ケール – Wikipedia

ケール
Boerenkool.jpg

ケール

分類
学名
Brassica oleracea L. var. acephala DC.[1]
和名
リョクヨウカンラン[1]、ハゴロモカンラン
英名
Kale

ケール(緑葉甘藍[2]、英: kale, borecole、学名: Brassica oleracea var. acephala)はアブラナ科の野菜。和名はリョクヨウカンラン(緑葉甘藍)、ハゴロモカンラン(羽衣甘藍)。

特徴・利用[編集]

温暖な気候であれば一年中栽培可能で、収穫量も多い。キャベツと違って結球しない。一年中流通しており特定の旬はないが、葉の緑が鮮やかで張りがあるものが市場価値の高い良品とされる。食物繊維、カルシウム、ビタミン類や、ミネラルといった栄養に富む[4]。香りが独特で苦味が強く、そのまま食べることがむずかしく、日本では青汁などのジュースの材料として利用されるのがふつうであるが、ヨーロッパでは食材として一般的に使われ、キャベツ同様に温野菜、他の野菜と合わせてソテーや、ポタージュ、揚げ物、煮物、炒め物などの具材としても使われる。若い葉であれば、かたい茎を除いて生のままドレッシングで和えてサラダにもする。

青汁を製造するキューサイの研究開発担当者によると、青汁に含まれるケールの苦味は、葉では感じられず、ペースト状にする過程での酸化により生じる。酸素に接触させないよう加工すると、苦味を抑えられるという[5]。苦味があまり感じられないようにした品種改良も進められ、上記のように生食もされるようになっている[4]

ケールを含むアブラナ科の植物は、S-メチルシステインスルフォキシド (S-methylcysteine sulfoxide) を含み、反芻動物の腸内での化学反応の結果、ジメチルジスルフィド (dimethyl disulfide) へと変化し、牛や羊などでは溶血性貧血を起こす。

また、緑内障予防の効果が指摘されている。

1990年、メキャベツとの交配により結球しない品種が静岡県で開発され、プチヴェールの名で販売されている。

原産地はイタリアの海岸を中心とする地中海沿岸から小アジアにかけての地域で、キャベツの原種のヤセイカンラン B. oleracea に近い。

栽培の歴史は古く、古代ギリシア人によって知られており、紀元前200年にカトーによって数品種の栽培記録がみられる。ヨーロッパへはケルト人によってもたらされたといわれる。ヨーロッパでは、イギリス、オランダ、ドイツなどで食用を目的に栽培されていて、多くの品種が作出された。17世紀にはケールがアメリカで知らるようになった。

日本へは、1200年ごろに渡来したキャベツのなかまがケール(ハゴロモカンラン)とされている。江戸時代に貝原益軒が編纂した『大和本草』(1709年)にオランダナ、サンネンナの名称で記載が見られ、明治時代の『改訂増補舶来穀菜要覧』(1887年)に開拓使によってアメリカから3品種が導入されたという記録がみられる。しかし日本人の嗜好には合わず、野菜としてはほとんど利用されることはなかったが、葉が紫紅色や黄色、斑入りのものが観賞用に多く栽培されて、ハボタンとして広く知られるようになった。

キャベツのなかまの2年生または多年生の不結球草本。いくつかタイプが知られるが、すべて同一種と考えられており、草丈4メートルになる高いものから、30センチメートルほどの矮性のものまである。葉は円形でやわらかく、葉身がちりめん状に縮れる「縮葉ケール」から、平滑な「滑葉ケール」まである。キャベツのなかまで結球していない姿から、「リョクヨウカンラン(緑葉甘藍)」の別名でもよばれる。特に、葉が縮れているものは別名で「ハゴロモカンラン(羽衣甘藍)」ともよばれ、縮れていない平滑なものは「コラード」とよんでいる。

開花期は春(5月ごろ)で、薹(とう)立ちして花が咲く。種子は赤褐色か黒褐色で、キャベツに似る。

ケールはマローステムケール、サウザンドヘッドケール、スコッチケール、シベリアンケール、ツリーケール、コモンケール、キッチンケール、ジャイアントケールなどの種類がある。その多くの品種は、家畜用の飼料用として栽培され、一部は食用または観賞用で、一般に食用とされるものに、シベリアンケール、スコッチケール、コラードがある。

シベリアンケール[編集]

シベリアンケール(Siberian Kale)は、草丈が高いものと矮性のものがあり、一般には矮性のものが多く用いられる。葉が青緑色でややしわがある。スコッチケールよりもやや晩生で耐寒性が強い。以下のような品種がある。

