キョウエイマーチ – Wikipedia

キョウエイマーチは、日本の競走馬である。1997年の桜花賞を制したほか、6歳(旧7歳)になっても重賞に勝利するなど、息の長い活躍を続けた。主戦騎手は松永幹夫→秋山真一郎。
なお、馬齢は現在の表記で統一する。

デビュー前[編集]

1994年4月19日、北海道門別町のインターナショナル牧場にてインターシャルマンの2番仔として出生[2]。生誕後骨端症という脚部不安を抱えていることが判明したが、懸命な治療が施され続けて[3][4]、何とかデビューまで漕ぎ着けることができた。

2歳(旧3歳)[編集]

1996年9月、栗東の野村彰彦厩舎に入厩したキョウエイマーチは、同年11月30日に阪神のダート1200mの新馬戦でデビュー。2着以下を1秒7も引き離す大差で圧勝した。なお、この時の3着は後の菊花賞優勝馬マチカネフクキタルである[5]
続く500万下の千両賞は3着に終わり、この年は2戦1勝に終わっている。

3歳(旧4歳)[編集]

年が明けると、キョウエイマーチは寒梅賞(500万下)、オープン特別のエルフィンステークスを連勝し、クラシック候補に名乗りを挙げた[6]。3月に入って桜花賞トライアルの報知杯4歳牝馬特別に出走、楽々と先頭を奪うとそのままスピードの違いで2着のシーズプリンセスに7馬身の差を付けるレースレコードで圧勝。桜花賞の最有力候補に挙げられるようになった[7]

迎えた桜花賞本番では、2歳女王のメジロドーベルを抑えて1番人気に推された。桜花賞では不利と言われる大外18番からの出走、降り続いていた雨による不良馬場など不安要素も多かったが、レースでは4コーナーですんなりと先頭に立つと、直線でも全く衰えることなくスピードの違いで後続を引き離し、2着のメジロドーベルに4馬身差をつけ快勝、桜花賞のタイトルを獲得した。鞍上の松永幹夫は初の桜花賞制覇[8]、調教師の野村彰彦は初のGI制覇となった[2]。また生産者であるインターナショナル牧場にとっても自家生産馬としては初のGI制覇となった[9]

続くオークスでも桜花賞馬ということで1番人気に推され、いつものように逃げを打つものの直線で失速、メジロドーベルのオークス制覇を横目に11着と大敗した。ちなみに、この後もキョウエイマーチは長距離輸送を伴うレースでは勝利したことは無く、キョウエイマーチが現役時代に挙げた勝利は、全て地元の関西圏での競馬場(京都競馬場・阪神競馬場)でのものであった[10]

秋初戦、休養明けのローズステークスでは1番人気に推されたシーキングザパールに競り勝ったものの、本番の秋華賞では再びメジロドーベルの前に2着に敗れた。これ以降、短距離路線にほぼ専念したため、メジロドーベルとはライバルと言われていたが[11]、結局これが最後の対決となった。

秋華賞後、キョウエイマーチは距離適性を考えてエリザベス女王杯ではなく、マイルチャンピオンシップに出走。快速馬サイレンススズカとの逃げ合戦に競り勝ち、前半の1000mが56秒5という驚異的なハイペースで逃げ粘ったが[12]、ゴール手前でタイキシャトルに差し切られ、2着に終わった。次のスプリンターズステークスでは2番人気に推されるものの11着と大敗し、この年を終えた。

4歳(旧5歳)[編集]

古馬になるとキョウエイマーチはマイラーズカップ3着、シルクロードステークス11着、スワンステークス6着と勝ち星から見放され、騎手育成のため主戦騎手が松永から秋山真一郎に代わった[13]。だが、主戦騎手が秋山に代わっても、マイルチャンピオンシップ6着、阪神牝馬特別4着に終わり、キョウエイマーチはこの年は勝つことができなかった。

