玉川奈々福 – Wikipedia

玉川 奈々福(たまがわ ななふく、7月19日 – )は、神奈川県横浜市出身の曲師出身の浪曲師である。日本浪曲協会理事(2012年就任)、2013年8月、NHK東西浪曲大会に初めて出演した。浪曲を聞かせる三味線ユニットを組んだり、漫才と浪曲の組み合わせ[2]、イタリアオペラに語り役で客演したり、義太夫節と共演するほか分野を越えた活動をし、製作も担当してきた。アニメや小説を浪曲に書き起こしたり長編の演目を一挙に口演するなど浪曲師の面と、琵琶との共演に応じたように演奏家(曲師)の両面で活動する。

文化庁文化交流使に任ぜられると、曲師の沢村美舟とともに2018年初夏からおよそ6週間、ヨーロッパほか7ヵ国を歴訪し、各国で浪曲を口演したり訪問地で民族音楽演奏家と交流を深める[注釈 1]。帰国後、交流の体験を述べた(東京大学伊藤謝恩ホール[4])。

能楽師の安田登が率いる演劇「イナンナの冥界下り(めいかいくだり)」[注釈 2]の海外海外公演[7]とともにイギリスほかリトアニアで巡演、2018年に初めて中国で演じた。2021年11月 (2021-11)現在の相三味線(あいじゃみせん)は、曲師の最高峰、沢村豊子。

浪曲師として2019年2月、初めて能舞台で演じた(銀座・観世能楽堂[8])。

2021年現在は浪曲師としての活動が中心であるが、曲師として演ずる事もある[疑問点]。木馬亭などの日本浪曲協会主催の会に出演するほか、浪曲イベントのプロデューサーとして自らの独演会や各種浪曲イベントを多数企画し客前に立つ。 舞台にかける演題は、古典はもとより新作浪曲を多数、書き上げている。

浪曲界から場を広げ、落語・講談・文楽、琵琶・篠笛・尺八、和妻・日舞・オペラ・パンソリなど他ジャンルの芸能・音楽との交流を多岐にわたって行う。2014年より能楽師・安田登と組み、日本の伝統的「語り」のコラボレーションの試みとして、夏目漱石の『夢十夜』『吾輩は猫である』、小泉八雲の『耳なし芳一』『雪おんな』などを各地で口演。

また一般人を対象として、2011年より浪曲講座の講師を務める[要出典]

古典演目[編集]

  • 『源太しぐれ』
  • 『梅ケ谷江戸日記』

など

新作浪曲[編集]

玉川奈々福作
その他

企画プロデュース[編集]

  • 玉川福太郎の徹底天保水滸伝(全5回)
  • 玉川福太郎の浪曲英雄列伝(全5回)
  • しゃみしゃみいず:沢村豊子、玉川みね子、沢村さくら等と曲師のユニット。
  • 浪曲乙女組!
  • 義太夫節と浪花節の会
  • 浪曲タイフ~ン!:春野恵子と「あとまわシスターズ」
  • 銭形平次捕物控 雪の精 長編浪曲一挙口演の会
  • 神田愛山・旭堂南海二人会 悪党物語長講一席二日連続公演
  • 天にとどろけ、地に響け! 浪曲の魂 大利根勝子 in 木馬亭
  • 今日はとことん 清水次郎長伝!
  • 爆音傑作浪曲会
  • 悲願千人斬りの女 長編浪曲一挙口演の会
  • 笑う浪花節 vs. 泣く浪花節
  • 講釈と浪曲でつづる 今日はとことん天保水滸伝
  • 浪曲からパンソリへ、パンソリから浪曲へ~半島と列島を結ぶ芸能の道、路上の声~
  • 祝・幸いってん舞台復帰! 東西浪曲若手競演
  • 玉川奈々福の浪曲破天荒列伝(全5回)

など 

出演映画[編集]

  • 本橋成一監督『ナミイと唄えば』
  • 田島空監督『噂の玉川奈々福 キネマ更紗』(ドキュメンタリー)

過去の出演番組[編集]

主な作品[編集]

