二酸化ケイ素 – Wikipedia

二酸化ケイ素(にさんかけいそ、英:Silicon dioxide)は、化学式SiO2で表されるケイ素の酸化物で、地殻を形成する物質の一つとして重要である。組成式はSiO2シリカ(英: silica)、無水ケイ酸とも呼ばれる。圧力、温度の条件により、石英(英: quartz、水晶)以外にもシリカ鉱物(SiO2)の多様な結晶相(結晶多形)が存在する。
マグマの粘性を左右する物質でもある。

結晶は共有結合結晶であり、ケイ素原子を中心とする正四面体構造が酸素原子を介して無数に連なる構造をしている。

結晶多形

二酸化ケイ素は温度や圧力をかけると結晶構造が変化する(相変態)を起こす。結晶構造などは次の一覧項で説明する。

  • 温度を上昇させた時の相変化
常温常圧下ではα石英が安定だが、二酸化ケイ素は温度変化によって相変化を起こす。
以下に示す温度は常圧での温度であり、溶剤や圧力等により変化する[4][5]

α-石英― 573℃→β-石英― 870℃→ β‐トリディマイト― 1470℃→ β‐クリストバライト― 1705℃→ 溶解
しかし、β‐トリディマイトは不純物の無いβ-石英からは転移せず、この形態を経由するには添加物を加える必要がある。そうしない場合、1050℃でβ-石英からβ‐クリストバライトに直接相変化する[6]
上記の様に説明したが、大抵はβ-石英から1550℃で直接溶融する。これはそれぞれの結晶を構成するSiO4正四面体が、頂点の酸素を共有して結合して3次元的なネットワークを形成しているが、その結合の仕方が各結晶構造で異なるため簡単に相変化が起きない為である[7]
  • 温度を下げた時の相変化
β-トリディマイトを急速に冷却すると、114℃でα-トリディマイトとなる。
β-クリストバライトを急速に冷却すると、270℃でα-クリストバライトとなる。
500 ℃から800 ℃、2~3 GPa以上になるとコーサイト[8][9]、1200 ℃10 GPa以上でスティショバイトに転移する[10]

ともに常温・常圧下では準安定状態で、隕石のクレーターから発見されている[11][12]
コーサイトの生成条件は地球の深度70 km以下に相当し深部まで潜った岩石が上昇してきた超高圧変成岩で見つかっている[13][14]
マントル遷移層から下部マントル程度の高圧条件下ではスティショバイト構造をとると考えられている[15][16][17]
ザイフェルト石は、既知の多形の中で最も高い圧力40GPaで発見されている。

実験室以外では、月隕石か火星隕石でのみ見つかっている(地球への隕石では大気による減速で、ほとんど40GPaに至らない)[18][19]
SiO2の結晶構造[20]
Form 結晶対称性
ピアソン記号, group No.
ρ
g/cm3
注釈 構造
α-石英
α-quartz
三方晶系
hP9, P3121 No.152[21]
2.648 鏡像異性体があり、それぞれ左右方向への3回らせん軸対称
573℃でβ-石英に変態
A-quartz.png
β-石英
β-quartz
六方晶系
hP18, P6222, No. 180[22]
2.533 鏡像異性体があり、それぞれ左右方向への6回らせん軸対称 B-quartz.png
α-トリディマイト
α-tridymite
斜方晶系・単斜晶系[7]
oS24, C2221, No.20[23]
2.265 常圧下で準安定状態 A-tridymite.png
β-トリディマイト
β-tridymite
六方晶系
hP12, P63/mmc, No. 194[23]
α-トリディマイトと相互に速やかに変態する
β-トリディマイトは2010Kでβ-クリストバライトに変態する
B-tridymite.png
α-クリストバライト
α-cristobalite
正方晶系
tP12, P41212, No. 92[24]
2.334 常圧下で準安定状態 A-cristobalite.png
β-クリストバライト
β-cristobalite
立方晶系
cF104, Fd3m, No.227[25]
α-クリストバライトと相互に速やかに変態する
1978 Kで溶融する
B-cristobalite.png
キータイト
英: keatite
正方晶系
tP36, P41212, No. 92[26]
3.011 Si5O10, Si4O14, Si8O16
ガラス状シリカとアルカリから600-900Kおよび40-400MPaで合成
Keatite.png
モガン石
英: moganite
単斜晶系
mS46, C2/c, No.15[27]
Si4O8Si6O12の環 Moganite.png
コーサイト
英: coesite
単斜晶系
mS48, C2/c, No.15[28]
2.911 Si4O8Si8O16
900 K と3–3.5 GPaで合成
Coesite.png
スティショバイト
英: stishovite
正方晶系
tP6, P42/mnm, No.136[29]
4.287 シリカの多形体のうち最も密度の高いものの一つ
ルチル型構造
7.5–8.5 GPa
Stishovite.png
ザイフェルト石
英: Seifertite
斜方晶系
oP, Pbcn[30]
4.294 シリカの多形体のうち最も密度の高いものの一つ
40 GPaで得られる[31]
SeifertiteStructure.png
メラノフログ石
英: melanophlogite
立方晶系
(cP*, P4232, No.208)[32]
または 正方晶系
(P42/nbc)[33]
2.04 Si5O10, Si6O12
包摂化合物[34](青色はキセノン)
高温相のβ-メラノフログ石がある
Меланофлогит - ксенон.png
fibrous
W-silica[35]
斜方晶系
oI12, Ibam, No.72[36]
1.97 硫化ケイ素の様な鎖状 SiS2typeSilica.png
英: 2D silica[37] 六方晶系 シート状の2次元構造 2D silica structure.png
シリカ電球
電球の内側に、眩しさを防ぎ光を拡散させる目的で塗料として塗られる[38]
ガラス
無機ガラスの主成分である。
医薬品・化粧品
「無水ケイ酸」などと呼ばれ食品添加物や化粧品などに用いられる。これについてはシリカ#食品添加物としての利用およびシリカ#化粧品・医薬品への添加を参照のこと。
加工品
その他
  • 陶器などの製造で石英が原材料として使用される[40]
  • シリコンを作る際の原料(炭素還元法:

二酸化ケイ素はフッ化水素ガス(HF)やフッ化水素酸(HF(aq))と反応し、それぞれフッ化ケイ素(SiF4)、ヘキサフルオロケイ酸 (H2SiF6)を生ずる。