ワグネリアン (競走馬) – Wikipedia

ワグネリアン(英:Wagnerian )は、日本の競走馬。主な勝ち鞍は2017年の東京スポーツ杯2歳ステークス、2018年の東京優駿、神戸新聞杯[1]

馬名は「リヒャルト・ワーグナーのファン」から[5][6]

2歳(2017年)[編集]

2017年7月16日、中京競馬場芝2000メートルの新馬戦で、福永祐一の騎乗でデビュー[7]。セレクトセールのときから高い評価を得ていたヘンリーバローズ[8][注 1](単勝1.7倍)に次ぐ、2番人気(同4.0倍)での出走となった[10]。レースは最後の直線でヘンリーバローズと馬体を合わせ、最後はハナ差先着して優勝、3着は5馬身後方であった[7]。この競走における上がり3ハロン[注 2]の32.6秒というタイムは、中京競馬場で行われた古馬も含めた全ての競走で過去最速であった[7][12][注 3]。この勝利に対して福永は「満点ですね。言うことなしです」「このまま順調にいってくれるといいですね」と高い評価と期待をコメントした[15]

2戦目は野路菊ステークス (阪神芝外1800m, OP)を選択、単勝1.9倍の1番人気に推されての出走となった[13]。重馬場となったこの競走でも、上がり3ハロン[注 2]33.0秒の末脚を発揮して優勝した[16]

次走は重賞の東京スポーツ杯2歳ステークス(東京芝1800メートル、GIII)に出走[17]。GI競走6勝馬のモーリスの全弟・ルーカスらの対戦となったが[17]、2着の同馬に3馬身差をつけて優勝、重賞初勝利を飾った[18]

その後は休養に入り、翌年の弥生賞からの始動を目指すこととなった[18]

3歳(2018年)[編集]

2018年の初戦の弥生賞(中山芝2000メートル、GII)では、前年に無敗で朝日杯フューチュリティステークスを制しJRA賞最優秀2歳牡馬に選ばれたダノンプレミアムとの対戦が注目を集めた[19]。単勝はダノンプレミアムが1番人気(1.8倍)に推され、ワグネリアンは2番人気(3.6倍)であった[20]。レースでは先行したダノンプレミアムを捉えきれず2着に敗れた[21]

中央競馬クラシック三冠の1戦目である皐月賞(中山芝2000メートル、GI)では、ダノンプレミアムが挫跖のために回避し[22]、ワグネリアンが1番人気に推された[23]。レースでは3頭が後続を大きく離して逃げる展開となるが、ワグネリアンは中団の後ろで待機[23]。直線の入り口では馬群の外に進路を取ったが、前との差を詰めることが出来ず、4番手から抜け出したエポカドーロ(戸崎圭太騎乗)の7着に敗れた[23]。この騎乗について福永は「ダノンプレミアムが回避したことで『多少強引な競馬をしても勝てる』と思ってしまった」と自身の過信を反省の弁として述べている[24]

続いて、クラシック三冠の2戦目である東京優駿(日本ダービー)(東京芝2400メートル、GI)に出場[25]。怪我から復帰したダノンプレミアムらが人気を集め[26]、ワグネリアンはいずれも自己最低となる単勝12.5倍の5番人気にとどまった[13]。不利とされる外枠(18頭中の17番枠)からの発走となったが[13][27]、先行集団でレースを進めると[注 4]、ダノンプレミアムや逃げたエポカドーロらを最後の直線で差し切り優勝[25][26][注 5]。鞍上の福永は19回目の挑戦で初の東京優駿制覇を成し遂げた[25][26][注 6]。福永は「ゴールの瞬間もそのあと帰ってくる時も、自分がフワフワした感じになるのは初めての経験でした」と喜びを表すと共に[32]、父・洋一が東京優駿に勝てないまま騎手を引退することになってしまったため「ようやく福永洋一の息子として誇れる仕事ができた。いい報告ができます。福永家にとっての悲願でしたから」とも述べた[33]

夏は休養に充て、秋は神戸新聞杯(阪神芝2400メートル、GII)から始動[34]。福永がこの競走の前週に落馬負傷し頭蓋骨骨折・気脳症と診断されたため、普段から調教で騎乗している藤岡康太が騎乗することとなった[34]。レースでは、エポカドーロ(1番人気、4着)らを破り勝利した[35][注 7][注 8]

この勝利によりクラシック三冠の3戦目である菊花賞(京都芝3000メートル、GI)の優先出走権を得たが、適性が長距離向きではないことから、次走は天皇賞・秋(東京芝2000メートル、GI)を目指すと発表された[35]。しかし、神戸新聞杯後は疲れが抜け切らず、陣営の「まだまだ先のある馬ですし、今は無理をする時期ではない」という判断から、福島県のノーザンファーム天栄に放牧へ出され天皇賞を回避することが決まった[37]

東京優駿に優勝したワグネリアンであったが、この年のJRA賞では有馬記念優勝など重賞3勝を挙げたブラストワンピースが最優秀3歳牡馬を受賞した[38][注 9]

4歳(2019年)[編集]

