高木渉 (名探偵コナン) – Wikipedia

高木 渉(たかぎ わたる)[注 2]は、『週刊少年サンデー』で連載されている青山剛昌原作の漫画作品、およびそれを原作とするテレビアニメなどのメディアミックス作品『名探偵コナン』に登場する架空の人物。

アニメでの声優は同姓同名の高木渉が担当する(詳しくは後述)。ドラマでの俳優は土屋裕一が担当する。

警視庁刑事部捜査第一課強行犯捜査三係の刑事を務める巡査部長。年齢は推定26歳[1]

目暮警部と共に、事件の捜査に当たることが多い[注 3]。刑事歴は1年以上で3年以下である。作中で何度か拳銃を構える場面はあるが、発砲シーンが描かれていないため、腕前は不明。

性格は江戸川コナンら子供の話も真剣に聞く真面目かつお人好しで、コナン(工藤新一)や少年探偵団が子供たちだけで巻き込まれた事件や極秘の事件が発生した際には真っ先に頼られることが多い[2]。その性格のおかげか、交通部の婦警たちには人気があるということが、本庁の交通課へ異動してきた三池苗子から語られている[3]

テレビアニメでは最初期、原作でも序盤から登場し、レギュラーキャラクターとして出演していたが、モブキャラクターの域を出ていなかった。そのため、他の警視庁のレギュラー陣に比べると、家族構成などのプライベートな部分は未だ不明[注 4]。身内については、劇場版第16作『11人目のストライカー』では甥がいる発言があった。

劇場版には、原作初登場エピソード放送後の第3作『世紀末の魔術師』で初登場して以来、第6作『ベイカー街の亡霊』、第19作『業火の向日葵』、第21作『から紅の恋歌』、第23作『紺青の拳』を除いて毎年登場している。

初登場からしばらくの間は頼りない役回りが多かったが、18年間未解決だった佐藤の父の殉職事件を解決[5]してからは活躍する場面が増え、劇場版第11作『紺碧の棺』では瞬間接着剤を使って指紋を定着させる「シアノアクリレート」で被疑者の指紋を採取することに成功しており、佐藤美和子に感心されている[注 5]。しかし、単独行動が仇となって死にかける[5][6]、犯人による拉致監禁が高じて命の危機に遭う[7]、連行中の犯人に逃亡される[8]、のちに恋仲となる佐藤(後述)へ贈る予定だった高額の指輪が事件に巻き込まれた挙句に水没する[9]、覚醒剤の密売人を護送中にその被疑者を殺害されて佐藤と共に減給処分を受ける[10][注 6]、といった気苦労が絶えない。

普段の乗用車は、覆面パトカーの日産・スカイライン25GTターボ(R34型後期セダン)[注 7]。テレビアニメでは関越自動車道で少年探偵団を群馬へ連れて行く際、エアコン未搭載のトヨタ・パブリカを運転していた[11]。また、単行本36巻「本庁の刑事恋物語」ではスバル・レガシィ(3代目)に乗っていた(直後に爆発で大破)。

第1回キャラクター人気投票での順位は第8位(40票)、テレビ&劇場版キャラクター人気投票は10位、第2回キャラクター人気投票でも10位(226票)と、警察関係者の中では最も人気が高い。2020年5月7日発売の雑誌『ダ・ヴィンチ』2020年6月号で実施された「読者にしあわせを与えてくれたキャラ」ランキングでは13位を獲得した[12]

警視庁のレギュラーの中では目暮警部を除いて唯一、警察官着任以前のエピソードが描かれていない。また、目暮警部や松本警視を含め、警視庁のレギュラーで唯一5年以上前のエピソードが登場しない。

「怪盗キッドと四名画」[13]で怪盗キッドに、『ルパン三世VS名探偵コナン THE MOVIE』でルパン三世に変装されているため、毛利小五郎と並んで両者に変装された経験を持つ[注 8]

発言[編集]

