グレイト・ジャズ・トリオ – Wikipedia

ザ・グレイト・ジャズ・トリオThe Great Jazz Trio)は、ハンク・ジョーンズが1975年に結成したジャズトリオ。GJTの略称で知られ、2010年のハンク・ジョーンズの死去直前まで活動していた。その作品はスタンダードを中心とし、ハンク・ジョーンズ自身の作曲作品やメンバーの作曲作品も多く含まれていた。

1975年春、ハンク・ジョーンズは、ロン・カーター、トニー・ウィリアムスと共にグレート・ジャズ・トリオと名乗ってニューヨークの「ヴィレッジ・ヴァンガード」に出演した。その直後にはトニーが参加しない編成によって『ハンキー・パンキー』が録音されたが、日本の「イースト・ウィンド」レーベルによって企画された渡辺貞夫との共演『アイム・オールド・ファッション』(1976年)の際にトニーがドラムスをつとめるトリオが復活し[1]、『ラヴ・フォー・セール』が翌日に録音された。「イースト・ウィンド」レーベルからの諸作品のプロデューサーは伊藤潔と伊藤八十八がつとめた。

1980年、ベースがエディ・ゴメスに、ドラムスがアル・フォスターに交代して『チャプターII』、松本英彦との『ザ・セッション』の2枚のアルバムが録音された。エディがベースを務めたこの期間は、第2期と呼ばれている。なお、アルとその後任のジミー・コブにはマイルス・デイヴィス・グループの在団経験がある。

1985年10月には、東京「郵便貯金会館」におけるカルテット編成の公演が翌1986年にアルバム『グレイト・ジャズ・カルテット・ライヴ・イン・ジャパン』として発表された。

1988年から「Alfa Jazz」レーベルにおいて木全信がプロデュースするようになり、第3期と呼ばれている。『スタンダード・コレクション』シリーズの制作に際してベースとドラムスが交代した。ベースのマッズ・ヴィンディング英語版とハンクは1983年6月に共演経験があり、ドラムスのビリー・ハートもマイルス・デイヴィス・グループの経験者である。1991年にリリースされた『フラワーズ・フォー・レディ・デイ』において、メンバーがジョージ・ムラーツとロイ・ヘインズに代わった[2]

1992年から1994年にかけて、尾田悟らと共にクインテット編成のアルバムも制作された。

1998年に「Baybridge」レーベルからリリースされたトリオ編成のアルバム『ホワッツ・ニュー』におけるメンバーは井上陽介とベン・ライリーとなった。

2002年以降、伊藤八十八が設立した「Eighty-Eight’s」レーベルから作品を発表するようになり、その初期メンバーはリチャード・デイヴィス英語版と弟のエルヴィン・ジョーンズであった。しかし、エルヴィンが2004年5月18日に死去したため、ジョン・パティトゥッチとジャック・ディジョネットの新メンバーで再始動した。その後もメンバー交代を繰り返し、2010年5月にハンク・ジョーンズが91歳で亡くなる直前まで活動した。

メンバー[編集]

1975年〜(第1期)
1980年〜(第2期)
1985年(グレイト・ジャズ・カルテット)
1988年〜(第3期)
1991年
1992年(尾田悟&ハンク・ジョーンズ・グレイト・ジャズ・クインテット)
1993年(グレイト・ジャズ・クインテット)
  • ハンク・ジョーンズ – ピアノ
  • 尾田悟 – テナーサックス
  • ウォーレン・ヴァシェ・シニア – クラリネット
  • ジョージ・ムラーツ – ベース
  • ルイス・ナッシュ英語版 – ドラムス
1994年(グレイト・ジャズ・クインテット)
1998年(第4期)
2002年(第5期)
2004年、2005年
2006年、2007年
  • ハンク・ジョーンズ – ピアノ
  • ジョン・パティトゥッチ – ベース
  • オマー・ハキム – ドラムス
2008年
2009年、2010年
  • ハンク・ジョーンズ – ピアノ
  • デヴィット・ウォン – ベース
  • リー・ピアソン – ドラムス

