メビウス変換 – Wikipedia

幾何学における平面上のメビウス変換(メビウスへんかん、英: Möbius transformation)は、

f(z)=az+bcz+d{displaystyle f(z)={frac {az+b}{cz+d}}}

の形で表される複素一変数 z に関する有理函数である。ここで、係数 a, b, c, dadbc ≠ 0 を満足する複素定数である。

幾何学的にはメビウス変換は、複素数平面を実二次元球面へ立体射影したものの上で回転と平行移動により各点の位置と向きを変更したものを再度平面に立体射影することによって得られる[1]。これらの変換は

  • 「角度」を保ち(「等角性」)、
  • 任意の「直線または円」を「直線または円」に写し(「円円対応」)、
  • 円に対して対称な二点は、メビウス変換の像の円に関しても対称な二点に写る(「対称原理」)。

メビウス変換は複素射影直線上の射影変換であり、その全体はメビウス群と呼ばれる射影一般線型群PGL(2, C) を成す。メビウス群およびその部分群は数学および物理学においてさまざまな応用を持つ。

メビウス変換の名はアウグスト・フェルディナント・メビウスの業績に因むものだが、ほかにも射影変換や一次分数変換(あるいは単に一次変換)などと呼ばれることもある。

メビウス変換は通例、ガウス平面にただひとつの無限遠点を付け加えて得られる拡張複素平面 ^C = C ∪ {∞} 上で定義されるものとして扱われる。拡張複素平面はリーマン球面と呼ばれる球面とみることもできるし、複素射影直線 CP1 とみることもできる。どんなメビウス変換も、リーマン球面からそれ自身への全単射な共形変換になり、また逆にそのような変換は実際にメビウス変換とならねばならない。

メビウス変換全体の成す集合は写像の合成を積として、メビウス群と呼ばれる群を成す。メビウス群は(リーマン球面をリーマン面とみなしたときの)リーマン球面上の自己同型群であり、しばしば Aut(^C) と記される。メビウス群は双曲的三次元空間上の向きを保つ等距変換全体の成す群に同型で、それゆえ双曲的三次元多様体の研究において重要な役割を演じる。

物理学においては、メビウス群がリーマン球面に作用するのと同じやり方で、ローレンツ群の単位成分が天球に作用する(実はこれらふたつの群は同型である)。相対論的速度にまで加速した観測者には、地球付近での見え方から無限小メビウス変換に従って連続的に変形された星座が見えているはずである。このような考察はしばしばツイスター理論の出発点として行われる。

メビウス群のいくつかの部分群は(ガウス平面や双曲平面などの)単連結リーマン面上の自己同型群を成す。そのような事情から、メビウス変換はリーマン面の理論においても重要な働きをする。どんなリーマン面の基本群もメビウス群の離散部分群となるのである(フックス群、クライン群など参照)。メビウス群の特に重要な離散部分群としてモジュラー群があり、それはフラクタルやモジュラー形式、楕円曲線あるいはペル方程式などといった多くの理論において中心的な役割を果たしている。

もっと一般に n > 2 なる次元を持つ空間においても、メビウス変換をn-次元超球面からそれ自身への向きを保つ全単射共形変換として定義することができる(そのような変換はその領域における共形変換のもっとも一般な形のものである)。共形写像に関するリウヴィルの定理英語版に従えば、メビウス変換は平行移動、相似変換、直交変換、反転の合成として表すことができる。

メビウス変換の一般形は、a, b, c, dadbc ≠ 0 を満たす任意の複素数として

f(z)=az+bcz+d{displaystyle f(z)={frac {az+b}{cz+d}}}

で与えられる(ad = bc ならば、上記の有理函数は定数であって、メビウス変換とはみなされない)。c ≠ 0 の場合、これは

f(−dc)=∞,f(∞)=ac{displaystyle f!left({-d over c}right)=infty ,quad f(infty )={a over c}}

