高卒 – Wikipedia

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高卒(こうそつ)とは、高等学校を「卒業する」または「卒業した」状態を原義とする語であり、広義には、後期中等教育の課程を完全に修了したことを意味する用語である。

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「高卒」の語は、学校教育法(昭和22年法律第26号)の第1条などで定められた、高等学校を「卒業すること」または「卒業したこと」の通称として用いられてきた。ほかにも、中等教育学校を卒業することなども含めて呼称されることもある。

学歴としての「高卒」、「大学」をはじめとする高等教育の課程に進学するための「高卒資格」(この語句については後述の節も参照)、学歴とからめて使用される「高卒学歴」のような派生語もある。

日本において、「高等学校」または「中等教育学校」を卒業するための要件とされるものは、次の通りである。

  1. 「高等学校」または「中等教育学校の後期課程」に、全日制の課程の場合は「3年」、定時制の課程および通信制の課程の場合は「各学校が定める3年以上の期間」在学していること。
  2. 「高等学校学習指導要領」で定められた必履修科目を履修し、かつ、各学校が定める教科・科目の「履修」または「単位の修得」をしていること。
  3. 各学校が定める74単位以上の必要な単位数を修得していること。

後期中等教育の課程の修了要件[編集]

後期中等教育の課程を修了するには、「高等学校」または「中等教育学校の後期課程」の、「全日制の課程」「定時制の課程」「通信制の課程」を卒業することによってできる。ほかにも「通常の課程による12年の学校教育を修了した者」として、「特別支援学校(旧: 盲学校・聾学校・養護学校)の高等部」を卒業した者や、高等専門学校の5年次を修了もしくは3年次で中退(前期課程修了)した者も認められる。(5年次卒業者には準学士の称号が授与される)

技能連携校、サポート校、専修学校の高等課程(高等専修学校)などの教育施設を卒業しても、後期中等教育の課程を完全に修了したことにはならない[1]。提携している高等学校や中等教育学校などがある場合は、提携学校が卒業を認定し、提携学校の校長が卒業証書を授与する。

高等学校卒業程度認定試験[編集]

高等学校卒業程度認定試験(略称: 高認、旧: 大学入学資格検定, 大検)は、後期中等教育を修了するための試験ではない。

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高等学校卒業程度認定試験は、後期中等教育の課程を完全に修了していない人が、高等学校を卒業した者、もしくは、中等教育学校を卒業した者、もしくは、通常の課程(昼間の全日制の課程)による12年の学校教育を修了した者(通常の課程以外の課程によりこれに相当する学校教育を修了した者を含む。)と、同等以上の学力があると認められる者であるかを判定することを主な目的としている試験である。

「高等学校卒業程度認定試験合格」と「高卒の概念」は、厳密には意味が異なる。大学をはじめとする高等教育の課程に入学するために、場合に応じて、高等学校卒業程度認定試験の合格が必要となることも多い。

就職と採用[編集]

日本においては、採用条件として高卒以上をあげる場合は標準的な義務教育をやや超える、しかし専門教育を受けている訳ではない労働者を募集することを意味する。
ただし、プロ野球では高校野球の場で優秀と認められた選手も採用されるなど、例外もある。

多くの場合では作業が主体となる製造や生産、輸送、軽度の事務や各種サービス業など多岐にわたるが、前述のとおり専門的な知識や技能・資格は必用とされない業種に限定されがちである。このためより高度な教育を受けていることが期待される大学・短大および高専の卒業者に比べ雇用される側の立場は弱い傾向があり、例えば日本では失われた20年の時代に労働者の採用が停滞して採用条件に高卒を挙げる職種にまで大卒や短大卒のような高学歴のものが応募するなど教育と雇用のアンバランスも発生した際には非正規雇用であってすら就職が難しいという状態に陥りやすいといった現象も発生する。当然景気が回復すれば人員が足りなくなるので採用は進む。

高まる企業での需要[編集]

その日本では2016年には全国的に景気回復感から5-6年連続で徐々に企業の採用意欲がバブル景気末となる1991年以来の高まりを見せており(2016年前年度比0.2%増加)[2]ため、2017年では各校のみならず県も協力して就職率向上に努めた富山県の1999年以来初めてという100%の就職率を達成している[3]。2017年には長野県でも前年度比0.6%増の98.9%と2004年以降の調査で最高水準に達している[4]。沖縄県では2017年に前年度比0.4%上昇など7年連続で徐々に就職率が回復し94%が就職、県内の雇用も好景気で増加し卒業者の県内志向が高まっているという[5]。福島県が2018年に発表したところでは3月卒業予定の生徒就職内定率が前年度比1%増の96.4%だとしており、企業側の採用意欲が高く早いうちから採用活動が行われていた結果とみている[6]