ディスコグラフィ[編集]

アルバム[編集]

1975年〜(第1期)

1980年〜(第2期)

  • 『チャプターII』 – Chapter II(1980年6月録音)(East Wind) 1980年
    • 『モアオーヴァー』 – MoreOver(1980年6月録音)(East Wind) 1980年
    • 松本英彦と共同名義, 『ザ・セッション』 – The Session – Sleepy Meets The Great Jazz Trio(1980年6月、7月録音)(Nippon Phonogram/Next Wave) 1980年
  • 『再訪』 Vol.1 – Re-visited Vol.1(1980年10月録音)(Eastworld) 1980年
    • 『再訪』 Vol.2 – Re-visited Vol.2(1980年10月録音)(Eastworld) 1980年
  • 『プレイズ・スタンダード』 – The Great Jazz Trio Plays Standard(1980年10月録音)(EMI/Somethin’ Else) 1998年
  • ナンシー・ウィルソンと共同名義, 『グレート・ジャズ・トリオ&フレンズ with ナンシー・ウィルソン』 – Aurex Jazz Festival’ 81 / The Great Jazz Trio & Friends With Nancy Wilson(1981年9月録音)(Eastworld) 1981年(アート・ファーマー、ベニー・ゴルソンが参加)
  • 『スリーサム』 – Threesome(1982年録音)(Eastworld) 1982年
  • ナンシー・ウィルソンの作品に参加, 『ホワッツ・ニュー』 – What’s New(1983年9月録音)(Eastworld) 1982年
  • 『ザ・クラブ・ニューヨーカー』 – The Club New Yorker(1983年5月録音)(Denon, Interface) 1983年(Lewis Eleyゲストが参加)
  • アート・ファーマーの作品に参加, 『アンブロジア』 – Ambrosia(1983年10月、11月録音)(Denon, Interface) 1984年
  • 『ニューヨーク・ソフィスティケイト:デューク・エリントンに捧ぐ』 – N.Y. Sophisticate: A Tribute To Duke Ellington(1983年録音)(Denon, Interface) 1984年
  • 大野えりの作品に参加, 『イージー・トゥ・ラブ』 – Easy To Love: Eri Sings Cole Porter (Denon, Interface) 1984年
  • 『モンクス・ムーズ』 – Monk’s Moods(1984年8月~10月録音)(Denon, Interface) 1984年(日野皓正がゲスト参加)

1985年(参考:グレイト・ジャズ・カルテット)

  • 『グレイト・ジャズ・カルテット・ライヴ・イン・ジャパン』 – Great Jazz Quartet Live In Japan(1985年10月録音)(TDK) 1986年(「郵便貯金会館」におけるライヴ)

1988年〜(第3期)

  • 『スタンダード・コレクション』Vol.1 – Great Standards Vol.1(1988年録音)(Alfa Jazz) 1988年(木全信がプロデュース)
    • 『スタンダード・コレクション』Vol.2 – Great Standards Vol.2(1988年録音)(Alfa Jazz) 1988年
    • 『スタンダード・コレクション』Vol.3 – Great Standards Vol.3(1989年5月録音)(Alfa Jazz) 1989年
    • 『スタンダード・コレクション』Vol.4 – Great Standards Vol.4(1989年5月録音)(Alfa Jazz) 1989年
    • 『スタンダード・コレクション』Vol.5 – Great Standards Vol.5(1990年3月録音)(Alfa Jazz) 1990年
  • 『フラワーズ・フォー・レディ・デイ』 – Flowers for Lady Day(1991年11月録音)(Alfa Jazz) 1992年

1992年〜(参考:グレイト・ジャズ・クインテット)

