天地無用 – Wikipedia

天地無用を表す矢印が描かれた段ボール箱

天地無用(てんちむよう)とは、運送用語で、わずかな傾きや衝撃で損壊する恐れのあるデリケートな対象物(電子機器、美術品、家具、液体の入った容器など)が入っているため、倒立状態(上下逆さま)ないし、横倒しまたは傾けた状態で輸送してはいけないことを指す。

天地無用とは、本来「逆さまにしてはならない」という意味で用いられる。もともとは運送業者の業界用語で、「天地入替無用」「天地顛倒無用」のように、「上下を入れ替える」ことを意味する語が添えられていたはずだが、四字熟語のかたちをとるために「入替」などの語を落としてしまったことに由来するものと考えられる[1][出典無効]

「天地無用」の四字は、そのまま読めば「天地が無用」、つまり「逆さまにしても構わない」という意味にも解釈できる。「逆さまにしてはならない」という意味は、漢語の文法に照らせば不正確な表現であり、慣用語としての意味を知らない者にはしばしば本来とは逆の意味で「逆さまにしても構わない」と誤解される恐れがある。そのため、近年では公的機関においては「天地無用」の文言を抑制し、よりわかりやすい表現に改める動きが見られる。

かつては郵便局で「天地無用」と記載された赤地に白字のシールを取り扱っていたが、現在は廃止されており、「この面を上に 逆さま厳禁 ↑↑ ゆうパック JP 日本郵便」と記載されたシールを採用している。英語表記では「This Side Up」(この面を上に)。西濃運輸では上記のものを配達する際にこの「天地無用」のシールを貼っている。また、ヤマト運輸では「この面を上に 天地無用 ↑↑ ヤマト運輸」と記載されたシールを採用するなど、よりわかりやすい表現に改められている。

上面にすべき面の縁に、二重矢印「↑↑」のピクトグラムで表記されることもある。正式には、JIS規格で「上」という名称が定められている。

郵便局では「天地無用」の記述を使用したシールの取り扱いは廃止しているが、「天地無用」の用語を使用すること自体は禁止されていない。現在は100円ショップなどで「天地無用」シールを販売している場合があり、発送依頼者が独自に購入したシールを使用したり、送り状に直接「天地無用」と記載することも可能である。