コスタリカ方式 – Wikipedia
コスタリカ方式(コスタリカほうしき)とは、小選挙区比例代表並立制における選挙戦術の一つで、同じ政党もしくは友党から競合する候補者が存在する選挙区において1人を小選挙区に、もう1人を比例区に単独で立候補させ選挙毎にこれを交代させるという方法である。 日本独自の呼称である(後述)。 小選挙区比例代表並立制が行われる選挙において同じ政党から競合する候補者が存在する選挙区が存在する場合、1人を小選挙区に、もう1人を比例区の名簿上位に配分して比例区単独で立候補させる。 候補者同士は選挙があるごとに小選挙区と比例区における協定を結ぶ。「小選挙区選挙で立候補できる権利」と「比例代表選挙(上位順位)で立候補できる権利」は、選挙が行われる度毎に入れ替わるのが通例である。それによって、2人の候補者は当該選挙区において後援会などの選挙基盤を維持する。 コスタリカ方式を利用した場合でも、小選挙区で立候補した立候補者が比例と重複立候補することも可能である。この場合は比例区のみで立候補した立候補者よりも名簿順位は下位順位(大抵は多くの重複候補との同一順位)でなければならない。 「コスタリカ」の名は、コスタリカ友好議員連盟の会長であり、小選挙区比例代表並立制導入当時の自民党幹事長であった森喜朗が国会議員の連続再選を禁じたコスタリカの選挙制度を参考にして命名したものである。ただしコスタリカの選挙制度の目的は選挙において特定地域の有権者との癒着を防止することであり、日本のシステムは名前だけ頂いた、似て非なるものである。 1994年(平成6年)に、衆議院議員総選挙が中選挙区制から小選挙区比例代表並立制に移行する際に、自由民主党の候補者が、重複する選挙区が複数存在してきたことから考案された。また連立与党である公明党や保守(新)党との協定により連立政党の候補の小選挙区立候補を優先させ、自民党候補を比例上位で立候補させる場合もあった。 なお、新進党や民主党では地盤としていた現職議員や出馬を希望していた有力な新人が競合した関係上、第41回総選挙で新進党が3人・民主党が7人を比例上位で立候補させる事実上のコスタリカ方式を採用した。次の第42回総選挙でも元新進党議員が民主党に合流したことで候補者が重複する選挙区が出た関係で、6人の候補者を同様の事実上のコスタリカ方式で遇したことがあるが、それ以降はコスタリカ方式を採用していなかった。 自民党では、第45回衆議院議員総選挙から「コスタリカ方式」を全廃する方針を固めていた[1]が、この時解消できたのは8選挙区のうち3選挙区に留まった[2]。 更に第47回衆議院議員総選挙では、熊本県第2区に加え[注 1]、小選挙区の削減で、現職議員同士が競合した山梨県第1区・福井県第2区・高知県第1区でも新たにコスタリカ方式を導入せざるを得なくなり、加えて一時はコスタリカ方式を解消した徳島県第1区でも、再度コスタリカ方式が復活した。また、野党では民主党と維新の党が一部選挙区で選挙協力を行い、30あった両党の競合区を21にまで減らした。このうち、有力な現職同士が競合する山梨県第1区と愛知県第12区では片方の候補者が比例上位に回る措置が取られた[3]。 第24回参議院議員通常選挙以降は、一票の格差を是正するために鳥取県と島根県、徳島県と高知県で合区となって参議院合同選挙区が誕生したことにより、自民党は地方別選挙区から選出できなくなった県に選挙地盤を持つ候補を比例区に転出させることとなり、参議院でも「コスタリカ方式」が発生することになった。しかし、比例区で鳥取県に選挙地盤を持つ候補の自民党内の比例順位が次点落選(2021年に繰り上げ当選)となったことで自民党鳥取県連から不満が高まったため、参議院に選出されない可能性がある県の代表者を参議院に確実に輩出することを意図した自民党の意向が国会で反映されたことにより、2019年7月の第25回参議院議員通常選挙から参議院比例区で政党等の判断で拘束名簿式の「特定枠」として上位に設定することが可能となっている(なお、特定枠に掲載された候補者は候補者名を冠した選挙運動を行うことができず、政党票としてカウントされる)。 第48回衆議院議員総選挙では、民進党から希望の党へ移る形となった松浦大悟と寺田学が共に秋田県第1区を地盤とすることから、希望の党では松浦を小選挙区公認候補とし、寺田を比例東北ブロック単独公認候補とするコスタリカ方式を採用した[4]。 利点と欠点[編集] コスタリカ方式の導入による、候補にとっての利点としては以下のものがある。 一度当選したら次の選挙は大政党の比例上位に登録されるため次回選挙の当選がほぼ保証される。 選挙区の選挙において双方の後援会を動員でき、得票の増加が見込まれる。 一方、公認権限は党執行部が握っているため反党行為や離党をした場合はその政党から公認されず、選挙区でコスタリカ方式を結んでいた政党候補との激戦が予想され当選が難しくなる恐れがある。さらに小選挙区立候補の際に比例復活できずに完全落選した場合、党執行部によって比例に回っていた候補を小選挙区での党公認候補として完全に定着させる方針が採られると、同選挙区で立候補をして当選して衆議院議員として復帰することが極めて困難になる。また自民党では衆院選比例名簿の73歳定年制が設けられ、73歳を超えた議員は比例名簿に登載されない問題も出ている。 コスタリカ方式適応候補は1回選挙区で当選すれば次回選挙の当選がほぼ保証されているが、通常の候補は毎回選挙の選挙区で勝負しなければならず、またコスタリカ方式のために比例上位候補が1人掲載されているために小選挙区落選での惜敗率による復活当選において当選議席が1つ減ってしまうという不公平もある。 新規コスタリカ
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