宮崎空港線 – Wikipedia

停車場・施設・接続路線

宮崎空港線(みやざきくうこうせん)は、宮崎県宮崎市の田吉駅から宮崎空港駅とを結ぶ九州旅客鉄道(JR九州)の鉄道路線(幹線)。日豊本線宮崎駅 – 南宮崎駅間と日南線南宮崎駅 – 田吉駅間を加えた、宮崎駅 – 宮崎空港駅間に「空港線」の愛称が付けられている。

宮崎空港付近を通る日南線から分岐し、宮崎空港旅客ターミナルに直接乗り入れる空港アクセス路線として建設され、JR発足後の1996年に開業した。同時に日南線分岐点付近には田吉駅が再開業[注 1]し、当路線の起点となる。日南線との共用区間・分岐付近を除いて、踏切が存在しない。

当路線には加算運賃(130円)が適用されている[2]。なお、当路線ではICカード「SUGOCA」の利用が可能である[3]

また、一般向けリアルタイム列車位置情報システム「どれどれ」の利用ができる路線であり、スマートフォンアプリ「JR九州アプリ」で宮崎 – 宮崎空港間のリアルタイム列車位置情報が提供されている[4]

路線長は1.4 km(営業キロ)と短い。日本国有鉄道(国鉄)時代に最も営業キロが短い路線であった旧小松島線の営業キロ1.9 kmより短く、2021年時点で、JR線の中で最も営業キロが短い。なお、当線の開業前は新湊線(当時全長3.6 km、貨物線)、旅客営業を行う路線では桜島線(当時全長4.0 km)が最短路線であった。

路線データ[編集]

空港旅客ターミナル(画面右)と接続する宮崎空港駅

全線鹿児島支社の管轄である。

運行形態[編集]

開業以来、線内折り返し列車の設定がされたことはなく、全列車が日南線南宮崎・宮崎駅方面に直通する。普通列車1往復が南宮崎駅発着である以外は日豊本線経由で宮崎駅まで直通しており、すべての特急列車と半数以上の普通列車はさらに同線延岡駅方面に直通している。南宮崎駅(以北)でスイッチバックが必要になる都城駅・鹿児島中央駅方面への直通運転は行われていない。車両は鹿児島支社管内の日豊本線と同じ電車が運用されており、田吉駅以南が非電化である日南線青島駅・油津駅・志布志駅方面で運用される気動車は乗り入れない。

また、典型的な空港アクセス鉄道であるが、航空便から宮崎市中心部へは1時間あたり4 – 5本運行されている宮崎交通の路線バスに利用客が流れやすい。中距離輸送では大分市・延岡市・日向市方面が公共交通では当路線発着の列車が独占状態であるのに対し、青島・飫肥城下町・日南市方面や都城市方面は乗り換えが必要であり、田吉駅での油津方面との接続が考慮されていないため競合するバスと比べ利便性が劣る。

特急[編集]

大分駅・延岡駅方面と宮崎地区を結ぶ特急列車は、早朝・深夜に運転される「にちりん」2・6・19・21号、「ひゅうが」3・5・16・18号[注 2]を除き宮崎空港駅を始発・終着駅としている。宮崎空港駅から延岡駅までは約1時間25分[注 3]、佐伯駅までは約2時間半、大分駅までは約3時間半である。なお、宮崎空港駅発着の特急は田吉駅には停車しない[注 4]

宮崎空港線の開業当時はすべての特急列車が博多駅または小倉駅発着であったが、2021年3月13日[5]現在は博多駅発着の「にちりんシーガイア」1往復および小倉駅発着の「にちりん」1往復を除いて大分駅および延岡駅発着とし、大分駅発着の列車に関しては同駅で博多駅発着の「ソニック」と接続する形を取っている[注 5]