5歳(旧6歳)[編集]

引退の噂もあったが、キョウエイマーチは現役を続行することになり、フェブラリーステークスで寒梅賞以来2年ぶりのダート戦に挑戦した。レースでは直線半ばまで先頭で逃げ粘り、5着になった。次走のマイラーズカップでは2着に逃げ粘り、久々に連対を果たした。そして、阪急杯ではローズステークス以来となる1年7ヶ月ぶりの重賞制覇を挙げた。重賞制覇の勢いそのままに出走した高松宮記念では4着になり、スプリント戦でも戦えることを示したが、安田記念ではスタートで出遅れ、9着に終わり、休養に入った。

秋はマイルチャンピオンシップ南部杯から復帰、2着になった。マイルチャンピオンシップは5着、スプリンターズステークスでは13着に終わったものの、キョウエイマーチは芝・ダート、中央・地方を問わず短距離の一線級のレースに出走を続け、見せ場を作り続けた。

6歳(旧7歳)[編集]

6歳になったキョウエイマーチは、この年から1600mに短縮された京都金杯に出走した。57kgという実質的のトップハンデを背負ったものの、2着のアドマイヤカイザーに5馬身の差をつけ快勝した[14]。桜花賞優勝馬で6歳(旧7歳)時に重賞を勝った馬は当馬と中山牝馬ステークスを勝ったキストゥヘヴンのみである[15]

この後、キョウエイマーチは、フェブラリーステークス11着、黒船賞3着と勝つことができず、マイラーズカップで6着に敗れたのを最後に引退し、繁殖牝馬となった[16]

競走成績[編集]

