後に販売しても問題ないはずである中山3版(p218)

請求できる額は、その発明が特許発明である場合にその実施に対し受けるべき金銭の額に相当する(特28年六十五条1項)。請求方法は特許侵害の際の諸規定を準用する(特28年六十五条5項)。ただし請求には悪意または警告を要件としているので、特許侵害の場合の過失推定規定(特28年百三条)は準用されない中山3版(p217)。これは第三者が実施する際、特許広報の調査を義務付けていない事を意味する中山3版(p217)

審査請求[編集]

制度概要[編集]

所定の期限Xまでに特許庁長官に審査請求をすれば、出願の審査が開始される(特28年四十八条の三1項)。審査請求は任意である為、出願人の意思により、あえて期限までに審査請求しない事も可能である。ただし、所定の手数料を納めさえすれば(特28年第百九十五条関係別表の九)、何人も審査請求が可能であるので(特28年四十八条の三1項)、出願人でも発明者でもない全くの第三者が審査を請求する可能性もある中山3版(p237)。なお、この場合であっても審査手続きを行うのは出願人である中山3版(p237)。また特許庁長官は、特許出願人でない者から出願審査の請求があつたときは、その旨を特許出願人に通知しなければならない(特28年四十八条の五2項)。一度行った審査請求は、取り下げることができない(特28年四十八条の三3項)。

審査請求を開始する為の所定の期限Xは、出願日から3年以内である(特28年四十八条の三1項)。ただし分割出願の子出願、実用新案登録や意匠登録からの変更出願、実用新案登録に基づく特許出願の場合、ここでいう「出願日」は遡及により原出願日になってしまう為逐条20版(p208)、分割等を行った時点ですでに3年が過ぎている事もありうる。そこでこのような場合であっても(原出願日ではなく分割等を行った方の)出願日から三十日以内に限り、出願審査の請求をすることができる事が定められている(特28年四十八条の三2項)。

所定の期限Xまでに審査請求をしなかった場合は、出願は取り下げたものとみなされる(特28年四十八条の三4項)。ただし審査請求をしなかった場合であっても、正当な理由があれば、経済産業省令で定める期間内に限り、出願審査の請求をすることができる(特28年四十八条の三5項)。この場合の審査請求日は、前述の期限Xの満了する時であるとみなす(特28年四十八条の三6項)。

出願公開前に出願審査の請求があつたときは出願公開の際又はその後遅滞なく、出願公開後に出願審査の請求があつたときはその後遅滞なく、その旨を特許公報に掲載しなければならない(特28年四十八条の五1項)。

法定通常実施権[編集]

期限Xが来た段階で出願が取り下げられた旨が特許公報に載ってしまうので、これを見たものが出願が取り下げを信じてその出願発明を実施(若しくはその準備を)してしまう事が起こりうる。しかしこれと並行して、出願人が上述の期限延長を用いた場合、実際には取り下げにならず、その後特許が成立してしまった場合、こうした発明実施(準備)者は、所定の条件を満たせば、通常実施権が与えられる(審査請求期間徒過後で救済が認められるまでの間の実施による通常実施権、特28年四十八条の三8項)。

優先審査・早期審査[編集]

出願審査は、原則として審査請求が行われた順番で行われるが、優先審査制度や早期審査制度を利用する事で例外的に審査の時期を早める事ができる。

優先審査制度[編集]

出願公開後に第三者が業として出願発明を実施している場合、その特許出願を優先的に審査するよう特許庁長官は指示できる(特28年四十八条の六)。

特許庁長官は、出願公開後に特許出願人でない者が業として特許出願に係る発明を実施していると認める場合において必要があるときは、審査官にその特許出願を他の特許出願に優先して審査させることができる。

優先審査制度[編集]

出願公開後に第三者が業として出願発明を実施している場合、その特許出願を優先的に審査するよう特許庁長官は指示できる(特28年四十八条の六)。

出願公開になった発明を第三者が実施している場合、又は出願人からの警告を受けた場合、事情説明書の提出により、優先審査を行うのがこの制度の狙いである出願29年度(p322)

ただしこれはあくまで特許庁長官の裁量であるので、優先審査が許可されなくても不服申立てはできない中山3版(p237)

早期審査制度[編集]

以下のいずれかに該当する時は、出願人は中山3版(p237)早期審査制度を利用できる出願29年度(p161)

  • 中小企業、個人、大学、公的研究機関等の出願
  • 外国関連出願
  • 実施関連出願
  • グリーン関連出願
  • 震災復興支援関連出願(平成23年8月1日から当面の間)
  • アジア拠点化推進法関連出願

実体審査[編集]

