ブラックペアン1988 – Wikipedia

ブラックペアン1988』は2007年に講談社から発売された海堂尊の長編小説である。

2018年4月22日より6月24日まで、TBS系日曜劇場にてテレビドラマ化された。

時代を1988年に移し、著者の作品に登場する東城大学医学部付属病院を舞台として、1人の研修医が2人の医師との関わりの中で成長していく姿を描いた群像劇。2008年の山本周五郎賞の候補作となった。

『小説現代』に2007年4月号から同年8月号まで連載され、同年9月には単行本が刊行された。2009年12月15日に加筆修正された文庫本が上下巻に分かれて発売され、下巻の巻末には映画版『チーム・バチスタの栄光』で天才外科医・桐生恭一を演じた吉川晃司と著者の対談が収録されている。2012年4月13日には、上下巻にした文庫版を1冊にした新装版の文庫本が発売された。

高階権太をはじめ『田口・白鳥シリーズ』に登場した脇の登場人物たちや、同シリーズの主人公である若き日の田口らも多く登場している。

連載途中で一時詰まったが、高階のカウンターパートである渡海の登場を思いつき、作品は完成した[1][要ページ番号]

執筆時のBGMは、STRAIGHTENERの「SIX DAY WONDER」[要出典]

ストーリー[編集]

医師国家試験受験後、合否判定を待ちつつ東城大学医学部付属病院の研修医となった世良雅志。佐伯清剛教授を頂点とする総合外科学教室(通称・佐伯外科)に入局した世良は、入局から3日目、帝華大学からやってきた新任の講師・高階権太と遭遇する。高階は食道自動吻合器「スナイプAZ1988」を引っ提げ、手術の在り方、若手の育成に一石を投じて波紋を呼び、総合外科学教室の秩序を乱す言動と相まって周囲からの反感を買っていた。また「佐伯外科」には「オペ室の悪魔」と呼ばれる万年ヒラ医局員の渡海征司郎がおり、世良は高階や渡海との関わりの中で医師として成長していく。

世良が入局してから半年後、佐伯が病院長選挙のパフォーマンスのために北海道での学会に出席中、手薄となった病院では渡海と佐伯の過去の因縁が明らかになる事件が起こる。

登場人物[編集]

総合外科学教室[編集]

日本を代表する国手、佐伯清剛教授が主宰する教室で論文の数よりも手術の腕前が重視され、かつては東城大学医学部唯一の外科学教室であったが、この3年で脳外科、肺外科、小児外科が分離、独立している。だが、それを促しているのは他ならぬ佐伯教授自身だと噂されている。
世良雅志
東城大学医学部付属病院総合外科学教室(佐伯外科)に入局した研修医。東城大学医学部のサッカー部に所属し「俊足サイドバック」として名を馳せていた。教授に対しても物怖じしない発言をし周囲をハラハラさせる。
高階権太
総合外科学教室に赴任した新任講師で世良の指導医を務める。帝華大学で第一外科教室の助手を務め、マサチューセッツ医科大学に2年留学したという経歴を持つ。不敵な言動で周囲の反感を買うことも。食道自動吻合器「スナイプAZ1988」で医療技術の発展のあり方を変えようとする。20年後の東城大学医学部付属病院院長。「権太」という名前にコンプレックスを抱いている。
渡海征司郎
総合外科学教室の医局員。入局して10年になるが、昇進に関しては自分で断り続けている。カンファレンス等の医局行事に出席することは殆ど無く、軽薄に振る舞っているが手術の腕は高く、外科控え室にいることが多いため「オペ室の悪魔」と称され、総合外科学教室では数少ない食道癌の執刀経験者でもある。だが、その高い技術故に高階や佐伯からは医師ではなく、手術職人であると評されている。佐伯とは過去にある因縁がある。
佐伯清剛
総合外科学教室教授。専門は腹部外科で日本を代表する国手。技術重視の気風やその威厳を持って「佐伯外科」の頂点に君臨している。手術室には「ブラックペアン」と呼ばれる真っ黒なペアンを通常の手術器具の中に含ませている。東城大学医学部付属病院の次期院長選に立候補する。
垣谷雄次
総合外科学教室の医師。世良とはサッカー部の同窓で8年先輩の間柄。口が過ぎるところのある世良をたしなめる事もしばしば。20年後の臓器統御外科講師、医局長。『チーム・バチスタ』第一助手。胸部大動脈瘤バイパス手術の専門家。
黒崎誠一郎
総合外科学教室助教授で医局員の3割を占める心臓血管外科グループのトップ。高階の言動に不快感をあらわす。のちに総合外科学教室から分離し臓器統御外科学教室を立ち上げる。
北島
世良と同期の研修医。同期の中では優秀で、上司の医師からも信頼されている。
渡辺
世良と同期の研修医。九州の薩摩大学(旧帝国大学)から入局した変わり者で疾病患者の担当医になったことで術者になると目されている。
関川
総合外科学教室入局5年目の医師で世良の上司。

