バックパッカー(英語: backpacker)とは、低予算で国外を個人旅行する旅行者のこと。バックパック(リュックサック)を背負って移動する者が多いことから、この名が付けられた。日本語では「パッカー」「バッパー」と略すこともある。こうした旅行(バックパッキング、英語: backpacking)はまた、自由旅行や低予算旅行(英語: budget travel)とも呼ばれる。 一般的な旅行者との違いとして、世間的な休暇よりも長い期間に亘ること、バックパックを使うこと、移動に公共交通機関を利用すること、高級なホテルではなく、ユースホステルや安宿を利用すること、観光地を見るだけでなく、地元の住人と出会うことにも興味があることなどが挙げられる。 様々な文化や地域からの旅行者が加わり、これからも加わり続けるであろうため、バックパッカーの定義を厳密に定めるのは難しい。最近の調査によると、「バックパッカーたちは自身の旅行経験に結び付いた行動原理や意義の多様性を反映して、不均質なグループを形成した。バックパッカーたちは、制度化されていない旅行の形式への共通の傾倒を見せ、それがバックパッカーとしての中心的な自己定義となっている」[1]。 1960年代から欧米で流行しはじめ、航空券の低価格化とともに、世界の若者の旅装の代表となった。2000年代にはライフスタイルとしての、またビジネスとしてのバックパッキングが大きな成長を見せた[2]。格安航空会社はもとより[3]、世界の各所にあるユースホステル・ゲストハウス・ドミトリーなどの安宿、インターネット上のブログ・電子掲示板・SNSなど、デジタルなコミュニケーション手段や情報資源により、バックパッカーが長期の旅行を計画し、実行し、継続することは以前よりも容易になっている。ただ節約するのではなく、ホテル泊まりで賓客として扱われるパックツアーでは見ることのできない市井の人々の生の暮らしに触れるのも、また大きな目的である。 バックパッカーの正確な起源は不明であるが、少なくとも部分的には、1960年代から1970年代にかけてのヒッピー・トレイル(ヒッピーの行跡)にそのルーツを辿ることができる[4]。ヒッピー旅行者たちはかつてのシルクロードであった地域を順番に辿っていった。実際に、今日でもバックパッカーたちの一部はそうした旅を、(今日の環境保護運動の人気にも乗じて)より楽な方法によってではあるが再現しようと試みている[5]。さらに歴史を遡れば、17世紀末に公共交通機関を用いて世界を一周したイタリアの冒険者ジョバンニ・フランチェスコ・ジェメリ・カレリが世界最初のバックパッカーの1人として挙げられることがある[6]。 かつてのヒッピー・トレイルを辿る旅は、1980年代以降のアフガニスタン・イラク・イランの政情不安のため困難なものになっているが、バックパッカーたちは世界のほとんどの地域に広がっていった。近年では、格安航空会社や航空便の増加がさらなる増大に貢献している[7]。現在では、北アフリカのモロッコやチュニジアやその他の格安航空会社で到達できる地域が新しい「ヒッピー・トレイル」として形成されつつある[8]。ワンワールドやスターアライアンスやスカイチームの世界一周航空券を利用するなどして、バックパッカー・スタイルにて世界一周をする者も多い。 科学技術の変化と進歩もバックパッキングを変化させている。伝統的なバックパッカーたちは、ノートパソコンやデジタルカメラや携帯情報端末といった高価な情報機器は盗難や破損の恐れがあり荷物も重くなるとして持ち歩かなかった。しかしながら、軽量な電子機器との接触を保っていたいという欲望は後述のフラッシュパッキングと呼ばれる傾向を生じさせ、その形態は進化を続けている[9]。運ぶものの変化と同時に、バックパッカーは当初ほどには実際のバックパックに頼らないようになってきているが[10]、それでも依然としてバックパックはバックパッカーの基礎的な荷物と考えられている。 大韓民国では、経済発展と渡航自由化を受け、2000年代よりバックパッカースタイルの旅がブームとなった。その背景には同時期の日本文化開放によりパク・チョンアを起用した『進め!電波少年』系のヒッチハイク企画「雷波少年#雷波少年ファイナル企画ラストソング」が放送されたことが影響した。なお韓国語ではバックパックを「ペナン(背嚢)」と呼ぶことから「ペナンヨヘン(背嚢旅行)」と称される(ko:배낭여행)。同様に中華圏でも個人自由渡航が可能な香港や台湾では「zh:背包客」の呼称でバックパッカースタイルが、富裕層による爆買い旅行の対極的位置づけの社会現象として捉えられている。 バックパッキングの種類[編集] フラッシュパッキング[編集] PDA。バックパッカーの装備も現代化している。 フラッシュパッキング(flashpacking)、フラッシュパッカー(flashpacker)は裕福なバックパッカーを指す新語である。伝統的にバックパッキングが低予算の旅行と物価の比較的安い目的地に結び付けられてきたのと対照的に、フラッシュパッキングは単純には旅行中により多くの予算を使えるものとして定義される[11]。 フラッシュパッカーのflashは「光るもの」「見せびらかし」などの意味があるが、この語の起源自体が不明瞭で、定義もまちまちである。近年急速に増加した、宿泊や食事にはそれほどお金はかけないが、選んだ旅先での活動にはふんだんに(時として過剰に)お金を使う旅行者たちを指すと考える人々もいる。昼は低予算の旅行者たちと共に冒険的な旅を行い、夜は落ち着いた食事と快適な宿泊を楽しむような、「スラムを覗く」ことと贅沢との不調和な混淆と考える人々もいる[12]。さらに、携帯電話、デジタルカメラ、iPod、ノートパソコン、タブレット端末などを持って旅することを好むテクノロジーに通じた冒険者としても定義される[13]。しかしどれも必要条件というわけではない。他の旅行スタイルと同様に、フラッシュパッカーの語は主に自己定義として用いられている。 この語はまた、従来の組織的な旅行を見放して、かつてはより冒険的なバックパッカーだけのものであった目的地へ進出する旅行者や、高収入な仕事から離職したりキャリア上の休暇を取ったりして自力での旅行に時間を費すのだが、より快適に、自宅で慣れ親しんだ多くの装置と共に旅するような旅行者の増加も反映している。結果として宿泊施設も変化し、仕事を確保するために、依然として低予算な旅をしている旅行者にもより高級な設備を提供しようとするようになった[14]。旅行者の需要の変化に応じて宿泊施設の側も変化する必要があると認識したのである[15]。 低予算バックパッキング[編集] フラッシュパッキングとは対照的に、相部屋や寝袋や長期滞在の場合はアパートの利用などで宿泊費を、屋台や自炊などで食費を、公共交通機関の利用やヒッチハイクや格安航空券の現地調達や陸路の多用で移動費などを限られた予算で遠く・長く旅するために大なり小なり節約しながら旅するのが、伝統的な低予算のバックパッキング(budget
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