ワンウェブ – Wikipedia

ワンウェブ(英: OneWeb LLC)は、アメリカ合衆国バージニア州アーリントン郡に本社を置く、低軌道 (LEO) 衛星コンステレーションを用いた衛星通信を計画する衛星通信会社である。創業者はグレッグ・ワイラー。当初はワールドビュー・サテライト(英: WorldVu Satellites Ltd.)として設立されてGoogle傘下に属しており、本部はチャンネル諸島セント・ヘリアに登録されていた。ソフトバンクグループが19億ドル出資し、ワンウェブ株式の5割近くを保有していた[1]

2019年のサービス開始を目指し計画を進めていたが計画は遅延、資金調達の失敗により、2020年3月27日に連邦倒産法第11章に基づく会社更生手続きを申請した[2]。申請時点で、サービス開始に必要な衛星650機に対して、打ち上げ済みは74機に留まっていた[3]。一方で、同年7月には英政府とインドのBharti Global英語版が主導するコンソーシアムによる買収が発表され、経営再建が図られている[4]

低軌道衛星を用いて通信速度下り200Mbps、上り50Mbps、レイテンシ20-30ms程度の衛星通信サービスの提供を計画していた[5]。1週間に15基の衛星を製造できると述べており[6]、質量150kgの小型衛星648基と予備250基をエアバス・ディフェンス・アンド・スペースと合弁子会社OneWeb Satellitesにて製造し、145kgの重量と10Gbpsの伝送速度を持つとされる衛星を高度1200kmの18本の軌道に36機ずつ分散して配置することにより、全世界に高速インターネットを提供可能としていた[7][8]

2020年3月の経営破綻時点では、衛星コンステレーションはまだ構築段階にあり、合計74機が打ち上げ済みとなっていた。同じく衛星コンステレーション方式の通信サービスを計画するライバルのSpaceXは、その時点ですでに362基の人工衛星を打ち上げ済みであり、打ち上げ数で大きく引き離されている状況であった。衛星コンステレーション方式の人工衛星を用いた通信サービスにおいては、運用する人工衛星の総数は重要な要素であり、一般的には人工衛星が増えれば増えるほどサービスエリアは広くなり、サービス提供可能時間も長くなる。商用衛星通信市場を巡っては、SpaceXだけでなく、Amazonも参入を計画しており競争が激しくなっていた[9]

2018年初頭までにプロトタイプ衛星12基を生産し、アリアンスペースによって10基をクールー宇宙センターやバイコヌール宇宙基地から打ち上げ、順調に行けば2年かけて残りを打ち上げる予定であった。合弁子会社OneWeb Satellitesのフロリダ工場は2017年末に建設完了予定。OneWebのサービスインは2019年を予定し[10]、2022年までにすべての学校をオンライン化し、2027年までにデジタルデバイド問題を解決する目標を建てていたが計画に遅延が生じていた[11]。2019年2月に6基の衛星の打ち上げに成功し、2020年から毎月35基程度の衛星を打ち上げて650基体制で21年の商用化、10年後をめどに6000基の配備をする方針に修正されていた[1]

2017年6月22日にはFCCより条件付きで事業計画が認可された。通信に用いる帯域は、Kuバンドの10.7-12.7 GHz(下り・宇宙→地球)、14.0-14.5 GHz(上り・地球→宇宙)、17.8-18.6 GHz(下り・宇宙→地球)、18.8-19.3 GHz(下り・宇宙→地球)、Kaバンドの27.5-29.1 GHz(上り・地球→宇宙)、29.5-30 GHz(上り・地球→宇宙)の6帯域であった。

打ち上げ[編集]

前述の通り、アリアンスペースによる最初の10基の打ち上げ予定は2018年初頭とされていたが、同年12月18日から2019年2月19日に延期された。アリアンスペースとは672基を21回のソユーズロケットによる打ち上げ(オプションで5回のソユーズと3回のアリアン6による打ち上げ)契約が交わされていた[12]。ヴァージン・ギャラクティックとは228基を39回のLauncherOneによる打ち上げが行われる契約が[13]、ブルーオリジンとは5回打ち上げる契約が交わされていた[14]。最終的に、本格的な打ち上げは2020年2月から開始された[15]

