納谷六朗 – Wikipedia
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納谷 六朗(なや ろくろう[2]、1932年10月20日[2][4][3] – 2014年11月17日[7][3])は、日本の声優、俳優、ナレーター、演出家。東京府東京市(現・東京都)出身[2][4][3]。最終所属はマウスプロモーション[8]。
兄は同じく俳優、声優の納谷悟朗、義姉は女優、声優の火野カチ子。妻は元マウスプロモーション代表取締役社長の納谷光枝、長男は元マウスプロモーション代表取締役社長の納谷僚介。
2014年、第8回声優アワード「功労賞」を受賞[9]。
生涯
7人兄弟の六男。「納谷兄弟で名前に数字が付くのは、五男の悟朗と六男の六朗だけ」と本人は語っている。東京都立西高等学校、立命館大学法学部卒業[3]。
大学卒業後、出版関係の仕事をしていた別の兄を手伝っていたが、悟朗の所属していた劇団稲の会の公演パンフレットを作成する手伝いをしたことが縁[注釈 2]で芝居を始める[10]。初舞台は『幸福な王子』の王子の像の役[10]。
舞台活動を始めてしばらくした頃(1959年)、所属劇団で電話番をしていると悟朗から突然電話がかかる。「え、何、何?」と聞くものの無言で、しばらくして「似てねえってよ」と返された。当時、悟朗は海外ドラマ『ウィリアム・テル』でテルの吹き替えを担当していたことから、テルの偽物が登場する回で「偽物は悟朗と似た声のやつにやらせてみよう」となり、弟であった六朗の声を確かめようと電話をかけてきたとのこと。結局、偽物も悟朗が兼役で演じたが、このことがきっかけで端役(村人②)で呼ばれたためアテレコデビュー[11]。デビュー作からいきなりの兄弟共演だったという[12]。
劇団現代劇場「河の会」を経て[12][3]、1974年に江崎プロダクション(現・マウスプロモーション)へ所属[3]。筒井康隆大一座などの結成にも参加している[3]。また舞台の傍ら、マウスプロの後進の育成にも励んでいた。マウスプロ自主公演では、主役を張ることもあった。声優としては晩年まで活動を続けていた。
2014年10月22日に自宅で体調不良を訴えて東京都大田区内の病院に入院。検査の結果肺炎と脳梗塞を発症していたため治療を受けていた[13]。しかし同年11月17日午前10時28分、肺炎のため東京都大田区の病院で死去[7][13][注釈 3]。満82歳没。
人物
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年齢不詳のちょっと神経質な声が特徴[15]。男性の話す京都弁に堪能。
好きなスポーツは野球。かつて過ごした京都に本拠地が近かったため南海ホークス(福岡ソフトバンクホークス)を応援していた。またイチローのファンで、シアトル・マリナーズ移籍後は毎年シアトルに観戦に行きマリナーズの帽子を好みかぶっていた[10][16]。
趣味は読書。
兄との関係
兄の悟朗の電話がきっかけで声優としてデビューしたが、いざデビューするとなると悟朗から「苦労するからやめておけ」と心配されることもあったという[10]。
契約の問題から本名で活動することになったため、当初は「超売れっ子の納谷悟朗の弟」とやっかみを受け叩かれたり、悟朗と芝居を比較されるなど悔しい思いをしたこともあった。だが、後に「悟朗と六朗は別」と認識されるようになり、以降は得をすることも増えたという。六朗は後に「この世界へ入るキッカケをくれた悟朗にはとても感謝している」と語っている[10]。
ある収録で、「悟朗の野太さと六朗の細い声の中間」という意味の5.5朗な声を頼まれたことがある[10]。
デビュー作以降、悟朗との兄弟共演作は多数あった。悟朗が銭形警部役を務めていた『ルパン三世』シリーズにも複数出演しており、銭形警部が変装した役を演じたことがある。また『ルパン三世 sweet lost night 〜魔法のランプは悪夢の予感〜』では医師のジョーダン役で悟朗と共演した他、『超電磁ロボ コン・バトラーV』14話では、悟朗の演じた南原博士の胸像のメッセージボイスも演じている。