  • 『ジャズに恋して』Vol.1 – Standard Jazz For Lovers Vol.1(1992年12月録音)(Seven Seas Music) 1993年
    • 『ジャズに恋して』Vol.2 – Standard Jazz For Lovers Vol.2(1992年12月録音)(Seven Seas Music) 1993年
    • 『ジャズに恋して』Vol.3 – Standard Jazz For Lovers Vol.3(1993年12月録音)(King) 1994年
    • 『ジャズに恋して』Vol.4 – Standard Jazz For Lovers Vol.4(1993年12月録音)(King) 1994年
  • 『マイノリティ・エニワン』 – Minority Anyone(1994年12月録音)(Sony) 1995年
  • 『サトリズム』 – Satolism(1994年12月録音)(Venus) 1995年。
    のち改題『ジャスト・フレンズ 』 – Just Friends (Venus) 2000年。

1998年(第4期)

2002年〜(第5期)

  • 『枯葉』 – Autumn Leaves(2002年5月12日、13日録音)(Eighty-Eight’s) 2002年
    • 『いつか王子様が』 – Someday My Prince Will Come(2002年5月、2003年8月録音)(Eighty-Eight’s) 2003年
    • 『コラボレーション』 – Collaboration(2002年5月、2004年2月録音)(Eighty-Eight’s) 2004年(エルヴィン・ジョーンズ追悼盤。未発表テイク集。)
  • 『ス・ワンダフル』 – ‘S Wonderful(2004年6月録音)(Eighty-Eight’s) 2004年
  • 『スピーク・ロウ』 – Speak Low(2005年6月録音)(Eighty-Eight’s) 2005年(SJ選定ゴールドディスク)
  • 『星影のステラ』 – Stella by Starlight(2006年9月録音)(Eighty-Eight’s) 2006年(渡辺貞夫がゲスト参加)
  • July 5th : Live at Birdland New York(2007年7月録音)(Eighty-Eight’s) 2007年(ライヴ)
    • July 6th : Live at Birdland New York(2007年7月録音)(Eighty-Eight’s) 2007年(ライヴ)
  • 『ブルー・マイナー』 – Blue Minor(2008年9月録音)(Eighty-Eight’s) 2008年(ケイコ・リー、TOKUがゲスト参加[3]。)
  • 『ジャム・アット・ベイシー』 – Jam at Basie featuring Hank Jones(2009年8月録音)(Menkoi) 2009年。(一関市「ベイシー」におけるライヴ。クリスタルディスク特別盤。)のち、通常版 (Happinet) 2010年。
  • 『ラスト・レコーディング』 – Last Recording(2010年2月録音)(Eighty-Eight’s) 2010年(遺作。ロイ・ハーグローヴ、レイモンド・マクモーリンが参加[4]。)

コンピレーション

  • 『スタンダード・コレクション』 – The Great Jazz Trio Standard Collection (Denon, Interface) 1986年
  • 『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』 – My Funny Valentine (M&I) 2001年(木全信のプロデュース活動25周年記念盤の1枚)
  • The Legend of Jazz (Eighty-Eight’s) 2009年
  • 『メモリアル・オブ・ハンク・ジョーンズ』 – The Memorial of Hank Jones: Unpublished Anthology(2004年、2008年、2010年録音)(Eighty-Eight’s) 2010年(ハンク・ジョーンズ追悼盤。未発表テイク集。ケイコ・リー、TOKU、Tiffany、寺久保エレナが参加。)

映像作品[編集]

  • 2006年 『レジェンド・オブ・ジャズ・ピアノ~ライヴ・アット・ブルーノート東京』 [DVD]
  • 2006年 『ライヴ・アット・ブルーノート東京』 [DVD]
  • 2006年 『レジェンド・オブ・ジャズ~ライヴ・アット・ブルーノート東京』 – The Legend Of Jazz — Live At Blue Note Tokyo [Blu-ray] (Eighty-Eight’s)

出演映像[編集]

  • 2006年 東京JAZZ 2006 [NHK BS]
  • 2008年 東京JAZZ 2008 [NHK BS]
  • 2009年 Speak in Music [BS フジ]

他多数

外部リンク[編集]