競走日 競馬場 競走名


オッズ
(人気)
着順 騎手 斤量
[kg]
距離(馬場) タイム
(上り3F)
タイム差 1着馬/(2着馬)
1996. 11. 30 阪神 3歳新馬 13 4 4 02.2 (1人) 01着 松永幹夫 53 ダ1200m(良) 1:13.4 (38.4) -1.7 (エリモシテンオー)
12. 22 阪神 千両賞 500万下 16 5 9 03.7 (2人) 03着 橋本美純 53 芝1600m(良) 1:36.7 (38.0) 0.4 ホッコービューティ
1997. 01. 12 京都 寒梅賞 500万下 9 8 9 01.3 (1人) 01着 松永幹夫 53 ダ1400m(良) 1:24.9 (38.5) -1.6 (タガノラピス)
02. 16 京都 エルフィンS OP 15 2 3 02.3 (2人) 01着 松永幹夫 53 芝1600m(稍) 1:36.7 (36.3) -0.1 (ホッコービューティ)
03. 09 阪神 報知杯4歳牝馬特別 GII 16 7 14 02.9 (1人) 01着 松永幹夫 54 芝1400m(良) 1:21.4 (35.3) -1.1 (シーズプリンセス)
04. 06 阪神 桜花賞 GI 18 8 18 02.6 (1人) 01着 松永幹夫 55 芝1600m(不) 1:36.9 (37.6) -0.7 (メジロドーベル)
05. 25 東京 優駿牝馬 GI 16 7 14 02.2 (1人) 11着 松永幹夫 55 芝2400m(重) 2:31.2 (40.5) 3.5 メジロドーベル
09. 21 阪神 ローズS GII 11 7 8 03.9 (2人) 01着 松永幹夫 54 芝2000m(良) 2:01.6 (35.3) -0.1 (メイプルシロップ)
10. 19 京都 秋華賞 GI 18 8 17 03.9 (2人) 02着 松永幹夫 55 芝2000m(良) 2:00.5 (36.1) 0.4 メジロドーベル
11. 16 京都 マイルCS GI 16 6 11 12.7 (5人) 02着 松永幹夫 53 芝1600m(良) 1:33.7 (37.2) 0.4 タイキシャトル
12. 14 中山 スプリンターズS GI 16 8 15 04.8 (2人) 11着 松永幹夫 53 芝1200m(良) 1:09.7 (37.1) 1.9 タイキシャトル
1998. 03. 08 阪神 マイラーズC GII 11 8 12 03.5 (2人) 03着 松永幹夫 56 芝1600m(良) 1:34.0 (35.1) 0.1 ビッグサンデー
04. 26 京都 シルクロードS GIII 12 6 7 02.6 (1人) 11着 松永幹夫 56 芝1200m(良) 1:09.5 (36.4) 0.9 シーキングザパール
10. 31 京都 スワンS GII 14 8 14 04.5 (2人) 06着 松永幹夫 57 芝1400m(良) 1:23.0 (36.8) 1.1 ロイヤルスズカ
11. 22 京都 マイルCS GI 13 1 1 12.2 (4人) 06着 秋山真一郎 55 芝1600m(良) 1:34.3 (37.2) 1.0 タイキシャトル
12. 20 阪神 阪神牝馬特別 GII 13 4 4 02.7 (1人) 04着 秋山真一郎 57 芝1600m(良) 1:35.2 (35.7) 0.5 エガオヲミセテ
1999. 01. 31 東京 フェブラリーS GI 16 4 7 09.0 (5人) 05着 秋山真一郎 55 ダ1600m(良) 1:36.8 (36.5) 0.5 メイセイオペラ
03. 07 阪神 マイラーズC GII 14 5 8 05.6 (3人) 02着 秋山真一郎 57 芝1600m(稍) 1:35.7 (36.9) 0.1 エガオヲミセテ
04. 10 阪神 阪急杯 GIII 16 2 3 05.0 (2人) 01着 秋山真一郎 56.5 芝1200m(良) 1:08.6 (35.1) -0.2 (ブロードアピール)
05. 23 中京 高松宮記念 GI 16 8 15 05.5 (3人) 04着 松永幹夫 55 芝1200m(良) 1:08.2 (35.6) 0.2 マサラッキ
06. 13 東京 安田記念 GI 14 4 5 43.6 (9人) 09着 秋山真一郎 56 芝1600m(良) 1:34.7 (36.5) 1.4 エアジハード
10. 11 盛岡 マイルCS南部杯 GI 12 6 8 (2人) 02着 秋山真一郎 54 ダ1600m(良) 1:38.9 0.5 ニホンピロジュピタ
11. 21 京都 マイルCS GI 18 5 10 07.5 (3人) 05着 秋山真一郎 55 芝1600m(良) 1:33.4 (35.9) 0.6 エアジハード
12. 19 中山 スプリンターズS GI 16 2 3 31.2 (8人) 13着 秋山真一郎 55 芝1200m(良) 1:09.8 (36.3) 1.6 ブラックホーク
2000. 01. 05 京都 京都金杯 GIII 16 3 6 07.1 (3人) 01着 秋山真一郎 57 芝1600m(良) 1:33.4 (34.6) -0.9 (アドマイヤカイザー)
02. 20 東京 フェブラリーS GI 16 4 8 09.0 (6人) 11着 秋山真一郎 55 ダ1600m(良) 1:36.8 (38.3) 1.2 ウイングアロー
03. 21 高知 黒船賞 GIII 12 6 7 (1人) 03着 秋山真一郎 56 ダ1400m(良) 1:28.8 0.9 ビーマイナカヤマ
04. 15 阪神 マイラーズC GII 18 2 3 05.5 (2人) 06着 秋山真一郎 58 芝1600m(良) 1:34.8 (37.6) 0.5 マイネルマックス

2001年よりノーザンファーム早来牧場で繋養されていたが、2007年5月9日、出産時における大腸変位で死亡した[17]。最後の産駒になった2007年度の産駒インペリアルマーチは父ネオユニヴァースの牡馬である。

