内海賢二 – Wikipedia

内海 賢二(うつみ けんじ、1937年8月26日[4][5] – 2013年6月13日[6])は、日本の声優、俳優、ナレーター。賢プロダクション会長。キャリア初期は、本名の内海 健司や内海 賢治(読み同じ)の名前で活動。

張りや存在感のある低音を生かした声で、多くの作品に出演し活躍した[6][7]

代表作には、『北斗の拳』のラオウや『魔法使いサリー』のサリーのパパ、『Dr.スランプ アラレちゃん』の則巻千兵衛などがある[6][8][9]

福岡県北九州市出身[3]。5人兄弟の末っ子として生まれるが、幼い頃に両親を亡くし兄弟とは別れて育つ。中学・高校には仕出し弁当店で住み込みで働き、夜間で通った高校では演劇部に所属。

高校3年生時の1955年、NHK小倉放送局の専属劇団に応募して合格。ラジオドラマや朗読の仕事を始めるようになる。やがて、福岡県に開局したばかりの九州朝日放送に移籍しKBCラジオの専属声優になった[8]

だが、地方での仕事に限界を感じたことから、広告代理店の電通でテレビ映画制作の仕事をしていた友人を頼り1958年に上京。その友人の紹介で、子供向けドラマ『熱血カクタス』(柴田秀勝主演)にて端役をもらい、続けて『海賊バイキング』ではナレーターを担当。中央でのデビューを果たした。当初は新宿ゴールデン街でアルバイトをしながら舞台俳優として里吉しげみ主宰の劇団未来劇場の公演などに出演していたが、自然と声優業が増えたという[10]

アニメデビュー作は、1963年に放送された『狼少年ケン』での片目のジャック役[11]。東映動画初のテレビアニメであり、以降はアニメ声優でも草分け的存在になる。また、本人曰く「マルチな役者」を目指していたことで[11]、吹き替え出演やナレーターとしても活動し、以前からの舞台俳優としての活動のほか、1960年代から1970年代にかけては多くのテレビドラマにも顔出し出演している。

かつては、九州NHK放送劇団、未来劇場、東京アーティストプロダクション、楡プロダクションに在籍した[4]

1973年、『宇宙エース』や『マッハGoGoGo』での共演をきっかけに知り合った声優の野村道子と結婚。1984年には賢プロダクションを設立。自身のマネージメントとともに、野村の協力も得て後進の育成にもあたるようになる。これらの幅広い活動から、1980年代には長者番付に名を連ねたこともあった[12]

その後も第一線で活動。長年に渡り多くのジャンルで貢献したことから、2009年に第三回声優アワード功労賞を受賞[13]。同年放送のアニメ『けんぷファー』と連動したラジオ番組『ラジオ けんぷファー 賢二と愛のわくわく臓物ランド』では初のアニラジレギュラーパーソナリティを務め、共に担当する中島愛との年齢差も含め話題となった[注 1][14]

晩年は過去に患った膀胱がんが再発し、闘病しながら活動を継続[15]。2013年6月13日午後3時1分、がん性腹膜炎のため東京都新宿区の病院で死去[6]。75歳没。葬儀と告別式は、6月20日に青山葬儀所で営まれた[16]。生前最後の出演は、同年7月に放送された『銀の匙 Silver Spoon』の轟先生役となった[17]

2014年、第8回声優アワード「特別功労賞」を受賞[18]

特色[編集]

張りのある独特な低い声が特徴で、羽佐間道夫は「のどちんこをぶるぶる震わせるような声」と表現している[19]

その声から悪役を演じることが多く、内海自身も「人生において吹き替えた役の3分の2は、“悪”ですよ(笑)」と冗談交じりに語っている[10]。一方、それとは正反対なコミカルな演技を活かす役を演じることも多かった[9]。吹き替えでは、黒人俳優を担当することが多い[10]

人物像[編集]

後輩の神谷明は内海について、「明るい」「元気」「豪快」「格好良い」「気っぷが良い」「情熱家」「器がでかい」という言葉がぴったりだと述べている。一方で、「シャイ」「繊細」「細やかな心遣い」という、普段のイメージとは若干異なる部分もあったという[20]