2019年は大阪杯(阪神芝2000メートル、GI)で復帰[39]。ブラストワンピースら8頭のGI馬が集まったこの競走で[39]、ワグネリアンは単勝4番人気で出走[40]。レースでは中団追走から最後の直線で内を突くが、勝ち馬のアルアインから0.1秒差の3着に敗れた[40]

夏は札幌記念(札幌芝2000メートル、GII)に出走。今秋に凱旋門賞出走を目指す同世代のフィエールマン、ブラストワンピースも本競走に出走する中で[41]フィエールマンに次ぐ2番人気に推される[42]。レースでは道中前方の好位に位置取り、直線でも伸びるような雰囲気を見せたものの、落鉄が響いたか4着に終わった[41]

秋になり天皇賞・秋(東京芝2000メートル、GI)に出走。同期の三冠牝馬・アーモンドアイ[43]やダノンプレミアム、この年の皐月賞馬・サートゥルナーリア[44]など10頭のGI馬が出走する豪華メンバーとなった[45]。ワグネリアンはこれら3頭に続く単勝4番人気で出走[46]。レースでは後方待機から追い込んだが、アーモンドアイ(単勝1.6倍の1番人気)の5着に敗れた[47](詳細は第160回天皇賞を参照)。

次走はジャパンカップ(東京芝2400メートル、GI)に照準を定め[48]、迎えた同レースは騎乗停止となった福永騎手に代わり川田将雅との初コンビで挑んだ[49]。先代のダービー馬レイデオロとマカヒキや一昨年の同レース覇者シュヴァルグランなどが参戦し、ランフランコ・デットーリ などの外国人ジョッキーの来日騎乗も注目を集め[50]、その中でレイデオロに次ぐ2番人気に支持された。レースではスタート後すぐに好位6番手に付けて直線でも馬群を割って力強い伸び脚を見せたが勝ち馬らに届かず3着となった[51](詳細は第39回ジャパンカップを参照)。

ジャパンカップ後は有馬記念などの年内の競走には出走せず、休養することが決まった[52]

5歳(2020年)[編集]

この年も大阪杯(阪神芝2000メートル、GI)から始動[53]。この競走では、GI競走未勝利ながら前走の中山記念で5頭のGI馬に完勝したダノンキングリーが単勝1番人気に推される[53][54]。以下、前年のエリザベス女王杯の優勝馬で中山記念では2着だったラッキーライラック[55]、アメリカジョッキークラブカップに勝利したブラストワンピース[55]、前年の秋華賞馬であるクロノジェネシス[53]が続き、ワグネリアンは5番人気だった[54][注 10]。レースでは、ダノンキングリーが前半の1000メートルを60.4秒で逃げる展開の中、ワグネリアンは中団を追走する[54]。最後の直線ではラッキーライラックが抜け出し優勝、ワグネリアンは5着に終わった[54]

続いてファン投票8位[59]に選出された宝塚記念に出走。史上最多のGI馬8頭が顔を揃える中[60]、単勝オッズは7番人気となった[61]。しかし、レースでは道悪馬場で伸び切れず13着に大敗した。

宝塚記念後、不振の原因の一つと思われる喉鳴りの手術のため長期休養に入った[62]

6歳・7歳(2021年・2022年)[編集]

8か月の長期休養後、6歳になり復帰初戦の京都記念は武豊に乗り替わり、2番人気となるが伸びきれず5着に敗れる。続く大阪杯は吉田隼人が騎乗するがブービーの12着と大敗に終わった。
その後休養に入り、10月の富士ステークスでマイル戦に初挑戦するも、6着に敗れる。その次に挑んだジャパンカップでも最下位の18着に敗れた。
ジャパンカップのレース後は肝臓疾患のため栗東トレセン内の入院馬房で療養していたが、年が明け7歳になった2022年1月5日に容体が悪化し、同日午後6時頃多臓器不全で死亡した[63]。7歳没。死後、解剖した結果、胆石が胆管に詰まり多臓器不全を起こしたことが判明した[64]

競走成績[編集]

以下の内容は、netkeiba.comの情報[13]に基づく。

国際的評価[編集]

ワールド・ベスト・レースホース・ランキング
年度 順位 レート 部門 コラム別 出典
S M I L E
2018 59位 119 L 119 [65]
2019 112位 117 IL 117 117 [66]
〔注〕距離およびコラムの「SMILE」は、それぞれ下記の距離区分の略号。

  • S = Sprint(短距離): 1000 – 1300 m、北米は1000 – 1599 m
  • M = Mile(マイル): 1301 – 1899 m、北米は1600 – 1899 m
  • I = Intermediate(中距離): 1900 – 2100 m
  • L = Long(長距離): 2101 – 2700 m
  • E = Extended(超長距離): 2701 m –

日本国内での評価[編集]

JPNサラブレッドランキング
年度 部門 順位 レート
ポンド (lb)
キログラム
換算 (kg)
コラム別 出典
S M I L E
2017 2歳
3位
112
50.5
[67]
2018 3歳
3位
119
54.0
119 [68]
2019 4歳上
16位
117
53.0
117 117 [69]
2020 4歳上
27位
114
51.5
114 [70]

表中のアステリスク(*)は、海外で生産された後に日本に輸入された馬を示す。

注釈[編集]

出典[編集]

外部リンク[編集]