ワン・モア・フロム・ザ・ロード – Wikipedia

ワン・モア・フロム・ザ・ロード』(原題:One More from the Road[注釈 1])は、アメリカ合衆国のロック・バンド、レーナード・スキナードが1976年に録音・発表した、キャリア初のライブ・アルバム。1976年7月のアトランタ公演のライブ音源が収録され、2枚組LPとして発売された[4]

エド・キングの後任として加入した新ギタリスト、スティーヴ・ゲインズの初参加アルバムに当たり、本作に収録されたライブの初日に当たる7月7日の公演は、ゲインズ加入後からわずか3度目のライブであった[5]。ロニー・ヴァン・ザントは1976年10月24日付の『ロサンゼルス・タイムズ』に掲載されたインタビューにおいて「俺達はギタリストが3人の編成で、嘘偽りのないライブ・アルバムをすぐに作ろうと決めた」と語っている[6]。本作に収録されたアトランタ公演は3日連続で行われ、プロデューサーのトム・ダウドによれば、バンドとダウドは2日目の公演の終了後にライブ録音を聴き直し、最終日のセットリストはダウドが「この曲はもう一度やってみるべきだ」と判断した曲が重視されたという[7]

過去4作のアルバムからの11曲、新曲「トラヴェリン・マン」、それに本作が初出のカヴァー2曲から成る。「トラヴェリン・マン」は、ベーシストのレオン・ウィルクソンが初めてソングライターとしてクレジットされた曲で、ウィルクソンによれば、ベースの弦を張り替えた時に曲を思いつき、その後ロニー・ヴァン・ザントが歌っていたフレーズを聴いて、自分の考えたベース・ラインに合うと考え、曲が完成したという[7]。この曲は再結成後のアルバム『トゥエンティ』(1997年)に初のスタジオ・ヴァージョンが収録され、ボーカル・パートの一部は本作に収録されたロニー・ヴァン・ザントの声が流用された[8]

「T・フォー・テキサス」はジミー・ロジャーズのカヴァーで、エド・キング在籍時からのレパートリーであった[7]。「クロスロード」はロバート・ジョンソンの曲だが、アレンジはクリームのヴァージョンに基づいている[7][9]

アレン・コリンズは、本作に収録された「フリー・バード」のギター・ソロに不満を持ち、オリジナルLPでは自分のソロの一部をオーバー・ダビングしたが、この時のマスター・テープは後に紛失し、2001年発売のデラックス・エディション盤では実際のライブ演奏の録音が使用された[7]

アメリカのBillboard 200では9位を記録し、自身2作目の全米トップ10アルバムとなった[2]。全英アルバムチャートでは17位に達し、初の全英トップ20入りを果たした[3]

Stephen Thomas Erlewineはオールミュージックにおいて5点満点中3点を付け「レーナード・スキナードは良いコンサートを行いトラヴェリン・バンドとして名利を得てきたので、4作目のアルバム『ギミー・バック・マイ・ブレッツ』からわずか数か月後に当たる1976年に『ワン・モア・フロム・ザ・ロード』という2枚組ライブ・アルバムを出したことは理にかなっている」と評している[10]。ジョン・ミルワードは1976年11月4日付の『ローリング・ストーン』誌のレビューにおいて、「クロスロード」のカヴァーを「南部のブルース・ロックと鋭利なブリティッシュ・ロックという、レーナード・スキナードの音楽的影響を巧みに封入している」、アルバム全体に関して「極上のギター・ロックを提示している」と評している[9]。また、『ギター・ワールド』誌の編集者Ted Drozdowskiは、「ザ・フーの『ライヴ・アット・リーズ』、オールマン・ブラザーズ・バンドの『フィルモア・イースト・ライヴ』、ジミ・ヘンドリックスの『バンド・オブ・ジプシーズ』、レッド・ツェッペリンの『永遠の詩 (狂熱のライヴ)』と並んで神殿入りに値する、最も偉大なロック・コンサート・アルバムの一つ」「フロリダ州ジャクソンビルから来たならず者バンドの、演奏面でのピークを記録している」と評している[5]

Michael GallucciはUltimate Classic Rockの企画「Top 10 Lynyrd Skynyrd Songs」において、本作の「フリー・バード」を「もし時間があれば、『ワン・モア・フロム・ザ・ロード』に収録された秀逸な14分のライブ・テイクが、スタジオ・ヴァージョンの代用品となり得る」と評している[11]

リイシュー[編集]