と定義することにより、リーマン球面全体まで拡張される。また、c = 0 ならば

f(∞)=∞{displaystyle f(infty )=infty }

と定義すれば、f(z) はリーマン球面からそれ自身への全単射な正則函数となる。

メビウス変換全体の成す集合は写像の合成に関して群を成す。上記の定義からメビウス函数の合成も反転も正則となり、この群には複素多様体の構造が与えられる。すなわち、メビウス群は複素リー群である。メビウス群は通例、リーマン球面の自己同型群と看做して

Aut(C^){displaystyle mathrm {Aut} ({hat {mathbb {C} }})}

と書かれる。

基本的な変換への分解とかんたんな性質[編集]

メビウス変換はもっと単純な変換の列に等価である。実際、

  • d/c による平行移動
    f1(z)=z+dc,{displaystyle f_{1}(z)=z+{d over c},}

  • 反転変換および実軸に関する鏡映変換
    f2(z)=1z,{displaystyle f_{2}(z)={1 over z},}

  • 拡縮変換英語版および回転変換
    f3(z)=(−(ad−bc)c2)⋅z,{displaystyle f_{3}(z)=left({-(ad-bc) over c^{2}}right)cdot z,}

  • a/c による平行移動
    f4(z)=z+ac{displaystyle f_{4}(z)=z+{a over c}}

とおけば、これらの合成

(f4∘f3∘f2∘f1)(z)=f(z)=az+bcz+d{displaystyle (f_{4}circ f_{3}circ f_{2}circ f_{1})(z)=f(z)={frac {az+b}{cz+d}}}

はメビウス変換を与える。このようにメビウス変換を分解することで、メビウス変換のもつ多くの性質を浮き彫りにすることができる。メビウス逆変換の存在とその明示的な表示式は、この分解における単純な変換の逆変換を考えば、それらの合成を行うことによって直ちに導かれる。要するに、変換 g1, g2, g3, g4 を、各 gi が上記 fi の逆変換とすると、それらの合成

(g1∘g2∘g3∘g4)(z)=f−1(z)=dz−b−cz+a{displaystyle (g_{1}circ g_{2}circ g_{3}circ g_{4})(z)=f^{-1}(z)={frac {dz-b}{-cz+a}}}

が、メビウス逆変換の式を与えるのである。

角の保存と広義の円[編集]

上述の分解から、円に関する反転 (circle inversion) についての非自明な性質がすべてメビウス変換にも遺伝していることが確認できる。たとえば、メビウス変換が等角写像となることは、反転以外の変換は拡大縮小と等距変換(平行移動、鏡映、回転)で明らかに角を保つので、円に関する反転が角を保つことの証明に帰着される。あるいはさらに、円に関する反転が広義の円を広義の円に写すことから、メビウス変換も同じ性質を持つ。ここで「広義の円」とは、直線については無限遠点を通る半径無限大の円と考えて円と直線をひとまとめに扱った概念である。メビウス変換によって狭義の円が直線に、直線が狭義の円に移ることもあり、必ずしも狭義の円が狭義の円に、直線が直線に写されるものとは限らないことに留意すべきである。また、円が円に移る場合においても、一方の円の中心が他方の円の中心に移るとは限らないことにも注意。

複比の保存[編集]

複比 (Cross-ratio) はメビウス変換で不変である。すなわち、メビウス変換が相異なる4つの点 z1, z2, z3, z4 を相異なる4つの点 w1, w2, w3, w4 にそれぞれ移すならば

(z1−z3)(z2−z4)(z2−z3)(z1−z4)=(w1−w3)(w2−w4)(w2−w3)(w1−w4){displaystyle {frac {(z_{1}-z_{3})(z_{2}-z_{4})}{(z_{2}-z_{3})(z_{1}-z_{4})}}={frac {(w_{1}-w_{3})(w_{2}-w_{4})}{(w_{2}-w_{3})(w_{1}-w_{4})}}}

が成立する。z1, z2, z3, z4 のうちの一点が無限遠点ならば、複比は自然な極限をとったものとして定義する。たとえば z1, z2, z3, ∞ の複比は