看護師[編集]

物語の舞台である1988年当時、看護師は正式名称ではなかったので、看護婦のまま掲載されている。詳細は日本の看護師#雇用機会均等化を参照。

藤原真琴
手術室兼ICU看護婦長。高階や渡海の言動や猫田の居眠り癖に気を揉んでいる。高階とは出会って早々に丁々発止なやり取りを行い、裏では高階を「ゴンスケ」と呼んでいる。
猫田麻里
手術室主任看護婦。昼寝をすることに執着し、いつも昼寝場所を探し回っているため、藤原の心証は良くない。高階の機器出しを担当することもある。
花房美和
手術室看護婦。手術での機器出しの経験はいまだ浅い。世良とは親密な関係になりつつある。

医学生[編集]

田口公平
世良が教育指導することになった医学部2年生で、20年後の世界を描いた『田口・白鳥シリーズ』の主人公。患者の気持ちを尊重しない渡海の告知の仕方には否定的。世良と渡海が関わった手術で血しぶきを浴びて卒倒してから血が苦手となった。
速水晃一
世良が教育指導することになった医学部2年生で、20年後を描いた作品では「ジェネラル・ルージュ」の異名を持つ救命救急医となる。渡海の考え方には肯定的。医師免許取得後、総合外科学教室で研修医となる。
島津吾郎
世良が教育指導することになった医学部2年生で、20年後の東城大学医学部付属病院放射線科助教授。

主な用語[編集]

スナイプAZ1988
高階が持参した食道自動吻合器で、歪んだライフルのような見た目をしている。元々は直腸癌の超低位前方切除術用に開発されたもので、それを高階が食道切除用に改良した。この道具を用いた手術ではリーク(縫合不全)・ゼロに抑えられるという実績があるが、佐伯はオモチャとよんでいる。なお、「スナイプAZ1988」は作中の造語で道具自体は正式な手術道具である。
ブラックペアン
佐伯が手術で用意する真っ黒なペアン(鉗子の一種)。ある出来事によって特注されるようになり、このペアンには佐伯自身の覚悟が秘められている。ペアンはカーボンで出来ている。

書籍情報[編集]

テレビドラマ[編集]

ブラックペアン』のタイトルで、2018年4月22日から6月24日まで毎週日曜日21時 – 21時54分にTBS系の「日曜劇場」枠で放送された。主演は日曜劇場で初主演の嵐の二宮和也[2]

時代が小説設定の1988年から番組制作・放映時である2010年代に変更されている他、「スナイプ」の使用用途が原作とドラマで異なり、原作では「食道自動吻合器」、ドラマでは「心臓僧帽弁置換器」となっている。

第5話のロボット手術の際に使用した機材と手術室は、ニューハートワタナベ国際病院でロケをして撮影した。

「日曜劇場」は、この作品からスポンサーが東芝からスバルに交代した。

この作品には治験コーディネーターが主要人物として登場しているが、その業務描写が実際の治験コーディネーターとあまりにもかけ離れているとして、日本臨床薬理学会がTBSに抗議し、その送付予定の意見文を公開した[3][4]

キャスト[編集]

東城大学医学部付属病院[編集]

