墨付け – Wikipedia

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墨付け[1](すみつけ、英語: lnking[2])とは、平面図を見て、基礎伏図を起こした後大工職人が、土台、柱、梁となる木材に加工するための目印をつけることで、 木材のねじれや曲がり等を1本1本確認・番付をして墨汁で印を付ける工程である。墨付けした目印を元に加工するため正確さが重要な作業である[3][4]。また、この大工職人が手加工を施すことを手刻みと呼ぶ[5]

墨付けは大工の聖域とも呼ばれ[6]、木の狂いやねじれが無いかなど確かめてから行われる[3]。墨付けの中でも、木材やコンクリート面 などに、墨壺や墨刺しを使い墨を印すことを墨を打つという。墨壺の糸を引き出して指で弾いて印すので、墨を打つと言った[7]。この作業に誤りがあると、正しい接合が行われない為、非常に重要な工程となる。墨付けはケガキなどとも呼ばれている[8]。そして、棟梁が役割を担当する[5]。この作業には熟練の技術を要する為、腕の見せ所でもある[6]。また、墨付けをする際は墨壺、墨刺し等の道具を用いて墨汁で印をつける[9]。墨付けされた木は下小屋と呼ばれる建築現場に搬入する材料を加工する場所で、上棟までの刻み、上棟後の内法材の下拵えなどを行う[10]。元請けの棟梁には不可欠の作業場である[10]。下小屋をもてない大工は、取引のある材木屋の店先を借り作業をすることが多くある[10]

プレカットの普及により、墨付けは不要になった[7][いつから?]

墨出しは工事に必要なさまざまな基準線を書き出すための作業である。墨出しを建設現場で行う「墨出し工」には必要な資格はない[11]。墨出し工事単体でも大工・鳶・土工・コンクリート工事として認められていたが[いつ?]、平成19年以後は国より指針が発表されたため、単体では建設業28業種の業種に該当しなくなった[12]

墨出し工事は、建設業の中でも特殊とされている[13]。図面と実際の位置を把握するために大切な作業の一つで、測量時から仕上げ作業まで通して行われる作業である[13]。図面の把握・測量機器の操作等も墨出しに求められる技術とされる[14]

近年、古くから使われている墨壷に加えて、マジックやレーザーなどの機器も使用されている[13][いつ?]

墨出しは鉄筋工事、型枠工事、建具工事、金物工事など多くの工事において、設計図を原寸大に描くことで[13]
この作業は設計図通りの正しい制度の高い位置だしが要求される。
近年、レーザー照射器を当てて、その線に沿って墨を出す方法も行われている[13][いつ?]

手板・番付表と呼ばれる大工の図面を確認しながら、間違いのないように番付表の記号を木材に記載し、墨付けをする[15]

プレカットとの差[編集]

木を見る[編集]

大工職人が墨付けをする時、まず行う作業を木取りと呼び[16]、何処の部分にどこの木を使うかを決める作業で、1本1本板図を見ながら番付と呼ばれる印を位置がわかるよう各材木に印をつける[17]。木材には節や反り、割れ、欠損、虫食い等があり、欠点が含まれているため材の状態を一つ一つ見て確認し、適材適所を探していく作業を行う[16][17]

木を組む[編集]

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木材を繋いでいく作業のことで、木の癖やその箇所によって決めていく[16]
同じ方向に繋いでいくことを継ぎ手、
方向を変えて繋いでいくことを仕口と呼ぶ[16]

大工の弟子入り[編集]

大工の弟子入り後は道具研ぎから始まり、掃除・片付け、刻み、現場での建方、屋根仕舞、造作を覚える。墨付け、原寸引き等を一通り任されるようになった後[18]、一人前の大工として認められ、後に棟梁として現場を任される[18]

作業手順[編集]

基本墨出し・親墨出し[編集]

柱などに基準線を引いていく作業を行っていき、以下のような線を引く作業を行う。

名称  内容
芯墨 柱、梁などの通り中心を示す基準線[13]
逃げ墨 通り芯から一定の距離を逃げて出した線[13]
陸墨 天井、床、梁などの高さを測り出す時の基準[13][注釈 1]
地墨 床面に打った墨[13]
小墨 コンクリート施工図から、柱の位置、大きさ、次の壁の位置などを正確にコンクリート床面に墨打ちした墨[13]

上階への移動[編集]

芯墨を上階へと移動させる[編集]

逃げ墨の交点から上階床に約15cmの孔を開け、上階から逃げ墨の交点に向け、下げ振り器を下げる[13]
そして墨を上階の床上に移し、交点は四隅とも出し基準線を導く[13]

