ベルトルト・ラウファー – Wikipedia

[[File:|thumb]]
ベルトルト・ラウファー(Berthold Laufer、1874年10月11日 – 1934年9月13日)は、ドイツ生まれのアメリカ合衆国の人類学者、東洋学者、博物館員。

ラウファーはケルンの中流ユダヤ人家庭に生まれた[1]。1893年にベルリン大学に入学してオットー・フランケに仏教学を、ヴィルヘルム・グルーベに中国語、ゲオルク・フォン・デア・ガーベレンツにマレー語、ゲオルク・フートドイツ語版にチベット語、ルドルフ・ランゲに日本語を学んだ[2]。1895年、地元の新聞に日本の民話の翻訳を連載した[3][4]。同年ライプツィヒ大学に移ってアウグスト・コンラーディらに学び、チベット語文献の批判的分析によって1897年に博士の学位を取得した[5]

翌1898年、同じドイツユダヤ系のフランツ・ボアズに招かれてアメリカ合衆国に移り、翌年にかけてジェサップ探検隊英語版によるサハリンとアムール川河口一帯のフィールドワークを率い、アイヌ、ニヴフ、エヴェンキ、ナナイなどの人々の調査を行った[6]

1901年から1904年にかけてアメリカ自然史博物館に雇われ、ジェイコブ・シフをスポンサーとする中国探検を率いた。探検終了後は同博物館の民族学輔佐の職を得た。翌1905年にはコロンビア大学の人類学講師に就任したが(1906年からは東アジア諸言語の講師を兼任)、1907年には大学を去ってシカゴのフィールド自然史博物館のキュレーターになった(1907年から東アジア部門のassistant curator, 1911年にアジア民族学部門のassociate curator, 1915年に人類学部門のcurator)。

1907年から1911年まで、ラウファーは博物館のためにチベットを探検しようとしたが、チベット入りには失敗した。かわりに中国各地で古物約8000点を収集して博物館に納めた[7]。中華民国時代の1923年に短期間中国を訪れて約1800点の品を得ているが、その多くは紫禁城から流出したものであったという[8]。1931年にシカゴ大学の名誉法学博士の学位を贈られた[2]

1934年9月13日、住んでいたホテルの8階の非常出口から落ちて死んだ。癌を苦にしての自殺とされる[9]。没後、その蔵書はフィールド博物館に寄贈された[10]

研究内容・業績[編集]

とくに中国とその周辺のさまざまな文物に関する研究が多い。当時のアメリカには中国研究者といえる人物がほとんどいない中、ラウファーの研究は異彩をはなっていた。

主要な著書[編集]

ラウファーには450以上の著作がある[1]。有名な論文には漢代の陶俑を考察した『Chinese Clay Figures』、漢籍をもとに中国とイランの関係を考察した『Sino-Iranica』などがある。

ラウファーの手紙などは1970年代に編集出版されている。

  • Hartmut Walravens, ed (1976). Kleinere Schriften von Berthold Laufer. 1. Wiesbaden: Franz Steiner (第2巻は1979年、第3巻は1985年)

以下は日本語訳。

  • 『サイと一角獣』武田雅哉訳、博品社、1992年。

    ISBN 4938706032。(Chinese Clay Figures (1914) の抄訳)

  • 『キリン伝来考』福屋正修訳、博品社、1992年。ISBN 4938706008。The Giraffe in History and Art (1928) の翻訳)
  • 『ジャガイモ伝播考』C.M.ウィルバー、福屋正修訳、博品社、1994年。ISBN 4938706164。The American Plant Migration Part I: Potato (1938) の抄訳)
  • 『飛行の古代史』杉本剛訳、博品社、1994年。ISBN 4938706148。The Prehistory of Aviation (1928) の翻訳)
  • 『鵜飼 : 中国と日本』小林清市訳、博品社、1996年。ISBN 4938706296。The Domestication of the Cormorant in China and Japan (1931) の翻訳)
  • 『スキタイの子羊』尾形希和子; 武田雅哉訳、博品社、1996年。ISBN 4938706261。(「ピンナとシリアの子羊」の題で The Story of the Pinna and the Syrian Lamb (1915) の翻訳を含む)
  • 『古代イランの文明史への中国の貢献 : とくに栽培植物と産物の由来について』杉穎夫訳、新風舎、2007年。ISBN 9784289017133。(Sino-Iranica (1919) の翻訳)
  • 『シノイラニカ : 古代アジア・ペルシャに由来する植物と文化の博物史』松下富子訳、ココデ出版/本の風景社、2008年。ISBN 9784903703183。(上に同じ)
  1. ^ a b Bronson (2003) p.117
  2. ^ a b Latourette (1936) p.44
  3. ^ 外部リンクの Sinological Profiles による
  4. ^ Latourette (1936) p.57
  5. ^ Latourette (1936) p.43
  6. ^ Bronson (2003) p.118
  7. ^ Bronson (2003) pp.119-121
  8. ^ Bronson (2003) p.122
  9. ^ Bronson (2003) pp.117,126
  10. ^ Latourette (1936) p.48

参考文献[編集]

外部リンク[編集]