映画『人生狂騒曲』では体調不良で収録に参加できなかった悟朗の代役として、彼の持ち役であったジョン・クリーズの吹き替えを務めた。
映画『アマデウス』のスペシャルコレクション盤レーザーディスクの特典である監督と脚本家によるオーディオ・コメンタリーで、監督ミロシュ・フォアマンの吹き替えを担当し、対する脚本家ピーター・シェーファーを兄である悟朗が吹き替え、兄弟共演となった。このコメンタリー吹き替えが収録されたLDは長らく廃盤となっていたが、「吹替の力」シリーズ『アマデウス 日本語吹替音声追加収録版ブルーレイ』の特典DVDで復刻された。対話シーンは無いがテアトル・エコー所属俳優が多数参加した1985年の映画『オズ』の劇場公開版、ポニー版・バンダイ版の日本語吹き替えも兄弟揃った出演作である。
エピソード
六朗が業界に入るきっかけとなった芝居は、悟朗の記憶では『坊つちやん』であり、六朗は主役だったという。だが、その芝居はほとんど赤シャツにスポットを当てて改変されており、六朗は舞台中央に立っていればよいという形で出演していた。なお、新聞では「赤シャツ物語とタイトルを変えた方が良い」と皮肉られていたという。
仕事に関して、吹き替えもアニメも区別せず取り組み、どちらも魅力的だと語っている。ただし、周囲から評価されるのはアニメの方が多く、その影響力のすごさには「大きなやりがいに繋がる」と述べている[10]。
キャリア初期の収録であった「テープが途中で止められず、失敗すれば一からやり直し」という一発勝負的な緊張感が心地よかったといい、それに気づいてから「声優は天職」と思うようになったという。そのため、後進の育成では「初見の力の大切さ」を特に指導していた[10]。
思い出に残っている作品には、兼役で11役を演じたことから『オーシャンと11人の仲間』の吹き替えを挙げている。若手だった当時「一人でそんなにたくさんの声は出ないですよ!」と思いながら演じたという[17]。
初代『仮面ライダー』で本郷猛 / 仮面ライダー1号役の藤岡弘、が撮影中のバイク転倒事故で重傷を負い、撮影済みの映像素材のアフレコが不可能になった時、六朗が代役を務めた[3]。録音演出の太田克己は、ショッカー首領の声を担当している悟朗の実弟とは知らずにキャスティングしたという[3]。当時のドラマは全編アフレコが主流で、六朗自身も後に「アクション作品の事故でアフレコの代役というのも珍しくなかった。藤岡さんの芝居は自分に似ていたので、癖がつかみ易くスマートにアテられた」と語っている。また、仮面劇の吹き替えにおいても特に問題はなかったという[12]。なお、劇中では悟朗演じるショッカー首領と納谷六朗のライダーが対決する兄弟共演のシーンもあったが、本人は「記憶にない」と語っている[12]。その他、テアトル・エコーが怪人など声優のキャスティングを仕切っていた現場[注釈 4]で未所属の六朗が出演することになったのは、「自身の所属事務所がテアトル・エコーと仲が良かったから」と述べている[12]。
『聖闘士星矢』では、当時50代半ばであったが、美形の青年である水瓶座のカミュ役に抜擢された。このことは役者仲間にからかわれたが、古谷徹など若手のレギュラー出演者は出番の無い者も、こぞって彼の演技を見学するためスタジオに来ていたという。その後、カミュは根強いファンを持つ人気キャラクターとなり、若い層にも六朗ファンを増やす結果となった。当人も役を気に入り「これまで演じた代表キャラクターの五指に入る」と述べ、『メモリアルCDBOX』におけるインタビューでは、カミュに対する想いを語るとともに「また演じたい」とも述べていた。
『幽☆遊☆白書』の仙水忍役については、「多重人格でやりがいのある役だった」と語っている。当時すでに60歳を過ぎていたため、オファーが来るまで仙水というキャラクターを知らなかったが、原作を読んでいた古谷徹に「実は仙水役をやりたかった」と言われた際は「他の声優仲間数名からも同様の事を言われた」と述べている。しかしながら仙水のキャラソンCD発売のためのJ-POP調歌唱レコーディングだけは大変苦労したとも述べている。