陸墨の上階への移動[編集]

1階の基準高さとなっている陸墨は、基準点から直接移し、2階から上に墨を移動させる場合は、1階からの基準高さが分かる隅から鉄骨や柱などを利用する[13]

型枠建込用墨出し(小墨出し)[編集]

柱の位置、大きさ、次の壁の位置、厚みなどを基準隅から正確にコンクリート床面に墨出しする[13]

墨出し作業には主に以下のような器具が使用される。

墨出しの際に木材を加工の目安となる印を木材の表面につけるための道具である[13][19]。墨を吸わせた綿のものを墨壺に入れ、この中に糸を通した後、墨糸をはじくと直線が書ける仕組みになっている[13][20]

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竹をヘラのような形状に加工した道具である[19][21]。大工や石工が主に使い[21]、筆に近い形状をしている[19]。墨壷を使用する程でない短い直線の記入[13][19]、あるいは、木材等の墨付けの際に行われる符号の記入に多く用いられる[19]。墨壷の墨を付けて使用する[19]

矢立

  • 万年筆が普及する以前、和文具として広く使われた矢立は[22]、小型の携帯用筆入れで、墨入れ部分・棹部分からなる[23][24]。腰にさして携行でき[25]、番付けの際に多く墨差しの代わりに使用される[23]
  • セオドライト・トータルステーション

1地点から他の2点間の水平角と高度角を測定する機械である。距離を測るための光波測距儀のトータルステーションと角度を測るための精密光学計器のセオドライトを組み合わせたもの[13]。距離と角度の測定を同時にすることができ、平面的な位置を簡単に求められる[13]

地面の高低差の測定や水準測量をする場合に用いられる[13]。レンズを覗くことで見える視準線が常に水平に保たれる構造になっている[26]。建築・土木分野で水平出し・高低差の測定等に多く用いられる[26]。一般的に標尺英語版と同時に使用される[26]

オートレベル(自動レベル)

  • 本体内部に自動補正機能があり、レベル本体が傾いている際でも、自動補正範囲内であれば視準線を水平に保つことができる[26]。使い勝手の良さ・作業の効率化の利点があるため、広く用いられている[26]
デジタルレベル(電子レベル)

  • バーコード標尺を使い、レベル本体の画像解析機能により標尺目盛りを自動的に読み取ることができる[26]。ボタン一つのみでの精密な測定が容易である[26]。個人差による読定誤差がないため熟練した観測者が不必要である[26]。国土地理院の行う基本測量の水準測量に使用されている[26]
ティルティングレベル

  • 内蔵された高感度の棒状気泡管により機器の水平を出すことができる[26]。望遠鏡を覗きながら整準の確認が可能で、主に高精度水準測量に使われるが、熟練した観測者が必要である[26]

建築・土木・内装工事において容易に水平出しができる回転レーザー照射型レベルである[26]。赤外線レーザーによって全周の水平基準面の作成、レーザー光の検知のため受光器を使用することにより、一人での水平出しを迅速に行うことができる[26]

勾配設定ができる機種や建設機械のコントロールを目的とした機器の増化傾向が見られている[26][いつから?]

水平回転レーザーレベル(レベルプレーナ)

  • 機械内部の自動補正機構による水平方向に常時レーザーが照射が可能である[26]。受光器により受光位置の把握ができるため簡単に水平出しができる[26]。生コンクリート打ち・床面仕上げ・ブロックの積み出し・窓枠タイル張り・壁塗り・ペンキ塗りの横墨・側溝の床掘等の現場での使用ができる[26]
ローテーティングレーザー

  • 水平回転レーザーレベルに勾配設定機能を加えたもので[26]、水平基準面から1方向(1軸)と2方向(2軸)の勾配設定ができる機種が存在する[26]。レーザーの受信距離は、直径約700m〜1200mの広範囲に対応しているため、大規模造成・道路工事・クラウド整備・ビル建設用のコンクリート打ち・農地整備等に使用できる[26]。また、建設機械に取り付けられたマシン用レーザーセンサーとの組み合わせで、均平作業を精度よく行うことができる[26]

糸の先端に円錐形の重りがついたている器具で[13]
ハンマー等で地面にうちつけた後、糸状の金属を延ばしていくことにより構造物の垂直を確認する際に使われる[27]。軽さのため風などによる揺れが起こることがある[27]。また、手巻きの際の怪我が多い[27]。鉛直方向に正しく出ているかを確認することができるため[13]、地墨を打つ時など、柱が垂直に立っているかを確認する際に使われる[13]