2020年10月17日より、周遊型観光特急「36ぷらす3」が運行開始し、土曜日運行分『緑の路』が当線の宮崎空港駅始発となっている。

  • 「にちりん」(下り6本・上り5本)
    • 宮崎空港駅 – 南宮崎駅 – 宮崎駅 – 日向市駅 – 延岡駅 – 大分駅 – 小倉駅(1往復のみ小倉駅発着)
  • 「にちりんシーガイア」(下り1本・上り1本)
    • 宮崎空港駅 – 南宮崎駅 – 宮崎駅 – 日向市駅 – 延岡駅 – 大分駅 – 小倉駅 – 博多駅
  • 「ひゅうが」(下り6本・上り7本)
    • 宮崎空港駅 – 南宮崎駅 – 宮崎駅 – 日向市駅 – 延岡駅
  • 「36ぷらす3」(土曜日のみ、上り1本)
    • 宮崎空港駅 → 宮崎駅 → (延岡駅 → 宗太郎駅 → 重岡駅) → 大分駅 → 別府駅(延岡・宗太郎・重岡の3駅は特別停車で、客扱いはない)

なお、ここでの本数は宮崎空港駅発着分のみを示しており、「にちりん」「ひゅうが」については宮崎駅・南宮崎駅発着の設定もある。

特急料金等不要の特例[編集]

宮崎駅 – 宮崎空港駅間のみで特急列車に乗車する場合、普通車自由席に乗車券のみで乗車できる特例が設けられている(なお、この区間で指定席やグリーン車に乗車する場合は、指定席券あるいは普通列車用指定席グリーン券が必要であり、これらの券を駅窓口または車内で発売している)。他の区間と跨いで乗車する際は特急料金は特例区間外のみで計算される。この特例は南宮崎駅から日豊本線都城駅方面に直通する特急「きりしま」、田吉駅から日南線日南方面に直通する特急「海幸山幸」(この列車は田吉駅に停車する)、南宮崎駅発着の特急「にちりん」「ひゅうが」に関しても、特例区間内であれば適用される。なお、「36ぷらす3」でも空席があれば「36ぷらす3」用グリーン券を購入することで宮崎駅まで乗車できる。

普通[編集]

サンシャイン 713系電車

普通列車も南宮崎駅および宮崎駅、さらに一部の列車は延岡駅まで直通運転するが、前述の通り宮崎駅 – 宮崎空港駅間は乗車券のみで特急列車の普通車自由席に乗車できるために普通列車独自で本数を確保する必要はなく、絶対的に多く設定されていない。このため青島・油津駅方面との接続に関しては、田吉駅でかなりの時間待たされる場合がある。また、かつては快速列車が運行されていたが、2015年6月20日時点[6]では運行されていない。

  • 延岡駅発着:下り9本、上り11本
  • 高鍋駅発着:1往復
  • 宮崎駅発着:下り8本、上り7本
  • 南宮崎駅発着:1往復

なお、日南線・日豊本線内の運行形態についてはそれぞれの項目を参照のこと。

運行車両[編集]

全区間が電化されているため全列車が電車で運用されているが、開業以来運用されていなかった気動車については2006年に臨時列車として特急「はやとの風」用キハ140形が運転された。これは宮崎地区における初めての入線である。

2011年3月12日より、485系に代わって、787系が使用されている。なお787系は開業以来2000年3月10日まで乗り入れており、11年ぶりに入線を果たしている。過去には885系の乗り入れ実績もある。2000年3月11日から2021年3月12日までは783系も乗り入れていた。

  • 特急列車(一部車両は特急車両の送り込みを兼ねて、普通列車として運転される場合がある)
    • 787系(「36ぷらす3」を含む)
  • 普通列車

延岡市に創業地工場群を持つ旭化成は、本社のある大阪市、東京への社員の出張が多いが、宮崎 – 延岡間は当時、鉄道は空港とつながっておらず、高速道路もなかった(2014年3月に東九州自動車道の両市間が全通[7])。そのため、旭化成は自社ヘリポートを用意し、延岡工場と宮崎空港間を25分で結ぶヘリコプター路線を1989年3月に開設した。

1990年9月27日、宮崎空港から延岡ヘリポートに向かっていた社内定期便(川崎BK117-B1型、機体記号JA6605:阪急航空チャーター機)が台風20号の接近による視界不良により日向市細島港北側の牧島山山頂付近に墜落し、乗員2名乗客8名全員が死亡する事故が発生した[注 6]

旭化成は年間1万5千人の社員と、6000人の訪問者を運ぶ予定であったが、これによりヘリコプターの運航を断念、日豊本線の「高速化」や、日南線の空港アクセス活用の気運がにわかに高まった。

