介護保険 – Wikipedia

介護保険(かいごほけん、英語: Long-term care insurance)とは、介護を事由として支給される保険。ドイツ、オランダなどでは通常の医療保険から独立した社会保険制度となっている。一方でイギリスやスウェーデンで一般税収を財源とした制度となっている。韓国では2008年から、台湾では2019年から、それぞれ公的介護保険制度の運用を開始した。

日本では公的介護保険と民間介護保険があり、民間介護保険の保障内容には介護一時金や介護年金などがある。

本記事では、社会の高齢化に対応し、平成9年(1997年)の国会で制定された介護保険法に基づき、平成12年(2000年)4月1日から施行された日本の社会保険制度について記述する。以下、介護保険法については条数のみ、介護保険法施行規則については施行規則、介護保険法施行令については施行令と記す。

創設経緯[編集]

介護保険法が制定される以前の日本の公的介護制度は、老人福祉法による福祉の措置として、やむを得ない事由による行政措置の範疇に留まっていた[1]。平成に入ってから、それに代わる新たな制度が議論され、ゴールドプランなどの政策と合わせて、おおむねドイツの介護保険制度をモデルに介護保険制度が導入された[2]。介護保険料については、新たな負担に対する世論の反発を避けるため、導入当初は半年間徴収が凍結され、平成12年(2000年)10月から半額徴収、平成13年(2001年)10月から全額徴収という経緯をたどっている。

介護保険法は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする(第1条)。

介護保険制度では、以下の点にねらいがある。

  • 市町村による行政措置から、社会保険制度への転換
  • 要介護者の家族を介護負担と介護費用負担から解放し、社会全体の労働力と財源で介護する
  • 要介護者が本人や家族の所得や財産にかかわらず、要介護者本人や家族が望む必要で十分な介護サービスを介護事業者から受けられる
  • 多様な事業者によるサービスを提供し、専門的サービス産業としての介護産業を確立する。
  • 医療と介護の役割分担を明確化し、急性期や慢性期の医療の必要がない要介護者を介護サービスにより介護し、介護目的の入院を介護施設に移す。

介護保険制度を適切に運用するため、

  • 要介護状態等の軽減又は悪化の防止
  • 医療との連携に十分配慮
  • 被保険者の選択に基づき、適切な保健医療サービス及び福祉サービスが、多様な事業者又は施設から、総合的かつ効率的に提供されるよう配慮
  • 可能な限り、その居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように配慮

されなければならない(第2条第2項 – 4項)。

そして国民の努力及び義務として介護保険制度は

  • 要介護状態となることを予防するため、加齢に伴って生ずる心身の変化を自覚して常に健康の保持増進に努める
  • 要介護状態となった場合においても、進んでリハビリテーションその他の適切な保健医療サービス及び福祉サービスを利用することにより、その有する能力の維持向上に努める
  • 共同連帯の理念に基づき、介護保険事業に要する費用を公平に負担する

ことを求めている(第4条)。

介護サービスの利用者は在宅サービスを中心に着実に増加し、2000年4月には149万人であったサービス利用者数は、2015年(平成27年)4月には511万人と、約3.4倍になっている。

保険者は原則として市町村及び特別区(以下、特に断らない限り「市町村」と略す)であり[注釈 1]、介護保険に関する収入及び支出について、政令で定めるところにより、特別会計を設けなければならない(第3条)。厚生労働大臣の定める基本方針に即して、市町村は保険給付の円滑な実施について「市町村介護保険事業計画」を3年を1期として定める(第117条)。

保険者が小規模であるほど、予防による財政効果が目に見えやすいが、安定した経営が難しい。このため、介護保険事業は保険者たる市町村を国や都道府県、及び医療保険各法による医療保険者(全国健康保険協会、健康保険組合、国民健康保険組合、都道府県、市町村(特別区を含む。)、共済組合等[注釈 2])が重層的に支える仕組みとなっている。すなわち、

  • 国は、介護保険事業の運営が健全かつ円滑に行われるよう保健医療サービス及び福祉サービスを提供する体制の確保に関する施策その他の必要な各般の措置を講じなければならない(第5条第1項)。
  • 都道府県は、介護保険事業の運営が健全かつ円滑に行われるように、必要な助言及び適切な援助をしなければならない(第5条第2項)。
  • 国及び地方公共団体は、被保険者が、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、保険給付に係る保健医療サービス及び福祉サービスに関する施策、要介護状態等となることの予防又は要介護状態等の軽減若しくは悪化の防止のための施策並びに地域における自立した日常生活の支援のための施策を、医療及び居住に関する施策との有機的な連携を図りつつ包括的に推進するよう努めなければならない(第5条第3項)。
  • 国及び地方公共団体は、被保険者に対して認知症に対する国民の関心及び理解を深め、認知症である者への支援が適切に行われるよう、認知症に関する知識の普及及び啓発に努めなければならない。国及び地方公共団体は、被保険者に対して認知症に係る適切な保健医療サービス及び福祉サービスを提供するため、認知症の予防、診断及び治療並びに認知症である者の心身の特性に応じたリハビリテーション及び介護方法に関する調査研究の推進並びにその成果の活用に努めるとともに、認知症である者を現に介護する者の支援並びに認知症である者の支援に係る人材の確保及び資質の向上を図るために必要な措置を講ずることその他の認知症に関する施策を総合的に推進するよう努めなければならない(第5条の2)。
  • 医療保険者は、介護保険事業が健全かつ円滑に行われるよう協力しなければならない(第6条)。

被保険者[編集]

市町村の区域内に住所を有する、40歳以上の者が被保険者となる。このうち、65歳以上の者を第1号被保険者といい、40歳以上65歳未満の医療保険加入者を第2号被保険者という(第9条)。医療保険に加入していない者[注釈 3]は第2号被保険者ではない。また医療保険とは異なり、被保険者の資格を失った場合の「任意継続」といった制度はない。

資格取得日は、第1号被保険者は65歳到達日、第2号被保険者は40歳到達日または医療保険加入日である。また第1号・第2号共通で当該市町村の区域内に住所を有することになった場合はその日である(第10条)。

資格喪失日は、海外移住等により当該市町村の区域内に住所を有しなくなった場合はその翌日(他の市町村に住所を有することとなった場合はその日)、第2号被保険者は医療保険被保険者でなくなった場合はその日である(第11条)。

被保険者は市町村に対し、被保険者証の交付を求めることができ、資格喪失時は速やかに、被保険者証を返還しなければならない(第12条)。

適用除外施設[編集]

