岸本眞五 – Wikipedia

岸本 眞五(きしもと しんご、1948年 – )は、日本のアマチュア化石収集家。兵庫県姫路市在住。兵庫古生物研究会代表。

兵庫古生物研究会代表[1]。近畿地学会[2]、日本古生物学会会員[3]。兵庫県立人と自然の博物館ひとはく地域研究員[3]。自宅にコレクションを構えており[4]、アンモナイトのパキディスカス・サブコンプレッサス、二枚貝のペリプロミァ・グランディス、甲殻類のスナモグリ属英語版などを所蔵している[5]

化石採集の際には、ライトバンに機材を載せて夜に自宅を出発し、仮眠を取りながら夜明けと共に発掘を始める。妻や3人の子どもがいるが、家族からはほぼ呆れられていると語っている[6]

1948年生まれ。建設業を営む両親に育てられ、小学4年生の頃に近所の畑で土器の破片を発見。これをきっかけに古い物に興味を持つようになり、発掘に関心を示す[6]。高校1年生の頃に化石の採集会に参加し、三重県津市の露頭で貝化石を発見[6]。このことをきっかけに化石採集を始める[4][7]

古生物学の道は選ばず、家業を継ぐことも考えて大学では土木学を専攻し、化石採集はあくまで趣味として継続する[6]。建設業界に就職した後も休日を使って化石を採集する日々を送る[4][6]。なお、一時は家業を継いだものの、経営者という立場では化石採集のための十分な時間を確保できないことから、35歳で閉業して定年までサラリーマンとして勤務した。60歳で膀胱癌を患ったが、家族との相談の上で化石採集を継続している[6]

主な発見[編集]

1997年ごろ、岸本は三重県鳥羽市安楽島町に分布する下部白亜系の松尾層群から恐竜の化石を発見した[7][8]。これは1996年に発見されたトバリュウという恐竜の化石で、その後の発掘調査と研究により、竜脚類のティタノサウルス類に同定された。発見された部位が少ないため学名の命名には至らなかったが、当時としては日本国内で最大級の恐竜化石であり、そこから導かれる全長は約16 – 18メートルとされている[8]

また、1976年から淡路島にある兵庫県洲本市由良町の発掘現場に通い始める。当該の地層は約7200万年前にあたる上部白亜系の海成層であった。2004年5月2日、思うように化石を得られなかったことから、夕方に普段では立ち入らない場所へ移って発掘を再開したところ、二枚貝のように見える歯化石を発見。鋭利な形状でなかったため植物食動物のものと判断したが、中生代で海棲生活に適応した大型植物食性爬虫類が知られていないことから必然的に恐竜の化石ということになり、化石を前に脚が震えたという。化石はほぼ完全な右歯骨であった[7][9][10]。化石を兵庫県立人と自然の博物館に寄贈した岸本は、同館から2014年2月11日に感謝状を贈呈された[11]。なお化石は2021年に新属新種であることが判明し、北海道大学総合博物館の小林快次らによりヤマトサウルス・イザナギイ(Yamatosaurus izanagii)と命名された[10]

2013年から2014年にかけては岡山県津山市を流れる吉井川支流皿川の川底でノジュールを採集し、甲殻類十脚目のエビであるオキナワアナジャコ属の新種の化石種を発見した。標本は完全模式標本1点と副模式標本4点の計5点であり、2015年に岸本が人と自然の博物館に寄贈した。新種は岐阜県瑞浪市立化石博物館の安藤祐介により2016年に記載され、タラシナ・ツヤメンシス(Thalassina tsuyamensis)と命名された[12]

  1. ^ 収蔵資料スペシャル企画 「標本のミカタ~コレクションから新しい発見を生み出す~」第5回「アンモナイト大集合」”. 兵庫県立人と自然の博物館. 2021年6月4日閲覧。
  2. ^ 淡路島の化石展-7000万年前の生き物たち-”. 洲本市立淡路文化史料館 (2006年). 2021年6月4日閲覧。
  3. ^ a b 岸本眞五. “ごあいさつ”. 2021年6月4日閲覧。
  4. ^ a b c 高校生からの趣味が大発見へ 恐竜化石発見の男性に迫る」『サンテレビNEWS』サンテレビジョン、2021年5月6日。2021年6月3日閲覧。
  5. ^ 兵庫古生物研究会「『淡路島の南海岸での化石採集』~地域社会への貢献 灘仁頃地区を例として~」『共生のひろば』第14巻、兵庫県立人と自然の博物館、2019年、 74-77頁。
  6. ^ a b c d e f 友清哲 (2021年7月15日). “新種の恐竜「ヤマトサウルス・イザナギイ」を発掘! 在野の化石ハンター・岸本眞五さん(72歳)が語る「僕と化石の50年」”. 週プレNEWS. 集英社. 2021年9月9日閲覧。
  7. ^ a b c 井上元宏「発見時「足がガクガク」淡路島の化石、新種恐竜認定にハンター歓喜」『毎日新聞』、2021年4月27日。2021年6月3日閲覧。
  8. ^ a b 平瀨みえ子 (2008年10月3日). “第6話 吾輩は「鳥羽竜」学名はまだない”. 三重県. 2021年6月4日閲覧。
  9. ^ 「陸にいた大型の動物は…恐竜だ」淡路島で発見された新属新種の恐竜化石の特徴とは”. 関西ラジオトピックス (2021年4月28日). 2021年6月3日閲覧。
  10. ^ a b 西田有里「アマチュア研究家の偉業 新種の恐竜「ひざがふるえた」」『朝日新聞』、2021年5月23日。2021年6月3日閲覧。
  11. ^ ミニ企画展”. 兵庫県立人と自然の博物館. 2014年2月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年6月3日閲覧。
  12. ^ 「岡山県津山市より産出したオキナワアナジャコ属新種化石」の展示について”. 兵庫県立人と自然の博物館 (2016年). 2021年6月4日閲覧。

外部リンク[編集]