増田俊也 – Wikipedia

増田 俊也
(ますだ としなり)
Toshinari masuda 2014.jpg

増田俊也(2014年)
誕生 (1965-11-08) 1965年11月8日(56歳)
日本の旗 日本・愛知県
職業 小説家
国籍 日本の旗 日本
最終学歴 北海道大学中退
活動期間 2006年 –
ジャンル 小説
ノンフィクション
随筆
評論
代表作 『シャトゥーン ヒグマの森』(2007年)
『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』(2011年)
主な受賞歴 『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞(2006年)
大宅壮一賞(2012年)
新潮ドキュメント賞(2012年)
デビュー作 『シャトゥーン ヒグマの森』
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ジャンル ブログ
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増田 俊也(ますだ としなり、1965年11月8日 – )は、日本の小説家。名古屋芸術大学芸術学部客員教授。

2006年に『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞受賞後、小説だけではなく、ノンフィクションや随筆、評論の分野でも活動し、大宅賞も受賞している。

愛知県出身。愛知県立旭丘高等学校卒業。

2浪して北海道大学へ入学し、大学時代は柔道部で高専柔道の流れを汲む寝技中心の七帝柔道を経験する。北大柔道部の先輩には旭山動物園園長だった小菅正夫がいる[1]。ホッキョクグマの生態研究者を志していたため、柔道部の他に北大ヒグマ研究グループにも入りたかったが、柔道部と両立できずに断念した[2][3]

4年生の最後の七帝戦が終わって柔道部を引退後に大学を中退する。1989年に北海タイムスに入社して新聞記者になる。1992年、中日新聞社へ転職し、中日新聞社中日スポーツ総局報道部記者になる[4][5]

2006年、『シャトゥーン ヒグマの森』で第5回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞を受賞して作家となる。同作の原点は、大学時代に自然保護運動、環境保護運動に取り組んでいたときの知床原生林強行伐採の時の怒りであるという[6]

2012年、『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』で第43回大宅壮一ノンフィクション賞、第11回新潮ドキュメント賞をダブル受賞した[7]

2013年、『七帝柔道記』で第4回山田風太郎賞最終候補にノミネートされた。

2016年4月末日で25年間勤めた中日新聞社を早期退職し、本格的な作家生活に入った。[8]

2017年、『北海タイムス物語』で第2回北海道ゆかりの本大賞を受賞。

大宅賞受賞作『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』(新潮社)はトルーマン・カポーティの『冷血』を意識して作家も作中に出る手法をとっており、「私は血の通った文章を書く小説家であり続けたい」と『群像』誌上で記している[9]。2013年には純文学的色彩の濃い自伝的小説『七帝柔道記』(角川書店)も発表するなど、作風は幅広い。

ガルシア=マルケス、ミラン・クンデラに傾倒し、塩野七生、筒井康隆、ロバート・B・パーカー、カート・ヴォネガット、トルーマン・カポーティ、ヘミングウェイ、ドストエフスキーらを好きな作家として挙げている[10][11][12]

デビュー作の小説『シャトゥーン ヒグマの森』はスティーヴン・スピルバーグの影響を受けたエンターテイメント性の強い作品で[13]、空知英秋や岩明均など他ジャンルのクリエイターたちからも注目された[14][15]。創元SF短編賞最終候補に残り、『NOVA 書き下ろし日本SFコレクション 7』(2012年刊行)に収録された『土星人襲来』ではスラップスティックな作風も見せた。

一方、自伝的小説『七帝柔道記』は実在の人をモデルにした人物と架空の人物を織り交ぜて書かれた私小説的な作品で、北大柔道部の後輩が夭折したときにメモ書きから書き始めたものである[16]。他にも夭折した人をモデルにした人物が多く登場し、「これは彼らへの鎮魂歌です」とインタビューで答えている[17]

ノンフィクションの『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』は、著者自身が強く物語の中に入っていく特殊な手法で、原稿用紙1600枚の大部に仕上げている。著者の木村政彦に対する強い敬愛描写には賛否あったが、夢枕獏、平野啓一郎、五木寛之、恩田陸、櫻井よしこら作家たちは好意的に評した[18][19][20][21]

作品の多くが漫画化されている。『シャトゥーン ヒグマの森』は『ビジネスジャンプ』で(単行本全3巻)、『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』は『週刊大衆』で『KIMURA』(単行本全13巻)の題名で、『七帝柔道記』も『ビッグコミックオリジナル』で連載されている。