渡海征司郎(とかい せいしろう)
演 – 二宮和也
ドラマ版の主人公。論文を書かないため、出世せず一般医局員だが、天才的な技量の外科医。医局の仮眠室で暮らしている。仮眠室では、よく卵かけごはんを食べている。主に助手として手術に参加しているが、難易度の高い手術は執刀している。執刀医が手術を失敗した際の挽回を請け負う代わりに、辞表を提出させ退職金を巻き上げて辞めさせているので「患者を生かすが、医者を殺す」と言われており、自らは「腕の良い医者は何をやってもいい」と公言している。医師なのに喫煙者(ヘビースモーカー)という裏の一面をもっている。
世良雅志(せら まさし)
演 – 竹内涼真
初期研修医。サッカーが好きでペレを尊敬している。指導医となった渡海の非常識な言動に振り回されているが、患者を必ず救ける医師として尊敬もしている。
花房美和(はなぶさ みわ)
演 – 葵わかな
新人看護師。同じ新人同士として世良と励まし合って仕事している。
黒崎誠一郎(くろさき せいいちろう)
演 – 橋本さとし
東城大学医学部付属病院総合外科学教室の准教授で、佐伯教授に忠実。
藤原真琴(ふじわら まこと)
演 – 神野三鈴
看護師長。
猫田真里(ねこた まり)
演 – 趣里
器械出しに長けた手術看護師。渡海には「猫ちゃん」と呼ばれており、オペ中の意思疎通もスムーズに行っている。渡海の他にあまり使う者がいないので、仮眠室でよく寝ている。
垣谷雄次(かきたに ゆうじ)
演 – 内村遥
外科医。
関川文則(せきかわ ふみのり)
演 – 今野浩喜
外科医。東城大付属病院で2回目のスナイプを用いた手術の執刀医に指名されたが、左利きであることから上手く使うことができずミスを犯してしまう。
田口公平(たぐち こうへい)
演 – 森田甘路
研修医。
速水晃一(はやみ こういち)
演 – 山田悠介
研修医。
島津塔子(しまづ とうこ)
演 – 岡崎紗絵
研修医。
北島達也(きたじま たつや)
演 – 松川尚瑠輝
研修医。
宮元亜由美(みやもと あゆみ)
演 – 水谷果穂
看護師。
新井美緒(あらい みお)
演 – 原アンナ
看護師。
守屋信明(もりや のぶあき)
演 – 志垣太郎
東城大学医学部付属病院の病院長。
院長退任後の帝華大系列の病院のポスト斡旋を条件に、東城大学医学部付属病院の利益ではなく西崎の思惑にそって動いている。
高階権太(たかしな ごんた)
演 – 小泉孝太郎
新任エリート講師。アメリカで活動経験があり、帝華大学病院から赴任してくる。西崎の弟子。
アメリカから持ち帰った「スナイプ」を東城大学総合外科に持ち込み「スナイプがあれば『佐伯式』は必要ない」と豪語する。
佐伯清剛(さえき せいごう)
演 – 内野聖陽
東城大学医学部付属病院総合外科学教室の教授・トップ。渡海の父親とは同学で同僚だった。
心臓を止めずに僧帽弁形成術をする「佐伯式」という画期的とされた術式で世界的な評価を得ており、日本外科学会の次期理事長の座を西崎と争っている。

その他[編集]

西崎啓介(にしざき けいすけ)
演 – 市川猿之助
外科教授。研究をメインにおこなっている。
日本外科学会の次期理事長の座を佐伯と争っており、インパクトファクターのポイントで佐伯に負けているため、インパクトファクター獲得のために色々に画策し、失敗した部下を容赦なく切り捨てている。
木下香織(きのした かおり)
演 – 加藤綾子[5]
元看護師。治験コーディネーター。ドラマオリジナルキャラクター。多額の研究費や負担軽減金を用立てたり、高級飲食店での接待などを行っており、作中では「やり手」という評価を得ている。
池永英人(いけなが ひでと)
演 – 加藤浩次[6]
医療ジャーナル誌『日本外科ジャーナル』の編集長。ドラマオリジナルキャラクター。
渡海一郎(とかい いちろう)
演 – 辻萬長[7]
征司郎の父で故人。医師として志を同じくするものとして佐伯の盟友だった。
渡海春江(とかい はるえ)
演 – 倍賞美津子
征司郎の母。ドラマオリジナルキャラクター。

ゲスト[編集]