(z1−z3)(z2−z3){displaystyle {frac {(z_{1}-z_{3})}{(z_{2}-z_{3})}}}

である。

射影行列表現[編集]

任意の 2 × 2 複素正則行列

H=(abcd){displaystyle {mathfrak {H}}={begin{pmatrix}a&bc&dend{pmatrix}}}

に対して、メビウス変換

f(z)=az+bcz+d{displaystyle f(z)={frac {az+b}{cz+d}}}

を対応させる。adbc ≠ 0 なる条件は、先の行列の行列式が 0 でない(つまり正則である)という条件と等価である。

ふたつの行列の積が対応するふたつのメビウス変換の合成に対応することは、直接計算で確かめることができる。言葉を変えれば、一般線型群 GL(2, C) からメビウス群への写像

π:GL(2,C)→Aut(C^);H↦f{displaystyle pi colon {mathit {GL}}(2,mathbb {C} )to {mbox{Aut}}({hat {mathbb {C} }});quad {mathfrak {H}}mapsto f}

は、群準同型を定めている。ここで注意すべきは

H{displaystyle {mathfrak {H}}}

を複素数 λ-倍して得られる行列はどれも同じメビウス変換に対応しているということであり、メビウス変換は対応する行列をそのようなスカラー倍の違いを除いて一意に決定するということである。すなわち、写像 π の核は単位行列 I のスカラー倍全体から成り、群の第一準同型定理から剰余群 GL(2, C)/(CI) がメビウス群に同型となることがわかる。さてこの剰余群は、一般射影線型群として知られ、通例 PGL(2, C) で表される。ここに、群の同型

Aut(C^)≅PGL(2,C){displaystyle {mbox{Aut}}({hat {mathbb {C} }})cong {mathit {PGL}}(2,mathbb {C} )}

が得られたことになる。同様にして任意の体 K 上で、射影線型群 PGL(2, K) と射影分数変換全体の成す群、あるいは射影直線を保つ射影線型自己同型全体の成す群とが同一視できる。これは、特に K が有限体のとき、代数学的に意味のある事実である。一方、複素数体の場合は幾何学的に非常に重要である。

PGL(2,C) による複素射影直線 CP1 への自然な作用は、射影直線 CP1 とリーマン球面とを

[z1:z2]↔z1/z2{displaystyle [z_{1}:z_{2}]leftrightarrow z_{1}/z_{2}}

なる対応で同一視することにより、メビウス群のリーマン球面への作用にちょうど一致する。ここで、 [z1 : z2] は CP1 上の斉次座標であり、点 [1 : 0] がリーマン球面上の無限遠点 ∞ に対応する。

斉次座標を用いれば無限遠点 ∞ についての場合を分けて扱わずに済むので、メビウス変換に関する具体的な計算の多くが簡素化される。

上で、考える行列

H{displaystyle {mathfrak {H}}}

を行列式が 1 のものに制限すれば、写像

π{displaystyle pi }

を制限して特殊線型群 SL(2,C) からメビウス群への全射が得られる。この状況下での核は単位行列の ±1-倍のみから成り、したがって剰余群 SL(2, C)/{±I}(これを PSL(2, C) と書く)とメビウス群との同型

Aut(C^)≅PSL(2,C){displaystyle {mbox{Aut}}({hat {mathbb {C} }})cong {mathit {PSL}}(2,mathbb {C} )}

が得られる。このことから、メビウス群が 3-次元複素リー群(あるいは 6-次元実リー群)であることがわかる。これは半単純非コンパクトなリー群である。

任意に与えられたメビウス変換に対して、それを表現する行列式 1 の行列はちょうどふたつ存在する。つまり、SL(2, C) は PSL(2,C) の二重被覆である。また、SL(2, C) は単連結ゆえ、これはメビウス群の普遍被覆でもある。よって、メビウス群の基本群は Z2 であることがわかる。

メビウス変換は三点で決まる[編集]

