台湾鉄路管理局TEMU2000型電車 – Wikipedia

TEMU2000型電車(ティーイーエムユー2000がたでんしゃ)は、台湾鉄路管理局(台鉄)の中長距離用車体傾斜式交流電車である。TEMU1000型電車に続く第2弾であり、東部幹線での休日を中心とした旅客輸送需要逼迫への対応と、台東線複線電化後の車両需要を見越しての導入となる。2013年より普悠瑪号(プユマごう)として営業運転に就いている。

台湾高速鉄道の恩恵を享受する西海岸と比べて東海岸は大都市も少なく急峻な地形で、高速道路は宜蘭県までしかなく、在来線鉄道も複線電化区間は花蓮駅までにとどまっていた。太魯閣号の登場で花蓮までの増発と高速化は実現したものの、花蓮以南へは客車列車や気動車列車を除いて乗り換えを強いられるなど、東部幹線の南半分である台東線沿線では高速化の要求が日増しに高まっていた。

当初は非電化のまま車体傾斜式気動車特急を導入予定であったが、台東駅までの複線電化が前倒しで決定されたことで配備の意義が薄れたため、円高要因で延期されていたTEMU1000型電車の増備分48両の入札と合わせて2010年に136両の車体傾斜式列車の入札が行われ、日本車輌製造・住友商事連合が日立製作所・丸紅連合を破り、総額約300億円、17編成136両を受注した。

その後2014年12月、政府交通部は当形式2編成16両を住友商事・日本車輌製造連合に発注することを決定し、2016年2月の旧正月に投入された。なお、あわせて同数のTEMU1000型も同時に追加発注される。[1]

シングルアーム式パンタグラフ

ND-742M型台車

ND-742T型台車

この車両は、設計最高速度は150km/h、営業最高速度は140km/hとなっている。新幹線N700系電車などで採用されている台車の空気バネを利用する車体傾斜システム(傾斜角1-2度)を搭載する。TEMU1000型電車と同じくアルミニウム合金製の構体ではあるが、塗色が赤系統になり[2]、乗務員用扉の追加、中華西洋折衷の大型のTRAロゴなどの差異がみられる。

座席は台湾の佳豊機械設計工業が納入している[3]

編成[編集]

 

TEMU2000

← ←(逆行)斗六、彰化、樹林、台北、

宜蘭、花蓮、台東(順行)→ →

号車 1 2 3 4 5 6 7 8
パンタグラフ
形式 40TED2000
(Tc)
40TEMA2000
(M1)
45TEP2000
(T)
40TEMB2000
(M2)
40TEMB2000
(M2)
45TEP2000
(T)
40TEMA2000
(M1)
40TED2000
(Tc)
その他設備 乗,, [和]WC [洋]WC,児, [和]WC,Gr [和]WC,Gr [洋]WC,児, [和]WC 乗,,
搭載機器   VVVF,Rc Mtr,VCB VVVF,Rc,SIV VVVF,Rc,SIV Mtr,VCB VVVF,Rc  
定員 36人 52人 48人 52人 52人 48人 52人 36人
範例

編成一覧[編集]

列車編成

← 斗六、彰化、樹林、台北

宜蘭、花蓮、台東 →

日本車輌製造
豊川製作所出庫日
基隆港入港日 営業運転開始日
TED2000 TEMA2000 TEP2000 TEMB2000 TEMB2000 TEP2000 TEMA2000 TED2000
第1次 1 2001 2001 2001 2002 2004 2002 2003 2002 2012年10月15日 2012年10月24日 2013年2月6日
2 2003 2005 2003 2006 2008 2004 2007 2004 2012年10月18日 2012年10月24日 2013年4月26日
第2次 3 2005 2009 2005 2010 2012 2006 2011 2006 2013年4月15日 2013年4月26日 2013年7月23日
4 2007 2013 2007 2014 2016 2008 2015 2008 2013年4月18日 2013年4月26日 2013年7月12日
第3次 5 2009 2017 2009 2018 2020 2010 2019 2010 2013年5月23日 2013年5月31日 2013年8月11日
第4次 6 2011 2021 2011 2022 2024 2012 2023 2012 2013年6月17日 2013年6月29日 2013年9月25日
7 2013 2025 2013 2026 2028 2014 2027 2014 2013年6月20日 2013年6月29日 2013年9月16日
第5次 8 2015 2029 2015 2030 2032 2016 2031 2016 2013年7月22日 2013年8月7日 2013年11月9日
9 2017 2033 2017 2034 2036 2018 2035 2018 2013年7月25日 2013年8月7日 2013年11月10日
第6次 10 2019 2037 2019 2038 2040 2020 2039 2020 2013年8月19日 2013年9月25日 2014年1月2日
11 2021 2041 2021 2042 2044 2022 2043 2022 2013年8月22日 2013年9月25日 2014年1月3日
第7次 12 2023 2045 2023 2046 2048 2024 2047 2024 2013年9月17日 2013年11月18日
13 2025 2049 2025 2050 2052 2026 2051 2026 2013年9月20日 2013年11月18日
第8次 14 2027 2053 2027 2054 2056 2028 2055 2028 2013年11月19日 2013年12月18日
15 2029 2057 2029 2058 2060 2030 2059 2030 2013年11月22日 2013年12月18日
第9次 16 2031 2061 2031 2062 2064 2032 2063 2032 2013年12月16日 2013年12月30日
17 2033 2065 2033 2066 2068 2034 2067 2034 2013年12月19日 2013年12月30日
第10次 18 2035 2069 2035 2070 2072 2036 2071 2036 2015年12月14日 ※2015年12月23日 2016年2月4日
19 2037 2073 2037 2074 2076 2038 2075 2038 2015年12月17日 ※2015年12月23日 2016年2月4日