  • 私立探偵スペンサーシリーズ(ロバート・B・パーカー)のファンで、大学を中退する際に将来を心配した教授から「自分の可能性がどれくらいあると思っているのか」と問われた時には、『ユダの山羊』からのセリフを引用し、「十まで測れる秤で、十」と答えたり[22]、マンションを引っ越す際にも、「窓からボストンに似た街並みが見える物件を」と注文するなど、日常的にスペンサーの世界に浸っては、周囲の人々を困惑させた。増田が着るブレザーはスペンサーと同じブルックスブラザーズで、サイズも同じ44インチである。このサイズを着るためにベンチプレスの重量を常に加減して胸囲を調整している[12]
  • 自身もかつて競技者であり、北大柔道部の3期後輩に格闘家の中井祐樹(元総合格闘家、現日本ブラジリアン柔術連盟会長)、6期後輩に山下志功(プロ修斗ライトヘビー級前世界王者)がいるため、格闘技雑誌などで評論活動などもしている。ノンフィクション『VTJ前夜の中井祐樹』は、新入生として入部してきた中井祐樹との出会いから、バーリ・トゥード・ジャパン・オープン95で1回戦で失明しながらもトーナメントを勝ち上がって決勝でヒクソン・グレイシーと戦うまでの軌跡を書いている。
  • 井上靖は、その自伝小説三部作『しろばんば』『夏草冬濤』に続く『北の海』で、浪人生活を送っている時に旧制四高(現在の金沢大学)柔道部に誘われて夏合宿に参加する場面を描いているが、主人公の井上靖が四高に入学する前で終わってしまっている。『七帝柔道記』はその続編的作品として書かれた[23]
  • 原田久仁信の作画による『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』の漫画版『KIMURA』が『週刊大衆』で連載された。その副タイトルには「『男の星座』たちに捧げる」と書いてあるが、これは梶原一騎原作・原田作画で連載されながら、梶原の急逝で未完の絶筆となった作品『男の星座』のことを指している[24]
  • 大宅賞受賞時の北海道新聞のインタビューで「小菅正夫先輩も動物園で奇跡を起こした。それに勇気づけられての受賞でした」と北大柔道部の先輩・小菅に対してのリスペクトを表した。[25]
  • 2006年のこのミス大賞応募時のペンネームは増田梗太郎[26]。2008年末に筆名を俊成から俊也へ改名した。
  • 干物妹!うまるちゃんのファンである。
  • 愛猫の名前はトーマス。『トムとジェリー』から命名した。愛車はスズキ・ジムニーで2台所有、1台は平成2年式の26年落ち、もう1台は平成19年式の9年落ちで購入した中古車(平成26年現在)[27]
  • 2012年の大宅賞授賞式には中日新聞社の白井文吾会長も名古屋から列席して祝福した。山本昌が引退した時に白井会長が「素晴らしい決断だ。引退後の次のステージでも活躍を」と新聞紙上で称えたのを読み、山本昌と同じ50歳の節目を迎えた増田は「私も白井会長に『立派な男だ』と認められるような行動をしたい」と、作家専業となる決断をした[28]
  • 29歳の時に警察官になるために兵庫県警を受験した。北大柔道部の後輩がうつ病で自殺したため「現役柔道選手に戻って、彼に戦っているところを見せたい」と年齢制限にギリギリかからない兵庫県警を選んだ。しかし最終面接で新聞記者を辞めての一からの再スタートを「18歳の子たちとやっていけるのか」と面接官たちに諭され、採用されなかった[29]
  • 実父の従兄弟に詩人の安西均がいる[30]

小説[編集]

  • シャトゥーン ヒグマの森(宝島社)
  • 七帝柔道記(角川書店)
  • 北海タイムス物語(新潮社)

ノンフィクション[編集]

  • 木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(新潮社)
  • 木村政彦外伝(イースト・プレス)
  • VTJ前夜の中井祐樹(イースト・プレス)

評論・随筆等[編集]

  • 男を磨くための31章(PHP研究所)

共著[編集]

  • 本当の強さとは何か(新潮社、中井祐樹との共著)

編纂[編集]

  • 肉体の鎮魂歌(新潮社)

アンソロジー[編集]

