芝野虎丸 – Wikipedia

芝野 虎丸(しばの とらまる、1999年(平成11年)11月9日 – )は、日本棋院東京本院所属の囲碁棋士。九段。神奈川県相模原市出身[1]。洪道場出身。兄は同じ囲碁棋士の芝野龍之介。

主な実績に第44期名人位、第67期王座位、第26期竜星戦優勝[2] など。入段から史上最短での全棋士参加棋戦優勝[3]、史上最年少での七大タイトル獲得、名人戦リーグ入り[4]、本因坊戦リーグ入り[5] など多数の最短・最年少記録を有する。

相模原市立鶴園小学校、相模原市立谷口中学校卒業[6][7]。一力遼、許家元と「令和三羽烏」の一人[8][9][10]

『ヒカルの碁』のファンだった親の影響により、5、6歳ぐらいのときに囲碁を始める[11][12]

小学校3年生のころ、2歳上の兄で、同じプロ棋士芝野龍之介二段が通い始めた洪清泉棋士が主宰する東京都杉並区の道場について行った。プロになれるとは思わず、ただただ熱中していたら、いつしか兄を追い抜いていたという[13]。おなじ道場出身者に一力遼・平田智也・藤沢里菜などがいる[14]。小学5年生からは平日3日は道場、土日は日本棋院に通っていた[7]

2014年、対象期間の院生研修成績1位により夏季棋士採用を決め、9月1日入段[15]

2015年10月9日付けで勝ち星対象棋戦通算30勝にて二段に昇段。

2016年10月、第41期棋聖戦Cリーグ4勝1敗でBリーグ昇格[16]。10月21日付けで勝ち星対象棋戦通算40勝にて三段に昇段。

2017年7月31日、第26期竜星戦で余正麒七段に中押し勝ちし優勝。入段から2年11か月での全員参加棋戦優勝は井山裕太の3年6か月を更新する史上最短記録[3]、17歳8か月での全員参加棋戦優勝も井山裕太の16歳4か月に次ぐ歴代2位の年少記録[17]。規定により翌8月1日付けで七段に昇段。入段から2年11か月での七段昇段も史上最短記録[3]。第65期王座戦では挑戦者決定戦まで進出したが、8月25日に一力遼七段に敗れた[18]。9月4日、第73期本因坊戦最終予選決勝で許家元四段に勝利しリーグ入り。17歳9か月、入段から3年0か月での本因坊戦リーグ入りはいずれも史上最年少[注 1]・最短記録[5]。10月2日、第42期新人王戦で優勝[19]。11月2日、第43期名人戦最終予選では一力遼七段に勝利し、名人戦でも史上最年少でのリーグ入り(17歳11か月)を果たした[4]

この年、芝野は棋道賞新人賞・最多勝利賞・最多対局賞を受賞。また、66局53勝13敗・16連勝の戦績で連勝賞を受賞した。

2018年4月29日、第4回日中竜星戦で中国ナンバーワン棋士の柯潔九段に中押し勝ちし優勝[20][21]。日中竜星戦での日本代表選手の優勝は初めて。10月6日、第25期阿含・桐山杯決勝で一力遼八段に敗れる。

2019年、第44期名人戦リーグでは6勝2敗で河野臨九段と同率首位となり、その後8月8日に行われたプレーオフで河野九段に黒番半目勝ちし、プロ入りから史上最速の4年11か月、また史上2人目となる10代での名人挑戦を決めた[22]。規定により八段昇段も決めた。挑戦手合七番勝負では張名人に4勝1敗で七大タイトル史上最年少での名人位を獲得(19歳11か月)[1][23][注 2]、さらに10月9日付けで規定により史上最短での九段昇段(5年1か月)[注 3] を決めた。また、第67期王座戦挑戦手合でも、11月29日、井山裕太四冠を相手に3勝1敗で王座を奪取し、2つ目の七大タイトルを獲得[24][25]20歳0か月での七大タイトル二冠も史上最年少記録[25][注 4] である。

2020年6月26日、村川大介十段を3勝1敗で破り、初の十段位を獲得(20歳7か月)した。これは第53期の伊田篤史を6か月上回る歴代最年少記録[26]七大タイトル三冠も史上最年少記録(20歳7か月)[25][27][注 5] となった。

しかし2020年の名人戦では井山裕太に敗れ、返り咲きを許す。2020年と2021年は本因坊戦の挑戦者となるが、2年連続で井山裕太に敗れて奪取はならず、2021年の十段戦では許家元、王座戦では井山裕太に敗れて無冠となった。

エピソード[編集]

将棋棋士の豊島将之と顔がそっくりと言われることがある。その豊島は、2019年の将棋名人戦(毎日新聞社と朝日新聞社の共催)で名人のタイトルを獲得しており、2020年1月1日発売の朝日新聞で、豊島との紙上対談を行っている[28]

2020年6月26日、最年少で名人、王座、十段の3冠を達成するが、インタビューの中で、将棋棋士の藤井聡太七段(当時)に言及し、「年も近い。藤井さんのダブルタイトル(棋聖、王位)挑戦のニュースは励みになった。自分も負けていられない。」と答えていた[29]。そして、同年7月16日、藤井聡太七段が史上最年少で棋聖のタイトルを獲得した際には、ツイッターで「藤井先生、おめでとうございます」と祝意を述べた[30]