初期の再発CDは、収録時間の制約から「トラヴェリン・マン」と「T・フォー・テキサス」が外されて12曲入りとなった[12]。1996年の再発CDは2枚組で発売され、オリジナルLPには未収録だった「シンプル・マン」と「ギミー・バック・マイ・ブレッツ」、それに「スウィート・ホーム・アラバマ」の別テイクを加えた17曲入りとなり、曲順も変更された[13]

2001年に発売されたデラックス・エディション盤は、前述の3トラックに加えて、未発表の別テイク3トラックやコンピレーション・アルバム『Skynyrd Collectybles』(2000年)が初出の別テイク4トラックも含む24曲入りとなり、ケヴィン・エルソン英語版とマイク・ウィーヴァーがリミックスを行った[1]。2007年9月12日には、ユニバーサル・ミュージック・ジャパンから2001年デラックス・エディション盤と同内容の紙ジャケットCDも発売された[14]

オリジナルLP[編集]

サイド1[編集]

  1. ワーキン・フォー・MCA – “Workin’ for MCA” (Ed King, Ronnie Van Zant) – 4:38
  2. アイ・エイント・ザ・ワン – “I Ain’t the One” (Gary Rossington, R. Van Zant) – 3:37
  3. サーチング – “Searching” (Allen Collins, R. Van Zant) – 3:51
  4. チューズデイズ・ゴーン – “Tuesday’s Gone” (A. Collins, R. Van Zant) – 7:39

サイド2[編集]

  1. サタデイ・ナイト・スペシャル – “Saturday Night Special” (E. King, R. Van Zant) – 5:30
  2. トラヴェリン・マン – “Travelin’ Man” (R. Van Zant, Leon Wilkeson) – 4:08
  3. ウィスキー・ロック・ア・ローラー – “Whiskey Rock-a-Roller” (E. King, Billy Powell, R. Van Zant) – 4:14
  4. スウィート・ホーム・アラバマ – “Sweet Home Alabama” (E. King, G. Rossington, R. Van Zant) – 6:49

サイド3[編集]

  1. ギミー・スリー・ステップス – “Gimme Three Steps” (A. Collins, R. Van Zant) – 5:00
  2. コール・ミー・ザ・ブリーズ – “Call Me the Breeze” (J.J. Cale) – 5:27
  3. T・フォー・テキサス – “T for Texas” (Jimmie Rodgers) – 8:26

サイド4[編集]

  1. ザ・ニードル・アンド・ザ・スプーン – “The Needle and the Spoon” (A. Collins, R. Van Zant) – 4:17
  2. クロスロード – “Crossroads” (Robert Johnson) – 3:44
  3. フリー・バード – “Free Bird” (A. Collins, R. Van Zant) – 11:30

デラックス・エディション盤[編集]

各曲の録音日は下記の通り[1]

  • 7月7日 – #1, #6, #7(ディスク1)/#5, #6, #7, #8(ディスク2)
  • 7月8日 – #2, #3, #5, #8, #9, #12, #13(ディスク1)/#3, #4, #9, #10(ディスク2)
  • 7月9日 – #4, #10, #11(ディスク1)/#1, #2, #11(ディスク2)

ディスク1[編集]

  1. イントロダクション〜ワーキン・フォー・MCA – “Introduction by Alex Cooley/Workin’ for MCA” (E. King, R. Van Zant) – 5:32
  2. アイ・エイント・ザ・ワン – “I Ain’t the One” (G. Rossington, R. Van Zant) – 3:47
  3. サタデイ・ナイト・スペシャル – “Saturday Night Special” (E. King, R. Van Zant) – 5:39
  4. サーチング – “Searching” (A. Collins, R. Van Zant) – 4:00
  5. トラヴェリン・マン – “Travelin’ Man” (R. Van Zant, L. Wilkeson) – 4:37
  6. シンプル・マン – “Simple Man” (G. Rossington, R. Van Zant) – 6:56
  7. ウィスキー・ロック・ア・ローラー – “Whiskey Rock-a-Roller” (E. King, A. Powell, R. Van Zant) – 4:48
  8. ザ・ニードル・アンド・ザ・スプーン – “The Needle and the Spoon” (A. Collins, R. Van Zant) – 4:35
  9. ギミー・バック・マイ・ブレッツ – “Gimme Back My Bullets” (G. Rossington, R. Van Zant) – 4:01
  10. チューズデイズ・ゴーン – “Tuesday’s Gone” (A. Collins, R. Van Zant) – 8:25
  11. ギミー・スリー・ステップス – “Gimme Three Steps” (A. Collins, R. Van Zant) – 5:11
  12. コール・ミー・ザ・ブリーズ – “Call Me the Breeze” (J.J. Cale) – 5:51
  13. T・フォー・テキサス – “T for Texas (Blue Yodel #1)” (Rodgers) – 9:14