地面に対する角度や傾斜を確認する際に用いられる器具である[13]

気泡管水平器

  • 水平器のフレームを当てた際に気泡管内部の気泡が中央の位置に来た場合に水平・垂直になっていることを表す[13][28]。150mm・300mm・600mmなど長さのバリエーションがある[28]。気泡管の数は一つのみでなく、水平用・垂直用・角度測定用に複数の気泡管が内蔵されている水平器もある[28]。材質も様々なもので作られるため、マグネット付属の水平器であれば鉄製の建材に張り付けながらの垂直の測定などが可能である[28]。一般的に水平器とは気泡管水平器の事を指している場合が多い[28]。また、フレームの一部に、液体が封入されたガラス管[注釈 2]が存在する[28]
デジタル水平器

  • 測定した値をデジタルでの表示が可能な水平器である[28]。液晶画面に数字で値が表されるため利便性があり、読定誤差がなく熟練した観測者が不要である[28]。水平だけでなく、垂直・勾配・角度等の値を正確に読み取ることができる[28]。ブザー機能が搭載された水平器も存在し、棚など水平を調整しつつ取り付けなくてはいけない場合に、気泡や液晶画面を確認せず音のみによる水平の確認できるため作業性が高まるが[28]、乾電池等が必要であり、防水でないものが多いため屋外での作業には向かない[28]
丸型水平器

  • 大半が気泡管部分のみの円形をしており[28]、広い面の水平を簡単に確認する際、360度までの傾きを測定することが可能である[28]。主に機械等のネジ止めを行う際に使用するものであるが単体での使用ができる[28]。カメラ等の三脚などに付属されていることが多い[28]
レーザービーム付き水平器

  • レーザーポインターを内蔵している水平器で、気泡管で水平を測る[28]。レーザーを使用することにより測定している面の他、離れた場所の水平を同時に測定すことが可能で[28]、スピーカーなどを壁から離して設置する際、簡単に正確な高さに揃えて設置ができる[28]。またレーザー光により目視での水平の確認が行えるため、ブロック・レンガ等を積む際に多く用いられる[28]。レーザーをポイントでの照射以外にラインでの照射がされる水平器も存在し[28]、壁紙等を貼り付ける際に多くつかわれる[28]
角度測定水平器

  • 勾配や傾斜角度を正確に測れる目盛りが付属された水平器で[28]、主に建築物やパイプ等の角度などの測定に使われる[28]。土木工事・建築・配管作業に多く使用されている[28]
メジャー付き水平器

  • メジャー(コンベックス)が内蔵されている水平器である[28]。工事やDIYの際2つの作業の同時進行ができるため作業性が高まる[28]
パイプ測定用ミニレベル

  • パイプ状の物体の垂直を測るために用いられる水準器である[28]。水平器のV字溝によりパイプに強く固定することが可能[28]

携帯型の小型スチール製巻き尺のこと。
コンベックスやメジャーとも呼ばれる[13]

指矩とも呼ばれる[13]
L字型の金属製の物差しで、両方の辺に目盛りがある。
長さを測るための道具で、直角であるかの確認や墨出しに使用される[13]

細い角材を用いて住宅毎に現場で作られる一軒の住宅建築の基準になる大型の物差しである[29][30]。尺杖とも呼ばれ[31][32][注釈 3]、長さ1~2間ほどの角材に、1尺ごとの目盛りをつけたもので、寸法取りの間違いを防ぐため棟梁が設計寸法を刻む原寸の定規であり墨付けに使用する[30][32]。4面には尺寸法以外に各部の高さやその住宅の内法・貫の高さなど記入し、その印に従い墨付けされる[29][31]。工事中はこれが「高さ」の物差しとなる[29]。小屋等に置いておき、増改築の際に再び使うものとなる[29]。プレカットが主流となり、検棹は多く用いられなくななった[29][31]。墨付けは、工図面の寸法を読んで現場に当てることが多い[31]

粉チョークを使ったチョークラインは、チョークの簡単に消せる性質を用いて[20]、墨が付きにくい金属やプラスチック等の材料・外に露出している外壁等の墨出しに多く用いられているが[20][34]、素材により粉が凹凸に入りこんでしまうために消せなくなる事がある[34]

