マルバオモダカ – Wikipedia

マルバオモダカCaldesia parnassifolia)は、オモダカ科マルバオモダカ属に属する植物。湖沼やため池などに生息する抽水植物である。種小名のparnassifoliaは、ラテン語で「parnassi(パルナッス山)+folia(葉)」という意味であり、パルナッス山のように丸い葉を持ったオモダカ、を意味している。

日本や中国をはじめ、アジア大陸やヨーロッパ大陸、オーストラリアなどに分布する。ただし日本やヨーロッパでは個体数が減少しており、多くの地域で絶滅危惧種に指定されている。また、スイスなどでは既に絶滅している[3]

日本では、池沼や湿地の開発や水質の悪化に伴って個体数が減少しており、個体数は5000個体程度と推定されている[2]。そのため、環境省のレッドデータブックでは絶滅危惧II類に指定されている。

形態、生態[編集]

マルバオモダカの花
マルバオモダカの殖芽
マルバオモダカの種子

湖沼の周縁や、比較的深い場所(水深1m弱程度まで)に生息している。深いところでは浮葉を中心に展開するが、浅いところでは抽水葉を多くつける。葉は通常腎臓型だが、初期浮葉は卵形になるものもある。8月から9月にかけて、長さ50cm-1mほどの花茎を水上に伸ばす。また、水中に伸ばした花茎の、本来花序が出来る部位に殖芽(栄養繁殖体)を形成し、無性生殖的にも繁殖する[4]。これは一種のアポミクシスである。殖芽は茎から容易に外れ、種子同様水中に散布される。

花茎は円錐花序で、花柄は3輪生。各花柄の先に、3枚の花弁と6本の雄蕊、6-10本の雌蕊をもつ白い花をつける。花弁は白色で、花弁の縁には浅い切れ込みが入る。葯は黄色で、雌蕊の先と葯がほぼ同じ高さに位置する。

胚珠はむき出しになっており、受粉して種子が形成されたあとも、種子に雌蕊の痕跡が残る。種子には縦方向の溝がある。

受粉はミツバチなどの送粉者に頼っており、自家受粉や隣家受粉による結実率は他家受粉に比べて低下する[5]

染色体数は2n=22[6]

同属に、中国などに生息する Caldesia grandis がいる。マルバオモダカと類似しているが、雄蕊の本数が9-12本になる点などで異なる[7]

食用にはならず、特に利用されることはない。ジュンサイを栽培している池に生息していることもあり、その場合は水田雑草として扱われることもある。

  1. ^ Zhuang, X. 2010. Sagittaria pygmaea. In: IUCN 2011. IUCN Red List of Threatened Species. Version 2011.1. . Downloaded on 12 October 2011.
  2. ^ a b 環境庁自然環境局野生生物課編『改訂・日本の絶滅のおそれのある野生生物8 植物I(維管束植物)』 財団法人自然環境研究センター、2000年、ISBN 4-915959-71-6。
  3. ^ Fiches pratiques pour la conservation – Plantes à fleurs et fougères (situation octobre 1999)(PDF)
  4. ^ Agnes Robertson Arber “Water Plants; A Study of Aquatic Angiosperms”(2008) p.224 ISBN 978-1408651469
  5. ^ Gituru et al.(2003) “Reproductive biology and prospects for conservation of Caldesia parnassifolia (Alismataceae)—A threatened monocot in China”, Wuhan University Journals Press 8 117-124
  6. ^ Lucjan Rutkowski: Klucz do oznaczania roślin naczyniowych Polski niżowej. Warszawa: Wyd. Naukowe PWN, 2006. ISBN 83-01-14342-8.
  7. ^ Ming-Jou Lai.(1977) “A Re-evaluation of a Caldesia Plant in Taiwan”, TAIWANIA 22 100-104

参考文献[編集]

関連項目[編集]