民間伝承における近親相姦 – Wikipedia

民間伝承における近親相姦(みんかんでんしょうにおけるきんしんそうかん)とは、民間伝承において扱われる近親相姦のことである。世界中の様々な地域において近親相姦のテーマが扱われる。

近親相姦を扱った民衆本や聖徒伝、文学作品は古代だけでなくキリスト教中世においても数多く見られる[1]

北東シベリア地域においては兄妹の結婚によって民族が始まったとする兄妹始祖神話が多く見られるが、兄妹(姉弟)で近親相姦をするということについて忌避のモチーフが見られる伝承だけではなく、近親相姦忌避の観念が表出されない伝承が少なからずある。近親相姦忌避は特に神々の系譜を物語る伝承において希薄である一方、兄妹相姦をしながら近親相姦を忌避しようとする観念と強く関連している兄妹婚伝承においては、神々の系譜ではなく人間の氏族や民族などの起源を説く伝承に多い。そういった伝承は、近親相姦を行ったという現実とインセスト・タブーの狭間で、その葛藤にどう折り合いをつけるかという努力が内容の要となっている。例えば、ユカギルの伝承では、両親が死亡した兄妹が自分たちの欲求に基づいて近親相姦を行おうとした所、神が現れ、二人の行為を咎めようとするが、兄は弓を取って10日間神と戦い、11日目に神を殺害して妹と近親相姦をした。その兄妹相姦から数人の子供が生まれ、そこから一族が始まった。また、近親婚が当事者にとって心理的葛藤を経ないで実現された場合には、動物によってその事実が知らされる一類型があるなど、兄妹始祖神話は多様な内容を持っている。

ケルト[編集]

ヘブライ[編集]

中国[編集]

  • 伏羲と女媧が兄妹でありながら性交している図像が古代中国には多くあり、唐代末期には既にこの兄妹夫婦伝承が庶民の間で語り継がれていた[6]

沖縄[編集]

  • 八重山列島の神話では、島で人々が平和に暮らしていたところ、突如油雨が降り注ぎ、島の生き物は尽く死滅した。洞窟に隠れてただ二人だけ生き残った兄妹が夫婦になり、子供が産まれるが、その子はボーズという魚のような子だった。そのような子が産まれるのは土地柄がよくないからだと思い、各所を転々として、ようやく人間らしい子供が産まれた[7]
  • イザナギとイザナミからヒルコが産まれた神話についても、以上のような説話の変形ではないかとの説もある。

アフリカ[編集]

  • コートジボワールでは、エケンデバという蜘蛛がその娘と近親相姦を行ったという伝承を伝えている[8]

フィンランド[編集]

  • トゥイレゥイネンやクッレルヴォは、実の妹と近親相姦した[9]

インドネシア[編集]

  • ライジュア島の西端、コロラエ村の森に、島民の祖である兄妹夫婦ミハガラとアルガラと二人の十二人の息子と娘が住んでいた。次男のハウミハと次女のバボミハも兄妹で結婚し、娘二人を儲けた。四男のイエミハと長女のカヒミハも兄妹婚をしている。サブ島の神話では以上の兄妹婚以外の事例も合わせて10組の兄妹婚が語られている。また、ライジュア島やサブ島では沖縄のおなり神のように、姉妹がその兄弟を霊的に守護するという信仰があり、兄(弟)が危険な場所に旅立つ時にはその妹(姉)は手ずから織ったイカットという布を兄弟に贈る。ライジュアのおなり神信仰はバンニケドとその弟マジャの姉弟がモデルとされており、また、一部ではバンニケドとマジャが姉弟でありながら夫婦であったという説が根強く残っている。

参考文献[編集]

関連項目[編集]