ウィッチャーI エルフの血脈 – Wikipedia
著者 | アンドレイ・サプコフスキ |
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翻訳者 | 川野靖子・天沼春樹 |
国 | ポーランド |
ジャンル | ファンタジー |
出版日 | 2017年8月25日 |
出版社 | 早川書房 |
次作 | ウィッチャーII 屈辱の刻 |
『ウィッチャーI エルフの血脈』(原題:Krew elfów)は、ポーランドのファンタジー作家アンドレイ・サプコフスキによる「ウィッチャー」サーガの長編作品第一弾である。ポーランドで、1994年に初版が発行された。この作品は「ウィッチャー」サーガの短編作品である『The Last Wish(Ostatnie życzenie) 』『Sword of Destiny(Miecz przeznaczenia)』(共に未邦訳)の続編にあたる。Janusz A. Zajdel賞及びイギリスにてデイヴィッド・ゲメル・レジェンド賞を受賞。日本では、2010年に邦訳版『魔法剣士ゲラルト エルフの血脈』が発行。その後、2017年に続編である『ウィッチャーII 屈辱の刻』(原題:Czas pogardy)と合わせて再版された際、『ウィッチャーI エルフの血脈』と改題された。
あらすじ[編集]
ニルフガード帝国がシントラ王国に戦争を仕掛け、陥落させてから二年が経過していた。この戦争で瀕死の重傷を負った女王キャランセは敢え無く自害。キャランセの孫娘であり、シリの愛称でも知られる“シントラの仔獅子”ことシリラは、戦火に燃える町から命からがら逃げ延びた。逃避行を手助けしたのは、ウィッチャー、リヴィアのゲラルト。ウィッチャーとは、魔法と変異誘発剤によって遺伝子レベルで変異した異能の怪物狩り(モンスタースレイヤー)であり、怪物や魔物の脅威から人々を守ることを生業としていた。彼らの本拠地であるケィア・モルヘンにシリを連れ帰ったゲラルトは、仲間のウィッチャーらと共にシリにウィッチャーの訓練を積ませながら、彼らなりの教育を施すのだった。
シントラでの戦火を歌った吟遊詩人ダンディリオンは、ある日見知らぬ魔法使いリエンスに襲われる。リエンスの目的は、シントラ女王の血を継ぐシリの行方を知ることだった。ゲラルトの元恋人であり女魔法使いであるヴェンガーバーグのイェネファーによってダンディリオンは危機を脱したが、リエンスは<門>を通って逃げ延びてしまう。
そんな中、女魔法使いトリス・メリゴールドがケィア・モルヘンを訪れたのは、ウィッチャーたちからの依頼のためだった。訓練中のシリに出会ったトリスは、すぐに自分が呼ばれた理由を悟る。不意に訪れるトランス、摩訶不思議な予言。それらは、シリが強大な力の媒介たる<源流>である証拠だとトリスは断言する。ウィッチャーたちの粗雑な教育にも見かねたトリスは、普通の教育を施すため、シリをエランダーのメリテレ寺院に通わせることを提案するのだった。
エランダーへの旅路は、トリスの病気や、エルフ・ドワーフら非人間族が組織したスコイア=テル<リス団>なる盗賊団の襲撃など、様々なトラブルに満ちた大変なものであったが、ヤーペン・ジグリンらドワーフの旅隊の協力もあって、無事シリはメリテレ寺院へと辿りつく。しかし、シリはかつてのシントラでの悪夢にうなされる毎日を過ごしていた。そんな彼女の前に現れたのが、イェネファーであった。イェネファーは、シリに魔法の使い方を教え始める。始めこそ反目し合っていた2人だったが、徐々にその間には絆が芽生えていくのだった。
一方その頃、北方諸国の王たちが一堂に会し、秘密の会議を執り行っていた。戦後続いた見せかけの平和が、終焉を迎えつつあったのだ。ニルフガードの経済力は北方経済を圧迫し、密偵らの扇動によって貴族や商人は君主への反旗を翻し始めた。スコイア=テルら非人間族が人間に対する虐殺行為に及ぶ中、世界の終わりを予言する者まで現れた。王たちは、ニルフガード帝国がシントラの復権により、更に勢力を強めようとしていることを警戒し、シントラ復権の鍵となるシリを捜索し、抹殺することを決議する。
