ブロック紙 – Wikipedia

ブロック紙(ブロックし)とは、販売地域が複数の都府県にまたがる地方紙を指す表現。元々は、日本における1940年前後の新聞統制において、複数の府県にまたがって配布することを認められた4紙を指す表現であったが、戦後は意味が曖昧になり、本来の4紙以外の有力な地方紙の中に、ブロック紙として扱われたり、ブロック紙を自称するものが現れるようになった。

太平洋戦争時の統制経済体制において、全国を販売地域とした「全国紙」(現在の全国紙五紙と同一)[注 1][注 2]と、単一の都府県のみを販売地域とした「県紙」のほかに、複数の都府県での販売が認められた地方紙があり、それらを「ブロック紙」と称した。すなわち、東京新聞、中部日本新聞(現在の中日新聞)、大阪新聞[注 3]、西日本新聞の4紙である。

戦後になり、県紙の中から前述の4紙と同程度の発行部数や社会的影響力を持つものが現われ、それらがブロック紙を自称し、又は他称されるようになった。詳しくは後述する。

なお、東京新聞は1963年に中日新聞社の傘下に入り、さらに1967年からは中日新聞東京本社が編集と発行を行うようになったため、単独のブロック紙としては扱われない場合がある。

また、大阪新聞は戦後、大阪府内を主な販売エリアとする地方紙となり、事実上ブロック紙ではなくなった後も大阪ローカルの夕刊紙(ただし、京阪神など近畿圏の大半では販売していたので「準ブロック紙」ではあった)として存続したが、2002年に産経新聞と紙面統合して休刊し、2004年には発行元である大阪新聞社が産業経済新聞社(産経新聞社)に吸収合併されるに至った。

よって、戦中から引き続いてブロック紙であり続けているのは、中日新聞(東京新聞)と西日本新聞ということになる。

戦後のブロック紙[編集]

全国紙以外の新聞において、

  • 広域的な影響力
  • 発行部数の多さ

の2つの指標から「ブロック紙」とされる新聞がいくつかある。

両方の条件を満たすブロック紙として、ブロック紙3社連合を構成する北海道新聞中日新聞西日本新聞の3紙がある。国立国会図書館もこれらの3紙をブロック紙の例としている[1](中日新聞東京本社発行の東京新聞を中日新聞から分離して4紙とする場合もある)。これらの新聞は発行部数が多く、一般購読者も広い地域に分布している。北海道新聞社、中日新聞社、西日本新聞社の3社は「ブロック紙3社連合」を結成している。

北海道は1つの地方(九州の約2倍の面積)で1つの地方自治体となっているため「県紙」と「ブロック紙」の2つの性質を有しているとされる。

また、発行部数は北海道・中日・西日本の3紙より少ないが、広域的な影響力がある河北新報中国新聞の2紙をブロック紙に加える場合が多い[2][3]。これら2紙の実態は河北新報が仙台都市圏、中国新聞が広島都市圏のローカル紙もしくは各々の県の県紙という性格が強く[注 4]、上記の3紙のような一般購読者が広域に多数存在するブロック紙とは異なる。河北新報は岩手県内における仙台藩と一関藩の領域にあたる同県南部、中国新聞は広島都市圏に隣接する岩国市など山口県東部にそれぞれ県境を越えてある程度まとまった部数を配布しているが、それでもそれぞれの発行地(宮城県、広島県)における普及率よりかなり低い水準にとどまっている。しかし、それぞれ東北地方および中国地方という地域ブロックを取材ならびに販売の対象地域としているため、それらのブロック内の政治・経済を広く俯瞰することが必要な地方自治体や地方企業にとっては重要な情報源となっている。すなわち、メインエリアの県外では家庭での購読よりも職場での購読を主としており、発行部数よりも地方ブロックでの影響力から見たブロック紙と言える。九州全域において取材や影響力の面で一定の機能を果たしてはいるものの、発行拠点を置く福岡県以外の九州各県での普及率は低水準である西日本新聞の位置づけを基準とすれば、それに準ずる存在として河北新報と中国新聞もブロック紙扱いされているものと理解できる。

この他、広域的な影響力はあまりないが、発行部数が一般的な県紙より多い(中日・河北・中国の3紙に匹敵)という理由で、静岡新聞新潟日報信濃毎日新聞京都新聞神戸新聞山陽新聞など有力な地方紙のいくつかをブロック紙に準ずるものとして扱うことがある。これらの新聞が拠点とする県には、日本経済を支える国内有力企業が一定数存在し、情報ソースとなるこれらの新聞の影響力が他のブロック紙に準ずると見なすことも出来るため、広域的な影響力はなくともブロック紙と同列視される場合もある。なお、京都新聞・山陽新聞をブロック紙に準じて扱う立場は、前者が京都・滋賀[4]の2府県、後者が岡山・広島[5]の2県に配布圏を持つことも根拠の一つである。

