男はつらいよ 寅次郎の告白 – Wikipedia

男はつらいよ 寅次郎の告白』(おとこはつらいよ とらじろうのこくはく)は、1991年12月21日に公開された日本映画。男はつらいよシリーズの44作目。同時上映は『釣りバカ日誌4』。前作と同様に、満男と泉、寅次郎と聖子の恋が同時進行で描かれる。

あらすじ[編集]

1991年秋のある日、満男に名古屋に住んでいる泉から電話がかかってくる。東京で就職活動をするためにやって来るというのだ。満男が東京駅で待っていると、泉が到着。その夜、くるまやで楽しい一時を過ごす。[1]

翌日、満男に付き添われ、泉は高校の音楽教師に紹介してもらった銀座の楽器屋[2]を訪ねる。しかし、採用担当者から高卒での就職は厳しい[3]と言われてしまう。泉は、両親の離婚や母親の職業といった家庭環境の問題もあると感じ、しょんぼりと名古屋に帰る。そして、母親の礼子が勤め先のクラブで知り合った交際相手の男性を家に連れてきた途端、母親と喧嘩し、自室に閉じこもって泣く。

泉を助けたいのに無力な自分に悶々とする満男の元に、数日後、泉から鳥取砂丘の絵葉書が届く。「寂しい海が私の寂しさを吸い取ってくれるようです」という文面にただならぬ気配を感じた満男が泉の自宅に電話をすると、泉の母に泉がその3日前に家出をした事を告げられる。満男は、さくらの制止を振り切って雨の中を飛び出し、一路鳥取へ向けて泉探しの旅に出かけた。一方、傷心の泉は、鳥取をあてどもなく旅していたが、ちょうど鳥取を旅していた寅次郎に偶然出会い、涙をこぼして抱きつく。その夜、親切に一晩の宿を提供してくれた老婆の家で、寅次郎が家出をした理由を問うと、泉は、母を一人の女性として見ることへの抵抗感から、母の再婚を素直に喜べない自分が嫌になったと言う。寅次郎は、実母に捨てられた自分の生い立ちを明かし、今の泉に似た気持ちを抱いたこともあったが、泉の言葉を聞いて実母を一人の女性として見たいと思うようになったと言って、泉を元気づける。翌日泉は、寅次郎がさくらとの電話で得た情報により、満男が待っているという鳥取砂丘へ行く。泉の姿を見つけた満男は、砂丘を転がりながら駆け寄り、二人は喜び合う。

満男はそこに寅次郎もいることにビックリするが、名古屋や東京へ帰る汽車の時間までの食事のつもりで、三人は寅次郎の昔馴染みの料亭へ向かう。そこの女将の聖子(吉田日出子)は、かつて寅次郎が所帯を持とうとした女性であった。聖子は他にも好きな人がいたため、その人と結婚したのだが、三人が発とうとするそのタイミングで、その夫とは一年前に事故で死に別れたと告白する。急遽三人は墓参りをすることになり、その日は聖子の料亭に泊まることになる。

若い二人を2階で寝かせたあと、寅次郎は聖子と酒を酌み交わす。10年連れ添った亡夫には散々泣かされ、寅次郎と結婚しなかったことを後悔していると言われて、複雑な気持ちになる。さらに言い寄られて対応に困っていた[4]時、階段で様子を窺っていた満男が転落し、場がしらけて事なきを得る。翌日、泉は寅次郎と聖子の関係を満男に訊く。すると満男は、寅次郎が「手の届かない女の人には夢中になるけれど、その人が伯父さんに好意を持つとあわてて逃げ出してしまう」と語り、その原因として「きれいな花をそっとしておきたいという気持ちと、奪い取ってしまいたいという気持ちが男にはあるけれども、伯父さんはどっちかと言うとそっとしておきたいという気持ちが強いのではないか」と的確に分析する。その後、三人は聖子とバス停で別れ、寅次郎は鳥取駅で満男と泉を見送って旅を続ける。