EarthNow社はベンチャーキャピタルIntellectual Venturesからスピンアウトして2017年に設立された衛星画像を手掛けるベンチャー企業。多数の衛星コンステレーションから地球のリアルタイムな観測映像を撮影し、配信するサービスを提供するプロジェクトを推進している。同社のサービスはワンウェブと親和性が高く、グレッグ・ワイラーや大株主のソフトバンク社やエアバス社、そしてビル・ゲイツなどが2018年1月に出資していることがわかった。当初は政府や企業向けにサービス向けにハリケーンや台風の観測・気象予測や違法漁業の摘発、山火事や火山噴火の早期発見、野生動物の観察などに活用する用途を想定しているが、将来的には端末のアプリで数百万の顧客がリアルタイムで地球を見ることができることを目指している。創業者ラッセル・ハニガンCEOは、「地球をライブかつ無修正で見て理解できるようになれば、われわれ皆が唯一の故郷をよりありがたく感じ、大切にするようになるはずだ」とコメントしている。サービスにはエアバス社がOneWeb向けに製造している人工衛星のアップグレード版を打ち上げる計画だが、サービス開始時期は未定[16][17]

  • 2012年1月 – グレッグ・ワイラー (Greg Wyler) によりWorldVu Satellites Limitedとして設立される。
  • 2014年5月 – L5 (WorldVu) がかつてSkyBridgeに割り当てられたKuバンド/Kaバンド帯域を確保[18][19]
  • 2014年9月1日 – Googleから離脱[20]
  • 2015年1月15日 – OneWebに社名変更。Qualcomm VenturesとVirgin Groupから資金調達[21][22]。また打ち上げに関してアリアンスペース、ヴァージン・ギャラクティックと契約[23]
  • 2015年6月15日 – エアバス・ディフェンス・アンド・スペースと合弁でフロリダ州ココアにOneWeb Satellites設立[24][25]
  • 2015年6月25日 – ヴァージン・グループ、クアルコム、エアバス、バーティーエンタープライズ、インテルサット、コカコーラから5億ドル調達[26]
  • 2016年12月19日 – ソフトバンクグループが10億ドル出資し筆頭株主になる[27]
  • 2017年2月23日 – グレッグ・ワイラーが当初の衛星を売却し、4倍の2000機による衛星計画を披露。内訳は高度1万~2万kmの中軌道 (MEO) にVバンド衛星1,280基、高度2000kmのLEOにKuバンド衛星720基[28][29]
  • 2017年2月28日 – インテルサットとワンウェブが条件付き合併に合意。ソフトバンクは合併を条件に17億ドル出資し合併後の新会社の39.9%株主となる予定であった[30]
  • 2017年6月1日 – インテルサット債権者との合併交渉決裂[31]
  • 2017年6月22日 – FCCにより米国内での衛星コンステレーションが承認される[32]
  • 2017年6月27日 – エアバスがフランス・トゥールーズ工場で衛星900機の量産開始。フロリダにも生産拠点が置かれる予定[33]
  • 2019年2月28日 – クールー宇宙センターから試験衛星6機の打ち上げに成功[34]
  • 2019年3月18日 – ソフトバンクより5億500万ドル、Grupo Salinasより3億ドル、Airbusより2億ドル、ルワンダ政府より2,700万ドル、Qualcommより9,800万ドル相当の無線インタフェース支援など合計12億5000万ドルを調達[35]
  • 2020年2月7日 – ソユーズ 2.1bにより初の実運用機となる衛星34機の打ち上げに成功[15]
  • 2020年3月19日 – 資金難を理由に破産申請も選択肢の一つとして検討していると報じられる[36]
  • 2020年3月21日 – ソユーズによる二度目の衛星34機の打ち上げに成功[37]
  • 2020年3月27日 – 連邦倒産法第11章に基づく会社更生手続きを申請[2]
  • 2020年5月27日 – FCCに衛星コンステレーションを最大48,000基まで増やす許可を申請[4]
  • 2020年7月3日 – イギリス政府とインドのBharti Global英語版 が主導するコンソーシアムがワンウェブを取得。計10億ドルを出資[4]
  • 2020年12月18日 – 経営再建後初となる打ち上げに成功[38]
  • 2022年3月21日 – スペースXとの2022年内からの衛星打ち上げ契約締結を発表[39]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]