特許出願の実体審査は、特許庁長官が指定した審査官が行う(特28年四十七条)。審査官はもっぱら書面で審査を行うが高橋5版(p221)、面接やテレビ面接で行うこともできる高橋5版(p221)面接ガイド。なお、審査官には除斥規定があり、その詳細は審判官の除斥規定(特28年百三十九条)が準用されている(特28年四十八条)。
審査の質の維持と効率化を図るため、特許庁は先行技術文献調査を登録調査機関に業務委託外注している。登録調査機関では、特許庁が主催する調査業務実施者(検索者または特許サーチャーとも呼ばれる)と調査業務指導者(検索指導者とも呼ばれる)の講習を受講し、それぞれの講習内の特許庁審査官による試験に合格した者のみ当該作業の実務を行なっている。先行技術文献調査は、高度検索閲覧用機器を用いて、クラスタ検索と呼ばれる特許文献検索を、全文(テキスト)検索、フリーワード検索(審査官フリーワード)、Fターム検索、FI検索、CPC検索等を用いて行なわれる。

先行技術文献情報開示要件[編集]

既に述べたように、文献公知発明で特許を受けようとするものが知っているものがあれば、その文献を明細書に記述しなければならないが(特28年三十六条4項2号)、この要件が満たされていないと審査官が認めるときは、特許出願人に対し、その旨を通知(第48 条の7 の通知審査基準27年度(p105))し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えることができる(特28年第四十八条の七)。

拒絶理由[編集]

審査官は出願書類を読み、この出願を拒絶すべき理由(拒絶理由)を探す。拒絶理由としては特28年四十九条に列挙されているもののみを選ぶことができ、これ以外の理由で拒絶理由・拒絶査定を受けることはない。審査官の恣意を防ぐためである:

一号 その特許出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面についてした補正が第十七条の二第三項又は第四項に規定する要件を満たしていないとき〔すなわち、補正可能な範囲を超えているとき。詳細後述〕
二号 その特許出願に係る発明が以下のいずれかの規定により特許をすることができないものであるとき 外国人の権利の享有 第二十五条
産業上の利用可能性 第二十九条
発明要件
新規性(公知、公用、刊行物記載)
進歩性要件
拡大先願 第二十九条の二
公序良俗 第三十二条
共同出願 第三十八条
先願 第三十九条第一項から第四項まで
三号 その特許出願に係る発明が条約の規定により特許をすることができないものであるとき
四号 その特許出願が以下に規定するいずれかの要件を満たしていないとき 記載要件 第三十六条第四項第一号若しくは第六項
単一性 第三十七条
五号 前条の規定による通知をした場合であつて、その特許出願が明細書についての補正又は意見書の提出によつてもなお第三十六条第四項第二号〔先行技術文献情報開示義務〕に規定する要件を満たすこととならないとき
六号 その特許出願が外国語書面出願である場合において、当該特許出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が外国語書面に記載した事項の範囲内にないとき〔原文新規事項〕
七号 その特許出願人がその発明について特許を受ける権利を有していないとき〔冒認出願〕

拒絶理由通知[編集]

拒絶理由が見つかった場合、拒絶の理由を通知する拒絶理由通知を審査官は特許出願人に対して送る(特28年五十条、十七条の二1項1号)。拒絶理由通知は最初の拒絶理由通知(特28年十七条の二1項1号)と最後の拒絶理由通知(特28年十七条の二1項3号)の二種類に分かれる。なお出願人にはじめて通知する拒絶理由を含むものは最初の拒絶理由であるので逐条20版(p55)、出願人とのやり取り内容によっては「最初の拒絶理由通知」が複数届く場合もある。これは本来一回目に通知すべきであった拒絶理由を含んでいるという意味で「最初の拒絶理由通知」と呼ばれているのである審査基準27年度:I部2章3節

拒絶理由通知を受け取ったら、出願人は拒絶理由に対する意見を表明した意見書(特28年五十条)と出願書類の内容を変更する手続補正書(特28年十七条4項)の両方若しくは一方のみを提出する事ができる。ただし手続補正書は提出できる時期が限定されており、しかも最初の拒絶理由通知の場合と最後の拒絶理由通知の場合で補正できる範囲が異なる(詳細は次節)。

審査官は意見書や手続補正書を読み、拒絶理由が全て解消したと判断した場合にはその出願に特許が与え(特許査定、特28年五十一条)、拒絶理由が解消しない事を結論づけた場合はこの出願を拒絶する(拒絶査定、特28年四十九条)。

出願人による応答[編集]

手続の補正[編集]

出願手続をした者は、事件が特許庁に係属している場合に限り、出願書類を補正をすることができる(特28年十七条1項)。これは自発的に行うこともできるし、補正指令に対応する為に行う場合もある。ただし時期によって補正できる範囲は制約を受ける場合がある。

明細書、特許請求の範囲、及び図面の補正[編集]

補正可能な時期[編集]

まだ特許査定を受けていない場合、以下の時期にのみ、明細書、特許請求の範囲、及び図面を補正できる(特28年十七条の二1項):