2020年、第69回神奈川文化賞・スポーツ賞(神奈川文化賞未来賞)を受賞[31][32]

棋戦決勝進出結果[編集]

棋戦 期・回 対局日 相手 勝敗
優勝 1 竜星戦 第26期 2017年9月25日 余正麒七段 1-0
優勝 2 新人王戦 第42期 2017年10月2日 孫喆五段 2-0
優勝 3 日中竜星戦 第4回 2018年4月29日 柯潔九段 1-0
準優勝 1 阿含・桐山杯 第25期 2018年10月6日 一力遼八段 0-1
奪取 名人戦 44期 2019.10.9 張栩名人
奪取 王座戦 67期 2019.11.29 井山裕太王座
奪取 十段戦 58期 2020.6 村川大介十段
挑戦 本因坊戦 75期 2020.7.9 本因坊文裕
失冠 名人戦 45期 2020.10.14 井山裕太棋聖
防衛 王座戦 68期 2020.12.3 許家元八段
失冠 十段戦 第59期 2021年6月 許家元
挑戦 本因坊戦 76期 2021.7.7 本因坊文裕
優勝 竜星戦 第30期 2021年10月18日 許家元十段 1-0
失冠 王座戦 第69期 2021年12月 井山裕太棋聖
準優勝 テイケイ杯俊英戦 第1期 2022年4月 許家元十段 0-2

主な成績[編集]

(2021年12月9日現在)

獲得タイトル[編集]

タイトル 番勝負 獲得年 登場 獲得期数 連覇
名人 七番勝負
9-11月
19(44期) 2 1期
本因坊 七番勝負
5-7月
2
王座 五番勝負
10-12月
19(67期)–20 3 2期 2連
十段 五番勝負
3-6月
20(58期) 2 1期
国際棋戦
国内棋戦
  • 竜星戦:2期(2017年第26期、2021年第30期)
  • 新人王戦:1期(2017年第42期)
最年少・最短の記録
  • 入段からタイトル獲得までの年数:2年11か月(第26期竜星戦)
  • 最年少・最短本因坊戦リーグ入り(17歳9か月、3年0か月)
  • 最年少名人戦リーグ入り(17歳11か月)
  • 最年少七大タイトル・名人位(19歳11か月)
棋道賞
  • 勝率第1位賞:1回(2015年[33]
  • 最多勝利賞:2回(2017 – 2018年[34][35]
  • 最多対局賞:2回(2017 – 2018年[34][35]
  • 連勝賞:1回(2017年)
  • 新人賞(2017年)
  • 国際賞:1回(2018年[35]
  • タイトル戦の欄の氏名は対戦相手。うち、色付きのマス目は獲得(奪取または防衛)。青色は挑戦者または失冠。黄色はリーグ入り。
  • 棋道賞は、 : 最優秀棋士賞、 優 : 優秀棋士賞、 特別 : 特別賞、
    率 : 勝率一位賞、 勝 : 最多勝利賞、 対 : 最多対局賞、 連 : 連勝賞、
    国際 : 国際賞、 新人 : 新人賞、 哉 : 秀哉賞
  • 賞金&対局料は、年度区切りではなく1月 – 12月の集計。単位は万円。色付きの年は全棋士中1位。
棋聖 十段 本因坊 碁聖 名人 王座 天元 棋戦 棋道賞 賞金対局料 備考
1-3月 3-4月 5-7月 6-8月 9-11月 10-12月 10-12月
2014 初段
2015 二段
2016 予選
敗退
最終予選
敗退
本戦
一回戦敗退
最終予選
敗退
挑決
進出
本戦
ベスト16
三段
2017 Cリーグ
1敗昇格
予選B
敗退
最終予選
敗退
予選A
敗退
予選A
敗退
本戦
ベスト16
予選A
敗退
勝 対
連 新人
1891(9位) 七段
2018 B1リーグ
4位
予選B
敗退
初リーグ
3位
本戦
一回戦敗退
初リーグ
2位
本戦
ベスト4
本戦
ベスト8
竜星
阿含桐山
勝 対
国際
2227(5位)
2019 B2リーグ
1位昇格
予選A
敗退
リーグ
2位
本戦
一回戦敗退
張栩
xoooo
井山裕太
oxoo
本戦
一回戦敗退
優 率 対 6766(2位) 八段
九段
2020 Aリーグ
5位陥落
村川大介
oxoo
井山裕太
xxxox
本戦
ベスト16
井山裕太
xxoxx
許家元
ooxo
予選A
敗退
4741(3位)
2021 B1リーグ
1位昇格
許家元
xoxox
井山裕太
xoooxxx
本戦
ベスト16
リーグ
6位
井山裕太
xoxox
挑決
進出
竜星 4114(3位)
2022 Aリーグ
1位昇格
本戦
ベスト4
リーグ 本戦
ベスト16
リーグ 本戦 本戦
一回戦敗退

注釈[編集]

  1. ^ リーグ入りの最短記録は一力遼の第39期棋聖戦リーグ入り(16歳9か月)。
  2. ^ 従来の記録は井山裕太の20歳4か月(名人位)。
  3. ^ 従来の記録は井山の7年6か月。
  4. ^ 従来の記録は井山の21歳11か月。
  5. ^ 従来の記録は井山の23歳1か月。

出典[編集]

外部リンク[編集]