法律で定める特定の施設に入所している者は介護保険の適用を受けない(介護保険法施行法第11条)。これらの施設を適用除外施設といい、その設立又は設置の根拠となる法律等において介護サービスと同等なサービスを提供することが予定されているため、重ねて介護保険制度によるサービス提供をする不都合を回避するために規定されている。
適用除外施設は以下の通り(施行規則第170条)。

  • 医療型障害児入所施設
  • 厚生労働大臣が指定する医療機関
  • 独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園が設置する施設
  • 国立ハンセン病療養所
  • 救護施設
  • 被災労働者の受ける介護の援護を図るために必要な事業に係る施設
  • 障害者支援施設(知的障害者に係るものに限る)
  • 指定障害者支援施設(支給決定を受けて入所している知的障害者及び精神障害者に係るものに限る。)
  • 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に規定する施設

住所地特例[編集]

ある被保険者が別の保険者の区域内にある住所地特例施設に入所した際に、その施設に住所を移した場合、引き続き従前の保険者の被保険者となる(第13条)。これは施設に他の保険者の被保険者が入所することにより、施設所在地の市町村の給付費が負担増とならないようにするために設けられている措置である。
指定されている施設は以下の通り。

保険給付[編集]

保険給付によって第1号被保険者は、介護(寝たきりなどで入浴・食事や排泄などの日常生活動作への介護)や支援(家事や身支度などの日常生活での支援)が必要な時、また第2号被保険者は、特定疾病のために介護が必要になった場合に、介護保険のサービスを受けることができる。

この保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない(第25条)。租税その他の公課は、保険給付として支給を受けた金品を標準として課することができない(第26条)。

認定手続き[編集]

保険給付を受けながら介護サービスを利用するために、被保険者は保険者である市町村に申請をしなければならない(第27、32条)。そして市町村に設置された介護認定審査会(第14条、第38条2項)が行う要介護認定によって、被保険者が介護を要する状態であることを公的に認定される必要がある。そのため認定されていない状態で介護施設(介護サービス事業者)に行っても、介護保険を利用した介護は受けられない。この仕組みにより保険財源の使用に制限を設けている。これは、医療機関を受診した時点で要医療状態であるかどうかを医師が判定でき、診察の結果、要医療状態でなかったとしても保険給付の対象となる医療保険と対照的である。

介護保険を利用するためには、要介護者本人またはその家族または法定後見人・代理人が、要介護者の住民登録がある市区町村役所の健康保険を管轄する部署に、要介護認定申請書に、要介護者の氏名・住所・生年月日と、申請人の氏名・生年月日(法人や自治体の場合を除く)・住所、要介護者の主治医名と主治医が所属する病院名を記載して提出し、初回認定には1 – 2か月の手続き期間が必要である。

初回認定・区分変更後の有効期間は原則として6か月(審査会の意見により3か月 – 12か月とすることもできる)、その後の更新認定の有効期間は原則として12か月(審査会の意見により3か月 – 36か月とすることができる)となる(施行規則第38条、第41条)。ただし、認定期間中に要介護度が変動したと判断した場合は臨時の認定更新が可能である。認定調査員が介護の必要な本人に面接し、実際に介護を要することを確認し、調査報告書を認定審査会に提出する。

認定審査の結果、要介護度(たとえば要介護3)や介護保険負担限度額の認定が行われ、その旨が記入された介護保険被保険者証が発行される。それを持って、ケアプランを作成できる事業所へ連絡すれば、介護支援専門員(ケアマネージャー)が面接の上、ケアプランを提示する。被保険者がこれに同意すれば、ケアプランに沿った介護保険サービスが受けられる。実際に介護が開始されるまでに家族等が接触する、市町村の職員・医師・市町村の調査員・介護施設(介護サービス事業者)のケアマネージャーのどれも直接に介護に携わるわけではなく、介護サービス事業者の介護職員や看護師が介護支援の担い手である。

2015年度の年齢階層別の男女合計の要支援1~要介護5被認定者数・人口比率[編集]

2015年度の年齢階層別の男女合計の要支援1~要介護5被認定者数・人口比率
2015年度 人口(人)[6][7] 要支援1~要介護5の等級別の要支援・要介護被認定者数(人)[8][9] 要支援1~要介護5の等級別の要支援・要介護被認定者数の人口比率(%)[8][9] 2015年度
年齢階層 男女合計 要支援
要支援
要介護
要介護
要介護
要介護
要介護
要介護3

要介護5
要介護1

要介護5
要支援1

要介護5
要支援
要支援
要介護
要介護
要介護
要介護
要介護
要介護3

要介護5
要介護1

要介護5
要支援1

要介護5
年齢階層
40~64歳 42,295,574 12,590 19,377 22,919 29,037 18,428 15,738 17,426 51,592 103,548 135,515 0.03 0.05 0.05 0.07 0.04 0.04 0.04 0.12 0.24 0.32 40~64歳
65~69歳 9,643,867 44,072 45,386 53,362 53,476 35,261 29,862 28,648 93,771 200,609 290,067 0.46 0.47 0.55 0.55 0.37 0.31 0.30 0.97 2.08 3.01 65~69歳
70~74歳 7,695,811 81,669 74,621 87,642 80,643 54,151 46,185 40,931 141,267 309,552 465,842 1.06 0.97 1.14 1.05 0.70 0.60 0.53 1.84 4.02 6.05 70~74歳
75~79歳 6,276,856 160,830 136,047 169,594 137,931 93,892 80,746 69,317 243,955 551,480 848,357 2.56 2.17 2.70 2.20 1.50 1.29 1.10 3.89 8.79 13.52 75~79歳
80~84歳 4,961,420 264,961 230,897 304,169 235,884 163,974 141,680 115,300 420,954 961,007 1,456,865 5.34 4.65 6.13 4.75 3.30 2.86 2.32 8.48 19.37 29.36 80~84歳
85~89歳 3,117,257 225,774 225,331 337,882 282,444 207,816 184,371 143,158 535,345 1,155,671 1,606,776 7.24 7.23 10.84 9.06 6.67 5.91 4.59 17.17 37.07 51.54 85~89歳
90歳以上 1,770,230 99,749 126,787 244,909 261,066 236,095 245,331 186,564 667,990 1,173,965 1,400,501 5.63 7.16 13.83 14.75 13.34 13.86 10.54 37.73 66.32 79.11 90歳以上
40歳以上 75,761,015 889,645 858,446 1,220,477 1,080,481 809,617 743,913 601,344 2,154,874 4,455,832 6,203,923 1.17 1.13 1.61 1.43 1.07 0.98 0.79 2.84 5.88 8.19 40歳以上
65歳以上 33,465,441 877,055 839,069 1,197,558 1,051,444 791,189 728,175 583,918 2,103,282 4,352,284 6,068,408 2.62 2.51 3.58 3.14 2.36 2.18 1.74 6.28 13.01 18.13 65歳以上
全年齢 127,094,745 889,645 858,446 1,220,477 1,080,481 809,617 743,913 601,344 2,154,874 4,455,832 6,203,923 0.70 0.68 0.68 0.85 0.64 0.59 0.47 1.70 3.51 4.88 全年齢
  • 2015年度の年齢階層別の人口は2015年10月の国勢調査資料の人口統計である。
  • 2015年度の要介護者数は2015年12月31日時点の厚生労働省の介護統計である。