産駒は見栄えは悪くないが、自身も持っていた脚元の不安を受け継ぐものも多く、2番仔のヴィートヴァンクルは2歳を前にして手術を余儀なくされ、中央・地方で計11戦して未勝利で終わり、初仔ヴィートマルシェ、3番仔トライアンフマーチおよび4番仔インペリアルマーチも体質の弱さなどから2歳戦ではデビューできなかったこと[18]など、必ずしも順調に使うことができないケースが多かった。更に牝駒に恵まれず、初仔のヴィートマルシェが唯一キョウエイマーチの牝系を繋いでいる状況である。そのヴィートマルシェから、フェアリーステークス3着のサンブルエミューズ、新潟2歳ステークス2着のアヴニールマルシェ、レディスプレリュード、ブリーダーズカップ・ディスタフ優勝馬マルシュロレーヌという活躍馬が出ている。

2010年4月11日の阪神競馬場第12競走として施行されたJRAプレミアムレース「阪神スプリングプレミアム」で、当馬が最多得票を獲得したことから『キョウエイマーチメモリアル』の副名称を付与して施行された[19]

産駒[編集]

近親には5代母クインナルビー(本血統表内スズキナルビーの母)の子孫にオグリキャップ、オグリローマン、アンドレアモンがいる。

  1. ^ キョウエイマーチ死亡(10日)”. 競馬ブック. 2021年11月11日閲覧。
  2. ^ a b 産経P11
  3. ^ 産経P38-39 生まれてから予防のために朝夕の2回毎日欠かさず血の循環をよくする薬や痛み止めの薬を与えていたり、炎症を起こしている箇所に湿布薬を貼るといった対処をしていたといった記述がある。
  4. ^ また、同項には第1仔である兄も同様の症状を抱えており、3歳まで同様の治療がなされていたがデビューはかなわなかったといった内容の記述もある。
  5. ^ 産経P12
  6. ^ 産経P13
  7. ^ 産経P14
  8. ^ それまでの松永の桜花賞での最高着順は1992年(第52回)のフリークフィールドでの4着が最高着順であった。
  9. ^ 産経P37-39 それまでのG1級のレースを勝ったインターグロリア、キョウエイプロミス、キョウエイタップなどは他牧場で誕生し、離乳後仔分けされて育成を担当したものであり、純粋な生産馬としては初のG1級レースでの勝利となった。
  10. ^ 阪神で5勝、京都で3勝を挙げている。なお、長距離輸送を伴うレースでは地方の盛岡競馬場で行われた南部杯の2着が最高着順であった。
  11. ^ 産経P20 ライバルと最後の対決という表現がある。
  12. ^ 産経P21
  13. ^ マイルチャンピオンシップから秋山へ変更。
  14. ^ 産経P31に「実質トップハンデ」の記述がある。 この時のトップハンデはメイショウオウドウの57.5kgであり、牡牝の差で1kgから2kg減量されることを考慮すると、実質的にトップハンデとなると考えられる。
  15. ^ 産経P31に「旧馬齢7歳での桜花賞馬の重賞勝利は初」という記述がある。
  16. ^ 産経P33
  17. ^ 桜花賞馬キョウエイマーチが死亡 – netkeiba.com 2007年5月10日付記事 2011年3月17日閲覧
  18. ^ ヴィートマルシェは3歳の8月、トライアンフマーチとインペリアルマーチは3歳の1月にデビュー。
  19. ^ 「阪神スプリングプレミアム」のレース名が決定! JRAニュース 2010年3月22日閲覧
  20. ^ a b c “血統情報:5代血統表|キョウエイマーチ”. JBISサーチ. 日本軽種馬協会. 2016年9月9日閲覧
  21. ^ 『優駿』1997年5月号、日本中央競馬会、142頁

参考文献[編集]

  • 産業経済新聞社発行 Gallop臨時増刊「週刊100名馬」vol.78号 キョウエイマーチ(略:産経)

外部リンク[編集]