OVA『ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日』ではサブキャラクターの一人である鎮三山・黄信を演じたが、六朗が配役になったため、主人公・大作を叱咤する大きな見せ場が新たに作られた。
『星獣戦隊ギンガマン』では、巨大パペットキャラクター・モークを演じた。この際、特撮作品特有の実写映像に合わせてのアフレコに苦労する若手俳優のレコーディングのアシストに大々的に協力した。
『ジュラシック・パーク』シリーズの吹き替え版には3作目までに出演した。スピルバーグが監督の2作品では、どちらもティラノサウルスに食べられる役となった。『III』でようやく最後まで生き残る役となったが、この際吹き替えた役は『ER緊急救命室』で持ち役にしていたウィリアム・H・メイシーが演じたものだった。
ソニークリエイティブプロダクツ版の『きかんしゃトーマス』出演者では唯一、81プロデュース以外の事務所に所属している人物であった。なおキャスティングを仕切っているのは81プロデュースである。
長年、レギュラーの高倉文太園長(組長)役で出演していた『クレヨンしんちゃん』では六朗の死後、2つの話に登場したものの台詞はく、『クレヨンしんちゃん オラの引越し物語 サボテン大襲撃』では、過去の音源を用いてのライブラリ出演となった[18]。その後、2015年10月9日放送分より事務所の後輩である森田順平が2代目として起用されている。
後任
納谷の没後、持ち役を引き継いだ人物は以下の通り。
出演
太字はメインキャラクター。
テレビアニメ
- 1967年
- 1968年
- 1969年
- 1970年
- 1971年
- 1972年
- 1973年
- 1974年
- 1976年
- 1977年
- 1978年
- 1979年
- 1980年
- 1981年
- 1982年
- 1983年
- 1984年
- 1985年
- 1986年
- 1987年
- 1988年
- 1989年
- 1990年
- 1991年
- 1992年
- 1994年
- 1995年
- 1996年
- 1997年
- 1998年
- 1999年
- 2000年
- 2001年
- 2002年
- 2003年
- 2004年
- 2005年
- 2006年
- 2007年
- 2008年
- 2009年
- 2010年
- 2011年
- 2012年
- 2014年
OVA
- 1985年
- 1987年
- 1988年
- 1989年
- 1990年
- 1991年
- 1992年
- 1993年
- 1994年
- 1996年
- 1999年
- 2000年
- 2002年
-
- 魔法のスターマジカルエミ 雲光る(香月順一)
- 2005年
- 2008年
- 2010年
劇場アニメ
- 1971年
- 1979年
- 1983年
- 1984年
-
- 地球物語 テレパス2500(ザジ[30])
- 1986年
- 1988年
- 1991年
- 1993年
- 1994年
- 1995年
- 1996年
- 1997年
- 1998年
- 1999年
- 2000年
- 2001年
- 2002年
- 2003年
- 2004年
- 2005年
- 2006年
- 2007年
- 2008年
- 2009年
- 2010年
- 2012年
- 2013年
- 2014年
- 2015年
Webアニメ
- 2001年
- 2008年
ゲーム
2017年以降の出演作品は、過去の収録音声を使用したライブラリ出演。
- 1992年
- 1994年
- 1995年
-
- キリーク・ザ・ブラッド(ドクター・キム)
- キリーク・ザ・ブラッド2(カルロス)
- 幽☆遊☆白書FINAL 魔界最強列伝(仙水忍)
- 1996年
- 1997年
- 1998年
- 1999年
- 2000年
- 2001年
- 2002年
- 2004年
- 2005年
- 2006年
- 2007年
- 2008年
- 2009年
- 2010年
-
- クレヨンしんちゃん ショックガ〜ン!伝説を呼ぶオマケ大ケツ戦!!(園長先生〈高倉文太〉)
- 2011年
- 2012年
- 2013年
- 2014年
- 2015年
- 2017年
- 2019年
- 2021年