2015年度の年齢階層別の男性の要支援1~要介護5被認定者数・人口比率[編集]

2015年度の年齢階層別の男性の要支援1~要介護5被認定者数・人口比率
2015年度 人口(人)[6][7] 要支援1~要介護5の等級別の要支援・要介護被認定者数(人)[8][9] 要支援1~要介護5の等級別の要支援・要介護被認定者数の人口比率(%)[8][9] 2015年度
年齢階層 男性 要支援
要支援
要介護
要介護
要介護
要介護
要介護
要介護3

要介護5
要介護1

要介護5
要支援1

要介護5
要支援
要支援
要介護
要介護
要介護
要介護
要介護
要介護3

要介護5
要介護1

要介護5
要支援1

要介護5
年齢階層
40~64歳 21,117,848 6,486 9,809 13,010 16,145 10,590 8,521 9,236 28,347 57,502 73,797 0.03 0.05 0.06 0.08 0.05 0.04 0.04 0.13 0.27 0.35 40~64歳
65~69歳 4,659,662 20,485 20,939 28,884 30,666 20,886 16,851 15,217 52,954 112,504 153,928 0.44 0.45 0.62 0.66 0.45 0.36 0.33 1.14 2.41 3.30 65~69歳
70~74歳 3,582,440 29,070 27,356 41,155 42,045 29,199 23,732 19,860 72,791 155,991 212,417 0.81 0.76 1.15 1.17 0.82 0.66 0.55 2.03 4.35 5.93 70~74歳
75~79歳 2,787,417 47,196 40,029 65,573 61,312 43,621 35,930 28,705 108,256 235,141 322,366 1.69 1.44 2.35 2.20 1.56 1.29 1.03 3.88 8.44 11.57 75~79歳
80~84歳 1,994,326 71,360 56,609 97,987 84,496 61,053 49,079 36,512 146,644 329,127 457,096 3.58 2.84 4.91 4.24 3.06 2.46 1.83 7.35 16.50 22.92 80~84歳
85~89歳 1,056,641 64,406 51,970 94,321 80,407 59,387 47,262 32,008 138,657 313,385 429,761 6.10 4.92 8.93 7.61 5.62 4.47 3.03 13.12 29.66 40.67 85~89歳
90歳以上 404,983 30,209 27,968 55,697 54,222 44,037 36,325 21,764 102,126 212,045 270,222 7.46 6.91 13.75 13.39 10.87 8.97 5.37 25.22 52.36 66.72 90歳以上
40歳以上 35,603,317 269,212 234,680 396,627 369,293 268,773 217,700 163,302 649,775 1,415,695 1,919,587 0.76 0.66 1.11 1.04 0.75 0.61 0.46 1.83 3.98 5.39 40歳以上
65歳以上 14,485,469 262,726 224,871 383,617 353,148 258,183 209,179 154,066 621,428 1,358,193 1,845,790 1.81 1.55 2.65 2.44 1.78 1.44 1.06 4.29 9.38 12.74 65歳以上
全年齢 61,841,738 269,212 234,680 396,627 369,293 268,773 217,700 163,302 649,775 1,415,695 1,919,587 0.44 0.38 0.38 0.60 0.43 0.35 0.26 1.05 2.29 3.10 全年齢
  • 2015年度の年齢階層別の人口は2015年10月の国勢調査資料の人口統計である。
  • 2015年度の要介護者数は2015年12月31日時点の厚生労働省の介護統計である。

2015年度の年齢階層別の女性の要支援1~要介護5被認定者数・人口比率[編集]

2015年度の年齢階層別の女性の要支援1~要介護5被認定者数・人口比率
2015年度 人口(人)[6][7] 要支援1~要介護5の等級別の要支援・要介護被認定者数(人)[8][9] 要支援1~要介護5の等級別の要支援・要介護被認定者数の人口比率(%)[8][9] 2015年度
年齢階層 女性 要支援
要支援
要介護
要介護
要介護
要介護
要介護
要介護3

要介護5
要介護1

要介護5
要支援1

要介護5
要支援
要支援
要介護
要介護
要介護
要介護
要介護
要介護3

要介護5
要介護1

要介護5
要支援1

要介護5
年齢階層
40~64歳 21,177,726 6,104 9,568 9,909 12,892 7,838 7,217 8,190 23,245 46,046 61,718 0.03 0.05 0.05 0.06 0.04 0.03 0.04 0.11 0.22 0.29 40~64歳
65~69歳 4,984,205 23,587 24,447 24,478 22,810 14,375 13,011 13,431 40,817 88,105 136,139 0.47 0.49 0.49 0.46 0.29 0.26 0.27 0.82 1.77 2.73 65~69歳
70~74歳 4,113,371 52,599 47,265 46,487 38,598 24,952 22,453 21,071 68,476 153,561 253,425 1.28 1.15 1.13 0.94 0.61 0.55 0.51 1.66 3.73 6.16 70~74歳
75~79歳 3,489,439 113,634 96,018 104,021 76,619 50,271 44,816 40,612 135,699 316,339 525,991 3.26 2.75 2.98 2.20 1.44 1.28 1.16 3.89 9.07 15.07 75~79歳
80~84歳 2,967,094 193,601 174,288 206,182 151,388 102,921 92,601 78,788 274,310 631,880 999,769 6.52 5.87 6.95 5.10 3.47 3.12 2.66 9.25 21.30 33.70 80~84歳
85~89歳 2,060,616 161,368 173,361 243,561 202,037 148,429 137,109 111,150 396,688 842,286 1,177,015 7.83 8.41 11.82 9.80 7.20 6.65 5.39 19.25 40.88 57.12 85~89歳
90歳以上 1,365,247 69,540 98,819 189,212 206,844 192,058 209,006 164,800 565,864 961,920 1,130,279 5.09 7.24 13.86 15.15 14.07 15.31 12.07 41.45 70.46 82.79 90歳以上
40歳以上 40,157,698 620,433 623,766 823,850 711,188 540,844 526,213 438,042 1,505,099 3,040,137 4,284,336 1.54 1.55 2.05 1.77 1.35 1.31 1.09 3.75 7.57 10.67 40歳以上
65歳以上 18,979,972 614,329 614,198 813,941 698,296 533,006 518,996 429,852 1,481,854 2,994,091 4,222,618 3.24 3.24 4.29 3.68 2.81 2.73 2.26 7.81 15.78 22.25 65歳以上
全年齢 65,253,007 620,433 623,766 823,850 711,188 540,844 526,213 438,042 1,505,099 3,040,137 4,284,336 0.95 0.96 0.96 1.09 0.83 0.81 0.67 2.31 4.66 6.57 全年齢
  • 2015年度の年齢階層別の人口は2015年10月の国勢調査資料の人口統計である。
  • 2015年度の要介護者数は2015年12月31日時点の厚生労働省の介護統計である。