単行本36巻の東都タワーでのコナンとのやりとり[15]や、劇場版第9作『水平線上の陰謀』など、コナンの高い推理力を知って彼をただの子供とは見ておらず、警察関係者ではコナンの核心に接近しかけた数少ない人物の一人である[注 9]。コナンに「君は一体何者なんだい?」と尋ねるなど、正体に迫ろうとしたことがある[15]一方、コナン自身も高木と一緒に居るときは子供らしい口調を用いず、素の状態で接することもある。

目暮警部に「バカ者!」と怒鳴られることも多いが、怒鳴られてばかりではなく「じゃあ、警部ならどうするんですか!」と言い返すこともある[18]

嗜好[編集]

大のプロレス通であり、それが事件と密接に関わった際には興奮してその知識をまくし立てたため、周囲から引かれたことがある[19]。また、プロレスラーが殺害された事件ではつい喋りすぎ、目暮警部に殴られるような結果となってしまった[19]。それ以外にも、ビデオ収集などの趣味を持っている様子[注 10]。映画やテレビドラマ、芸能人などのエンターテイメント系については、人並みかそれ以上の知識がある[注 11]

タバコは吸わない[注 12]が、嫌煙家とされるほど露骨に嫌う様子は見られない。

対人関係[編集]

口調は、年上・年下にかかわらず基本的には敬語を用い、子供に対しても割と丁寧に話しているが、同期(アニメでは後輩)で友人の千葉刑事に対してのみタメ口になる[注 13]。また、名前の呼び方も目上の警察関係者には名字に階級付け、ほぼ同格の警察関係者(佐藤など)や一般人には名字に「さん」付け、子供には名前に「ちゃん」か「君」付けであるが、千葉刑事だけには呼び捨てである。なお、周囲からの呼称は「高木刑事」が多いが、目上の警察関係者は「高木君」(目暮警部、佐藤刑事らから)、「高木」(松本警視、目暮警部〈まれに〉らから)、毛利小五郎と原作の千葉刑事は「高木」(小五郎に限ってはまれに「高木刑事」「高木君」と言う場合もある)、アニメ版と原作76巻以降の千葉刑事は「高木さん」、阿笠博士は「高木君」「高木刑事」である。

一人称は、コナンたちや目暮警部などとの会話時は「僕」であるが、千葉刑事との会話時やモノローグでは「オレ」と言っている。また、事件の捜査中には「私」を使う場合もある。

少年探偵団の面々と仲が良く、うっかり捜査中の事件のことを話してしまうこともしばしば[23]。特にコナンからは信頼されているようで、事件についての調査を依頼される[24]、コナンが単独で対峙した犯人の逮捕に協力する[25][26]などの姿が散見される。また、小五郎や阿笠博士の何気ない一言からトリックに気付くことが多く、それを聞いても気付かない目暮警部をつい「バカ」と呼んでしまい、殴られてしまうこともしばしばある[27]

1年前までは3歳上の先輩・伊達航とコンビを組んでおり、一課内では2人の名前の読みが同じことから「ワタル・ブラザーズ」と呼ばれていた。伊達は1年前に不慮の交通事故で死亡するが、それが原因で起こった事件で高木自身が生命の危機に晒されたことがある。伊達曰く、警察学校の同期である安室透と背格好が似ているとのこと[7]

本庁の刑事恋物語[編集]

2歳年上の佐藤美和子刑事とは上下関係から始まって恋愛関係へ発展した仲であり、彼女との恋愛模様を交えながら描かれるエピソードにはほぼ「本庁の刑事恋物語」のシリーズ名が付けられている。