CD、DVD[編集]

  • 『ほとばしる浪花節! 玉川奈々福の寛永三馬術:曲垣と度々平/大井川乗り切り』
    • DVD版『ほとばしる浪花節 玉川奈々福ライブ! 』玉川奈々福(出演)、アスペクト比1.78:1、カラー、ワイドスクリーン、57分。クエスト、2018年9月、EAN 4941125080019、ASIN B07F7V1WNT
  • 『舞いよ舞え・恋々芝居・銭形平次捕物控玉川奈々福殺人事件』2019年6月19日、日本コロムビア(COCA-17640)、国立国会図書館書誌ID:029653706、全国書誌番号:23277822
    • 収録内容(部分): (4) 恋々芝居 (オリジナル・カラオケC#m)、(5) 浪曲「銭形平次捕物控玉川奈々福殺人事件」。

著作[編集]

  • 『浪花節で生きてみる!』(さくら舎)2020年12月、ISBN 978-4865812749、全国書誌番号:23476302
    • 「第1章 旅行けば〜—浪花節のココロ」
    • 「第2章 ああなりまして、こうなって—玉川奈々福ができるまで」
    • 「第3章 青葉若葉に風薫る—師匠が空に消えた日のこと」
    • 「第4章 利根の川風たもとに入れて—特別の人たち」
    • 「第5章 遠くちらちら灯りが揺れる—灯りは見えるか、面白くなれるか」
    • 「付録 バカは死ななきゃなおらない—野露に濡れながら育ってきた浪曲の歴史」

雑誌寄稿[編集]

  • 玉川 奈々福「around100歳の肖像 合わせて百八十三歳! 夫婦で浪曲の舞台に挑む。 浪曲師 九十一歳 玉川桃太郎 曲師 九十二歳 玉川祐子 (特集 すてきなアラハン around100歳)」『東京人』第30巻第11号(通号359)、2015年10月、90-95頁。※=号数はNDLデータママ。
  • 高田 文夫、玉川 奈々福、馬場 憲一「対談 浪曲いいねぇ (特集 平成の浪曲時代がやってきた! : ジャズでロックでソウルフル!)『東京人』第32巻第2号(通号380)、2017年2月、16-25頁。
  • 玉川 奈々福「わたしの衣・食・遊・住」『悲劇喜劇』第70巻第5号(通号788)、2017年9月、55-57頁。
  • 釈 徹宗、玉川 奈々福「対談 釈徹宗のだから世間は面白い(第59回)常に新機軸を打ち出すのが、「浪曲」という芸能なんです。」みずほ総合研究所(編)『Fole』第182号、2017年11月、26-30頁。
  • 千葉 望「現代の肖像 浪曲師 玉川奈々福 浪曲を今に生きる大衆芸能に」『AERA = アエラ』第31巻第43号(通号1700号)、2018年9月、56-61頁。
  • 中島 京子、玉川 奈々福「対談 中島京子の扉をあけたら(第35回)いま、なぜ浪曲が求められているのか。 玉川奈々福(浪曲師)」『本の窓』第42巻第8号(通号389号)、2019年9・10月、20-27頁。
  • 玉川 奈々福「浪花節、欧州・中央アジアをゆく!」明治神宮国際神道文化研究所(編)『神園』第22号、2019年11月、38-45頁。掲載誌別題『Journal of the Meiji Jingu Research Institute』。
  • 橘蓮二、玉川奈々福(述)「薬問屋さんの薬箪笥」『喬太郎のいる場所 : 柳家喬太郎写真集』CCCメディアハウス、2020年7月。
  • 玉川 奈々福「己の誠はどこにある。 : 自粛で問われた芸の真髄 (特集 緊急事態宣言下のまち。 : 2020春、東京の記録)」『東京人』第35巻第9号(通号428)、2020年8月、52-55頁。
  • 重松 清、玉川 奈々福、神田 蘭「婦人公論井戸端会議2020(第7回)講談、浪曲。語りましょう、「話芸」のツボ」『婦人公論』第105巻第17号(通号1547)、2020年8月、102-107頁。

参考文献[編集]