保険給付の種類[編集]

保険給付の種類として介護給付予防給付があり(第18条)、サービスごとに細かく分類される。

介護給付には以下の13種類がある(第40条)。

  • 居宅介護サービス費、特例居宅介護サービス費
  • 地域密着型介護サービス費、特例地域密着型介護サービス費
  • 居宅介護福祉用具購入費
  • 居宅介護住宅改修費
  • 居宅介護サービス計画費、特例居宅介護サービス計画費
  • 施設介護サービス費、特例施設介護サービス費
  • 高額介護サービス費、高額医療合算介護サービス費
  • 特定入所者介護サービス費、特例特定入所者介護サービス費

また予防給付には以下の11種類がある(第52条)。

  • 介護予防サービス費、特例介護予防サービス費
  • 地域密着型介護予防サービス費、特例地域密着型介護予防サービス費
  • 介護予防福祉用具購入費
  • 介護予防住宅改修費
  • 介護予防サービス計画費、特例介護予防サービス計画費
  • 高額介護予防サービス費、高額医療合算介護予防サービス費
  • 特定入所者介護予防サービス費、特例特定入所者介護予防サービス費

被保険者はこれら介護給付を受けるために要介護の#認定手続きを、予防給付を受けるために要支援の認定手続きをして(第19条)、認定された後に各種サービス事業者により行われるサービスを受ける。

また、市町村は条例により要介護状態の軽減又は悪化の防止に資する独自の給付である市町村特別給付を行うことができる(第62条)。

保険給付の制限[編集]

保険給付は、当該要介護状態等につき、労働者災害補償保険法の規定による療養補償給付等を受けられるときは、その限度において行われない(第20条)。

また施行令11条より、以下の法律においても介護保険での給付は行われない。主に災害や戦争・特殊な労働者(船員・公務員)に関するものが多い。

また、犯罪を犯すなどして拘禁された者(第63条)や保険者からの指示や求めに応じない者、保険料滞納者(第64 – 69条)は給付の全部または一部を制限される。

自己負担[編集]

介護サービスを受けた後、上記の給付の制限に該当しなければ市町村より介護および予防給付として9割が支給される(第41条、42条、42条の2、42条の3、44条1項、45条、48条、49条、53条、54条、54条の2、54条の3、56条、57条)。つまり自己負担割合は原則として1割(ケアプランの作成は自己負担なし)であるが以下の例外がある(第49条の2、第59条の2、施行令第22条の2、施行令第29条の2)。

  • 第1号被保険者であって合計所得金額(収入から必要経費等を差し引いた金額)が160万円以上(例えば収入が年金のみの場合、年金額が年280万円以上)の場合、2015年(平成27年)8月利用分から自己負担割合が2割となる。
    • 2割とされる者でも、世帯の65歳以上の者の「年金収入とその他の合計所得金額」の合計が1人(世帯に他の第1号被保険者がいない場合)の場合は280万円未満、2人以上の場合は346万円未満であれば1割負担になる。
  • 2018年(平成30年)8月より、2割負担となる者のうち合計所得金額が220万円以上の場合は、自己負担割合は3割となる。
    • 3割とされる者でも、世帯の65歳以上の者の「年金収入とその他の合計所得金額」の合計が1人(世帯に他の第1号被保険者がいない場合)の場合は340万円未満、2人以上の場合は463万円未満であれば2割または1割負担になる。また3割負担となっても、高額介護サービス費等により月額の負担上限は44,400円となる。

ただし居宅介護サービス費および地域密着型介護サービス費の支給には月単位での区分支給限度額(第43条第1項)と種類支給限度額(第43条第4項)が設けられている。区分支給限度基準額は厚生労働大臣が定める(第43条第2項)が市町村は条例によってその額を独自に設定することができる(第43条第3項)。種類支給限度基準額は市町村が条例で定める(第43条第5項)。

なお要介護度によって異なるが、居宅サービス等区分(施行規則第68条)に含まれない、以下のサービスに関しては区分支給限度基準額が適用されない。

一方で上記自己負担は、災害その他の厚生労働省令で定める特別の事情があることにより、減免することができる(50条)。具体的には以下の通り(施行規則83条)。

  • 要介護被保険者又はその属する世帯の生計を主として維持する者が、震災、風水害、火災その他これらに類する災害により、住宅、家財又はその他の財産について著しい損害を受けたこと。
  • 要介護被保険者の属する世帯の生計を主として維持する者が死亡したこと、又はその者が心身に重大な障害を受け、若しくは長期間入院したことにより、その者の収入が著しく減少したこと。
  • 要介護被保険者の属する世帯の生計を主として維持する者の収入が、事業又は業務の休廃止、事業における著しい損失、失業等により著しく減少したこと。
  • 要介護被保険者の属する世帯の生計を主として維持する者の収入が、干ばつ、冷害、凍霜害等による農作物の不作、不漁その他これに類する理由により著しく減少したこと。

同様に介護予防サービス費および地域密着型介護予防サービス費の支給にも月単位での区分支給限度基準額(第55条第1項)と種類支給限度基準額(第55条第4項)が設けられており、区分支給限度基準額は厚生労働大臣が定める(第55条第2項)が市町村は条例によってその額を独自に設定し(第55条第3項)、種類支給限度基準額は市町村が条例で定める(第55条第5項)。