吹き替え
俳優
- アンドリュー・ロビンソン
- ウィリアム・H・メイシー
- エド・ハリス
- ゲイリー・オールドマン
- サム・シェパード
- ジョン・ハート
- スコット・グレン
- デニス・ホッパー
- ブラッド・ドゥーリフ
- マーティン・シーン
- ミゲル・フェラー
- ルネ・オーベルジョノワ
映画
ドラマ
アニメ
海外人形劇
- がんばれタッグス(ブルーノーズ、イージー・ゴメス、青い目を付けた船)
- キャプテン・スカーレット
- キャプテン・スカーレット誕生!(ニューヨークからの報告、無線)
- 無人戦車ユニトロン(MCA職員)
- ミニ衛生をとばせ!(ブレック博士)
- にせミステロンあらわる!(ドイグ)
- ミステロン基地発見!(オルソン、発射管制官)
- 海底基地を爆撃せよ!(軍曹)
- アメリカ大陸を救え!(スティール)
- サンダーバード
- ロケット“太陽号”の危機(発射管制官)
- 超音ジェット機レッドアロー(副管制官)
- 太陽反射鏡の恐怖(ミッチェル)
- サンダーバード劇場版(レイ・ピーアス博士)※民放テレビ版
- ジョー90
- 宇宙ステーション応答せず(ブローディ)
- ビッグラットの秘密を盗め(カーソン)
- 危険な女スパイ(アンドリューズ、銃殺執行人)
- ロンドン指令X
- 超音波ライフル銃(クローナー)
- 新兵器アクアタンク(ミッチェル大尉)
- スパイ脱獄(ハンフリーの使用人)
特撮
- 1967年
-
- 豹マン(ジャガーマン/銀河系太郎の声)
- 1971年
- 1973年
- 1976年
- 1996年
- 1998年
- 1999年
- 2000年
- 2007年
- 2009年
CD
テレビドラマ
映画
舞台
- ワイルド「幸福な王子」(王子の像)※初舞台
- 夏目漱石「坊つちやん」
- 小林信彦「唐獅子株式会社」
- オニール「ヒューイ」
- 筒井康隆「ジーザズ・クライスト・トリックスター」
- 筒井歌舞伎「影武者騒動」
- 藤本義一「迷子の天使たち」
- シアターΧ名作劇場 第一回から第二十回まで出演
- 劇団K-Show 6th.PRODUCE 公演「気になる病は気から出たマコト」(梅沢慎之介)
- 劇団K-Show 7th.PRODUCE 公演「かかしのうた」(米倉玄左衛門)
- 中日劇場特別企画新春公演 「身代わり 若様 お姫様」【熱唱!ビッグスリー】
- 筒井康隆大一座「12人の浮かれる男」
- 筒井康隆大一座「スタア」
- マウスプロモーション「桜の田」
- マウスプロモーション「新版・相続税概説」
- 座☆吉祥天女「五鞭の椿」
- 劇団大樹「ひめごと」
CM
その他
- ノベルアプリ『RENT HEAD』(鈴白清司[44])
- ハーツ・アンド・マインズ/ベトナム戦争の真実(グエン・ヴァン・タイ、ウィリアム・マーシャル元三等軍曹)
- 野生のプレデター(VHS)ユキヒョウが住むモンゴル高地(ジョージ・シャラー博士)
- 読んで聴いて楽しく学ぶ英語(朗読、制作:キープ株式会社)
音響監督作品
脚注
注釈
- ^ 本名を納屋 六朗(なや ろくろう)と書かれた資料もある[2][3]。
- ^ 劇団員一覧の部分に空白ができ、バランス調整のため自身の変名を記載したところ、公演後に「劇団員として名前があるなら次の稽古に来るように」と呼ばれたという。なお、悟朗は「自分が六を引きずり込んだ」と述べたことがある。
- ^ この日は兄の悟朗の誕生日だった[14]。
- ^ 悟朗もテアトル・エコー所属だった。
- ^ 「ひぐらしのなく頃に粋」(2015年)、「ひぐらしのなく頃に奉」(2018年)[40]
出典
参考文献
- 小川びい『ロマンアルバム アニメ声優ハンドブック こだわり声優事典’97』アニメージュ編集部、徳間書店、1997年3月10日。ISBN 4-19-720012-9。
- 『宇宙船別冊 仮面ライダー怪人大画報』ホビージャパン〈ホビージャパンMOOK 228〉、2007年12月18日。ISBN 978-4-89425-638-5。
外部リンク
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