なおその動向に関しては、売り手市場で就職率は2017年度は98.0%、2017年3月卒の求人倍率は2.23倍と大卒の1.74倍を上回る売り手市場である[7]。また景気回復に伴う人手不足や一定レベル以下の大学生や中退者よりも高卒は素直で採用後に育成したほうがいいとの声もあり、その一方で奨学金を得て大学に進学・卒業の際に就職活動するよりも売り手市場である今のうちに高卒就職を目指す傾向も出ている。ただ賃金格差の問題や3年以内の離職率が大卒3割に対して高卒が4割であり、大卒に比べ弱い立場にある高卒の再就職希望者の選択肢が限られると『奨学金が日本を滅ぼす』などの著書のある中京大学の大内裕和教授は指摘しており、高卒者とそれ以上の学歴のある者との賃金格差も拡大傾向にあるとして(就職は)慎重に考える必要があるとしている。就職後に採用者を育てる企業に就職するなら無理に奨学金を得て高い学歴を求める必要も無いが、ブラック企業とも呼ばれるような雇用者の待遇に問題を抱えている企業も高卒採用にシフトするところも少なくないため、高卒新卒者向け就職求人サイト「ハリケンナビ」を運営するハリアー研究所の表取締役である新留英二は「会社が社員を育てる風土を持っているかが一番重要だ」としたうえで安易な高卒者採用に走る企業もあるが採用者を定着させようとする意識のある企業が採用に成功していると述べており、その一例としては駐車場を運営する日本駐車場開発では高卒新卒者獲得に向け大学進学を希望する採用者のうち3年間一定水準の評価を受けた者に入学金と3年間の授業料を給付するとしており、経済的事情で教育機会を奪われた者に進学の機会を提供して幅広い人材を獲得したい考えが紹介されている。なお安易な就職には問題が多いのだが、労働政策研究・研修機構の東京都在住の20代を対象にした調査によれば大学や専門学校に進学し中退した者は一貫して非正規雇用で働く者が約5割と他の者に比べその率が高いという、安易な進学による中退が不安定な就職につながる可能性も示されている。東京都立第四商業高等学校校長の高石公一は「一度就職して学費をため、進学する生徒はいる。働いてみて、初めて自分の求めることがわかることもある」と提案している[8]

2018年度春に卒業する高卒就職率は1991年以来の27年ぶり高水準だった。文部科学省は「景気回復に伴い、企業の採用意欲が向上している」とした。高卒就職率の内訳は男女とも前年度と横ばいだったが、男子98.5%と女子97.4%だった。都道府県別の高卒就職率では、富山県は99.9%と日本国内最で、99.8%の福井県、99.7%の石川県と北陸地方が上位を占めた[9]

ただ好景気による雇用増大が強調される一方で、単純に少子高齢化にも絡む人口減少で働き盛り世代が不足し、労働者不足が企業経営を直撃して倒産に陥るケースも目立ち、人手不足倒産は横ばい傾向が根強く、こと2018年での人手不足倒産は前年度比で倍増ともいう。総務省の人口推計における「生産年齢」(15-64歳)人口は1995年をピークに20年間で1割を超える1千万人の減少だという[10]

高卒以下および逆学歴詐称問題[編集]

通常、資格試験などでは、受験資格は高卒以上であるとか、大卒以上であるという要件が多いが、一部の採用試験(主として地方公務員の現業・労務職(清掃員、動物園や水族館の飼育員、市電や公営バスの運転手など)に多い。)などでは、受験資格として「高卒以下」という場合が存在する。この場合、高専(前期課程修了生を除く)・大学等を卒業してしまうと受験資格を失う。

こういった指定は、高卒者などの雇用機会創出という意味合いもあるため、大卒者がこのような職についた場合には学歴詐称などの犯罪行為として問題になる。過去には学校主事や市電運転手の募集に指定された高卒指定枠に大学卒あるいは大学院修了の者が本来の学歴を隠して採用され、後年の調査で発覚したというケースも2000年代に報じられている。発覚すると長期にわたる停職や最悪の場合、免職などの懲戒処分を受けることになる。熊本県熊本市では同市の調査において同市交通局所属の市電運転手8名を含む18名の職員が逆学歴詐称を行っていた事が発覚した[11]

関連項目[編集]

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