  • 1994年(平成6年)7月28日 着工[8]
  • 1996年(平成8年)7月18日 開業[9]
  • 2003年(平成15年)10月1日 ワンマン運転開始。
  • 2015年(平成27年)11月14日 ICカード「SUGOCA」が利用可能になる[10]
  • 2016年(平成28年)12月22日:スマートフォンアプリ「JR九州アプリ」内の列車位置情報システム「どれどれ」運用開始により、リアルタイムで列車位置情報が配信開始[4]
  • 2020年(令和2年)3月20日 – 4月23日:新型コロナウイルス感染症による利用客減少に伴い、減便等を実施[11][12]
    • 「にちりん」8・9・13・14・19号を運休。(3月20日 – 4月23日)
    • 「にちりん」3号・「にちりんシーガイア」20・24号の大分 – 宮崎空港間を運休。(3月20日 – 4月23日)
    • 「ひゅうが」7・8号を運休。(4月6日 – 4月23日)
    • 「ひゅうが」5号の宮崎 – 宮崎空港間、8号の宮崎空港 – 南宮崎間を運休。(3月20日 – 4月5日)
    • 「にちりんシーガイア」20号に充当する列車の運用ダイヤにあたる、普通列車1本(宮崎→宮崎空港)を運休。(3月20日 – 4月23日)

便宜上、愛称である「空港線」としての起点となる日豊本線宮崎駅からの区間を記載する。営業キロは田吉駅からのもの。

輸送実績[編集]

平均通過人員(輸送密度)、旅客運輸収入は以下の通り[13]

年度 平均通過人員(人/日) 旅客運輸収入
(百万円/年)
全区間(田吉 – 宮崎空港) 南宮崎 – 田吉(参考)
1987年度 2,129[注 7]
2016年度 1,740 3,615 83
2017年度 1,841 3,726 88

注釈[編集]

  1. ^ 田吉駅は1971年に廃止されていた。
  2. ^ 「ひゅうが」3号は宮崎駅到着後そのまま鹿児島中央駅行き「きりしま」3号になり、「ひゅうが」5号は宮崎駅到着後すぐ「にちりん」6号で延岡方面に折り返すためで、他は接続する航空便がない時間帯に運転されるため。なお航空便との接続を持たない列車として「にちりん」4・17号が乗り入れているが、これは航空便利用客というよりは空港周辺の利用者の利便性を図るために運転されており、それぞれ上り始発、下り最終となっている。
  3. ^ 下り最速は1時間11分、上り最速は1時間20分。多くの列車が途中駅での対向列車との運転停車のために時間が余計にかかるほか、上り特急列車では宮崎空港駅発車時刻を繰り上げ、毎時10分台とするパターンダイヤを2020年3月改正から採用したため、平均所要時間が増加している。これらの列車は従来より始発時刻を繰り上げた分、南宮崎駅あるいは宮崎駅で時間調整のため長時間停車を行う関係で、宮崎駅以北は改正前に比べ変化が少ない。
  4. ^ そのため、田吉駅を通過する列車を利用して宮崎空港駅と日南線田吉駅以南の各駅との間を乗車する場合、折返し乗車となる田吉駅・南宮崎駅間のキロ数は運賃計算に含まれない特例が設けられている。
  5. ^ 2020年11月以降、「にちりん」と接続する「ソニック」の一部に運休が生じているため、大分駅で30分ほど待たされる場合がある。
  6. ^ 事故時、自社所有機(アエロスパシアルSA365N1型、機体番号JA9920)は点検中で、阪急航空チャーター機による運航であった。なお、その後の自社所有機JA9920は数社を移転したのち、東邦航空所属のNNN報道機となったが、2011年3月11日仙台空港にて東日本大震災に伴う津波に被災し大破し、同6月10日に抹消された。
  7. ^ 田吉駅が1996年度に新設されたため、1987年度は「南宮崎 – 油津」としている。

出典[編集]

関連項目[編集]

座標: 北緯31度52分22秒 東経131度26分8秒 / 北緯31.87278度 東経131.43556度 / 31.87278; 131.43556