リーマン球面上の相異なるみっつの点 z1, z2, z3 とさらに別の相異なるみっつの点 w1, w2, w3 が与えられたとき、zi をそれぞれ wi (i = 1, 2, 3) に写すメビウス変換 f(z) はただひとつ存在する(別な言いかたをすれば、メビウス群のリーマン球面への作用は鋭 3-重推移的である)。このように与えられた点集合からメビウス変換 f(z) を決定する方法がいくつか存在する。

初期値を 0, 1, ∞ に移す変換を用いる方法[編集]

行列

H1=(z2−z3−z1(z2−z3)z2−z1−z3(z2−z1)){displaystyle {mathfrak {H}}_{1}={begin{pmatrix}z_{2}-z_{3}&-z_{1}(z_{2}-z_{3})z_{2}-z_{1}&-z_{3}(z_{2}-z_{1})end{pmatrix}}}

に対応するメビウス変換

f1(z)=(z−z1)(z2−z3)(z−z3)(z2−z1){displaystyle f_{1}(z)={frac {(z-z_{1})(z_{2}-z_{3})}{(z-z_{3})(z_{2}-z_{1})}}}

z1, z2, z3 をそれぞれ 0, 1, ∞ にそれぞれ写すことを確かめることは難しくない(zi の何れかが ∞ であるときは、それが ziなら上の式で全部の成分を先に zi で割っておいて zi → ∞ なる極限をとったものを

H1{displaystyle {mathfrak {H}}_{1}}

として考える)。

同様に行列

H2{displaystyle {mathfrak {H}}_{2}}

w1, w2, w3 をそれぞれ 0, 1, ∞ に写すようにとり、行列

H=H2−1H1{displaystyle {mathfrak {H}}={mathfrak {H}}_{2}^{-1}{mathfrak {H}}_{1}}

を考えれば、z1, z2, z3 をそれぞれ w1, w2, w3 に写すメビウス変換が得られる。

明示的な行列式公式を利用する方法[編集]

方程式

w=az+bcz+d{displaystyle w={frac {az+b}{cz+d}}}

zw-平面における双曲線の標準形

cwz−az+dw−b=0{displaystyle cwz-az+dw-b=0}

と等価であるから、三つ組 (z1, z2, z3) を別の三つ組 (w1, w2, w3) へ写すメビウス変換

H(z){displaystyle {mathfrak {H}}(z)}

を構成する問題は、(zi, wi) (i = 1, 2, 3) を通る双曲線の係数 a, b, c, d を求める問題に等価である。このとき、明示的な方程式は行列式

det(zwzw1z1w1z1w11z2w2z2w21z3w3z3w31){displaystyle det !{begin{pmatrix}zw&z&w&1z_{1}w_{1}&z_{1}&w_{1}&1z_{2}w_{2}&z_{2}&w_{2}&1z_{3}w_{3}&z_{3}&w_{3}&1end{pmatrix}}}

を評価することによって求められる。この式を第 1-行の各成分を中心として余因子展開することにより得られる

a=det(z1w1w11z2w2w21z3w3w31){displaystyle a=det !{begin{pmatrix}z_{1}w_{1}&w_{1}&1z_{2}w_{2}&w_{2}&1z_{3}w_{3}&w_{3}&1end{pmatrix}}}

b=det(z1w1z1w1z2w2z2w2z3w3z3w3){displaystyle b=det !{begin{pmatrix}z_{1}w_{1}&z_{1}&w_{1}z_{2}w_{2}&z_{2}&w_{2}z_{3}w_{3}&z_{3}&w_{3}end{pmatrix}}}

c=det(z1w11z2w21z3w31){displaystyle c=det !{begin{pmatrix}z_{1}&w_{1}&1z_{2}&w_{2}&1z_{3}&w_{3}&1end{pmatrix}}}

d=det(z1w1z11z2w2z21z3w3z31){displaystyle d=det !{begin{pmatrix}z_{1}w_{1}&z_{1}&1z_{2}w_{2}&z_{2}&1z_{3}w_{3}&z_{3}&1end{pmatrix}}}

を成分とする表現行列

H=(abcd){displaystyle {mathfrak {H}}=left(scriptstyle {begin{matrix}a&bc&dend{matrix}}right)}

