日本ファンタジーノベル大賞 – Wikipedia
日本ファンタジーノベル大賞(にほんファンタジーノベルたいしょう)とは、未発表の創作ファンタジー小説を対象とした公募型の文学賞。プロ・アマを問わない。1989年創設。受賞作品は新潮社から刊行される。候補作には挙がったものの、入賞していない作品でも優れていれば刊行された(恩田陸や小野不由美、高野史緒など)。発表誌は『小説新潮』。大賞受賞作品が同誌に全文掲載されていたこともある。
1989年に読売新聞東京本社と三井不動産販売が、三井不動産販売の創業20周年を迎えた記念事業として始めた文学賞で、三井不動産販売は1998年まで主催した。バブル経済の好景気の末期でもあり、三井不動産販売が広告代理店各社に企画案を提出させ、その中から読売広告社のファンタジーをテーマにした文学賞という案が採用。文学賞のノウハウを持ち、受賞作の出版を行える出版社ということで、新潮社が後援として参加した(創設時の担当編集者には、大森望、木村由花がいた)。
三井不動産販売は10年で降板。有望な新人が発掘される成果があったため、このまま終わらせるのは惜しいと清水建設が主催を引き継ぐことになり、第11回から第25回まで清水建設と読売新聞社が主催した。
この間の大賞賞金は500万円。
第25回(2013年度)を機に一定の役割を終えたとして賞を休止した[1][2][3]。
2017年になって主催者を一般財団法人新潮文芸振興会、後援を読売新聞社としてリニューアル再開した。大賞賞金は500万円から300万円に減額された。2017年度の名称は「日本ファンタジーノベル大賞2017」、翌年は「日本ファンタジーノベル大賞2018」と再開前までの回数は引き継がれていない[4][5]。
受賞作のアニメ化[編集]
最初の2年は、日本テレビが協賛となり、三井不動産販売が番組スポンサーとなって受賞作をアニメ化。酒見賢一の『後宮小説』が1990年3月21日に『雲のように風のように』、鈴木光司の『楽園』が1991年6月16日に『満ちてくる時のむこうに』のタイトルで日本テレビ系で放送された。アニメの制作は、スタジオぴえろが行っている。
歴代選考委員[編集]
当初手塚治虫を含め6人の審査員で行われる予定であったが、手塚が死去したため、5人で審査する形になった。
- 第1回 – 第7回
- 第8回 – 第10回
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- 荒俣宏、安野光雄、井上ひさし、椎名誠、矢川澄子
- 第11回 – 第13回
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- 荒俣宏、井上ひさし、椎名誠、鈴木光司、矢川澄子
- 第14回 – 第22回
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- 荒俣宏、井上ひさし、小谷真理、椎名誠、鈴木光司
- 第23回 – 第25回
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- 荒俣宏、小谷真理、椎名誠、鈴木光司、萩尾望都
- 2017-2018
受賞作一覧[編集]
特記がなければ、初刊は新潮社、文庫は新潮文庫刊。
1989年 – 2013年[編集]
2017年以降[編集]
年 | 応募総数 | 賞 | 受賞・候補作 | 著者 | 初刊 | 文庫化 |
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2017年 | 788編 | 大賞 | 「隣のずこずこ」 | 柿村将彦 | 2018年3月[注 40] | |
候補 | 「ここは愉快な透明の世界」 | 如月新一 | ||||
「爪が消える」 | 篠宮深琴 | |||||
「御骨奇譚」 | 淤可見明 | |||||
2018年 | 大賞 | 「鬼憑き十兵衛」 | 大塚已愛 | 2019年3月[注 41] | ||
候補 | 「長谷川の兄さんは暇である」 | 大川慶 | ||||
「植物たちの隠れ家」 | 岸本惟 | |||||