現場では明るくムードメーカーな存在だったといい、戸田恵子は「あのお声であのお顔立ちで恐い人なのかな?と思いきや、その真逆!」と語っている[21]。また、その性格から多くの仲間や後輩に慕われていた。

派手でオシャレが好きな性格でも知られ、戸田恵子とはよくファッション談義もしたという[21]

仕事に対する姿勢[編集]

一つ一つの仕事には全力投球だったといい、非常に真摯であった。

声優として幸せなことに、媒体を問わず色んな役柄が出来ることと答えている。演技については「ハートが大事!」と語っていた[11]。吹き替えでは、元の役者の声や芝居に似ているかより、その役の中身を考え演じている[10]

アニメの難しさに声によって画が生きるか死ぬかが決まること、吹き替えの難しさに俳優の演技と吹き替えの声のお互いの相乗効果で作っていくことを挙げている。また、共演者との演技のバランスにも留意していたという[10]

神谷明によると、『北斗の拳』でのケンシロウとラオウの最終決戦の収録の際は、普段と違い「そばにも寄れないほどの厳しさでオーラを放っていた」とのことで、その時はスタジオ中が緊張感に包まれていたという[20]

過去は振り返らないようにしており、常に新しいことへ挑戦する姿勢だった[22]。インタビューで「ベテラン・若手から吸収したいものは?」と聞かれた際は「良いセンス、芝居心、年に関係無く」と答えている[11]

生前は生涯現役の意向を持っていた[11]。実際に、救急搬送された死去の5日前にも収録のためNHKに出かけていたという[15]

エピソード[編集]

八奈見乗児は、九州時代からの先輩であった。上京した内海は住むところがなく、新婚だった八奈見のアパートに転がり込んだという。また、『熱血カクタス』の主演だった柴田秀勝は、自身の経営するバーの2階を内海の下宿に提供し、その上アルバイトのバーテンとして内海を雇った。内海は声優として駆け出しの頃に面倒を看たこの2人の先輩への感謝を忘れなかったという。

『新造人間キャシャーン』のブライキング・ボス役は、他のキャストが作品別で入れ替わる中、一貫して内海が担当していた。

今まで演じた中で一番好きな役に、『パピヨン』でのスティーヴ・マックィーンの吹き替えを挙げている[11]。マックィーンの吹き替えは、宮部昭夫と分け合う形で担当した持ち役の一つで「演じてきた中で唯一の二枚目であり、自身のアテレコ史の頂点である」と述べている[23]。またそれが縁で『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ』ではスティーヴ・マックィーンがモデルの役を1分に満たない出演ながらも受諾している。

かつて野沢雅子らと共に、アニメがビデオ・DVD化された際の使用料の支払いを求める訴訟を起こし、勝訴している。

もし年齢が20歳若ければ、ジョニー・デップの吹き替えを担当してみたいと語ったことがある[10]

妻の野村道子とは多く夫婦共演している。また、1984年に賢プロダクションを設立した際、経営面に不慣れな内海は次第に過労のため、誰の目にも明らかなほどに憔悴。この時、野村は役者仲間の助言もあり移籍し、声優業の多くはそれまでの持ち役に絞り経営面で尽力するなど、公私共に内海を支える片腕となった。

息子は、所属する賢プロダクション社長の内海賢太郎[24]。アニメ『ブラック・ジャック21』の第1話では、自身が演じた友引警部の息子の名前を「賢太郎」と呼んでいる[注 2]

少年隊の錦織一清とは、ミュージカル『ゴールデンボーイ』で共演したことがきっかけとなり交遊があった。2010年12月4日『中野サンプラザ座長公演 水樹奈々大いに唄う 弐』ではナレーションを担当した。

代役・後任[編集]

内海の死後、代役を務めたり、持ち役・ナレーションを引き継いだりした人物は以下の通り。

太字はメインキャラクター。

テレビアニメ[編集]