※台中港

配備計画[編集]

本型式列車は、全17編成34組136両(TEMU2001+2002-TEMU2033+2034)、最初の2編成4組16両(TEMU2001+2002-TEMU2003+2004)が2012年10月落成し、2013年春節前に東部幹線での営業運転に投入された。
残りの15編成30組120両(TEMU2005+2006-TEMU2033+2034)は2014年までに随時投入となる。本形式は、東部幹線営業運転に優先投入され、台北地区と台東駅間を現行より約1時間短縮する最速3時間半程度で直通する。少数が西部幹線嘉義以北に乗り入れ、現行保有の太魯閣号48両とともに東部幹線の輸送力と速度向上・直通化に使用される予定で、喫緊の課題である座席供給不足解消に寄与するものとなる。

配備後は、東部幹線自強号の主力が車体傾斜車両(TEMU1000型、TEMU2000型)に置き換えられ、現行主力車種のDR2800型・DR3100型気動車列車は、運行区間短縮または非電化区間(南迴線)への転配、一部は内湾線や集集線などの支線区でのサービス向上策の一環としての区間車として運行を継続する見込みである。

台鉄は、先代のTEMU1000型電車と同様、列車名について愛称を公募した。

この活動は2段階で進められ、第一階として2012年5月24日から6月5日全国での告知活動の結果、応募総数2214通となり、審査委員会が「山海」、「馬蘭」、「晨曦」、「豐年」、「蘭嶼」、「鐵花」、「太麻里」、「曙光」、「寶桑」、「普悠瑪」、「都蘭」、「加路蘭」、「知本」、「旭日」、「東之星」、「東之鄉」、「東方」、「東海岸」、「南島」、「紅葉」など20の候補を選出[4]し第2段階へ入った。

第2段階はインターネット投票と専門家の選考を50%ずつの比率で構成され、2012年7月5日-20日にインターネット投票では最終的に「普悠瑪(プユマ)号」が締切当日に8,778票で2位の「太麻里號」7,827票に大差をつけて採用された。[5][6]
2012年7月26日、専門家の選考を経て本形式は「普悠瑪号Puyumaとは台湾原住民の種族のひとつプユマ族の言語で「団結、集中する」を意味する)」と正式に命名された。[7]