根拠条文 時間的要件 補正可能な時期
柱書 まだ拒絶理由通知を受け取っていない場合 任意の時期
一号 最初の拒絶理由通知を受け取った場合 その通知で指定されている期間内のみ
二号 拒絶理由通知を受けた後第四十八条の七の通知を受けた後 その通知で指定されている期間内のみ
三号 最後の拒絶理由通知を受け取った場合 その通知で指定されている期間内のみ
四号 拒絶査定不服審判を請求する場合 その審判の請求と同時にするときのみ
補正可能な範囲[編集]

外国語書面出願における誤訳訂正の場合を除き、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲を超えて補正する事はできない(特28年十七条の二3項)。

前述した三号、四号に該当するケースにおける補正においては、補正できる範囲は更に制限され、以下を目的とするものに限るられる(特28年十七条の二5項)。一号に該当し、しかも拒絶理由通知と併せて第50条の2の通知(後述)を受け取った場合も同様である(特28年十七条の二5項)。

  • 請求項の削除
  • 特許請求の範囲の減縮
  • 誤記の訂正
  • 明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)

特許請求の範囲の減縮の際には、請求項に記載された発明を特定するために必要な事項を限定し、補正前と補正後で当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一になるようにしなければならない(特28年十七条の二5項)。

拒絶理由通知を受け取った後の補正は、補正前の発明と補正後の発明が単一性要件(特28年三十七条)を満たさねばならない(特28年十七条の二4項。いわゆるシフト補正の禁止)。この場合、分割出願が求められる。

外国語書面出願の場合[編集]

外国語書面出願の出願人は、外国語書面及び外国語要約書面について補正をすることができない(十七条2項)。外国語書面出願の出願人は、誤訳の訂正を目的として明細書、特許請求の範囲又は図面について補正できる(特28年十七条の二2項)。この際その理由を記載した誤訳訂正書を提出しなければならない(特28年十七条の二2項)。外国語書面出願の場合は、前述した「添付した明細書、特許請求の範囲又は図面」とは外国語書面の翻訳文に記載したものを指す(特28年十七条の二3項)。誤訳訂正書を提出した場合は訂正後の外国語書面の翻訳文の事である(特28年十七条の二3項)。

その他の書類の補正[編集]

  • 経済産業省令で定める期間内に限り、願書に添付した要約書について補正をすることができる(特28年十七条の三)。
  • 国内若しくは国際優先権をした場合、経済産業省令で定める期間内に限り、その書類を補正できる(特28年十七条の四)。
  • 特許異議の申立てにおいて、審判官が指定した期間に限り、訂正の請求書に添付した訂正した明細書、特許請求の範囲及び図面を補正できる(特28年十七条の五1項)。
  • 特許無効審判の被請求人は、特許法で指定された期間内に限り、第百三十四条の二第一項の訂正の請求書に添付した訂正した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる(特28年十七条の五2項)。
  • 訂正審判の請求人は、審理終結通知がある前(審理の再開がされた場合は、その後更に審理終結通知がある前)に限り、訂正審判の請求書に添付した訂正した明細書、特許請求の範囲及び図面を補正できる(特28年十七条の五3項)。

分割出願[編集]

特許出願が二以上の発明を包含していた場合、出願人は出願の一部を1つ以上の別の特許出願に分割できる(特28年四十四条1項柱書。パリ条約四条G⑴⑵にも同趣旨の規定がある)。これを出願の分割といい、分割元となる出願を親出願若しくは原出願、親出願から分割された出願を子出願若しくは分割出願という。

分割出願の出願人は原出願の出願人と同一でなければならない審査基準27年度:第VI部1章1節2.1.1。また出願の分割をするには後述する時期的要件と実体的要件とを満たすときでなければならない。

目的[編集]

分割出願は主に以下の目的で行われる分割出願とは

  • 発明の単一性要件(特28年三十七条)が満たされないとして拒絶された場合に出願を分割し、単一性要件を満たす。
  • 審査官に拒絶された請求項を分割する事で、それ以外の請求項の審査を早め、原出願の早期権利化を目指す。
  • 明細書や図面に記載されているものの、原出願の請求項には載っていない請求項を分割出願として新たに立てて出願する(原出願の請求項より汎化しても特化しても無関係にしてもよい)。

効果[編集]

時期的要件と実体的要件とが満たされていると審査官に判断されると、分割出願は、原出願のときに出願したものとみなされる(特28年四十四条2項)。よって特に分割出願の出願日は原出願の出願日(原出願日)であるとみなされる。これを出願日の遡及といい、遡及した出願日を遡及日という。

出願日が訴求するので、新規性、進歩性、先願は、遡及日を基準に判断される中山3版(p200)。しかし例外もあり、以下のものに関しては遡及しない(特28年四十四条4項、 特28年四十四条2項ただし書き)。