本文の典拠、主な執筆者名、出版者名の順。

関連項目[編集]

50音順。

関連資料[編集]

本文の典拠ではないもの。項目名ごとに発行年順。

講談、落語、浪曲の基礎知識
  • 瀧口雅仁(編著)〈知っておきたい日本の古典芸能〉シリーズ(丸善出版)2019年。
作品の解説(古典)
  • 『阿漕ヶ浦』には江戸時代の絵入り本もある。鳥居清経(画)『三千三百阿漕浦』第3巻、和装、1769年(明和6年)、doi:10.11501/8929553、国立国会図書館デジタルライブラリー、インターネット公開。
  • 「お民の度胸」にはアニメ版もある。『アニメ浪曲紀行 清水次郎長伝』第7巻、東京 : コロムビアミュージックエンタテインメント/スバック、2001年、26分。ビデオカセット1巻。字幕、カラー ステレオ (一部モノラル)。
  • 『源太しぐれ』は1930年代に流行歌にもなった。小唄勝太郎『源太しぐれ』谷屋光次(作詞)、町田嘉章(作曲)、日本ビクター和洋合奏団、ビクター(51959)、1931年10月、2分37秒。HiRAC(歴史的音盤アーカイブ)提供、国立国会図書館/歴史的音源配信参加館内限定公開。
  • 講談版の寛永三馬術。
作品の原典(2=新作)
  • 正岡容『円太郎馬車』に取材した作品は「置き土産」「浪花節更紗」。正岡容「浪花節更紗」『円太郎馬車』三杏書院、東京、1941年(昭和16年)。doi:10.11501/1134261、NDLJP:1134261。近代デジタルライブラリー、インターネット公開。

注釈[編集]

  1. ^ 派遣先はイタリア、スロベニア、オーストリア、ハンガリー、ポーランド、キルギス、ウズベキスタン[3]
  2. ^ 「イナンナの冥界下り」[6]は世界最古の演劇と伝わり、安田登が現代劇に翻案した。
  3. ^ 筑紫市兵衛は、馬の乗り手3人のひとり。解説は、徳田浩淳「筑紫市兵衞(寛永三馬術の一人)」『物語・栃木県史』栃木新聞社、1975年、163-180頁 (コマ番号0085.jp2-)、doi:10.11501/9640535、国立国会図書館/図書館送信参加館内公開。
  4. ^ 浪曲師の国友忠による口演が伝わる[15]
  5. ^ 『慶安太平記』の解説は、藤井武夫[16]、尾河直太郎[17]、また加太こうじ[18]を参照。
  6. ^ 俵星玄蕃は槍の名人という設定[19][20]
  7. ^ 二代目広沢虎造 (1899-1964) の演じた「お民の度胸」の録音がある[21]
  8. ^ 「石松金毘羅代参」はアニメ化もされ[22]、二代広沢虎造の口演版もある[23]
  9. ^ 「第十四席 忠治山形屋藤藏を責めて嘉右衛門親娘を助ける事、並に猿橋大格鬪の事」『長篇講談全集 國定忠治』長編講談会(編)、金園社、1954年(昭和29年)、248頁- (コマ番号0131.jp2-)。全国書誌番号:58001794、doi:10.11501/1667510、国立国会図書館内/図書館送信。
  10. ^ 明治末の柳家小三治による落語は正直者の主人公・清兵衛をめぐる噺である[24]
  11. ^ 広沢菊春の口演による浪曲版[25]のほか、三遊亭兼好の落語版[26]
  12. ^ 木下良夫監修の解説によるアンソロジーに木村重松の録音が含まれる[27]
  13. ^ 「仙台の鬼夫婦」は瀧口雅仁(編著)『講談』に記載がある。
  14. ^ 岡本綺堂に「塩原多助」に関する随想がある[29]
  15. ^ 「亀甲縞の由来」は東家落雁(あずまや らくがん)の口演がある[30]
  16. ^ 『金魚夢幻』の着想は小説『刺青』(谷崎潤一郎)に根ざす[8]

出典[編集]

外部リンク[編集]