  • 2012年(民国101年)
  • 2013年(民国102年)
    • 1月30日 – 日本車輌製造による安全認証が通過。[15]
    • 2月5日 – 第三者安全認証を受託していたロイズによる安全認証が通過、通知が届いたことで、翌々日の営業運転が正式に決定。[16]
    • 2月6日 – 旧正月の帰省ダイヤから営業運転投入,第2編成が営業運転開始。一番列車は樹林09:20発花蓮行き自強5208列車。[17]
    • 4月15日 – 第3編成(TEMU2005+2006)が日本車輌から出庫、名古屋港へ甲種輸送される。[18]
    • 4月18日 – 第4編成(TEMU2007+2008)が日本車輌から出庫、名古屋港へ甲種輸送される。[19]
    • 4月26日 – 基隆港に入港。西第4パースにて陸揚げされ、七堵駅まで甲種輸送される。[20]
同日、第1編成が営業運転開始。
  • 5月23日 – 第5編成(TEMU2009+2010)が日本車輌から出庫、名古屋港へ甲種輸送され、同31日に基隆港に入港。
  • 6月17日 – 第6編成(TEMU2011+2012)が日本車輌から出庫、名古屋港へ甲種輸送される。
  • 6月20日 – 第7編成(TEMU2013+2014)が日本車輌から出庫、名古屋港へ甲種輸送される。
  • 6月29日 – 第6編成と第7編成が基隆港に入港、陸揚げ後甲種輸送される。
  • 7月12日 – 第4編成が営業運転開始。
  • 7月21日 – 第3編成が営業運転開始。
  • 7月22日 – 第8編成(TEMU2015+2016)が日本車輌から出庫、名古屋港へ甲種輸送される。
  • 7月25日 – 第9編成(TEMU2017+2018)が日本車輌から出庫、名古屋港へ甲種輸送される。
  • 8月7日 – 第8編成と第9編成が基隆港に入港、陸揚げ後甲種輸送される。
  • 8月11日 – 第5編成が営業運転開始。
  • 8月19日 – 第10編成(TEMU2019+2020)が日本車輌から出庫、名古屋港へ甲種輸送される。
  • 8月22日 – 第11編成(TEMU2021+2022)が日本車輌から出庫、名古屋港へ甲種輸送される。
  • 9月16日 – 第7編成が営業運転開始。
  • 9月17日 – 第12編成(TEMU2023+2024)が日本車輌から出庫、名古屋港へ甲種輸送される。
  • 9月20日 – 第13編成(TEMU2025+2026)が日本車輌から出庫、名古屋港へ甲種輸送される。
  • 9月25日 – 第6編成が営業運転開始。同日、第10編成と第11編成が基隆港に入港、陸揚げ後甲種輸送される。
  • 11月9日 – 第8編成が営業運転開始。
  • 11月10日 – 第9編成が営業運転開始。
  • 11月18日 – 第12編成と第13編成が基隆港に入港、陸揚げ後甲種輸送される。
  • 11月19日 – 第14編成(TEMU2027+2028)が日本車輌から出庫、名古屋港へ甲種輸送される。
  • 11月22日 – 第15編成(TEMU2029+2030)が日本車輌から出庫、名古屋港へ甲種輸送される。
  • 12月16日 – 第16編成(TEMU2031+2032)が日本車輌から出庫、名古屋港へ甲種輸送される。
  • 12月18日 – 第14編成と第15編成が基隆港に入港、陸揚げ後甲種輸送される。
  • 12月19日 – 第17編成(TEMU2033+2034)が日本車輌から出庫、名古屋港へ甲種輸送される。
  • 12月30日 – 第16編成と第17編成が基隆港に入港、陸揚げ後甲種輸送される。
  • 1月2日 – 第10編成が営業運転開始。
  • 1月3日 – 第11編成が営業運転開始。
  • 4月18日 – 台東線電化区間を試運転
  • 6月28日 – メディア・政府関係者を乗せた臨時列車が台東 – 台北間で運転され、同時に電化開業式典が行われる
  • 7月1日 – 暫定ダイヤによる台東への営業運転開始
  • 7月16日 – ダイヤ改正により台東線乗り入れが増発。
  • 12月28日 – 台湾政府交通部によりTEMU1000型及び当形式各2編成の追加発注と2015年末の投入が決定された。[21]
  • 10月15日 – ダイヤ改正により台中線及び海岸線へ乗り入れる定期列車が営業運転開始
  • 12月14日 – 第18編成(TEMU2035+2036)が日本車輌から出庫、名古屋港へ甲種輸送される。
  • 12月17日 – 第19編成(TEMU2037+2038)が日本車輌から出庫、名古屋港へ甲種輸送される。
  • 12月23日 – 第18編成と第19編成が台中港に入港、陸揚げ後台中港線経由で彰化機務段へ甲種輸送される。
  • 2月4日 – 増備車が営業運転開始[22]
  • 4月21日 – ダイヤ改正により、西部幹線(松山 – 潮州間)の定期列車に1往復投入。

エピソード[編集]

  • 日本からの車両陸揚げのために、廃線になっていた基隆臨港線を復活させた[23]
  • 上記の第1編成の輸送時、基隆駅構内2Bホーム通過時に床下機器が接触する軽微な事故が起きた[24]。原因は線路がホームに寄っており、線路の中心からホームまでの距離が規定より不足していたことによる。このため、台鉄は当該ホームを急遽削る応急処置で回送列車を通過させた。
  • 後日、花蓮など5駅でも事前にホームを削る応急処置に追われ、台鉄の対応が議会で問題視された[25]
  • 赤いノーズにちなんで現地ファンから「紅面番鴨(ノバリケン)」と呼ばれる[26]
  • 中華民国鉄道文化協会の会員で学者、鉄道研究家の洪致文は、実写の塗装は投入発表時のメーカーによるイラストより美観を損ねている、と辛口な論評を行ったために、国内の鉄道ファンの間で大きな反響を呼ぶことになった[27]
  • 続いて同協会理事長(当時)で学者、鉄道研究家の蘇昭旭も同様のコメントをしたために、前面塗装が賛否両論の議論を呼んでいる[28]
  • 鉄路局がメーカーと第三者の安全認証が取得できていない段階で旧正月用乗車券の販売に踏み切ったため、現場や議会での論争を巻き起こした。技術的には特に問題はなかったが、ロイズからの安全認証が書類上の問題で直前まで滞っていたため、自強号での振替輸送も検討されるなど、難産の末でのデビューとなった[29]
  • 羅東駅に同車の先頭部を模した駅弁販売店がある(同様の販売店は、既に樹林駅にEMU700型電車の先頭部を模した駅弁販売店がある)[30]
  • 2015年に台湾鉄路管理局と友好鉄道協定を結んだ東武鉄道が、2016年6月より「りょうもう」で使用している東武200系電車の1編成に当形式仕様のラッピングを施し[31][32][33]、2018年まで運行された。
  • 2016年の増備車の先頭車には干支の猿をあしらったロゴが付されている。
  • 2017年に台鉄130周年(清朝の全台鉄路商務総局設立から)を記念して、TEMU2005+2006に歴代の各形式列車をラッピングした特別仕様車が翌年5月まで運行された[34]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]