なお要支援度によって異なるが、介護予防サービス等区分(施行規則第85条の5)に含まれない、以下のサービスに関しては区分支給限度基準額が適用されない。

  • 介護予防居宅療養管理指導
  • 介護予防特定施設入居者生活介護
  • 介護予防認知症対応型共同生活介護

また居宅介護福祉用具購入費および居宅介護住宅改修費にも支給限度基準額(第44条4項、45条4項)があり、介護予防福祉用具購入費および介護予防住宅改修費にも支給限度基準額(第56条4項、57条4項)がある。

一方で介護予防サービスにおいても、自己負担は災害その他の厚生労働省令で定める特別の事情があることにより、減免することができる(60条)。

第2号被保険者は所得に関わらず自己負担割合は一律1割である。

介護サービス事業者と介護サービス[編集]

指定居宅サービス事業者の指定、介護老人保健施設・介護医療院の許可は、事業所ごとに都道府県知事が行う(第70条)。一方で指定地域密着サービス事業者、指定居宅介護支援事業者の指定は、市町村長が行う(第78条の2)。指定に際し、市町村長は市町村介護保険事業計画との調整を図る見地から、都道府県知事に対し意見を申し出ることができ、都道府県知事は当該意見を勘案し、指定にあたって条件を付すことができる。指定の有効期間は原則6年である。

一方で介護サービス情報の公表を行うのは、全てのサービスにおいて都道府県知事が行う(第115条の35)。

予防給付のうち、訪問介護と通所介護については、高齢者の様々な生活支援や社会参加のニーズに応えていくため、NPOや民間企業、協同組合、ボランティア等の多様な主体による柔軟な取り組みにより効果的・効率的なサービスが提供できるように、2017年(平成29年)4月までに新しい総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)に移行することとなった。これにより、既存の介護事業所によるサービスに加えて、多様なサービスが多様な主体により提供され、利用者がこれらのサービスの中から選択できるようになる。

平成30年4月より、児童福祉法、障害者総合支援法の指定を受けている事業所から介護保険法のサービスについて指定の申請が行われた場合、都道府県または市町村の条例で定める基準を満たしているときは、都道府県知事又は市町村長は当該基準に照らし「共生型サービス」としての指定を受けることができる(第72条の2)。これにより、同一の事業所で介護保険と障害者福祉の両方のサービスを一体的に提供することができる。

介護報酬[編集]

介護保険適用対象となる介護サービスについて厚生労働省が定めた報酬が介護報酬である。

介護報酬の初改定が2012年(平成24年度)に行われ、そして2014年度(平成26年度)に改定されたあと、2015年度(平成27年度)にて行われた。

利用費[編集]

介護サービス事業者は、利用料の1割(2割)自己負担を利用者から徴収し、残り9割(8割)を各都道府県に設置されている国民健康保険団体連合会へ請求し、給付される。国民健康保険団体連合会は9割(8割)の給付費を保険者から拠出してもらい運営する仕組みとなっている。滞在費、食費については原則自己負担となる。

自己負担の割合は、市町村から被保険者証とともに負担割合が記された証(負担割合証)が交付される[11]ことにより確認できる(施行規則第28条の2)。

低所得者は在宅介護サービスを受ける場合は自己負担金の上限額設定、施設介護サービスを受ける場合は食費と居住費の減免、在宅でも施設でも世帯合算した医療費と介護費の自己負担の上限額設定により(要介護者の収入・貯蓄・財産)+(介護保険と健康保険の自己負担分)+(行政からの助成金)で費用負担できるように制度設計されている。

高額介護サービス費制度により、利用者が支払う月々の利用費には上限が設けられている[11]

  • 現役並み所得者:世帯全員で44,400円(2015年8月利用分より新設)
  • 一般:世帯全員で37,200円
  • 世帯全員が市町村税非課税:世帯全員で24,600円
    • 老齢福祉年金の受給者、前年の合計所得金額と公的年金等収入額の合計が年間80万円以下の者:利用者個人で15,000円
  • 生活保護受給者:利用者個人で15,000円

高額介護サービス費制度は健康保険の高額療養費の介護保険版。その他、類似するものとして「高額医療合算介護(予防)サービス費」があり、「高額医療・高額介護合算療養費」制度から介護保険分として支給されるもの(医療保険分は高額介護合算療養費)。[13]

地域支援事業[編集]

市町村は、被保険者の要介護状態等となることの予防又は要介護状態等の軽減若しくは悪化の防止及び地域における自立した日常生活の支援のための施策を行うことができる。これを地域支援事業と呼ぶ(第115条の45、地域支援事業実施要綱[14])。

地域支援事業は以下の通り。

  1. 介護予防・日常生活支援総合事業
    1. 介護予防・生活支援サービス事業 – 第1号事業
      1. 第1号訪問事業 – 居宅要支援被保険者等の介護予防を目的として、当該居宅要支援被保険者等の居宅において行われる。
      2. 第1号通所事業 – 居宅要支援被保険者等の介護予防を目的として、厚生労働省令で定める施設において行われる。
      3. 第1号生活支援事業 – 介護予防サービス事業若しくは地域密着型介護予防サービス事業又は第一号訪問事業若しくは第一号通所事業と一体的に行われる場合に効果があると認められる居宅要支援被保険者等の地域における自立した日常生活の支援として行われる。
      4. 第1号介護予防支援事業 – 上記の事業が包括的かつ効率的に提供されるよう必要な援助を行う。
    2. 一般介護予防事業 – 第1号被保険者の要介護状態等となることの予防又は要介護状態等の軽減若しくは悪化の防止
      1. 介護予防把握事業
      2. 介護予防普及啓発事業
      3. 地域介護予防活動支援事業
      4. 一般介護予防事業評価事業
      5. 地域リハビリテーション活動支援事業
  2. 包括的支援事業
    1. 総合相談支援業務 – 被保険者の心身の状況、その居宅における生活の実態その他の必要な実情の把握、保健医療、公衆衛生、社会福祉その他の関連施策に関する総合的な情報の提供、関係機関との連絡調整その他の被保険者の保健医療の向上及び福祉の増進を図るための総合的な支援を行う。
    2. 権利擁護業務 – 被保険者に対する虐待の防止及びその早期発見のための事業その他の被保険者の権利擁護のため必要な援助を行う。
    3. 包括的・継続的ケアマネジメント支援業務 – 保健医療及び福祉に関する専門的知識を有する者による被保険者の居宅サービス計画及び施設サービス計画の検証、その心身の状況、介護給付等対象サービスの利用状況その他の状況に関する定期的な協議その他の取組を通じ、当該被保険者が地域において自立した日常生活を営むことができるよう、包括的かつ継続的な支援を行う。
    4. 在宅医療・介護連携推進事業 – 医療に関する専門的知識を有する者が、介護サービス事業者、居宅における医療を提供する医療機関その他の関係者の連携を推進する[15]
    5. 生活支援体制整備事業 – 被保険者の地域における自立した日常生活の支援及び要介護状態等となることの予防又は要介護状態等の軽減若しくは悪化の防止に係る体制の整備その他のこれらを促進する。
    6. 認知症総合支援事業 – 保健医療及び福祉に関する専門的知識を有する者による認知症の早期における症状の悪化の防止のための支援その他の認知症である又はその疑いのある被保険者に対する総合的な支援を行う。具体的には認知症初期集中支援チームを配置する[16]
  3. 任意事業
    1. 介護給付費等適正化事業 – 介護給付等に要する費用の適正化
    2. 家族介護支援事業 – 介護方法の指導その他の要介護被保険者を現に介護する者の支援
    3. その他介護保険事業の運営の安定化及び被保険者の地域における自立した日常生活の支援のため必要な事業

