ルルイエ異本 – Wikipedia

『ルルイエ異本』(ルルイエいほん、R’lyeh Text)は、クトゥルフ神話作品に登場する架空の書籍。

初出は『ウィアード・テイルズ』1939年3月号に掲載されたオーガスト・ダーレス作の『ハスターの帰還』で、ダーレスの設定したクトゥルフ信仰に関する魔導書である。

ラヴクラフトの没後に発表された文献であり、ラヴクラフト・スクールの時代には存在せず、しばらくはダーレス以外に使う作者は現れなかった。やがて次世代のリン・カーターやブライアン・ラムレイが用いるようになり、TRPG『クトゥルフの呼び声』の設定にも取り込まれる。

基本設定[編集]

アーカムの研究家エイモス・タトルが、アジア内陸部からやって来た中国人から10万ドル(当時)で購入した写本。人皮で装丁されている。エイモスの死後、甥のポール・タトルによりミスカトニック大学付属図書館に寄贈される。また入手経路不明ながら、太平洋考古学の権威であるハロルド・ハドリー・コープランド教授も所持していた。

内容は大いなるクトゥルフを主に、その眷属と海の関わり、異界のものを召喚する呪文、ムー大陸とルルイエの沈没について記述されている。『クトゥルフの呼び声』にて登場する詠唱が、文章として記録されている本である。

ミスカトニック大学の哲学教授ラバン・シュリュズベリイ博士は、ルルイエ異本を詳細に研究し、『ルルイエ異本を基にした後期原始人の神話の型の研究』(An Investigation Into the Mythpatterns of Latterday Primitives With Especial Reference to the R’lyeh Text)という論文を書いている(「永劫の探求」)[1]

派生設定[編集]

エイモス・タトルのルルイエ異本は記載言語不明。TRPG『クトゥルフの呼び声』では漢文(中国語)とされるが、リン・カーターはルルイエ語としている。

日本のTRPG設定において、夏王朝の時代(紀元前2000年頃)に著され、中国語で『螺湮城本伝』と題されたとされ、さらに人皮装丁のイタリア語訳版が追加された。

『螺湮城本伝』の設定を踏まえて、実在する『山海経』は、『ルルイエ異本』=『螺湮城本伝』を原本としたものだという。『山海経』は秦王朝・漢王朝時代に成立して、さらに自称では夏王朝の伯益から伝わっているものだが、実は『ルルイエ異本』の劣化版なのだという。『ルルイエ異本』から内容が大幅に変わり九頭龍(クトゥルフ)召喚の呪文なども全て抜け落ちた果てが、『山海経』なのだという。証拠づけるように、現存の『山海経』には螺湮城(ルルイエ)が沈む南極海淵(昆侖南淵)の位置を示すらしい「昆侖の南の淵は深さ三百仞」という記述がある[1]

さらに『螺湮城本伝』の設定を踏まえて、『Fate/Zero』にはジル・ド・レェ元帥が黒魔術師として登場する。ジル元帥はプレラーティのイタリア語版『ルルイエ異本』を所持している(『螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)』という名称)が、これはジル元帥とプレラーティに親交があったことというエピソードに由来するものである。劇中ではおぞましさゆえに書物自体が異形の魔物とまでに化した存在として描かれており、発狂したジル元帥は本書を用いて異界の海魔を召喚する。また『螺湮城教本』は『螺湮城本伝』の劣化コピー版にすぎず、作中未登場の『本伝』は『教本』よりずっとおぞましいという言及が設定上存在する。

「螺湮城」はルルイエのこと。現代中国語のクトゥルフ神話では、ルルイエは「拉莱耶」、ルルイエ異本は「拉萊耶文本」と表記される。

登場作品[編集]

  • 「ハスターの帰還」 The Return of Hastur (オーガスト・ダーレス)1939年
  • 「破風の窓」 The Gable Window (ハワード・フィリップス・ラヴクラフト&オーガスト・ダーレス) 1957年
    • 『クトゥルー 闇の黙示録』大瀧啓裕:訳、青心社、1980年
    • 『クトゥルー 1』大瀧啓裕:訳、青心社《暗黒神話大系シリーズ》、1980年
  • 「永劫の探究」 The Trail of Cthulhu (オーガスト・ダーレス)1944年から1952年の連作短編
    • 『クトゥルーⅡ永劫の探求 』大瀧啓裕、岩村光博:訳、青心社、1981年
    • 『クトゥルー 2』大瀧啓裕、岩村光博:訳、青心社《暗黒神話大系シリーズ》、1988年
  • 「丘の夜鷹」 The Whippoorwils in the Hills (オーガスト・ダーレス)1948年
    • 『クトゥルー 3』大瀧啓裕:訳、青心社《暗黒神話大系シリーズ》、1989年
  • 「Fate/Zero」虚淵玄 2006年-2007年

関連項目[編集]

注釈[編集]

出典[編集]

参考文献[編集]