佐藤にはずっと想いを寄せており、松田刑事[注 14]が殉職することとなった爆弾犯が再び起こした事件[15]を解決してからは急接近し、相思相愛の仲[注 15]であることが公認の事実となっている。しかし、警視庁捜査一課以外の者も含む千葉刑事以外の男性の同僚たちからは佐藤との仲を認められておらず、何かにつけてデートを邪魔されたり[9]、嫌みを言われたりしているが、白鳥と小林先生の交際が始まってからはそのような妨害は無くなった。また、佐藤とキスをしかけるたびに邪魔が入ってできなかったものの[15][29][30]、犯人逮捕時の怪我による入院中に少年探偵団の計らいによってようやく実現した[6]ほか、監禁された高木を佐藤が助けに来た際には捜査一課の面々が中継を見守る中で堂々とキスをしたこともある[7]。アニメオリジナルエピソードでは、拳銃強盗事件の捜査中に「風邪を引いた」と嘘をついて休暇を取り、正規休暇中の佐藤と共に大分県の湯布院町を訪れたことがある[31]

少年探偵団には佐藤との交際が始まる前から恋路を応援されており、始まった後も彼女との仲を心配されたりもしている。なお、コナンは高木と佐藤の関係を、自分(新一)と毛利蘭の関係と重ね合わせているようである[15]

2016年11月には、サイバードの『名探偵コナン公式アプリ』にて、本シリーズの特集キャンペーンが行なわれた[32]

登場の経緯[編集]

高木渉としての容姿と声でそろって正式に初登場を果たしたのは、アニメ66話「暗闇の道殺人事件」(アニメオリジナル)である[33][注 16]。当初、事件の経過を説明する役回りは不特定の警官や目暮警部が担当していたが、どうしても事件経過を説明する進行役が必要になったことから、アニメオリジナルキャラクターの制作が決まった[33]。その当時、まだ出番の少なかった小嶋元太役の高木渉がもっと出演したいという希望を持っていたため、それなら高木刑事を作ってしまおうということになった[33]。普通は役者の名前をそのまま役名にはしないが、当時の高木はただの進行役の状態(端役)であり、それほど重要なキャラクターとしては考えられていなかったため、名前は何でもよかったという[33]

本来は名前なしのモブキャラクターだったが、目暮警部役の茶風林からアドリブで名前を尋ねられた際に声優の高木が「高木です」と自分の本名を名乗るというアドリブで切り返したことから定着した旨が、2016年に報じられている[36]。ただし、このようなシーンは先述のアニメ66話「暗闇の道殺人事件」には存在せず、同エピソード内での目暮警部との初めてのやりとりで目暮警部は「何? 高木刑事、すぐに調べるんだ」と名前を尋ねることなく名指ししている。

2022年には、劇場版第25作『ハロウィンの花嫁』の完成披露舞台挨拶に登壇した声優の高木が、高木刑事の登場の経緯を明かしている。それによれば、端役の警官Aがレギュラー化したら元太と両方で呼ばれたいとの思いから、自分で勝手に「高木です」と名乗っていたところ、スタッフも目暮の補佐役を探していたために高木刑事が誕生したという。なお、千葉一伸も同様に警官Aで遊んでいたところから容姿すら似せた千葉刑事が誕生したが、その後に警官Aを担当した長嶝高士の場合は「三番煎じ」と見なされて却下されたという[37]

原作での初登場は、単行本18巻で電話に出る際に「高木です」と名乗るシーンで[38]、原作公認となって以降は頻繁に登場している。

前述の通り、初登場時はそれほど重要なキャラクターとして考えられていなかったが、「本庁の刑事恋物語」のシリーズ化以降は中心キャラクターの1人である。また、声優が元太と同じであることからアニメ405話「救急車を呼びに行った男」(アニメオリジナル)には、次回予告のラストで「マジック」として声を元太に変えるといったお遊び要素も盛り込まれている。

注釈[編集]