この内、第1号介護予防支援事業と包括的支援事業は市町村などが設置する地域包括支援センターが実施する(第115条の46第1項)。

これら地域支援事業を行うにあたって、市町村は高齢者保健事業を行う後期高齢者医療広域連合との連携を図るとともに、国民健康保険保健事業と一体的に実施するよう努める必要がある(第115条の45第6項)。また市町村は、地域支援事業の利用者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、利用料を請求することができる(第115条の45第10項)。

地域支援事業の実施主体は市町村であるが、いずれの事業も実施を委託することができる。

  • 介護予防・日常生活支援総合事業 – 厚生労働省令で定める基準に適合する者(第115条の47第4項)
  • 包括的支援事業 – 老人介護支援センターの設置者その他の厚生労働省令で定める者(第115条の47第1項)。委託を受けた者は地域包括支援センターを設置する(第115条の46第3項)。総合相談支援業務と権利擁護業務、包括的・継続的ケアマネジメント支援業務の3つは一括での委託が条件となる(第115条の47第2項)。
  • 任意事業 – 老人介護支援センターの設置者その他の当該市町村が適当と認める者。

なお、老人介護支援センターは地域包括支援センターがその役割を担っている自治体が多い。

また、市町村は、地域支援事業の効果的な実施のために、介護支援専門員、保健医療及び福祉に関する専門的知識を有する者、民生委員その他の関係者、関係機関及び関係団体により構成される会議を置くように努めなければならない(第115条の48第1項)。これは地域ケア会議と呼ばれる[14]。この会議では被保険者への適切な支援を図るために必要な検討を行うとともに、支援対象被保険者が地域において自立した日常生活を営むために必要な支援体制に関する検討が行われる(第115条の48第2項)。なお、介護保険法には明記がないが、包括的支援事業として扱われる[14]

事業計画[編集]

厚生労働大臣は、「地域における医療及び介護の総合的な確保の推進に関する法律」に規定する総合確保方針に即して、介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施を確保するための基本指針を定める(第116条)。基本指針は以下の通り。
介護給付等対象サービスを提供する体制の確保及び地域支援事業の実施に関する基本的事項
市町村介護保険事業計画において介護給付等対象サービスの種類ごとの量の見込みを定めるに当たって参酌すべき標準その他当該市町村介護保険事業計画及び都道府県介護保険事業支援計画の作成に関する事項
その他介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施を確保するために必要な事項
市町村
市町村は、基本指針に即して、三年を一期とする当該市町村が行う介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施に関する計画(以下「市町村介護保険事業計画」という。)を定める(第117条第1項)。市町村介護保険事業計画は以下の通り(第117条第2項)。
住民が日常生活を営んでいる地域として、地理的条件、人口、交通事情その他の社会的条件、介護給付等対象サービスを提供するための施設の整備の状況その他の条件を総合的に勘案して定める区域ごとの当該区域における各年度の認知症対応型共同生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護及び地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護に係る必要利用定員総数その他の介護給付等対象サービスの種類ごとの量の見込み
各年度における地域支援事業の量の見込み
被保険者の地域における自立した日常生活の支援、要介護状態等となることの予防又は要介護状態等の軽減若しくは悪化の防止及び介護給付等に要する費用の適正化に関し、市町村が取り組むべき施策に関する事項
市町村介護保険事業計画は他の計画の内容と関連づける必要がある。
老人福祉法第二十条の八第一項に規定する市町村老人福祉計画と一体のものとして作成されなければならない(第117条第6項)。
地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律第五条第一項に規定する市町村計画との整合性の確保が図られたものでなければならない(第117条第9項)。
社会福祉法第百七条第一項に規定する市町村地域福祉計画、高齢者の居住の安定確保に関する法律第四条の二第一項に規定する市町村高齢者居住安定確保計画その他の法律の規定による計画であって要介護者等の保健、医療、福祉又は居住に関する事項を定めるものと調和が保たれたものでなければならない(第117条第10項)。
市町村は、市町村介護保険事業計画(第二項第一号及び第二号に掲げる事項に係る部分に限る。)を定め、又は変更しようとするときは、あらかじめ、都道府県の意見を聴かなければならない(第117条第12項)。
市町村は、市町村介護保険事業計画を定め、又は変更したときは、遅滞なく、これを都道府県知事に提出しなければならない(第117条第13項)。
都道府県
厚生労働大臣の定める基本方針に即して、都道府県は保険給付の円滑な実施の支援についての「都道府県介護保険事業支援計画」を3年を1期として定める(第118条第1項)。都道府県介護保険事業支援計画は以下の通り(第118条第2項)。
当該都道府県が定める区域ごとに当該区域における各年度の介護専用型特定施設入居者生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護及び地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護に係る必要利用定員総数、介護保険施設の種類ごとの必要入所定員総数その他の介護給付等対象サービスの量の見込み
都道府県内の市町村によるその被保険者の地域における自立した日常生活の支援、要介護状態等となることの予防又は要介護状態等の軽減若しくは悪化の防止及び介護給付等に要する費用の適正化に関する取組への支援に関し、都道府県が取り組むべき施策に関する事項
都道府県介護保険事業計画も他の計画の内容と関連づける必要がある。
老人福祉法第二十条の九第一項に規定する都道府県老人福祉計画と一体のものとして作成されなければならない(第118条第6項)。
地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律第四条第一項に規定する都道府県計画及び医療法第三十条の四第一項に規定する医療計画との整合性の確保が図られたものでなければならない(第118条第9項)。
社会福祉法第百八条第一項に規定する都道府県地域福祉支援計画、高齢者の居住の安定確保に関する法律第四条第一項に規定する都道府県高齢者居住安定確保計画その他の法律の規定による計画であって要介護者等の保健、医療、福祉又は居住に関する事項を定めるものと調和が保たれたものでなければならない(第118条第10項)。
都道府県は、都道府県介護保険事業支援計画を定め、又は変更したときは、遅滞なく、これを厚生労働大臣に提出しなければならない(第118条第11項)。