  • アーリー・カールド・シベリアン (Early Curled Siberian)
  • ドワーフ・ブルー・カールド (Dwarf Blue Curied)
  • トール・グリーン・カールド (Tall Green Curied)

スコッチケール[編集]

スコッチケール (Scotch Kale) は、草丈の高いものと矮性のものがあり、一般には矮性のものが多く用いられる。葉は灰緑色で、極端なちりめん状の縮みとしわがある。シベリアンケールよりも知名度は高い。

  • エキストラ・カールド・スコッチ (Extra Curled Scotch)
  • トール・スコッチ (Tall Scotch)
  • ノーフォーク (Norfork)
  • ドワーフ・カールド・スコッチ (Dwarf Curled Scotch)

コラード[編集]

コラード (Collard) は、2年草または多年草で、茎は単一で生長すれば高さ1メートルになる。結球が始まる前のキャベツの姿に似ている。葉は蝋質で、葉身は縮れず平滑で、円形か楕円形で、葉縁は波状にわん曲するか、浅く切れ目が入る。また葉の基部は小結片となる。大暑や大寒にも強い性質を持っている。

  • コウヴェ・マンティガ (Couve Manteiga) – 縮葉と滑葉の2つの型があり、滑葉の栽培が多い。草丈1メートル。葉は大型で、黄色味を帯びた緑色。葉を次々とかいて食べられる。
  • ハイクロップ – 日本のタキイ種苗が開発した品種。

マローステムケール[編集]

マローステムケール (Marrow Stem Kale) 茎が太く、茎の髄を食用とするが、一般には家畜の飼料として作付けされる。また杖状に加工して土産物として売られる。マローケール型の品種に下記のものがある。

  • コンドル (Condor)
  • エンノーブルド・グリーン・マロー・ステム・ケール (Ennobled Green Marrow Stem Kale)
  • エンノーブルド・パープル・マロー・ステム・ケール (Ennobled Purple Marrow Stem Kale)

サウザンドヘッドケール[編集]

サウザンドヘッドケール (Thousand Head Kale) は、2年草または多年草。直立した草姿でよく分枝し、高さ1 – 2メートル、横幅も高さと同じ程度に広がる。分枝は、地上高20 – 50センチメートルから始まり、各枝の先は、茎がやや太くなり、ロゼット状の葉を数多く生やして藪状になる。サウザンドヘッドの名は、分枝が盛んで多数の茎にロゼット葉が頂生することに由来する。別名でブランチング (Blanching) 、ブッシュケール (Bush Kale) 、ドーレコール (Dorecole) などの名でも呼ばれている。

ツリーケール[編集]

ツリーケール (Tree Kale) は、大型の直立した姿で、草丈は2 – 4メートルにも達する。葉も大型で、葉身が厚くて蝋質が強く、切れ込みがあるものとないものがある。多くはブタ、ニワトリ、ウサギなどの飼料として葉を順次搔いて利用されるが、しばしば食用にも使われ、特に春に葉腋から出る新芽は良食材とされる。

その他[編集]

ジューシーグリーン(Brassica oleracea L. convar.acephala(DC)Alef.var.sabellica L.)
登録番号-第12578号
品種登録の年月日-平成17年1月19日
特性-搾汁量が多いので青汁に向いている。
スウィートグリーン(Brassica oleracea L. convar.acephala(DC)Alef.var.sabellica L.)
登録番号-第17702号
品種登録の年月日-平成21年3月6日
特性-ジューシーグリーンより背丈は低いが一株当たりの葉数が多い。青汁に向いている。
カーボロリーフ グリーン(Brassica oleracea L. convar.acephala(DC)Alef.var.sabellica L.)
登録番号-第17701号
品種登録の年月日-平成21年3月6日
特性-カーボロネロ(黒キャベツ)よりも葉幅が広い。
キッチン(Brassica oleracea L. convar.acephala(DC)Alef.var.sabellica L.)
登録番号-第17703号
品種登録の年月日-平成21年3月6日
特性-葉がパセリのように波状に湾曲して、葉縁に細かい縮みがある。
サンバカーニバル(Brassica oleracea L. convar.acephala(DC)Alef.var.sabellica L.)
登録番号-第17704号
品種登録の年月日-平成21年3月6日
特性-葉質が柔らかく苦みが少ないため、開発した増田採種場(静岡県)が「ソフトケール」という商品名で販売している[10]
カリーノケール
しっかりした食感で、食べやすいサラダ向けケールとしてトキタ種苗(埼玉県)が開発した品種。葉の縁が縮れフリルのように愛らしいところから、イタリア語で「愛らしい」を意味する「カリーノ」と命名された。苦味や青臭さが少なく、生のサラダとしても食べられるほか、素揚げのチップス、スープや、発色がよいことから、スムージーでも飲まれる[11][12][13][14]
同種はロイヤルホストにて2018年2月14日から4月上旬まで開催された新作料理フェアで採用されたほか、デニーズのメニューに採用された実績がある[15][16][17]

