エスペラント (アルバム) – Wikipedia

『エスペラント』Esperanto)は、1985年10月5日に発表された坂本龍一5作目のソロ・アルバム。

前衛舞踏家モリサ・フェンレイから依頼されて作られた。

タイトルはルドヴィコ・ザメンホフが考案した人工言語「エスペラント」から。

「架空の民族音楽」という坂本のコメントを反映するアルバム全体の楽曲構成。

フェアライトCMIの導入、サンプリング音源の使用など、いわゆるテクノ音楽の手法をエスニック音楽に取り入れており、ポップではない新しい音楽の構造を志向している。作中に現れる多くの間と静かな音は、ダンサーの衣擦れや床の鳴る音を意識しているため。制作には著名なパーカッショニストYAS-KAZが参加。

1986年発売の映像作品「ADELIE PENGUINS」には本作の音楽が使われている。

坂本は本作の出来に納得したらしく、2004年リリースアルバム『キャズム』発売インタビュー時、「本当、大満足。『エスペラント』と同じくらい自分にとって大事なものが出来たという感じがしています」と述べた。

※全作曲:坂本龍一

  1. A Wongga Dance Song
    金属音・パーカッションの乱舞とブレイクによる静寂が交互に現れる曲。中間部では様々な短いモチーフが次々と顔を出し、終盤には「アン・ドゥ・トゥロワ」のサンプリング音が痙攣した様に鳴り続け飽和状態に達した瞬間、唐突に次の曲につながる。ギターによるノイズはアート・リンゼイによる。
  2. The “Dreaming”
    断続的に現れる女性の声、コオロギの鳴き声、アート・リンゼイのノイズギター、インドネシアの竹製の楽器アンクルン等で構成されている。
  3. A Rain Song
    細かい動きのエレクトリックピアノを軸に、ノイズにより組み立てられたリズムが現れたり消えたりする。
  4. Dolphins
    前曲から続く女性の声より始まる。深いリバーヴ音を伴った和音の響きが断続的に現れる、音の隙間が多い曲。
  5. A Human Tube
    ピアノとストリングス(サンプリング)による不協和音の連打。表現主義的現代音楽のスタイルを借りている。
  6. Adelic Penguins
    比較的ハッキリとしたメロディーを持つ曲。アートのリズミカルなノイズギターが大々的にフィーチャーされている。坂本のシングル「ステッピン・イントゥ・エイジア」には、この曲のフレーズの一部が使われている。なお、鳥類の「アデリーペンギン」のスペルは”adelie penguin”である。
  7. A Carved Stone
    断続的なアフリカの打楽器とDX7の琴のフレーズに乗せ、ピアノ、シンセの和音、ベル[要曖昧さ回避]の音などが美しく漂う。ピアノはカーツウェルを即興で弾いたもの。
  8. Ulu Watu
    動物たち・鳥たちの鳴き声の上で、金属音やトランペットを模したシンセの速いパッセージが鳴り響く。
  1. ^ 『オリコン・チャートブック LP編 昭和45年 – 平成1年』オリジナル・コンフィデンス、1990年、150頁。ISBN 4871310256。