アルテ (漫画) – Wikipedia
『アルテ』(イタリア語: Arte)は大久保圭による日本の漫画。大久保の初連載作品であり、コアミックス(旧ノース・スターズ・ピクチャーズ)発行の『月刊コミックゼノン』にて2013年10月25日発売の12月号より連載開始[1]。
『月刊コミックゼノン』編集部の久永兼士の言によれば、大久保にはルネサンス期のイタリアを舞台を描きたいという熱意があり、その熱意に編集がほだされる形で連載が始まった[2]。
2014年の「NEXTブレイク漫画RANKING」では、15位に選ばれた[3]。2021年1月時点で単行本の累計発行部数は140万部を突破している[4]。
あらすじ[編集]
第1話 – 第36話[編集]
16世紀初頭のルネサンスの後期。レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロなどの巨匠が15世紀に活躍したルネサンス文化の中心地、芸術の都・フィレンツェから物語は始まる。
フィレンツェの裕福でない貴族の娘であるアルテは絵を描くことにのめり込んでいた。父が亡くなり、男に気に入られて結婚し「まともな生活」を送ることを望む母と反発し、アルテは家を飛び出す[3]。画家となるべく画家工房を回るが、アルテが女であるというだけで相手にもされない。
唯一、自分の絵を見てくれたレオの工房に引き取られるが、レオは貴族娘の我儘と思い、弟子にするつもりもなく「テンペラ画の地塗りを一晩で20枚作る」という無理な課題を命じる。翌朝、課題を仕上げたアルテにレオは画家を目指す動機をたずねたところ、「職人(画家)になるのが目標ではなく、自分自身で生きる道筋をみつけたい」と答えた。レオは自身が物乞い出身であり、アルテと似たような動機で画家を目指したことから、アルテの弟子入りを許す[3]。
「女の画家見習いである」ということで周囲の反発も多かったアルテだったが、持ち前の明るさと頑張りで男女の壁を乗り越え、徐々に理解者を増やしていった[3]。ヴェネツィア貴族のユーリは、そんなアルテが働いていた様子を見て気に入り、アルテを姪の家庭教師にと雇おうとするが、アルテはこれを断る。
そんな中、レオの師匠の娘・ルザンナが身重の身体でレオに会いに来る。夫が亡くなり、夫の実家から持参金を返してもらおうとしたのだが、相手にされないというのだ。それを知ったアルテは、ユーリと掛け合い、ルザンナの助けとなることを条件に、ユーリの申し出を受け、ヴェネツィアへと旅立つ。
ヴェネツィアでは、これまで何人もの家庭教師が辞めていったユーリの姪カタリーナの家庭教師となる。礼儀作法も完璧で何一つ教えるようなことのないカタリーナだったが、両親の前では礼儀作法のできない娘を演じていた。事情を知ったアルテはカタリーナとのわだかまりも解かし、カタリーナの母であるファリエル家夫人ソフィアとカタリーナの肖像画を描き上げる。スポンサーになるというユーリの申し出を断り、アルテはフィレンツェへと戻った。
第37話 –[編集]
ヴェネツィア大貴族の肖像画を描き、なおかつ申し出を断ったという噂もあって、フィレンツェのレオの工房に戻ってきたアルテには、貴族たちから夫人や令嬢の肖像画の作成依頼が舞い込むようになる。貴族出身の教養ある女性ならではの視点で描かれる「繊細で柔らかな肖像画」は顧客を満足させたが、女性であるがゆえに「宗教画の注文が来ない」といったような壁にも当たった。
その一方で、アルテのさらなる成長のために、レオ以外の親方の下で修業させるべきではないかという話が持ち上がってくる。
登場人物[編集]
声の項はテレビアニメ版の声優。
主要人物[編集]
- アルテ
- 声 – 小松未可子[5]
- 本作の主人公。明るく、負けん気が強い頑張り屋。目をきらきらさせ、夢に向かって突き進んでいく[3]。
- レオに恋心を抱いているような描写もあり、ヴェロニカなどは察しているが、本人には恋愛経験も無いことから自覚が無い。
- レオ
- 声 – 小西克幸[5]