さらに、歴史的経過から隣県の一部地域でも配布を行なっている北國新聞(配布対象は石川県。発行元の北國新聞社は富山県で富山新聞を発行)や日本海新聞(配布対象は鳥取県と兵庫県但馬地方。発行元の新日本海新聞社は大阪府で大阪日日新聞を発行)、山陰中央新報(配布対象は島根県と鳥取県西部)、南日本新聞(配布対象は鹿児島県と宮崎県諸県地方及び熊本県水俣市)などをブロック紙と捉える記述も散見されるが、いずれも拠点とする都道府県以外での発行部数・普及率は微々たるものであり、一般的な理解ではない。

また、通常は全国紙として扱われる産経新聞について、発行部数の多くが関東・関西の両都市部で占められていること、全国の地方新聞社が加盟している47CLUBに発祥の地である大阪府の新聞社として参加していることなどから、まれにブロック紙として扱われる。

経済紙としては、愛知県を中心とした東海4県の経済情報を扱う中部経済新聞があり、同紙のホームページでは「全国唯一のブロック経済紙」を称している[6]。ただし、発行部数は東海4県の全てを合計しても約10万部程度にとどまっている。

ブロック紙一覧[編集]

ブロック紙3社連合加盟紙[編集]

ブロック紙3社連合非加盟紙[編集]

ブロック経済紙[編集]

ブロック紙に準ずる規模の地方紙[編集]

  • 静岡新聞(静岡市)の配布対象は静岡県と愛知県豊橋市周辺で、中日新聞および東京新聞と重複する。ただし、限られた配布対象でありながら、発行部数はブロック紙の東京新聞・河北新報・中国新聞を上回っており、地方紙では国内トップである。
  • 新潟日報(新潟市)は河北新報や中国新聞と共にブロック紙3社連合と近い関係にある。配布対象の新潟県は、東京新聞、北陸中日新聞、河北新報とも取材および配布の対象外となっている。
  • 信濃毎日新聞(長野市)の販売対象は長野県に限られているが、発行部数はブロック紙に比肩する。なお、中信・南信地方は中日新聞と販売エリアが重複する。
  • 京都新聞(京都市)は配布対象が京都府と滋賀県の2府県である(大阪府の一部でも購入可能)。なお、滋賀県は中日新聞と販売エリアが重複する。神戸新聞とは三都合同新聞の後身同士でもあり、阪神大震災時には京都新聞社が神戸新聞の紙面製作を代理するなど両紙は友好的な関係である。
  • 神戸新聞(神戸市)は河北新報や中国新聞と共にブロック紙3社紙連合と近い関係にあり、デイリースポーツの発行元でもあることからブロック紙と同列に見なされることもある。ただし、同紙の取材ならびに配布対象はほぼ兵庫県に限定されており、大阪市内の一部地域で購入可能ではあるものの、実質的には県紙である。なお、発行元の神戸新聞社が戦前に大阪と京都でもそれぞれ新聞を発行していた(三都合同新聞)ため、名実ともにブロック紙だった時期がある。
  • 山陽新聞(岡山市)は配布対象が岡山県と香川県直島町、及び広島県備後地方と広島市の一部であり、販売エリアが中国新聞と重複する。なお、2011年までは香川県内全域が配布対象となっており、高松市には支社も置かれていた。

注釈[編集]

  1. ^ 読売新聞は1952年の大阪進出以前、関東を中心とした東日本のブロック紙の位置付けだった。1959年に北海道、1961年に北陸、1964年に九州、1975年に中京にも発行拠点を置いてから、日本を代表する全国紙に発展した。なお、中京では読売本体とは別組織・別法人の会社から『中部読売新聞』として創刊し、当初は読売本体とは提携関係にあった。1988年に発行元の会社が読売巨人軍や読売新聞西部本社の運営会社であった読売興業株式会社(後の株式会社よみうり)に吸収合併されて「読売新聞中部本社」となるが、2002年の読売新聞グループの再編で分割合併により読売新聞東京本社の中部支社に格下げされた。
  2. ^ 産経新聞は1950年の東京進出以前、関西を中心にした西日本のブロック紙的位置付けだった。現在もブロック紙的な性質を持つ全国紙であり、北海道・中京では発行拠点がなく、ブロック紙の販売店に委託販売を行っている。愛知県・三重県一部では産経の直売所あり。なお、長らく発行拠点がなかった九州に於いては2009年10月1日付から、毎日新聞社との提携で、九州・山口特別版の現地印刷が開始された。
  3. ^ 産経系列の大阪府の夕刊地方紙であるが、近畿地方の多くで発売され、準ブロック紙的な体裁だった。2002年3月に廃刊し、産経新聞大阪本社版の夕刊に統合された。
  4. ^ ただし、河北新報のウェブサイトでは、宮城県以外の東北各県のニュースがトップニュース扱いになることもしばしばであり、ニュースランキングでも日常的に上位に来ている。
  5. ^ ただし、静岡県の配布地域は県西部の浜松市周辺という、愛知県に隣接した地域に限定されるため、実質的には東海3県と静岡県西部をエリアとした新聞と捉えるのが正しいと思われる。

出典[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

発行部数