が得られるが、このようにして得られた

H{displaystyle {mathfrak {H}}}

の行列式は

(z1−z2)(z1−z3)(z2−z3)(w1−w2)(w1−w3)(w2−w3){displaystyle (z_{1}-z_{2})(z_{1}-z_{3})(z_{2}-z_{3})(w_{1}-w_{2})(w_{1}-w_{3})(w_{2}-w_{3})}

に等しく、これはまた zi がどのふたつも一致せず、かつ wi がどのふたつも一致しないならば 0 にはならないから、これによってメビウス変換がきちんと定まる。点 zi または wi の何れかが無限遠点 ∞ であるときは、先によっつの行列式をその変数で割ってからそれを ∞ に飛ばした極限を考えるものとする。

明示公式[編集]

明示公式は以下のようになる。

f(z)=w1(w3−w2)(z3−z1)(z−z2)−w2(w3−w1)(z3−z2)(z−z1)(w3−w2)(z3−z1)(z−z2)−(w3−w1)(z3−z2)(z−z1){displaystyle f(z)={frac {w_{1}(w_{3}-w_{2})(z_{3}-z_{1})(z-z_{2})-w_{2}(w_{3}-w_{1})(z_{3}-z_{2})(z-z_{1})}{(w_{3}-w_{2})(z_{3}-z_{1})(z-z_{2})-(w_{3}-w_{1})(z_{3}-z_{2})(z-z_{1})}}}

恒等変換でないメビウス変換は一般に、抛物型楕円型双曲型斜航型の4つのタイプに分類される(ただし、双曲型は斜航型の部分クラスである)。この分類は代数的な意味と幾何学的な意味の両方を備えている。幾何学的には、異なるタイプの変換はガウス平面上の変換として後で図示するような図形的な意味で異なる性質を示す。

これらのタイプは、トレース

trH{displaystyle {text{tr}},{mathfrak {H}}}

を見ることで判別することができる。トレースが共軛変換で不変、つまり

trGHG−1=trH{displaystyle {text{tr}},{mathfrak {GHG}}^{-1}={text{tr}},{mathfrak {H}}}

が成立すること、それゆえに同じ共軛類に属するどの元も同じトレースの値を持つことに注意する。如何なるメビウス変換も、その表現行列

H{displaystyle {mathfrak {H}}}

が(適当に成分を定数倍することにより)行列式の値として 1 を持つようにすることができる。(何れも恒等変換でない)ふたつのメビウス変換

H,H′{displaystyle {mathfrak {H}},{mathfrak {H}}’}

detH=detH′=1{displaystyle det {mathfrak {H}}=det {mathfrak {H}}’=1}

なるものが互いに共軛となるための必要十分条件は

(trH)2=(trH′)2{displaystyle ({text{tr}},{mathfrak {H}})^{2}=({text{tr}},{mathfrak {H}}’)^{2}}

が満たされることである。

以下の議論では、常に表現行列

H{displaystyle {mathfrak {H}}}

detH=1{displaystyle det {mathfrak {H}}=1}

に正規化されているものと仮定する。

抛物型変換[編集]

行列式 1 の行列

H{displaystyle {mathfrak {H}}}

で定義される、恒等変換ではないメビウス変換が抛物型 (parabolic) であるとは、

(trH)2=4{displaystyle ({text{tr}},{mathfrak {H}})^{2}=4}

であるときにいう(したがってトレースは ±2 のいずれかということになるが、与えられた変換に対して

H{displaystyle {mathfrak {H}}}

は符号の違いを除いて一意だから、何れか一方のみに決まる)。事実として、一方の選択肢では

H{displaystyle {mathfrak {H}}}

は恒等行列と同じ特性多項式 X2 − 2X + 1 を持ち、したがって冪単となる。メビウス変換が抛物型となるのは、それが拡張複素平面 C^ = C ∪ {∞} に唯一つの不動点を持つときであり、かつそのときに限る。そしてそのようなことが起きるためには、メビウス変換がガウス平面上の平行移動を定める行列