墨出し作業の手順[35]
名称  内容
1 基本墨出し 通り芯、レベル、コンクリート天端墨、下階からの墨の移動を行う[11]
2 型枠用小墨出し 躯体コンクリートの位置を表示する[11]
3 型枠建込中の墨出し 設備用箱、ルーフドレイン、インサート、アンカー、差筋、目地棒などの位置出しを行う[11]
4 鉄骨アンカーボルト アンカーボルト位置、レベル、ベースモルタル墨出しなどを行う[11]
5 鉄骨歪直し 鉄骨の垂直度、レベルなどのチェックを行う[11]
6 躯体工事中のその他墨出し カーテンウォール、プレキャスト版等のファスナー、その他の埋込み金物などの位置、レベル出し、デッキプレート取付けの相番等を行う[13]
7 仕上基準墨出し 陸墨、柱芯、壁芯の立上げ、開口部芯、外部角のタテ墨等を行う[13]
8 仕上細部墨出し 内外、各芯よりの返り墨、間仕切り墨、二重天井用墨、石・タイル墨、天井・床割付墨、金物取付用墨等を行う[13]
9 設備関連墨出し 電灯器具取付用墨、各点検口墨、空調器具取付用墨等を行う[13]

墨付けの合印[編集]

合印(あいじるし、英: countermark、matchmark、notch mark、tally[36]とは、棟梁などの墨付けにおいてどのような意味を示して加工するかを表す印で[37]、古くから日本全国で統一された記号や線の引き方で付けられる[38][39][いつから?]。複数人の大工職人たちで刻むためにつけられる[40][41]。独自に考えた接合方法や工夫等を新たに墨付けの記号として取り入れ、作業する場合もある[39]

使用する木材や作業を行う壁や床、天井等に作業する為の水平位置や中心位置を表示することを墨出しという。レーザー墨出し器等を使用し、角度、傾斜を測った上で行われている[42]。墨を付けた糸を伸ばしていくことで対象的に直線を描くことから、墨出し (英: setting-out、setting up、marking)[43]と呼ばれるようになった[44]。組み合わせる木材の中心や水平を表示することが役割である[44]

墨出しは夜間しかできない光学式から、昼でも利用可能なパルスレーザー式に代わっている[いつ?][45]

墨出しには以下の印の付け方と意味が存在する。

陸墨[編集]

陸墨(りくずみ)は、腰墨(こしずみ)[46]水墨(みずずみ)[47]レベル墨(レベルすみ)[48] とも呼ばれ、墨出し作業においては、各階の水平の基準を示すための水平墨のことである[20][49]。 一般的に使われるのは、床仕上りより1000mmのところである[49]
陸墨から上げて示す墨を上がり墨、下げて示す墨を下がり墨という[47]。水平を表す墨のことで[50]、作業現場の基準となる「高さ」を表示する。また、一般的に使われるのは床仕上がりより1000mmの所である[49]。建築においては、コンクリート面や柱、壁などに打つ「水平の墨」のこと[48]。この墨によってサッシュ取付け高や床の仕上げ高を決める[48]

心墨・真墨[編集]

心墨(しんずみ[51])・真墨(まずみ[51])は、通り心と呼ばれる建物の基準となる中心線や柱心、壁心を示す墨[20][52]。建築の寸法を決める基準となる為[50]、正確に墨付けを行うに当たり重要な役割を果たしている。心出し心を打つ(しんだし・しんをうつ)[51]とも呼び、特に木造軸組の継手や仕口などを加工する際、芯墨を基準とする正確な墨付けを行わない場合に全体の寸法への狂いが生じやすいため、芯墨は加工の際に重要な役割をもつこととなる[53]。又、全ての構造材は「心墨」「真墨」を中心として組み立てられる。建築物の完成時に中心となる位置を印す墨である[53]。また、中心から中心までの距離を芯々と呼ぶ[53]

返り墨・逃げ墨[編集]

返り墨(かえりずみ)・逃げ墨(にげずみ)と呼ばれ[54]、障害物のせいで実際に墨出しできない場合[注釈 4]に、一定の距離を記載して打つ墨(印)のことである。寄り墨(よりずみ)とも呼ぶ[55]。 「ヨリ1000」・「500返り」等と書かれ、切断されてしまう部分に芯墨があるとき、1尺や500mmあるいは1mほど離れた一定距離離れた位置に打つ墨のこと[56]。線上に付記することが多い[54]尺返り(しゃくがえり)[注釈 5]と同じ意味を持つ[57]

親墨[編集]