各種土壌に適応するが、排水性が良く、有機分の多い砂壌土が栽培に最も適している。ただし、肥料を必要とする作物で、畑は肥料を十分に施しておく必要がある。また、冷涼な気候を好む性質で多湿を嫌い、生育適温は20度前後とされているが、耐寒性が強いうえ、また夏の暑さにも比較的強く、耐暑性がある。高冷地では夏栽培もできる。旺盛に生育することから、栽培難度はキャベツよりもさらに容易である。他のアブラナ科作物と同様に、同じ畑では連作不可とされる。

種まきは春から秋までの間にいつでもできるが、ふつう縮葉ケールは6 – 7月に行い、10月下旬 – 2月に収穫される。コラードは、3月に種をまき、6月下旬 – 8月に収穫する春まき栽培と、7 – 8月に種まきし、10 – 1月に収穫する夏まき栽培の方法がある。畑の畝に30 – 40センチメートル (cm) 間隔で点まきし、2 – 3回ほど間引きしながら育てていく。平坦地は夏まきして秋から冬の間に収穫するのが一般的である。寒冷地では春まきで、ハウスで育苗したら5 – 6月に定植して、秋から初冬にかけて収穫する。種をまいてから収穫するまで、ふつう3 – 4か月を要する。

育苗する場合は、育苗ポットに点まき、あるいは苗床に筋まきして、子葉展開後に1度目の間引きを行ってから、本葉2枚ほどになったら苗を1本に間引きする。種まきから30 – 40日後に本葉5 – 6枚になるまで育苗し、株間40 cm程度で定植する。寒くなる12月までの間は、旺盛に生長する期間であり、この間は施肥が重要となる。本葉10枚になるころに、株元に肥料を施したら土寄せも行う。その後は2週間ごとに追肥を行うようにする。収穫は、若い葉の長さが30 – 40 cmになって緑色が濃くなったら、外葉から適時掻き取って順次収穫する。収穫期間は長く、おおよそ2 – 3か月間である。

病虫害としては、キャベツやカリフラワーと同じで、根こぶ病、萎黄病、べと病、軟腐病、ウイルス病などにかかる場合があり、またアブラムシ、コナガ、アオムシなどの食害を受ける。また土壌はセンチュウに汚染されていないことが栽培の条件となる。

若苗のときに株元から刈り取るか、若葉を採取して食用にする。野菜としては、栄養価は高いものの品質面では劣るため市場価値は一般に低く見られている。イギリスでは羊の飼料用に寒さに強い品種が広く栽培されているほか、スコットランドではかつてケールを使ったスープが食事に欠かせないほど使われ、野菜としても重要されている。またアメリカ南部での利用も多い。

葉は細切りにして生野菜サラダにして、ドレッシングをかけて食べるほか、油炒め、野菜ジュース、肉料理などにも使われる。加工品としては、葉をフリーズドライして常温で顆粒状にしたものがあり、水または湯を入れて健康飲料とするものがある。ケールの生葉で作られた野菜ジュースは青汁の名でも知られており、毎日少しずつ飲むと健康的によいと飲用する人も増えている。

栄養価[編集]

ビタミン、ミネラルの含有量は緑黄色野菜の中でも多く、各栄養素はバランスよく含まれている。他の食品との比較で、特にβ-カロテン、ビタミンB2・C、カルシウムの含有量が多く、β-カロテンはトマトの5倍、ビタミンEはピーマンの3倍、ビタミンCはミカンの2倍以上、カルシウムは牛乳の2倍も含まれる。食物繊維は非常に多く含まれており、抗酸化作用が高いことも相まって、便通をよくして血糖値上昇の抑制、コレステロール値の上昇を抑えて生活習慣病の改善に役立つといわれている。ルテインの含有量も高い[19]

参考文献[編集]

外部リンク[編集]