ゲラルトは、ダンディリオンを襲った魔法使いリエンスを追跡していた。オクセンフルトで出会った医学生シャニの助けもあり、リエンスの居所を突き止めることに成功したゲラルトは、彼を守る殺し屋のミケレット兄弟らとの激しい戦闘の末、リエンスを追いつめることに成功する。しかし、すんでのところで、またしてもリエンスは<門>を使って逃走。最後の手掛かりであったミケレット兄弟の生き残りも、その場に居合わせたレダニア国に仕える女魔法使いフィリパ・エイルハートによって殺されてしまった。結局のところ、リエンスとその背後に潜む黒幕の魔法使いの正体は知れぬまま、ゲラルトは追跡の手掛かりを失ってしまうのだった。
そして、メリテレ寺院では、シリとイェネファーが旅の支度を行っていた。二人は巫女頭ネンネケに別れを告げ、馬を走らせた。かくして、また新しい旅が始まったのだった。
登場人物[編集]
- リヴィアのゲラルト
- 変異誘発剤の摂取により異能へと変異した怪物狩り、通称“ウィッチャー”。特徴的な白髪から、<白狼>の異名で知られる。ニルフガード帝国の侵攻によってシントラを追われたシリを救い、ウィッチャーの本拠地であるケィア・モルヘンで彼女の面倒を見る。
- シリ(シリラ)
- シントラ女王キャランセの孫娘にして、“シントラの仔獅子”の名で知られる灰金色の髪の少女。<古き血脈>と呼ばれるエルフ族の血縁にあたり、強大な魔力の媒介たる<源流>である。シントラの大火以降は、ケィア・モルヘンでウィッチャーとしての訓練を積んだ後、イェネファーによって魔法の訓練を授かった。
- ヴェンガーバーグのイェネファー
- かつて強力な精霊ジンに囚われていたところをゲラルトに助けられたことをきっかけに、ゲラルトと恋仲になった女魔法使い。魔法院の構成員でもある。現在は、ゲラルトとは恋人関係を解消している。リエンスの脅威からダンディリオンを救ったことをきっかけに、シリを巡る一連の事件に積極的に関わっていく。
- トリス・メリゴールド
- ゲラルト、イェネファー共通の友人である女魔法使い。シントラでの戦争で命を落としたとされていたが、命からがら生き延びていた。ゲラルトに対して並々ならぬ思いを寄せているが、表面上はその思いを伝えずにいる。
- ダンディリオン
- ゲラルトの友人にして、吟遊詩人。かつてゲラルトと共に冒険の旅に出たこともある。吟遊詩人としての腕は本物で、大衆にも名が知れている。
- ネンネケ
- メリテレ寺院の巫女頭。
- ヴェセミル
- ウィッチャーの一人。
- コーエン
- ウィッチャーの一人。
- ランバート
- ウィッチャーの一人。
- エスケル
- ウィッチャーの一人。
- ヴィルフリド・ウェンク
- ケイドウェン国軍将校。
- ヤーペン・ジグリン
- 旅隊を護衛するドワーフ。
- ジギスムント・ディクストラ
- レダニア国の諜報部長。背丈は2m近く、体重は200kg近くある巨漢。
- フィリパ・エイルハート
- レダニア国王づきの女魔法使い。
- リエンス
- シリの行方を追う謎の魔法使い。イェネファーとの対決に敗れ、顔に大きな傷を負うことになった。
- エムヒル・ヴァル・エムレイス
- ニルフガード皇帝。<白炎>の渾名で知られる。
- 羽根付き兜の黒い騎士
- シリがシントラの大火で遭遇したニルフガードの騎士。その正体は……
[の世界”>編集]
<四王国>
- ケイドウェン
- 北東に位置し、山に囲まれた国。ヘンセルト王が統べる。首都はアルド・カレイ。ケィア・モルヘンは東の外れに位置する。
- レダニア
- 海に面した北側の国。ヴィジミル王が統べる。首都はトレトゴール。南境のポンター川沿いに学術都市オクセンフルトが、海沿いにノヴィグラドがある。
- テメリア
- 海に面した南側の国。フォルテスト王が統べる。首都はヴィジマ。東のエランダー公国にはメリテレ寺院がある。
- エイダーン
- 南東に位置する内陸国。デマウェンド王が統べる。首都はヴェンガーバーグ。
<その他の国>
- コヴィリ
- ライリア&リヴィア
- メーヴ女王が統べる。
- シダリス
- ブルッゲ
- ヴェルデン
- スケリッジ諸島
- シントラ
- 二年前に陥落して以来、ニルフガードの属州となっている。ブルッゲの対岸にあたるヤルーガ川沿いにはニルフガード軍が駐留している。
- ニルフガード帝国
- エムヒル・ヴァル・エムレイスが統べる南方の帝国。
関連項目[編集]
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