介護給付費の財源は、税収や国債などの政府や自治体の直接収入である公費と40歳以上の国民が納付する介護保険料で賄われ、その比率は50%ずつである。

公費[編集]

財源の内訳のうち、公費負担部分については以下の通り。

  • 国の負担は在宅介護および予防給付の20%・施設介護および予防給付の15%(第121条)に加えて、要介護となるリスクが高い後期高齢者数の割合や市町村ごとの高齢者の所得格差による収入減を調整し、市町村間の財政力の差を解消する目的の調整交付金5%(第122条)を含めた、25%および20%である。自治体関係団体は調整交付金を25%の外枠にするように求めている。
    • 国は#地域支援事業である、介護予防・日常生活支援総合事業に要する費用の額の20%(第122条の2第1項)に加えて調整交付金として5%(第122条の2第3項)を、介護予防・日常生活支援総合事業以外の地域支援事業に対して50%(第122条の2第4項)を市町村に交付する。
  • 都道府県の負担は在宅介護および予防給付は12.5%・施設介護および予防給付は17.5%である(第123条第1項)。
    • また、介護予防・日常生活支援総合事業に要する費用の額12.5%を(第123条第3項)、特定地域支援事業支援額の25%を市町村に交付する(第123条第4項)。
  • 市区町村の負担は一般会計において在宅介護および予防給付・施設介護および予防給付とも12.5%である(第124条第1項)。
    • また、介護予防・日常生活支援総合事業に要する費用の額12.5%を(第124条第3項)、特定地域支援事業支援額の25%を負担する(第124条第4項)。
公費負担の内訳
在宅 施設 介護予防・日常生活支援総合事業 その他地域支援事業
25% 20% 25% 50%
都道府県 12.5% 17.5% 12.5% 25%
市町村 12.5% 12.5% 12.5% 25%

一方で市町村には特別会計があり、所得の少ない第1号被保険者の減額された保険料の総額に基づいて算定した額が繰り入れられる(第124条の2条第1項)。
国はこの繰入金の50%(第124条の2条第2項)を、都道府県は25%(第124条の2条第3項)を負担する。

保険料[編集]

保険料負担部分は、令和3年度から令和5年度までの3年度においては第1号被保険者保険料(以下「第1号保険料」)は23%、第2号被保険者保険料(以下「第2号保険料」)は27%である(令和3年1月22日政令第9号)。

第1号被保険者の保険料[編集]

市町村は介護保険事業に要する費用(財政安定化基金拠出金の納付に要する費用を含む。)に充てるため、第1号被保険者から保険料を徴収しなければならない(第129条第1項)。

第1号被保険者の保険料は市町村民税の課税状況等に応じて、段階別に設定されていて、保険料率が原則9段階ある(施行令38条)が、市町村はこれをさらに細分化することや保険料率を変更することができる(施行令39条)。

介護保険第1号保険料
保険料額
第1期 2,911円
第2期 3,293円
第3期 4,090円
第4期 4,160円
第5期 4,972円
第6期 5,514円
第7期 5,869円
第8期 6,014円

現在の全国平均月額(第8期、2021年度〈令和3年度〉 – 2023年度〈令和5年度〉)は6,014円である[18]。第1号被保険者の介護保険料は3年に1度策定される介護保険事業計画における介護サービスの供給量等に基づき、保険者毎に基準の保険料が設定され、被保険者の所得状況等に応じて、課せられる。保険料率は、保険給付に要する費用の予想額等に照らし、おおむね3年を通じ財政の均衡を保つことができるものでなければならない(第129条第3項)[19]

第1号被保険者の場合、受給する公的年金の総額が18万円以上の場合、介護保険料は公的年金[注釈 4]からの天引き(特別徴収)、それ以外の第1号被保険者は市町村から送付される納付書や口座振替によって納付する(普通徴収)(第131条)。

  • 介護保険料と国民健康保険・後期高齢者医療制度との保険料の合算額が当該年金受給額の2分の1を超える場合、国民健康保険・後期高齢者医療制度の保険料は特別徴収されなくなるが、介護保険料については特別徴収となる。
  • 普通徴収の場合、第1号被保険者の属する世帯の世帯主や第1号被保険者の配偶者も保険料を連帯して納付する義務を負う。保険料に過誤納があって徴収すべき保険料額を超えて徴収した場合、市町村は過誤納額を当該第1号被保険者に還付しなければならないが、当該第1号被保険者の未納に係る保険料その他介護保険法の規定による徴収金があるときは、当該過誤納額をこれに充当することができる(第139条)。

また市町村は、条例で定めるところにより、特別の理由がある者に対し、保険料を減免し、又はその徴収を猶予することができる(第142条)。

第2号被保険者の保険料[編集]

第2号被保険者の保険料は、市町村が徴収するのではなく(第129条第4項)、医療保険者が第2号被保険者が加入している医療保険の保険料と併せて徴収する(第150条第2項)。そして医療保険者は徴収した保険料を介護給付費・地域支援事業支援納付金として社会保険診療報酬支払基金に納付する(第150条第1項)。社会保険診療報酬支払基金はこの納付金を介護給付費交付金として(第125条第4項)、また地域支援事業支援交付金として(第126条第2項)市町村に交付され、介護保険に関する特別会計に繰り入れられる。