親墨(おやずみ)は、建築物などに墨出しをする際の基準として最初に出す墨のこと[58]
元墨(もとずみ)とも呼び[59]、基準墨になる[60]。柱や壁に記された芯墨[注釈 6]などを親墨とするのが一般的である。躯体工事の基準となり、各階の土間スラブに必ず施工するうえでもっとも重要である[58]。遣方建物位置出しの際に位置出しした基準通り芯を、地下工事から上棟まで、つねに鉛直方向に同一の基準通り芯を何度も墨出しする。
これによって、各階において壁や柱が壁が出っ張ったり引っ込んだりせず、まっすぐに建てることができる[58]。また、壁のタイルや窓、間仕切り壁なども平行かつ直角に配置され、設計図通りの建築物ができあがる。 墨打ちは風の影響を受けると撓んでしまうため[58]、その場そのときの状況に合わせた施工をし、つねに直線を心がける必要がある[58]。全ての基準になるため、高い精度が必要。一般的に墨出し専門業者がつける[50]。親墨には陸墨[注釈 7]と地墨[注釈 8]があり[14]、親墨に従い柱、壁、階段などの小墨を割り出していく[59]。仕上げ工事の時期になると、親墨を基準にして各部所に仕上墨を出すものである[61]
通常は通り心を表す墨を指すが,通り心の基準となる墨や,さらにその基準となる墨を指すことがある[62]

子墨[編集]

子墨(しずみ)は、各科目工事に必要な墨だしで親墨を基準として壁面・床面・階段・基準仕上げに出す墨[50][63]。基準墨をもとに割出す墨をいう[59]。躯体工事における壁面・床面・仕上工事における基準仕上面、親墨から導き出される各種工事用の墨のこと[60][64]

孫墨[編集]

孫墨(まごずみ)は、子墨を基準として内装工事の仕上げ面に出す墨のことを一般的に指すが[50]、同じ建築工事現場でも工法違いから使われないこともある[50]

地墨[編集]

地墨(ぢずみ)は、平面での位置や中心位置を示す墨のことを指す墨で、墨出し作業において、床面や道路面に示す墨である[50]。工事に必要な線形や寸法などを表示するために、捨てコンクリートや基礎、スラブ面に記され[65][66]、床など水平に直に付ける墨のことを指す物で、地盤の上には墨が打てないため、地盤の上に捨てコンクリートをうち、柱や壁などの位置関係を記していき、そこに垂直に立つ間仕切り壁などの部材を配置していく[65]。垂直に立つ部材ではなく、設備関係の器具等の位置を似た方法で記すこともあるが、この場合多くは地墨とは呼ばない[65]。地墨に対して、水平ではなく垂直方向の線を立面に表示した物は、立て墨と呼ぶ[65]。立て墨は、柱の立面や壁面に出入り口、窓などの中心線を表示するものである。墨壺を使い直線をひく[65]。オフィス内装の現場において、壁に出す陸墨たち墨、天井に出す天墨に比べて圧倒的に頻度が高い[67]

竪墨[編集]

竪墨(たてずみ)は、鉛直方向を示す墨のことである。墨出し作業において壁心や柱心などの墨のことで[50]、コンクリート躯体面などに垂直方向の基準線として打たれる[68][69]

縦墨[編集]

縦墨(たてりずみ)は、立て墨(たてずみ)とも呼ばれ、墨出し作業における垂直線のこと[70]。垂直方向の線を立面に表示した墨の総称で[71][72]、柱の立面や壁面に出入り口・窓などの中心線を示す[71][72]。下げ振りやトランシットを使って求める[73][70]

注釈[編集]

  1. ^ 一般に床仕上墨より1メートルの高さの壁面に引かれる[13]
  2. ^ アルコール等の液体と気泡が封入されているガラス製の密閉管。
  3. ^ 30mm角程のものが多く使用されている[17]。折れにくさ・持ち易さの両方が必要で、程良い太さが必要である[17]。また、乾燥のし易さも重要であり、木材の縮小による印のズレを防ぐととが必要で、細さも必要である[33]
  4. ^ コンクリート上に施工図面の位置を書き込めない時[54]
  5. ^ 尺返り(しゃくがえり)は、基準線から1尺はなれた印もしくは墨[57]

    仕口や継手で材料を繋いでも、全体の「長さ」を変えるわけにはいかない[57]
    ホゾのついている男木の接合部は、先端を切断するため、先端に書かれていた「長さ」の基準である芯墨も消えてしまい、長さの確認が出来なくなってしまう[57]。そこで、芯墨から尺返り(30cm戻った墨)を打つことで接合後の長さを確認するための目印となる。

    女木のほうは接合部の先端が切り落とされないので、尺返りは打たない[57]
    50cmや1m戻った墨でも、尺返りと呼ぶ[57]

  6. ^ この場では、中心線や通り芯のこと。
  7. ^ 別名レベル[14]
  8. ^ 通り芯・柱芯のふたつ。

出典[編集]

関連項目[編集]

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