末尾のs – Wikipedia

現在は同じWachstubeという綴りになる2語。上のWachs-tube /’vaks.tuːbə/ は「ワックスのチューブ」、下のWach-ſtube /’vax.ʃtuːbə/ は「守衛詰所(Wache守衛、Stube部屋)」

ドイツ語筆記体の大文字S、長いs(ſ)、末尾のs

末尾のs(ドイツ語:das Schluss-s, Auslaut-s)または曲がったs(das runde s, Ringel-s)は、かつてラテンアルファベットSの小文字としてſ, sの2種類が使い分けられていた時代の後者sの呼び名である。末尾のsはブラックレター(の一部の書体)で音節末を明示する為に用いられ、これに対して長いs(ſ)は音節頭および中で用いられた。

1940年代以降、タイポグラファーのヤン・チホルトによる、フラクトゥーアのßはſs([1][2]。これによると、ſz(

ドイツ語の標準発音で母音の前のsは有声音/z/になるが(有声化せず/s/と発音する方言もある)、音節末では有声化が起こることはないので、末尾のsは常に無声音/s/を表す。

ギリシャ文字のΣ(シグマ)にもこれに似た規則があり、小文字は語頭および語中でσ、語末でςと書く(ただし語中の音節末ではドイツ語と異なり常に語中形のσを用いる)。例:Κολοσσός Ῥόδιος 「ロドス島の巨像(コロッソス)」。

末尾のsを使うべき場合は

  • 語末(例:das Haus, des Weges
  • 合成語を構成する自立語由来の各形態素末(例:Eislaufen, Glastür)
  • 子音で始まる接尾辞の前(例:Mäuschen, Weisheit)
  • 接頭辞des-, dis-の末尾(例:Desinfektion, Distribution)
  • 音節末で次の字がk, m, n, w, dのとき(例:Dresden, Oswald)
  • 単語が-skで終わるとき(例:grotesk, brüsk)

長いs(ſ)を使うべき場合は

  • 音節頭および中(例:ſonſt, Maſuren (
  • 音節末で上記の末尾のsを使う条件に該当しないとき(例:Waſſer, Gaſſe (
  • 語尾が省略されたとき(例:ich laſſ’ (
  • 二重子音ſch, ſt, ſp(例:Knoſpe, löſchen (< Knospe, löschen))[3]
  1. ^ Max Bollwage: Ist das Eszett ein lateinischer Gastarbeiter? Mutmaßungen eines Typografen. In: Gutenberg-Jahrbuch, Mainz 1999, ISBN 3-7755-1999-8, S. 35–41.
  2. ^ Herbert E. Brekle: Zur handschriftlichen und typographischen Geschichte der Buchstabenligatur ß aus gotisch-deutschen und humanistisch-italienischen Kontexten. In: Gutenberg-Jahrbuch, Mainz 2001, ISBN 3-7755-2001-5, S. 67–76 (online)
  3. ^ Deutsche Kurrentschrift”. 2017年10月2日閲覧。