第1話
皆川妙子(みながわ たえこ)
演 – 山村紅葉
世良が初めて担当した患者で、親身な心使いや励ましにより世良に深い信頼を寄せるようになる。佐伯式の手術を受ける予定であったが、手術前にショック状態に見舞われたため、佐伯式では症状に対する負担が大きくなってしまったとして、東城大病院における初めてのスナイプ手術を受けることになる。
横山正(よこやま ただし)
演 – 岡田浩暉[7]
世良の指導医であり手術の失敗を渡海にフォローしてもらった代わりに病院を去る。
第2話
小山兼人(こやま かねと)
演 – 島田洋七
急患で運ばれてきた患者。
小山好恵(こやま よしえ)
演 – 沢松奈生子
兼人の妻。
第3話
楠木秀雄(くすのき ひでお)
演 – 田崎真也
渡海と世良が担当の患者。佐伯式の心臓手術を受けるために入院し、佐伯が診察にあたっている。
田村隼人(たむら はやと)
演 – 髙地優吾(SixTONES)
音大生。木下紹介の患者。アメリカでの音楽コンクールが間近に迫っているため、早期に退院可能なスナイプ手術を希望するが、術前検査により複雑でレアケースの症例であることが判明し、力量不足であるとして高階が執刀を自ら諦め、佐伯の指示で渡海が執刀医となる。
田村浩司(たむら こうじ)
演 – 依田司
隼人の父。厚生労働省の次期事務次官候補。
第4話
島野菜穂(しまの なほ)
演 – 田中雅美(第5話)
小春の母。
島野小春(しまの こはる)
演 – 稲垣来泉(第5話)
帝華大学病院から転院してきた患者。僧帽弁閉鎖不全を患う。高階とは帝華大学病院に入院していた時の主治医だったので慕っている。サッカーが好き。
第5話
松岡仁(まつおか じん)
演 – 音尾琢真[8]
最新鋭の内視鏡下手術用支援ロボット「ダーウィン[注 1]」を使用する通称ダーウィン手術を専門とする帝華大学病院の外科医。
富沢雅之(とみざわ まさゆき)
演 – 福澤朗(第6 – 8話)[8]
厚生労働省の医務技監。
第7話
山本祥子(やまもと しょうこ)
演 – 相武紗季[9]
隣の市の病院に勤務する現役の看護師主任。木下の元同僚看護師。
武田秀文(たけだ ひでふみ)
演 – 長谷川忍(シソンヌ)
帝華大学病院の医局員。
第8話
小林(こばやし)
演 ‐ 上杉祥三
「さくら病院」院長。
坂口克也(さかぐち かつや)
演 ‐ 髙橋洋
国立帝華大学病院 第一外科 医師
第9話・最終話
飯沼達次(いいぬま たつじ)
演 – 山本亨

スタッフ[編集]

評価[編集]

  • 2021年7月に行われ、300人が投票に参加した「二宮和也の歴代出演ドラマ人気ランキング」では、『流星の絆』や『フリーター、家を買う。』らを凌ぎ1位を獲得した[10]

放送日程[編集]

各話 放送日 サブタイトル[11] 脚本 演出 視聴率[12]
第1話 4月22日 オペ室の悪魔!金で救う天才医師・新ダークヒーロー 丑尾健太郎 福澤克雄 13.7%
第2話 4月29日 手術はバクチ!生きるか死ぬか!?極限を超えたオペ室 田中健太 12.4%
第3話 5月06日 二つの緊急オペ!!どっちの命を救う? 渡瀬暁彦 12.1%
第4話 5月13日 小さな命を救って!スナイプ完結最終章 田中健太 13.1%
第5話 5月20日 涙の決断!子どもの命を絶対に助けて!! 丑尾健太郎
神田優
渡瀬暁彦 13.4%
第6話 5月27日 母の手術に涙する!ミスを絶対に許すな 丑尾健太郎
槌谷健
田中健太 13.0%
第7話 6月03日 隠蔽を許すな!親友の命とペアンの謎!! 丑尾健太郎
神田優
青山貴洋 13.0%
第8話 6月10日 最終章・ペアンの謎 教授と患者の秘密? 丑尾健太郎
槌谷健
田中健太 16.6%
第9話 6月17日 最終回前20分拡大ペアンの真実を暴け!!
命がけの秘密!命がけの手術!医者の覚悟
丑尾健太郎
神田優
渡瀬暁彦 16.2%
最終話 6月24日 さよなら!オペ室の悪魔!!復讐の結末は!?
ペアンに涙!感動秘話、最後のオペで助けろ
丑尾健太郎
神田優
槌谷健
田中健太 18.6%
平均視聴率 14.3%(視聴率はビデオリサーチ調べ、関東地区・世帯・リアルタイム)
  • 第1話と第2話は、21時 – 22時19分の25分拡大放送。
  • 第9話は、21時 – 22時14分の20分拡大放送。
  • 最終話は、21時 – 22時9分の15分拡大放送。

注釈[編集]

  1. ^ 内視鏡下手術用支援ロボットda Vinciをモデルとしたもの。

出典[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]