泉は、今回の旅を通じて様々な優しさに触れ、悲しいことがあったときには満男一家や寅次郎を思い出せばいいとも感じて[5]、自分がそれほど不幸せではないと感じることができるようになっていた。家に戻った泉は、母親に「ママ、幸せになっていいよ」と告げる。感極まった礼子は大泣きするのであった。一方、満男が柴又に帰ってくると、さくらが怒っている。しかし、満男から寅次郎と聖子のことを聞かされたさくらは、母親としての憤慨から、たちまち、妹としての悲嘆にくれる。料理をしながら「いい年して何をやっているのかしら」と涙ぐむ。[6]

正月になって、初詣くらい家族一緒に行こうというさくらたちの誘いを振り切って大学の友人たちと出かけようとする満男だったが、そこへまたまた泉が突然やってきたため、友人たちとの外出をドタキャンする。泉と一緒にいると “無様” に一生懸命になってしまう経験を今回も積み重ね、遠い空の寅次郎に向かって、「僕にはもう伯父さんのみっともない恋愛を笑う資格はない。それは僕自身を笑うことだから」と語りかける。

スタッフ[編集]

キャスト[編集]

佐藤2019、p.644より

  • 観客動員:210万人[7]
  • 配給収入:14億2000万円[8](15億円[7]とも)
  • 上映時間:104分

エピソード[編集]

『寅次郎ハイビスカスの花 特別篇』に登場する「寅さんの幻」は、本作での歩くシーンが素材となっている[9]

DVD収録の特典映像「予告編」では以下のような別バージョン等が使用されている[10]

  • しゃんしゃん祭りでの寅さんの啖呵売のシーン。本編では電灯を持ち手を一つ叩いているが、予告編では無い。
  • さくらが御前様の恋話を聞くシーンで、予告編ではさくらの後方を源ちゃんが笑いながら横切っている。
  • 大学の満男の講義中、予告編では本を読んでいるだけだが、本編ではその本にペンで何か記入している。
  • 鳥取で寅さんと泉が再会して抱き合う場面で、予告編では落とした泉の持っていた豆腐入りの鍋が道上で跳ね返ってしまっている。
  • 聖子が寅たち三人にお茶を入れるシーンの別バージョン。寅たちの所作と台詞が一部変わっている(「さらわれちゃったよ」が「取られちゃったよ」、「そういう冗談はよせい」が「悪い冗談はよせよ」、「冗談じゃないで本当だ」が「冗談じゃないよ本当よ」や、笑いながらお茶を運ぶシーンに変更されている等)
  • 出会い橋で聖子と寅たち一行が別れるシーンの別テイク。

参考文献[編集]

  • 佐藤利明『みんなの寅さん』(アルファベータブックス、2019)
  1. ^ なお、その日たまたま寅次郎も帰ってきており、泉がいるということで団欒に加わる。その夜のうちにタコ社長と喧嘩になり、翌日くるまやを出て行く。本作の寅次郎は、この一泊のみくるまやに滞在したことになる。
  2. ^ 実在する企業の株式会社山野楽器。
  3. ^ 正社員採用は短大卒以上で、高卒の採用はアルバイト・パートにとどまる。
  4. ^ 翌日、前夜のことは酒に酔っていたので覚えていないと若い二人に言い訳しつつも、聖子は密かに、同様にごまかす寅次郎の手の甲をつねっている。
  5. ^ 泉は一人旅をしている時に、ふと通り過ぎた学校のブラスバンド部の活動を見て、満男のことを思い出している。名古屋へ帰る汽車の中では、満男に手を握られて、握り返している。
  6. ^ 後日、寅次郎からの電話を受けた際、さくらは今回の寅次郎の恋愛話を満男から聞かなかったふりをしている。
  7. ^ a b 『日経ビジネス』1996年9月2日号、131頁。
  8. ^ 1992年配給収入10億円以上番組 – 日本映画製作者連盟
  9. ^ 山田洋次(代表)『男はつらいよ大全 下』中央公論新社、2002年、402-403頁。ISBN 4-12-003299-X。
  10. ^ 男はつらいよ 寅次郎の告白”. 松竹株式会社. 2021年7月9日閲覧。

外部リンク[編集]