- 物乞い出身の親方。無愛想で感情をあまり表に出さない。これまで弟子を取ったことは無く、当初はアルテを弟子に取ることにも否定的だったが、アルテの実直な姿にかつての徒弟時代の自分を重ね合わせ、彼女を弟子にすることを決断する。
フィレンツェ[編集]
- ヴェロニカ
- 声 – 大原さやか[6]
- レオの依頼主の1人でもある高級娼婦。非常に顔が広くて博識で聡明であるが、娼婦としての狡猾さも併せ持つ魅力的な女性として描かれている。アルテのことを気にいって友人となり、いろいろと相談に乗る。娼婦として客との会話のために幅広く蔵書を集めて読んでおり、それらの本はアルテを通じて「ダーチャの読み書きの教本」としても使われている。
- 収入で家族を養っている。
- アンジェロ・パーカー
- 声 – 榎木淳弥[6]
- ダニロ工房で徒弟職人として働いている少年。姉妹の多い家庭で育ったため、無自覚に女性に親切で扱いにも慣れている。また、「女性はか弱いから、男性が手助けしなくてはならない存在」と姉妹たちから刷り込まれており、アルテにも女性ということで親切にするが、アルテからはその親切を拒否されたことで、関心を持つようになる。
- ウベルティーノ
- 声 – 秋元羊介[7]
- 一代で財を築いた、頑固者で偏屈な老商人。絵画にはまったく興味はなく、あくまで「ビジネスのための商売道具」と思っている。レオの親方と生前に交流があり、親方から遺言としてレオのことを頼まれたことから、いろいろと無理な注文をレオに依頼しては面倒を見ている。
- ダーチャ
- 声 – 安野希世乃[8]
- 農家出身。結婚時の持参金を自力で稼ぐために針子として働いている娘。文字の読み書きも行えなかったが、アルテから教わり友達となる。男性に慣れておらず、女慣れしているアンジェロには赤面していた。
- シルヴィオ枢機卿
- アルテにイレーナの肖像画を描く仕事を依頼する。
ヴェネツィア[編集]
- ユーリ
- 声 – 鳥海浩輔[6]
- ヴェネツィアの名門貴族ファリエル家当主の弟。フィレンツェに来た際にアルテを見て気に入り、「面白そう」という理由で姪のカタリーナの家庭教師兼義姉の肖像画を描く画家としてアルテを雇う。
- フェリエル家の当主の兄とは腹違いの兄弟であり、黒髪の兄とは違ってユーリは金髪である。商才のない兄に代わって実質的にフェリエル家を取り仕切っている。カタリーナの母ソフィア(声 – 田中理恵[7])とは男女の仲である。姪であるカタリーナのことを、なにより大事に思っている。
- カタリーナ
- 声 – M・A・O[6]
- 名門貴族ファリエル家の長女。男児を望んだ父の思惑もあり、長らく父母の元を離れ、6歳になるまで乳母と暮らしていた。その後、長男が誕生したと同時に、乳母が病による急死したため、実家に引き戻される。
- 父母や屋敷の使用人たちにも秘密で、ユーリとユーリの屋敷の使用人だけは知っているが、料理を作るのが好き。母譲りの美形であるが、父は黒髪・母は茶系の金髪である一方で、カタリーナはなぜか金髪である[注 1]。
- マテイ
- 声 – 梯篤司
- アルテの理解者だが失言と捉えられかねない発言をしてしまう。
カスティーリャ[編集]
- イレーネ
- シルヴィオ枢機卿の客人として、アルテの生家だった館に滞在中。シルヴィオ枢機卿は、イレーネが滞在中の情報を探ることを目的として、アルテにイレーネの肖像画を描くよう依頼した。
- 正体はカスティーリャ女王フアナの娘、カタリーナ王女である。
書誌情報[編集]
テレビアニメ[編集]
2020年4月から6月までTOKYO MXほかにて放送された[6][21]。
アニメーション制作はSeven Arcsが行い、同社のグループ再編後最初の作品である。
コミックス8巻までのストーリーを元に制作され、おおむね原作どおりの展開で描かれている。最終回については、レオが病いで倒れたために、レオが請けていた教会の天井画をアルテが代行することになり、画家の弟子たちと共に描ききるというアニメオリジナルの展開となった。
スタッフ[編集]
- 原作 – 大久保圭[6]
- 監督 – 浜名孝行[6]
- シリーズ構成・脚本 – 吉田玲子[6]
- 時代考証・脚本 – 鈴木貴昭[6]