  1. ^ 但し、アニメ22話「TVドラマロケ殺人事件」から原型と思われるキャラクターが台詞無しを含めて何回か登場している。
  2. ^ アニメ146話「本庁の刑事恋物語(前編)」では「高木ワタル」と表記されているほか、読売テレビの公式サイトでも2016年にリニューアルされるまでは「高木ワタル」と表記されていた。
  3. ^ そのため、作中の警察関係者では目暮警部に次いで登場回数が多く、阿笠博士、灰原哀、少年探偵団と同程度、アニメではオリジナル作品も含むため、彼ら以上に出番が多い。
  4. ^ 鳥取県警への派遣の情報が流れた際、田舎が鳥取ということに誰も疑問を持たなかった[4]ことから、鳥取出身の可能性がある。
  5. ^ なお白鳥任三郎からは「鑑識課へ異動しろ」と嫌みを言われていた
  6. ^ 偶然その場に居合わせたコナンの推理により殺人犯は捕まった。
  7. ^ ナンバープレートの数字は声を担当する高木の誕生日に合わせて「・7 25」。
  8. ^ 小五郎は「集められた名探偵!工藤新一VS怪盗キッド」[14]で怪盗キッドに、『ルパン三世VS名探偵コナン』でルパン三世に変装されている。
  9. ^ 高木以外では、長野県警の大和敢助がコナンの真の推理力に気付いたうえ、高木も気づいていない「眠りの小五郎」がコナンの推理である事実(ただし、直接見ていないのでトリックは知らない)まで見抜いており、正体を疑うまでに至っていないながら、高木とは違う角度でコナンの核心に接近しかけている[16]。また、公安警察も含めれば安室透(降谷零)が、こちらはコナンの推理力から正体を疑うだけではなく、「眠りの小五郎」の具体的なトリックまで見破っており、コナンの正体を突きとめていないながらも、大和と高木以上にコナンの核心近くに迫っている[17]
  10. ^ テレビの配線を簡単に直した際、横にいた千葉刑事が述べている[20]。ただし、それ以後に語られたことはない。
  11. ^ 芸能人が事件に遭遇した際、逆にエンターテイメント系に疎い目暮警部にその芸能人の説明をしている描写が散見される[21]
  12. ^ 劇場版第11作『紺碧の棺』では、捜査目的で無理に吸って咳き込んでいる。このとき、佐藤が「タバコ吸ったっけ?」と尋ねており、フィルムコミックでは「吸いません」と明言(直後に指紋の鑑定を依頼する言葉を発しており、音声のみでは佐藤の質問に「吸いません」と答えたのか依頼の前置きとして「すいません」と口にしたのか判別できない状態だった)しているが、アニメ80話「放浪画家殺人事件」では普通に吸っている。これ以外に喫煙者だとする描写は無い。
  13. ^ テレビアニメでは、千葉に対してゲンコツを入れたり[20]、アザができるほどボコボコにしたこともある[22]
  14. ^ 松田刑事とはどことなく似通ったところがあるため、高木が張り込みで変装した姿は松田にうり二つとなっている[28]
  15. ^ 捜査中にもかかわらず(実際のところ、その日は2人とも非番ではあったが)、直前まで参加していた合コンに関する痴話喧嘩をしていたり[29]、2人で温泉に行く約束をしたり[6]、コナンたちが後部座席に居るのも忘れて2人だけの世界に突入したりしている[29]
  16. ^ 担当声優の高木渉は、放送開始当初は千葉刑事役の千葉一伸とともに警官役などを演じており、初登場以前のアニメ22話「TVドラマロケ殺人事件」やアニメ26話「愛犬ジョン殺人事件」(いずれもアニメオリジナル)、アニメ31話「テレビ局殺人事件」[34]などの初期の作品には、高木刑事似の刑事(声優も一部の回を除いて高木が担当)が登場していた。そして、アニメ42話「カラオケボックス殺人事件」で声のみだが「高木刑事」として登場しており、エンディングにも「高木刑事 高木渉」とクレジットされる[35]。ただし、のちに登場する高木刑事と同一人物と設定されているかは、2022年現在も明確な製作側からの言及が無く不詳である。

出典[編集]

外部リンク[編集]