タッピング奏法 – Wikipedia
タッピング奏法(タッピングそうほう)とは、ギター、特にエレクトリックギターや、それに類する弦楽器において、指板上の弦を指で叩き付けて押弦したりそのまま横に弾いたりして音を出す技法。単にタッピング (Tapping) とも言う。
右利き用ギターを前提として述べると、ギターには、指板上で左手で弦を押さえるフィンガリングをおこないながら、右手で弦を弾くピッキング(ピック奏法、フィンガー・ピッキング)をおこなって音を出すのが通常の演奏法とされる。
この基本的な弾き方に対して、フィンガリングをおこなう指で弦を指板に叩き付けるように勢い良く押下するハンマリング・オンと、押弦している指を弦に引っ掻けるようにして離脱させて音を発生させるプリング・オフという2つの奏法がある。基本的にこの2つを間断なく繰り返して2音を反復することをトリル奏法と呼ぶ。そしてこのトリル奏法を拡張したのがタッピング奏法である。
1965年の時点で、イタリア人のヴィットリオ・カマルデーゼは、タッピング奏法をイタリアのテレビで披露していた[1]。
- 片手タッピング
- 2音間に留まらず、3音以上の旋律をハンマリングとプリングで行う奏法。
- 両手タッピング
- 両手タッピングは上述のトリル奏法を拡張したもので、文字通り両手でハンマリングとプリングを行う奏法。特にスタンリー・ジョーダンによるこの奏法は、タッチスタイルと呼ばれている[2][3]。
両手タッピングという奏法自体は古くから存在し、しかしこの奏法が一般に受け入れられるまでは20年以上の時間を要した。
タッピングの歴史は古く、戦前には早くもジャズ・ギタリストのロイ・スメックがウクレレの演奏でタッピング奏法を披露していた[4]。1965年にはヴィットリオ・カマルデーゼが、イタリアのテレビ番組でタッピング奏法を披露した[1]。
ロックの分野では、1960年代にはキャンド・ヒートのハーヴィ・マンデル[5]がタッピング奏法をプレイしているのを見たと、当時ディープ・パープルのギタリストだったリッチー・ブラックモアが、後年のインタビューで語っている[6]。
1978年、 ヴァン・ヘイレンのギタリストであるエディ・ヴァン・ヘイレンがデビューアルバム『炎の導火線』収録の「暗闇の爆撃」で披露したタッピング奏法がライトハンド奏法としてギター雑誌等で紹介され、タッピング奏法をライトハンド奏法と呼ぶようになった。
エレクトリックギターに於いてはライトゲージと呼ばれる細めの弦が好んで用いられる。ジミ・ヘンドリックス、エリック・クラプトン登場以来ロック・ギターに於いてはチョーキングを多用するのが当たり前となったことで、よりチョーキングのしやすい細い弦が好まれるようになっていたと見られる。
フォークギターやクラシックギターは太い弦を用いるのが普通であり、特にフォークギターは張力も強いため指板上で指を叩き付ける程度の力では大きな音を出しにくい。エレキ・ギターは、強く歪ませると小さな音でも拾われやすいためピッキングとハンマリング/プリングの音量差が出にくくなり、奏法として使いやすくなる。
両手の親指を除く全ての指を用いて鍵盤楽器のようにタッピングを行う両手タッピングについては、奏法自体は1950年代に前述したグレッチの技術者であったジミー・ウェブスター (Jimmie Webster) によって既に完成していた。それをスタンリー・ジョーダンなどがギター奏法に置き換えたものである。
20世紀半ば以降には、バンカー・タッチ・ギターやスティックのように、もっぱらタッピング奏法に特化した楽器も開発された。
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