鍋料理 – Wikipedia

鍋料理(なべりょうり)は、惣菜を食器に移さず、調理に用いた鍋に入れたままの状態で食卓に供される日本の料理である。鍋物(なべもの)、あるいはただ(お鍋)と呼んで指す場合もある。

複数人で鍋を囲み、卓上コンロやホットプレートなどで調理しながら、個々人の椀や取り皿あるいはポン酢やタレなどを入れた小鉢(呑水という)に取り分けて食べるのが一般的である。特に寒い季節である冬に好まれる。

通常は複数人で囲んで食べるため一抱えほどの大きさの鍋を用いるが、宴会や会席料理では小鍋で一人前ずつ供される事もある。一人用の鍋も市販されており、これを用いる場合は椀などに取り分けず、鍋から直接食べることもある。

鍋料理で、肉、魚などに添えて煮るネギその他の野菜を「ざく」ということがある。

鍋料理の歴史[編集]

近代以前の日本の住居には、台所にある竈(かまど)とは別に、調理のほか照明や暖房を兼ねた囲炉裏が用意されることが多く、そこで煮炊きした料理を取り分けて食べる事は日常的に行われていた。調理された煮物を各々に配膳せず鍋のまま供する方法は17世紀の中頃に記録に現れ始める。18世紀後半になって、囲炉裏の無い町屋や料理屋で火鉢やコンロを使用した『小鍋仕立て』という少人数用の鍋が提供され、鍋から直箸で何人かがつつくという現代見られる鍋料理が発達した[1]
しかし、小鍋仕立ては竈神信仰や銘々膳、箱膳による食事スタイルなど、それまでの社会的習慣と相容れないものであり、一般の家庭には浸透しなかった[2]

その後明治に入ってからの牛鍋の流行やちゃぶ台の普及などにより、鍋料理は一般家庭への普及がみられた。調理の近代化が進み調理の熱源が木質からガスなどに転換するにつれて、加熱をしながら食べるという方式は飲食店での提供が主となったが、カセットコンロなどの発明と普及により、再び家庭でさかんに鍋料理が食べられるようになっている。

使用される鍋[編集]

日本の鍋料理に使用する鍋として、最もポピュラーなのは陶器製の土鍋である。土鍋は熱伝導性が低いため火がじっくりと通り、長時間の煮込みでも焦げ付いたりする危険性が低いために鍋料理に適しており、寄せ鍋をはじめとして、多くの鍋料理に対して用いられる。具材を煮込む前に焼く工程があるすき焼きなど、土鍋には向かない調理法がある場合は鉄、ステンレスなどの金属製の鍋(金属鍋)が使われる。もちろん、通常土鍋が使われる料理を金属鍋で代用することも可能。最近の電磁調理器の普及に伴い、それに対応した土鍋風ホーロー鍋なども販売されている。また、ジンギスカン鍋、フォンデュなど、それ専用に作られた独特の形状の鍋を使用する料理も多い。

変わったところでは、主に日本料理において使われる「紙鍋」という技法が存在する。これは、耐水加工をした和紙を器の形にしてスープと具材を盛り、下から直火で炙って鍋にするもの。紙が中に入れた水(スープ)の沸点である摂氏100度以上に熱せられず、燃える温度に達しないためにこのような技法が可能。見た目の優美さ、和紙が具材のあくを吸うためあく取りが不要であることなどのメリットがあるほか、容器を使い捨てに出来ることから、大人数による宴会などでの卓上鍋として用いられることが多い。なお、紙鍋とほぼ同様の形状・用途のものにアルミニウム箔製の「箔鍋」がある。

また、昆布を器にした「昆布鍋」というものもある。

鍋料理の締め[編集]

色々な具材を煮込んでいるためにスープには出汁が凝縮された状態になっている。このスープを利用しての食べ方にも色々あるが、一般的には雑炊が多い。

使用される事の多い具材

一般的な鍋料理[編集]

煮汁に味付けを施すもの[編集]

煮汁に味付けを施さず、椀に取り分けてから調味するもの[編集]

どちらのケースもあるもの[編集]

日本各地の鍋料理[編集]

あ行[編集]

か行[編集]

さ行[編集]

た行[編集]

とり野菜みそ(とり野菜)

な行[編集]

は行[編集]

ま行[編集]

や行[編集]

ら行[編集]

わ行[編集]

日本の新しい鍋料理[編集]

日本の一般家庭でさまざまな鍋料理が作られるようになり、それが有名になってきたものもある。その中には海外の料理と組み合わせた鍋もある。

海外由来の鍋料理[編集]

海外の鍋料理で日本で知名度が上がってきて食べられるようになった鍋料理。

日本のホームパーティーでの鍋料理[編集]

現代の日本の家庭では冬によく食べられる家庭の料理での代表格とも言える料理であるが、家にお客を招待した時にも提供される料理でもある。いわゆるホームパーティーでの料理として日本ではよく食べられる料理である。ゆえに鍋パーティーという造語も存在する。1つの鍋で調理した鍋料理を大人数で分けて食べていく。もちろん食材やだし汁が減れば付け足して加熱し、食材に火が通ればまた取り分けて食べる。こういった鍋料理を作る過程も大勢で楽しむのがホームパーティーでの鍋料理である。

鍋料理においては、具材を入れる順序や位置、食べ頃など、非常に細かく指定して仕切る人はしばしば見受けられる。このような人物を「鍋奉行(なべぶぎょう)」と称する[3][4]。時代劇でとかく権力を振るう役回りである「奉行」(槍奉行や畳奉行のように、それぞれを管理する役職)をもじり、また少々迷惑な存在であるという意味も含んだ呼称である。

なお、鍋奉行の他に以下のような呼称もある。

鍋将軍(なべしょうぐん)
“奉行よりも厳しい”仕切り役。奉行より権力があり、逆らうことができない、という意味で「将軍」をもじっている[4]
アク代官(アクだいかん)
鍋料理において、上に浮く灰汁をすくい取る作業を担当する人。「悪代官」のもじり。この語はウェブサイト「鍋の館 by モフモフ」でモフモフこと岡安淳司によって提唱され、ネット上を中心に流行し、2000年にデイリー新語辞典に掲載されるなどした[4]
待ち奉行(まちぶぎょう)・待ち娘(まちむすめ)
鍋奉行とは逆に、ほとんど手を出さずにひたすら食べられる時が来るのを待ち、おいしくできた鍋を楽しむだけの人。男性を「待ち奉行」、女性を「待ち娘」と呼び、それぞれ「町奉行」「町娘」のもじり[4]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]