- キャラクターデザイン・総作画監督 – 宮川智恵子[6]
- サブキャラクターデザイン – 宮地聡子[6]
- プロップデザイン – 岡戸智凱、岩畑剛一[6]
- 美術設定 – 吉原一輔[6]
- 美術監督 – Scott MacDonald[6]
- レイアウト監修 – 益田賢治[6]
- 色彩設計 – 舘絵美子[6]
- 撮影監督 – 能代拓也[6]
- 編集 – 関一彦[6]
- 音響監督 – えびなやすのり[6]
- 音楽 – 伊藤ゴロー[6]
- 音楽制作 – フライングドッグ[6]
- 音楽プロデューサー – 福田正夫、柴田滋
- プロデューサー – 藤井貴大、塩入聡太、楊國祥、稲本幸子、伊藤将生、小田元浩、宮城惣次、吉川敦史、中野則俊、金子広孝、大森慎司、永野雅彦
- アニメーションプロデューサー – 畑中悠介
- アニメーション制作 – Seven Arcs[6]
- 後援 – イタリア大使館[22]
- 製作 – アルテ製作委員会
主題歌[編集]
- 「クローバー」[23]
- 坂本真綾によるオープニングテーマ。作詞は坂本、作曲は水口浩次、編曲は河野伸。
- 「晴れ模様」[8][24]
- 安野希世乃によるエンディングテーマ。作詞は西直紀と山本玲史、作曲は山本玲史、編曲はh-wonder。
各話リスト[編集]
話数 | サブタイトル | 脚本 | 絵コンテ | 演出 | 作画監督 | 初放送日 |
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#01 | 弟子入り志願 | 吉田玲子 | 浜名孝行 | 齋藤昭裕 |
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2020年 4月4日 |
#02 | 新生活 | 蔡欣亞 |
|
4月11日 | ||
#03 | 初仕事 | ススキダトシオ | 菅野幸子 |
|
4月18日 | |
#04 | コルティジャーナ | 岩畑剛一 | 七星京 |
|
4月25日 | |
#05 | 腐れ縁 | 鈴木貴昭 | 岩崎知子 | 安部元宏 |
|
5月2日 |
#06 | 同業組合 | 山崎茂 |
|
5月9日 | ||
#07 | ヴェネツィアの貴族 | 石井ゆみこ | 須藤典彦 | 5月16日 | ||
#08 | 新天地 | 吉田玲子 | 岩畑剛一 | 蔡欣亞 |
|
5月23日 |
#09 | 悪童 | 岩崎知子 | 菅野幸子 |
|
5月30日 | |
#10 | カタリーナの晩餐 | 鈴木貴昭 | 粟井重紀 |
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6月6日 | |
#11 | ファリエル家の肖像画家 | 吉田玲子 | ススキダトシオ | 安藤貴史 |
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6月13日 |
#12 | 弟子 | 山崎茂 |
|
6月20日 |
放送局[編集]
インターネットではFODにて地上波最速放送と同時に配信[21]。
BD / DVD[編集]
巻 | 発売日[26] | 収録話 | 規格品番 | |
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BD | DVD | |||
1 | 2020年6月10日 | 第1話 – 第4話 | BSZD-8251 | |
2 | 2020年7月8日 | 第5話 – 第8話 | BSZD-8252 | |
3 | 2020年8月5日 | 第9話 – 第12話 | BSZD-8253 | |
BOX | 第1話 – 第12話 | DSZD-8255 |
コラボ企画[編集]
注釈[編集]
- ^ 瞳と髪の色のほか、父からは冷たく扱われ、叔父のユーリからは温かく見守られるなど、「ユーリとソフィアの娘」であることが暗に示唆されるが、作中では明確に描かれてはいない。
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