「人の身には過ぎたる願い」 | 高丘哲次 | |||||
2019年 | 大賞 | 「約束の果て: 黒と紫の国」 | 高丘哲次 | 2020年3月[注 42] | ||
候補 | 「まじない屋の愛情」 | 実石さえ | ||||
「ミスター・ゴーストハンター」 | 末喜晴 | |||||
「愛されざる子どもたち」 | 真路掬子 | |||||
2020年 | 優秀賞 | 「あけがたの夢」 | 岸本惟 | |||
候補 | 「神なき世界の放浪者」 | 織田万里 | ||||
「ルリユールはかく束ねり」 | 末喜晴 | |||||
「ひとでなしの果て」 | 石黒義握 | |||||
2021年 | 大賞 | |||||
候補 | ||||||
新潮文庫ファンタジーノベル・シリーズ[編集]
候補作や、候補作家の作品などを、新潮文庫オリジナルで刊行した。
- 星虫(ほしむし) 岩本隆雄 (新潮文庫―ファンタジーノベル・シリーズ) 1990/7
- 三日月銀次郎が行く 武良竜彦 (新潮文庫―ファンタジーノベル・シリーズ)1990/7
- 月のしずく100%ジュース 岡崎弘明 (新潮文庫―ファンタジーノベル・シリーズ)1990/7
- ラスト・マジック 村上哲哉 (新潮文庫―ファンタジーノベル・シリーズ)1990/12
- 念術小僧―大江戸サイキック・ボーイ 加藤正和 (新潮文庫―ファンタジーノベル・シリーズ)1990/12
- イーシャの舟 岩本隆雄 (新潮文庫―ファンタジーノベル・シリーズ)1991/7
- 魔剣伝〈暁ノ段〉 流星香 (新潮文庫―ファンタジーノベル・シリーズ)1991/7
- 魔剣伝―黄昏ノ段 流星香 (新潮文庫―ファンタジーノベル・シリーズ)1991/9
- 魔性の子 小野不由美 (新潮文庫)1991/9/30
- メルサスの少年―「螺旋の街」の物語 菅浩江 (新潮文庫―ファンタジーノベル・シリーズ)1991/12
- 東方見聞録 竜の伝説 広井王子 (新潮文庫―ファンタジーノベル・シリーズ)1991/12
- 六番目の小夜子 恩田陸 (新潮文庫―ファンタジーノベル・シリーズ)1992/7
- 魔剣伝―牛若丸異聞 流星香 (新潮文庫―ファンタジーノベル・シリーズ)1992/7
注釈[編集]
- ^ 刊行時『三日月銀次郎が行く』に改題
- ^ 刊行時『念術小僧 大江戸サイキック・ボーイ』に改題
- ^ 角川文庫刊
- ^ 文房夢類刊
- ^ 徳間デュアル文庫刊
- ^ 文春文庫刊
- ^ ハヤカワ文庫JA刊
- ^ 講談社刊
- ^ 「ベイスボイル・ブック」に改題
- ^ 角川文庫刊
- ^ 「桑原敏郎」より改名
- ^ 「盗み耳」に改題
- ^ 角川ホラー文庫刊
- ^ 徳間デュアル文庫刊
- ^ 「松之宮ゆい」より改名
- ^ マガジンハウス刊
- ^ 講談社文庫刊
- ^ 「クロニカ 太陽と死者の記録」に改題
- ^ 「世界の果ての庭 ショート・ストーリーズ」に改題
- ^ 創元SF文庫刊
- ^ 「太陽の塔」に改題
- ^ 「小田紀章」より改名
- ^ 角川文庫刊
- ^ 創元推理文庫刊
- ^ ライブドアパブリッシング刊
- ^ 「大原一穂」より改名
- ^ 彩流社刊
- ^ 『天使の歩廊 ある建築家をめぐる物語』に改題
- ^ 『前夜の航跡』に改題
- ^ 『月のさなぎ』に改題
- ^ 『かおばな憑依帖』に改題
- ^ 「かおばな剣士妖夏伝 人の恋路を邪魔する怨霊」に改題
- ^ 新潮文庫nex刊
- ^ 『絶対服従者』に改題
- ^ 牧野出版刊
- ^ 『星の民のクリスマス』に改題
- ^ 「鈴木伸」より改名
- ^ 『忘れ村のイェンと深海の犬』に改題
- ^ 刊行時『吉祥寺の百日恋』に改題
- ^ 『権三郎狸の話』より改題
- ^ 『勿怪の憑』より改題
- ^ 『黒よりも濃い紫の国』より改題
出典[編集]
参考文献[編集]
- 佐藤亜紀「ファンタジーノベル大賞とはなんだったのか」、『ユリイカ』第36巻第8号(通巻495号)、2004年8月。
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