保険料率は、全国の給付状況に基づき、国が各医療保険者毎の総額を設定し、それに基づき医療保険者毎に保険料率を設定する。

  • 具体的には、国民健康保険の場合は毎月の保険料に介護保険料が加算される。協会けんぽ・船員保険の場合は被保険者の標準報酬月額に所定の介護保険料率を乗じて保険料を算出し、給与から天引きされる(負担割合は労使折半[注釈 5])。健康保険組合の場合も基本的に協会けんぽと同様であるが、規約で定めることにより事業主の負担割合を増やしたり、厚生労働大臣の承認を受けた組合では定率制に代えて定額制の介護保険料を設定できる。
  • 被扶養者の場合は保険料の負担はなく(制度全体で被扶養者に必要な費用を負担する形となる)、被扶養者の有無で被保険者の保険料額に変化はない。なお、健康保険組合の場合は、被保険者本人が介護保険第2号被保険者でない場合であっても、当該被保険者に介護保険第2号被保険者である被扶養者がある場合には、規約で定めることにより、当該被保険者に介護保険料額の負担を求めることができる。

納付金については、これまでは医療保険者に所属する第2号被保険者数に応じての負担とされてきたが、令和2年度から全面総報酬割を導入することとし、各医療保険者の財政力が反映される仕組みとなる。総報酬割への移行は平成29年8月 – 平成31年3月までは2分の1、平成31年度は4分の3と段階的に実施される。

財政安定化基金[編集]

第1号および2号被保険者より徴収した保険料では不足すると見込まれる場合、介護保険の財政の安定のために都道府県が設置する財政安定化基金が不足金額の2分の1に相当する額を交付または保険料の収納状況を勘案して算定した額の貸し付けを行う(第147条第1項)。

そのため、都道府県は市町村から財政安定化基金拠出金を徴収し(第147条第3項)、市町村はこれの納付義務を負う(第147条第4項)。一方で都道府県は市町村から徴収した金額の財政安定化基金拠出金の総額の3倍に相当する額を財政安定化基金に繰り入れ(第147条第5項)、国は都道府県が繰り入れた額の3分の1に相当する額を負担する(第147条第6項)。つまり、国・都道府県・市町村の負担割合はそれぞれ3分の1である。

また市町村は介護保険の財政の安定化を図るため、その介護保険に関する特別会計において負担する費用のうち介護給付及び予防給付に要する費用、地域支援事業に要する費用、財政安定化基金拠出金の納付に要する費用並びに基金事業借入金の償還に要する費用の財源について、他の市町村と共同して、調整保険料率に基づき、市町村相互間において調整する事業を行うことができる。これを市町村相互財政安定化事業という(第148条第1項)。市町村がこの事業を行う場合、議会の議決を経てする協議により規約を定め、これを都道府県知事に届け出なければならない(第148条第2項)。都道府県は当該市町村相互財政安定化事業に係る調整保険料率についての基準を示す等必要な助言又は情報の提供をすることができる(第149条第2項)。

審査および請求[編集]

国民健康保険団体連合会は第40条の#保険給付の請求に関する委員会および審査会を設置して審査及び支払を行う(第176条)。

介護給付費等審査委員会
国民健康保険団体連合会には介護給付費請求書及び介護予防・日常生活支援総合事業費請求書の審査を行うため、介護給付費等審査委員会が設置される(第179条)。
介護給付費等審査委員会は各サービスおよび事業の担当者を代表する委員、市町村を代表する委員、公益を代表する委員をもって組織される(第180条)。
介護給付費等審査委員会は介護給付費請求書又は介護予防・日常生活支援総合事業費請求書の審査を行うため必要があると認めるときは、都道府県所管のサービスに関しては都道府県知事の承認を得て、市町村所管のサービスに関しては市町村長の承認を得て、各サービスおよび事業の担当者に対して、出頭若しくは説明を求めることができる(第181、182条)。
介護保険審査会
保険給付に関する処分(被保険者証の交付の請求に関する処分及び要介護認定又は要支援認定に関する処分を含む)又は保険料その他介護保険法の規定による徴収金(財政安定化基金拠出金、納付金及び延滞金を除く)に関する処分に不服がある者は、処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内に、各都道府県に設置された介護保険審査会に審査請求をすることができる(第183条)。
介護保険審査会は被保険者を代表する委員、市町村を代表する委員、公益を代表する委員によって組織される合議体で、都道府県知事によって任命される(第185、189条)。
委員の任期は3年(補欠の委員の任期は前任者の残任期間)であり、再任可能である(第186条)。
保険審査に当たっては専門調査員を置くことができ、要介護者等の保健、医療又は福祉に関する学識経験を有する者のうちから、都道府県知事が任命する(第188条)。
この審査請求は、時効の中断に関しては、裁判上の請求とみなされる。処分の取消しの訴えは、当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ、提起することができない(審査請求前置主義。第196条、行政事件訴訟法第8条第1項但書)。

保険料、納付金その他介護保険法の規定による徴収金を徴収し、又はその還付を受ける権利及び保険給付を受ける権利は、これらを行使することができる時から2年を経過したときは、時効によって消滅する(第200条1項)。保険料その他介護保険法の規定による徴収金の督促は、民法第153条の規定にかかわらず、時効の更新の効力を生ずる(第200条2項)。

デイサービスの過剰供給[編集]

2015年の介護報酬改定では、小規模デイサービスの供給過剰が指摘されており、それに対する基本報酬の引き下げが議論されている[20]

施設サービスの供給不足[編集]

施設介護サービスのうち、特別養護老人ホームの供給が需要に対して著しく不足していて、入所までに年単位の待機が発生している状況である[21]。厚生労働省は介護療養型医療施設を平成24年(2012年)3月31日までに、医療療養病床、介護療養型老人保健施設、介護老人保健施設、介護老人福祉施設のいずれかの業態に転換する計画を進めていたが[22]、介護療養病床の一部しか業態転換できず、業態転換完了の目標期限は平成30年(2018年)3月31日に延期された。

不正請求[編集]

偽りその他不正の行為によって保険給付を受けた者があるときは、市町村は、その者からその給付の価額の全部又は一部を徴収することができる。市町村は、サービス事業者等が偽りその他不正の行為により介護報酬等の支払いを受けたときは、当該サービス事業者等から、その支払った額につき返還させるべき額を徴収するほか、その返還させるべき額の40%を徴収することができる(第22条)。

介護保険が始まった平成12年度(2000年度)から平成21年度(2009年度)末までに、介護報酬の架空請求・水増し請求で市区町村が返還を求めた金銭は98億円に上っていて、なおかつそのうち10億円以上が回収できていないことが、平成23年(2011年)2月に分かった[23]。また、平成21年度(2009年度)に介護報酬の不正請求などで行政処分を受けた介護事業所は150以上に上っている[23]

注釈[編集]

出典[編集]

参考文献[編集]

関連文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]