  • 土星人襲来(NOVA 書き下ろし日本SFコレクション 7、2012年3月)
  • 恋のブランド(「『このミステリーがすごい!』大賞10周年記念 10分間ミステリー」)

単行本未収録作品[編集]

  • MITの亡霊(小説。「このミステリーがすごい!」大賞作家書き下ろしmagazine)
  • 穴掘り小人(小説。小説新潮)

漫画化作品の単行本[編集]

  • シャトゥーン〜ヒグマの森〜  単行本1-3巻(集英社、作画:奥谷通教)
  • KIMURA 単行本全13巻 (双葉社、作画・原田久仁信)
  • 七帝柔道記 単行本1巻 – 以降続刊(小学館 、作画:一丸)〜連載継続中

連載中[編集]

  • 北海道大学の2287日〜続七帝柔道記(武道雑誌『月刊秘伝』2010年12月号 – )
  • 七帝柔道記(『ビッグコミックオリジナル』『ビッグコミックオリジナル増刊号』、漫画:一丸)
  • オトナの部活(Number Do)
  • 肉体と痛みの文学的考察(ゴング格闘技)
  • 文士の一分(日本武道館)
  • ジムニーエッセイ(Jimny SUPER SUZY)
  • 眠るソヴィエト(カドブン/KADOKAWA)
  • 柔道新聞の研究(ゴング格闘技)

連載終了[編集]

  • シャトゥーン〜ヒグマの森〜(『ビジネスジャンプ』2008年15号 – 2009年14号)/単行本全3巻
  • 七帝柔道記(『月刊秘伝』2007年12月号 – 2010年10月号)
  • 木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(『ゴング格闘技』2008年1月号 – 2011年7月号)
  • 深夜日記(週刊実話)
  • KIMURA(週刊大衆)/単行本全13巻
  • 北海タイムス物語(小説新潮)
  • 刑事が抱いた夜(小説現代)
  • 黄金のホルスタイン(小説幻冬)
  • 続・木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(小説新潮)
  • 猿と人間(宝島社『MonoMaster』)

関連人物[編集]

  • 井上靖
  • 小菅正夫
  • 中井祐樹
  1. ^ 漫画版『シャトゥーン〜ヒグマの森〜』第3巻の帯は小菅が書いている
  2. ^ 奥谷通教、増田俊也『シャトゥーン〜ヒグマの森〜』第1巻、集英社、2008年。あとがき
  3. ^ 『七帝柔道記』(角川書店)
  4. ^ 文藝春秋社公式サイト
  5. ^ 中日新聞 2012年4月11日
  6. ^ 奥谷通教、増田俊也『シャトゥーン〜ヒグマの森〜』第3巻、集英社、2009年。あとがき
  7. ^ 新潮社公式サイト
  8. ^ 『週刊文春』2016年6月2日号、産経新聞2016年7月10日付
  9. ^ 『群像』2011年12月号
  10. ^ 『オール讀物』2012年5月号
  11. ^ 『このミステリーがすごい! 2011年版』宝島社、2010年
  12. ^ a b 『本の雑誌』2010年3月号
  13. ^ 『キネマ旬報』 2015年8月上旬号
  14. ^ 「週刊少年ジャンプ」銀魂百六十三訓「シャトゥーンという小説を読みました。もう怖くて山に行けそうもないです」、2007年
  15. ^ 「ジャンプスクエア」直撃インタビューで「今もっとも気になる作品」として『シャトゥーン』を挙げている、2009年5月号
  16. ^ 『週刊ポスト』2013年4月5日号
  17. ^ 『週刊文春』2013年4月4日号
  18. ^ 『週刊文春』2011年11月17日
  19. ^ 「波」2011年10月号
  20. ^ 『日刊ゲンダイ』2011年11月9日
  21. ^ 「新潮45」2012年10月号
  22. ^ 増田俊也「さよならスペンサーなんて言わない」 『本の雑誌』2010年5月号 p.30
  23. ^ 『オール讀物』2012年5月号
  24. ^ 『週刊大衆』2013年4月13日号
  25. ^ 北海道新聞
  26. ^ 『読売新聞』配信記事 2006年10月3日
  27. ^ 『AERA』2016年11月28日号
  28. ^ 『月刊武道』2016年6月号
  29. ^ 『ゴング格闘技』2016年7月号
  30. ^ 公式ブログ 増田俊也の憂鬱なジャンクテクスト プロフィール

外部リンク[編集]