1963年
1965年
1966年
1967年
1968年
1969年
1971年
1973年
1975年
1976年
1977年
1978年
1979年
1980年
1981年
1982年
1983年
1984年
1985年
1986年
1987年
1988年
1989年
1990年
1991年
1992年
1993年
1994年
1995年
1997年
1998年
1999年
2000年
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
2006年
2007年
2008年
2009年
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年

劇場アニメ[編集]

1966年
1967年
  • サイボーグ009 怪獣戦争(008 / ピュンマ
1969年
1970年
1971年
1974年
1975年
1979年
1980年
  • がんばれ!! タブチくん!! 第2弾 激闘ペナントレース!!(ネモト監督
  • がんばれ!! タブチくん!! 初笑い第3弾 あゝツッパリ人生!!(ネモト監督
1981年
1982年
1983年
1984年
1985年
1986年
1987年
1988年
1989年
1990年
1991年
1993年
1994年
1995年
1996年
1997年
1998年
1999年
2000年
2003年
2004年
2005年
2006年
2007年
2009年
2010年
2011年
2012年
2013年

OVA[編集]

1985年
1986年
1988年
1989年
1990年
1991年
1992年
1993年
1994年
1997年
1998年
1999年
2000年
2003年
2004年
2006年
2010年
2011年
  • 魚介類 山岡マイコの友 茹田蟹幸(山葵山蛸八[70]

ゲーム[編集]

2014年以降の出演作品は生前の収録音声を引用したライブラリ出演。

1991年
1992年
  • スタートリング・オデッセイ(ナレーション)
  • 天外魔境II 卍MARU(ベーロン、地獄釜の肉助、剛天明王、弁慶)
1994年
1995年
1996年
1997年
1998年
1999年
2000年
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
2006年
2007年
2008年
2009年
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年
2017年
2018年
2019年
2021年
2022年

ドラマCD[編集]

時期不明
1992年
1993年
  • 集英社カセットブック ジョジョの奇妙な冒険 第3巻 DIOの世界の巻(ジョセフ・ジョースター
1995年
1997年
2004年
2005年
2006年
2007年
  • 最終神話戦争イデアオペラ オリジナルドラマCD(ゼウス)
    • 第3章 輝ける悠遠の女神

吹き替え[編集]

担当俳優[編集]

アーニー・ハドソン
ヴィクター・マチュア
ウォーレン・オーツ
エリオット・グールド
  • オーシャンズシリーズ(ルーベン・ティシュコフ)
  • M★A★S★H マッシュ(トラッパー・ジョン)※LD版
オマル・シャリーフ
オリヴァー・リード
カール・ウェザース
サミー・デイヴィスJr.
ジーン・ハックマン
ジェームズ・アール・ジョーンズ
ジャック・ニコルソン
ジョー・ドン・ベイカー
ジョン・サクソン
ジョン・リス=デイヴィス
スティーブ・マックイーン
ダニー・グローヴァー
ダン・エイクロイド
チャールズ・S・ダットン
バート・レイノルズ
  • ゲイター(ゲイター・マクラスキー)※TBS版
  • シェイマス(シェイマス・マッコイ)※TBS版
  • シティヒート(マイク・マーフィー)※フジテレビ版
ハーバート・ロム
ビリー・ディー・ウィリアムズ
ブライアン・コックス
ポール・ウィンフィールド
ボブ・ホスキンス
マイケル・アイアンサイド
ヤフェット・コットー
  • 地獄の女スーパーコップ(ジャクソン警部)
  • 007 死ぬのは奴らだ(Mr.ビッグ / ドクター・カナンガ)※新旧TBS版(TV吹替初収録特別版DVD収録)
  • 必殺処刑コップ(ラーソン)※フジテレビ版
  • 夜の逃亡者・国境線は遠かった(グリーン)
ルイス・ゴセット・ジュニア

映画[編集]

ドラマ[編集]

アニメ[編集]

人形劇[編集]

人形劇[編集]

特撮[編集]

ラジオ[編集]

ナレーション[編集]

テレビドラマ[編集]

映画[編集]

舞台[編集]

CM[編集]

パチンコ・パチスロ[編集]

その他[編集]

注釈[編集]

出典[編集]

外部リンク[編集]