ディスク2[編集]

  1. スウィート・ホーム・アラバマ – “Sweet Home Alabama” (E. King, G. Rossington, R. Van Zant) – 7:29
  2. クロスロード – “Crossroads” (R. Johnson) – 4:16
  3. フリー・バード – “Free Bird” (A. Collins, R. Van Zant) – 14:25
  4. ワーキン・フォー・MCA(オルタネイト・テイク)”Introduction by Alex Cooley/Workin’ for MCA” (E. King, R. Van Zant) – 5:37
  5. アイ・エイント・ザ・ワン(オルタネイト・テイク) – “I Ain’t the One” (G. Rossington, R. Van Zant) – 3:52
  6. サーチング(オルタネイト・テイク) – “Searching” (A. Collins, R. Van Zant) – 4:13
  7. ギミー・スリー・ステップス(オルタネイト・テイク) – “Gimme Three Steps” (A. Collins, R. Van Zant) – 4:42
  8. コール・ミー・ザ・ブリーズ(オルタネイト・テイク) – “Call Me the Breeze” (J.J. Cale) – 5:43
  9. スウィート・ホーム・アラバマ(オルタネイト・テイク) – “Sweet Home Alabama” (E. King, G. Rossington, R. Van Zant) – 7:27
  10. クロスロード(オルタネイト・テイク) – “Crossroads” (R. Johnson) – 4:46
  11. フリー・バード(オルタネイト・テイク) – “Free Bird” (A. Collins, R. Van Zant) – 14:48

参加ミュージシャン[編集]

  • ロニー・ヴァン・ザント – ボーカル
  • ゲイリー・ロッシントン – ギター
  • アレン・コリンズ – ギター
  • スティーヴ・ゲインズ – ギター
  • ビリー・パウエル – キーボード
  • レオン・ウィルクソン – ベース
  • アーティマス・パイル – ドラムス

アディショナル・ミュージシャン

  • ジョジョ・ビリングスレイ – バッキング・ボーカル
  • キャシー・ゲインズ – バッキング・ボーカル
  • レスリー・ホーキンス – バッキング・ボーカル
  • サム・マクファーソン – ハーモニカ(on “Tuesday’s Gone”)[1]

注釈[編集]

  1. ^ ジャケットでは『One More For From The Road』と記載されている。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e Lynyrd Skynyrd – One More From The Road (25th Anniversary Deluxe Edition) (CD, Album) at Discogs
  2. ^ a b Lynyrd Skynyrd – Awards”. AllMusic. 2016年4月15日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2017年1月21日閲覧。
  3. ^ a b LYNYRD SKYNYRD | full Official Chart History | Official Charts Company – 「Albums」をクリックすれば表示される
  4. ^ Lynyrd Skynyrd – One More From The Road (Vinyl, LP, Album) at Discogs – オリジナルLPの情報
  5. ^ a b Drozdowski, Ted (2015年6月26日). “Gary Rossington Discusses ‘One More for the Fans!’ and His Life and Times with Lynyrd Skynyrd”. Guitar World. NewBay Media. 2016年3月15日閲覧。
  6. ^ Crowe, Cameron. “Lynyrd Skynyrd – L.A. Times”. The Uncool/Vinyl Films. 2016年3月15日閲覧。
  7. ^ a b c d e 2001年デラックス・エディション盤CD (MCA, 0600753278529)英文ライナーノーツ (Ron O’Brien) pp. 11-18
  8. ^ Travelin’ Man by Lynyrd Skynyrd”. Songfacts. 2016年3月15日閲覧。
  9. ^ a b Milward, John (1976年11月4日). “Lynyrd Skynyrd One More From The Road Album Review”. Rolling Stone. 2016年3月15日閲覧。
  10. ^ Erlewine, Stephen Thomas. “One More from the Road – Lynyrd Skynyrd”. AllMusic. 2016年3月15日閲覧。
  11. ^ Gallucci, Michael. “Top 10 Lynyrd Skynyrd Songs”. Ultimate Classic Rock. Diffuser Network. 2016年3月15日閲覧。
  12. ^ Lynyrd Skynyrd – One More From The Road (CD, Album) at Discogs – 1987年再発CDの情報
  13. ^ Lynyrd Skynyrd – One More From The Road (CD, Album) at Discogs – 1996年再発CDの情報
  14. ^ レーナード・スキナード/ワン・モア・フロム・ザ・ロード (紙ジャケット仕様) (2CD) (限定)”. CDJournal. 音楽出版社. 2016年3月15日閲覧。

外部リンク[編集]