  • 外国語書面出願の翻訳文の提出期間(特28年三十六条の二2項)、
  • 新規性喪失の例外の書類の提出期間(特28年三十条3項)、
  • 国内優先権、国際優先権の規定(特28年四十一条4項、四十三条1項)

拡大先願の範囲(特28年二十九条の二、実用新案法第三条の二)

拡大先願で遡及しないのは、分割出願には原出願を補正する事により新たに付け加わった事項もある為である逐条20版(p188)

出願人の同一性や時期的要件が満たされない場合は出願自体が却下される審査基準27年度:第VI部1章1節2.3。 出願人の同一性や時期的要件は満たされるものの、実体的要件は満たされない場合は出願日は訴求せず、分割出願は現実の出願時になされたものとする審査基準27年度:第VI部1章1節2.3

分割出願の場合はパリ条約による優先権主張やパリ条約の例による優先権主張の手続における必要書類の提出期限は「一年四月」から「最先の日から一年四月又は新たな特許出願の日から三月のいずれか遅い日まで」に伸びる(特28年四十四条3項)。

時期的要件[編集]

時期的要件は、分割が可能なのは以下のいずれかに当てはまる時に限られるというものである(特28年四十四条1項):

  • (一号)明細書、特許請求の範囲又は図面の補正が可能な時
  • (二号)特許査定の謄本の送達の日から三十日以内
  • (三号)最初に拒絶査定されたときの謄本の送達の日から三ヶ月以内

ただし二号でいう「特許査定」には以下のものは含まれないものとする(特28年四十四条1項二号):

  • 拒絶査定不服審判の請求と同時に補正があったときの審査(前置審査)における特許査定(特28年百六十三条3項)
  • 拒絶査定不服審判で審決により差し戻された審査における特許査定逐条20版(p187)(特28年百六十条1項)。

また二号の条件を満たしていたとしても、特許権の設定登録がなされた後は、特許出願が特許庁に係属しなくなるため、特許出願を分割することができない審査基準27年度:第VI部1章1節2.1.2

また三号では「最初に」と限定することで、拒絶査定不服審判で審決により差し戻された審査で再び拒絶査定がされた場合が除かれている逐条20版(p187)

特許料納付期限、拒絶査定不服審判の請求可能期間が延長された場合にはそれぞれ、二号における三十日、三号における三ヶ月を連動して延長させる逐条20版(p190)(特28年四十四条5、6項)。

その責めに帰することができない理由により二号、三号の期間内に出願を分割できないときは、その理由がなくなった日から十四日(在外者にあつては、二月)以内で、しかも二号ないし三号に規定する期間の経過後六月以内であれば、出願を分割できる(特28年四十四条7項)。

実体的要件[編集]

分割する上での実体的要件は下記のとおりである。まず、特28年四十四条1項には、「出願の一部」とあるから、原出願の分割直前の明細書等に記載された発明の全部が分割出願の請求項に係る発明とされてはならない審査基準27年度:第VI部1章1節2.2

また子出願の明細書等に記載された事項は、親出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内でなければならず、同時に親出願の分割直前の明細書等に記載された事項の範囲内でなければならない審査基準27年度:第VI部1章1節2.2

50条の2の通知[編集]

出願を複数の出願A, B, …に分割し、そのうち1つの出願Aに対して拒絶理由が通知され、しかも他のものBに同一の拒絶理由があるときは、出願人にその旨が通知される(特28年五十条の2)。これを50条の2の通知という審査基準27年度:第VI部1章2節

第50条の2の通知を受け取った場合は、最後の拒絶理由通知を受け取った場合と同様の制限が補正に対して課せられる(特28年十七条の二5項)。これは出願人による分割出願制度の濫用を抑止する目的で規定されている逐条20版(p221)

なお50条の2の通知に関する規定は、

  • AがBの親出願である場合、BがAの親出願である、AとBとが同一の親出願から分割された子出願、孫出願等である場合のいずれの場合にも適用される逐条20版(p221)
  • 審査における拒絶理由通知だけでなく、前置審査(百六十三条第二項)、拒絶査定不服審判(百五十九条第二項)とその再審(百七十四条第二項)の拒絶理由通知も含まれる逐条20版(p221)(特28年五十条の2)

また50条の2の通知に関する規定は、出願Bの審査請求前にBの出願人がその内容を知り得る状態になかった場合には適用されない(特28年五十条の2)。これは例えば、以下のような場合である

  • 出願Aの拒絶理由通知が、Bの審査請求よりも後だった場合逐条20版(p222)
  • 出願後の権利継承のためにAとBの出願人が異なっており、しかもBの審査請求の時点でAが出願公開前であったために、拒絶理由通知を読めなかった場合逐条20版(p222)

参考文献[編集]